TASでカンストした次の人生。   作:mono-zo

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13話 大人と子ども。

 

 

「で、どういうことだ?」

 

 

試合後のミーティング。

 

落地監督は大河にお怒りのようだ。

 

 

「と言いますと?」

 

 

口を挟んだ。

 

結果は出したが、落地監督からすれば大河は指示を無視した。

 

俺が上手く大河をコントロールできればよかったのだけど……。

 

 

「吉村には聞いてない。大河、俺言ったよな?吉村のリード通りに投げろって」

 

「言ってた」

 

「じゃあ何で投げない!最後のあの場面!お前が指示してたよな!!」

 

「負けたくなかったから」

 

 

お怒りの落地監督だが、大河にも言い分はあるだろう。

 

それに結果としては監督より大河が正しい気がする。

 

 

「はぁ?!」

 

「あのさ、逆に聞くけど、ベンチから見ててバッターがその瞬間何狙って打とうとしてるか分かんの?」

 

「わかるわけねーだろ!お前にはわかるっていうのか!経験の浅い!お前が!!」

 

「見てわかるから指示通り投げて毎回打たれてんだろ!!ハゲ!」

 

「ハゲてねー!もういい!お前は走ってろ!」

 

 

大河はチームメイトの前で怒られてもシュンとするどころか全くダメージを受けていない。表情は嬉しげで「お説教終わり?ラッキー」とでも思っているのだろう。

 

 

「監督!俺は大河が正しいと思います」

 

「あん?何が言いてぇ」

 

「俺中学まではピッチャーだったんですけど、投げる時にバッターを見れば『今何投げてもヤベェな』とかそういうのって見えるもんです。大河はそれをわかってたと思います。それじゃ俺もお先に失礼します」

 

 

言いたいことを言って頭を下げて外に出る。

 

 

「まだミーティングは終わってねーぞ!」

 

「ミーティングよりもチームの勝利が大事なんで、拗ねさせたら怖い子供と走ってきます。ほら、俺も生意気な口を出しちゃいましたし」

 

「…………行ってこい!!」

 

 

 

 

⚾⚾⚾⚾⚾⚾⚾⚾

 

 

 

チームプレイは難しい。

 

前世であれば能力のある自分にチームが合わせるのが当然だった。

 

だけど今は子供、侮られて当然、命令も聞いて当然。

 

まぁ、でも、今は自由だ。

 

何故か嫌なことでも選ぶしかなかった前世と違って、何でも自分で決められる。

 

 

「おーいクソガキ」

 

「なんだよ吉村」

 

「水飲んでから走れ。最後に飲んだの結構前だろ」

 

「子供扱いすんな」

 

 

吉村が水を渡してきた。飲んでコップを潰し、ゴミ箱があったので投げ入れる。

 

北海道は山口と違って涼しい。ちょっと肌寒くはあるけど、トレーニングにはぴったりだな。

 

 

「俺等から見たら子供だし、仕方ないだろ」

 

「どこが子供なんだよ、同じチームで、ちゃんと成績残してんのに」

 

「そういうとこも含めてかな。大人と子どもって年齢だけじゃないんだわ」

 

「よくわからない」

 

 

大人と子どもが年齢だけじゃない?何を言ってるのかわからない。

 

 

「テレビゲームってやるか?」

 

「やったことない。貧乏だったし」

 

 

前世含めて、ゲームと言えば体を使うものしかしたことがない。

 

 

「…………えーと、大人っていうか20過ぎてても子供っぽいやつもいれば5歳でも大人っぽいやつは居るよな」

 

「いる」

 

 

ちょっと困ったかのような吉村。何がいいたいのだろうか。

 

 

「そう、小学生って同じ括りでも一年生は子供で、六年生は大人だ。何が違う?」

 

「年齢」

 

「そう、彼等は大抵同じ学校を通って、年齢を重ねてきた」

 

「つまり?」

 

「そこにいて、そこで学んできた。六年生と入ったばかりの一年生では小学校での振る舞い方を知っているか知っていないかの違いがある」

 

「それって大人っぽさと関係あるのか?」

 

 

小学生なら子供は子供だろう。

 

 

「あると思うね。皆、誰かと野球をやって来て同じチームの一員になった。家、リトルリーグ、学校、甲子園、大学……プロ野球に来るまで道は違えど野球っていう同じ積み重ねがある。これが無いから君は野球一年生で子供、俺達は大人ってわけだよ」

 

「なんとなくわかった」

 

 

学校の話と合わせると、同じ場所や同じ環境で学んだ時間があるからこそ6年という積み重ねの中で余裕や勝手が生まれる。その余裕こそが大人か子どもかの違い……ってことかな。

 

自分の行いは小学生、いや、選手として尖ったものに写っているのだろう。

 

 

「積み重ねる時間でしか解決できない。子供子供言われるのはあまり気にしないで良いと思う」

 

 

積み重ねて、そこにいれば分かることもあるか。

 

監督には監督の考えがあって、自分には自分の考えがあった。

 

どうすればよかっただろうか?あの場面で監督に許可を取ってからが筋だったか?それとも他にやりようがあっただろうか。

 

 

「結局俺はどうすればいい?」

 

「ただ、周りの六年生を見てどう振る舞うかを見て学べばいいかもね」

 

「なんもかいけつしねー」

 

「そんなもんだって。そろそろ戻るぞ。暗いし道がわからなくなってきた」

 

「へーい」

 

 

解決はしなかったが、それでも、なんとなくわかった。

 

周りを観察して、周りに合わせることも大事ってことだな。

 




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吉村と大河。
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