『いちご100% ~名脇役は青春の主役になれるか~』   作:Gussan0

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どうもΣ(゚Д゚)

続き書けたで候。

では、どうぞ∠( ゚д゚)/


第四話 彼女と友達

 西野つかさと真中淳平が付き合い始めてから、学校で少し変わったことがある。

 

「境野君」

 

「ん?」

 

「淳平君、いる?」

 

「今日はいる」

 

「今日はってなんだよ!」

 

 教室の奥から真中の抗議が飛んできた。

 

「昨日は西野が来る直前に購買行っただろ」

 

「あれは偶然だ!」

 

「今日は捕まえられてよかったな、西野」

 

「あはは。ほんとだね」

 

「お前ら!」

 

 三年二組の西野が、昼休みになると時々こちらへ来るようになったことだ。目的はもちろん彼氏である真中。付き合い始めたばかりということもあって、西野が姿を見せるたび真中は分かりやすく浮かれている。

 

「淳平君、お昼まだ?」

 

「まだ!」

 

「じゃあ一緒に食べよ」

 

「おう!」

 

 いそいそと弁当を持ってくる真中を見ていると、こっちまで妙な気分になる。青春してるねえ。

 

「境野君も一緒に食べる?」

 

「俺?」

 

「うん」

 

「いや、彼氏との昼飯に元クラスメイトを混ぜるなよ」

 

「別にいいじゃん」

 

「俺がよくない」

 

「なんで?」

 

「真中の視線がうるさい」

 

「え?」

 

 西野が真中を見る。真中が露骨に目を逸らした。

 

「淳平君?」

 

「な、なんでもない!」

 

「ふーん?」

 

 西野が面白そうに笑う。この辺は去年から変わらない。明るくて、人との距離を縮めるのがうまい。去年同じクラスだった頃も西野の周囲にはいつも人がいた。男女問わず人気があって、俺みたいに一人でいても平気な人間にも普通に話しかけてきた。

 

「じゃあ東城さんも誘おっか」

 

「えっ」

 

 俺より先に真中が反応した。

 

「なんで真中が驚くんだ」

 

「いや、だって……」

 

「この前ちょっと話したし」

 

 西野が教室を見回し、本を読んでいた東城を見つける。

 

「あ、いた。東城さーん」

 

「えっ?」

 

「一緒にお昼食べない?」

 

「わ、私?」

 

「うん」

 

 東城の視線が真中へ向かう。次に西野。最後に俺。なぜ俺を見る。

 

「嫌なら無理しなくていいよ?」

 

「う、ううん! 一緒に食べる」

 

「ほんと? じゃあ決まり」

 

 西野が笑う。

 

 結果、真中、西野、東城、俺の四人で机を囲むことになった。真中は落ち着かない。東城も落ち着かない。西野だけが普通だ。

 

「東城さんのお弁当、自分で作ったの?」

 

「う、うん」

 

「すごーい。私も料理するけど、お弁当って朝から作るの面倒じゃない?」

 

「前の日に少し準備してるから……」

 

「へえ。今度なんか教えてよ」

 

「私でよければ……」

 

「やった」

 

 意外と会話が続いている。東城は人見知りする方だが、西野は相手が答えやすい話題を振るのがうまい。

 

「境野君は?」

 

「何が」

 

「お弁当」

 

「自分で作った」

 

「えっ」

 

 東城が反応した。

 

「境野君、自分で作ってるの?」

 

「だいたいな」

 

「知らなかった……」

 

「言ったことなかったし」

 

 西野は特に驚かない。

 

「境野君、料理できるよ」

 

「知ってるの?」

 

「去年、調理実習で同じ班になったことあるから」

 

「ああ、あったな」

 

「先生より手際よかったよね」

 

「それは言い過ぎだ」

 

「包丁使うのすっごく速かったじゃん」

 

「普通だろ」

 

「普通じゃないって」

 

 東城が俺の弁当をじっと見ている。

 

「食う?」

 

「えっ!?」

 

「そんな見られると食いづらい」

 

「ご、ごめん!」

 

「卵焼きくらいならやるけど」

 

「いいの?」

 

「ああ」

 

 箸を伸ばしかけて、止めた。これ、俺の箸でそのまま渡したら妙な空気になるやつか? 前世なら気にもしなかったが、今は中学生だ。

 

「ほら」

 

 弁当箱の蓋へ卵焼きを置いて東城へ渡す。

 

「あ……ありがとう」

 

「どういたしまして」

 

「境野」

 

「ん?」

 

 真中がこっちを見ていた。

 

「何?」

 

「いや……なんでもない」

 

 何なんだ。

 

「私も」

 

「西野まで?」

 

「去年の境野君の料理、久しぶりに食べたい」

 

「調理実習で一回食っただけだろ」

 

「だから久しぶり」

 

「はいはい」

 

 もう一つ置いてやる。

 

「ありがと」

 

 西野が口へ運び、嬉しそうに笑った。

 

「ん。おいしい」

 

「普通の卵焼きだぞ」

 

「東城さんも食べてみて」

 

「う、うん」

 

 東城も一口食べる。

 

「……おいしい」

 

「そりゃどうも」

 

「境野……」

 

「だから何だよ」

 

「俺にもくれ」

 

「なんでだよ」

 

「俺だけないのおかしいだろ!」

 

「彼女から貰え」

 

「そういう問題!?」

 

「淳平君、食べる?」

 

「食べる!」

 

 西野が自分の弁当からおかずを差し出すと、真中は一気に上機嫌になった。単純な奴。

 

 でもまあ、西野が笑っていて、真中が嬉しそうで、東城も少しずつ普通に話せるようになっている。思っていたより悪くない昼休みだった。

 

          ◇

 

「境野君」

 

 放課後、靴を履き替えていると後ろから呼ばれた。

 

「西野?」

 

「今帰り?」

 

「ああ。今日は文芸部休み」

 

「そっか。じゃあ途中まで一緒に帰らない?」

 

「別にいいけど。真中は?」

 

「淳平君、今日は大草君たちと用事あるんだって」

 

「なるほど」

 

 二人で校門を出る。去年は珍しくもなかった。同じクラスで帰る方向も途中まで同じだったから、偶然一緒になることは何度かあった。三年になってクラスが分かれてからは久しぶりだ。

 

「なんか懐かしいね」

 

「去年もたまにこうして帰ったな」

 

「うん。境野君、今年も全然変わんないね」

 

「一年でそんな変わるか?」

 

「変わるよ。中学生なんだから」

 

「そういうもんか」

 

「そういうもん」

 

 前世まで含めれば一年なんて誤差みたいな感覚なんだが、もちろん口には出せない。

 

「でも、ちょっと変わったかな」

 

「どっちだよ」

 

「あはは」

 

 西野が笑う。

 

「東城さんといるとき」

 

「東城?」

 

「うん」

 

「何が違う?」

 

「んー……自然?」

 

「意味が分からん」

 

「私と話すときも普通なんだけど、東城さんとはもっと静かっていうか」

 

「文芸部だからな」

 

「関係ある?」

 

「たぶん」

 

「ふーん」

 

 西野が横から俺の顔を覗き込む。

 

「境野君、東城さんのこと好きなの?」

 

「…………は?」

 

 思わず足が止まった。

 

「なんでそうなる」

 

「なんとなく」

 

「違う」

 

「即答」

 

「友達だよ」

 

「へえー」

 

「なんだその顔」

 

「別に?」

 

 昼休みにも見たぞ、その顔。

 

「西野」

 

「ん?」

 

「人のことより自分はどうなんだ」

 

「私?」

 

「真中と付き合い始めたんだろ。楽しい?」

 

「…………」

 

 西野の表情が少し変わった。からかうような笑顔が消える。

 

「楽しいよ」

 

「ならいいじゃん」

 

「でもね、まだよく分かんない」

 

「何が」

 

「付き合うってこと」

 

 西野が前を向く。

 

「淳平君の告白、すっごく変だったでしょ?」

 

「まあな」

 

「普通あんな告白しないよね」

 

「普通の基準を俺に聞くな」

 

「でも面白かった。あんなことしてまで私に告白してくる人、初めてだったから」

 

「それで付き合った?」

 

「それだけじゃないけどね」

 

 その言葉に少し引っかかった。

 

「前から知ってたのか?」

 

「ん?」

 

「真中のこと」

 

 西野が一瞬だけ目を丸くし、それからいたずらっぽく笑った。

 

「内緒」

 

「なんだそれ」

 

「女の子には秘密があるの」

 

「そうですか」

 

「そうなんです」

 

 そこから少し歩いたところで、西野がぽつりと言った。

 

「でも……淳平君、東城さんのこと気にしてるよね」

 

 気づいてたか。いや、西野なら気づいていても不思議じゃない。

 

「俺に聞くなよ」

 

「聞いてないよ」

 

「じゃあ何だ」

 

「言ってみただけ」

 

 西野は笑っている。でも、さっきまでとは少し違った。

 

「境野君って、こういうとき絶対余計なこと言わないよね」

 

「本人がいないところで勝手に話すことじゃないだろ」

 

「やっぱり」

 

「何が」

 

「境野君だなーって」

 

「またそれか」

 

「あはは」

 

 やがて分かれ道へ着く。

 

「じゃあ私こっち」

 

「ああ」

 

「また明日ね、境野君」

 

「また明日」

 

 西野が手を振って歩いていく。その背中を少しだけ見送った。

 

 明るくて、誰とでもすぐ仲良くなれて、いつも楽しそうに見える。でも当然、西野だって何も考えていないわけじゃない。

 

 同じ教室で一年過ごした。一緒に授業を受けて、話して、笑った。

 

 西野つかさは、俺にとってもう「原作のヒロイン」というだけの存在じゃない。

 

 去年同じクラスだった、一人の友達だ。

 

          ◇

 

 翌日の放課後。

 

「境野君」

 

「ん?」

 

 文芸部で本を読んでいると、東城がノートから顔を上げた。

 

「昨日、西野さんと一緒に帰ってた?」

 

「途中までな」

 

「……そうなんだ」

 

「見てたの?」

 

「たまたま窓から」

 

「ふーん」

 

 東城のペンが止まった。

 

「どうした?」

 

「え?」

 

「いや、止まってるから」

 

「あ……別に、なんでもないよ」

 

「そう?」

 

「うん」

 

 さらさらとペンが走る。

 

 三秒。

 

 止まった。

 

「…………」

 

「…………」

 

「境野君」

 

「何」

 

「二年生のとき、西野さんと仲良かったんだね」

 

「普通だぞ」

 

「一緒に帰るくらい?」

 

「帰る方向が途中まで同じだったからな」

 

「ふーん……」

 

 またペンが動く。そして止まる。

 

「東城」

 

「な、なに?」

 

「今日全然書けてないだろ」

 

「そ、そんなことないよ!」

 

「さっきから同じ行で止まってるぞ」

 

「…………」

 

 東城がノートを両手で隠した。

 

「見ないで……」

 

「見てない」

 

「……ほんと?」

 

「人の原稿勝手に読まないって前にも言っただろ」

 

「……うん」

 

 東城の手から力が抜ける。

 

「そうだったね」

 

「ああ」

 

 少しだけ沈黙したあと、東城が小さな声で言った。

 

「……境野君」

 

「ん?」

 

「私も」

 

「何?」

 

「私も境野君と、一年生のとき……一緒に帰ったことあったよね」

 

「あったな」

 

 確か、雨の日だった。東城が傘を忘れて、俺の傘に途中まで入れて帰った。

 

「覚えてたの?」

 

「そりゃ覚えてるだろ」

 

「…………そっか」

 

 東城が俯く。けれど今度は、口元が少し笑っていた。

 

「なんだよ」

 

「なんでもない」

 

 そしてペンが動き始める。今度は止まらない。

 

 俺は首を傾げながら、本へ視線を戻した。

 

 女心は難しい。

 

 前世で何十年生きようが、こればかりは経験値でどうにかなるものでもないらしい。




東城さんのキャラがイマイチ掴めぬ。

では、また∠( ゚д゚)
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