吉村は……答えを諭すとか、あれしろこうしろと言いに来たとかじゃなく、きっとただ隣りにいてくれたのだろうな。
その後、飛行機で関西まで帰って……また体はこわばるし気分が悪くなった。
飛行機では寝ていただけだったのに、体が飛行機を拒んでいる。うん、飛行機駄目だわ自分。
「なんで飛行機が駄目なんだ?」
「わかんねーです」
「……まぁいい。また病院行ってこい」
このためにめっちゃ病院に行った。
なんでも飛行機に乗って体調が悪くなる場合、気圧によってなにかの病気が見つかるようなケースもあるそうなので、徹底的に調べられた。
しかし中学を卒業したばかりの体は健康そのものである。診断は「乗り物酔い」、もしくは「自覚のない高所恐怖症」だった。
そして保護者である景子ねーさんに会ってスマホを渡された。
「名義は私だけど、健人のスマホ」
「おー」
「それはそれとして、病気とかはなかった?具合悪そうだったけど」
「乗り物酔いか、自覚のない高所恐怖症じゃないかって」
本来の保護者は母親だ。だけど病院に長期入院となっているため成人済みの従姉妹である景子ねーさんに一時的にお世話になっている。
この場合スマホの契約を従姉妹がするのはちょっと面倒なのだとかで、景子ねーさんの名義でもう一台スマホを契約し、それを渡されることとなった。
使い方を聞いていくと……スマホっておもしろい。
電話だけじゃなく、動画とか地図とかも見れる。同級生が使ってたしだいたい分かるっちゃ分かるけどこんなに細かく使ったことはなかったからすごく新鮮だ。
キッズイベントに行くときも地図アプリがあったらもっと早く着いただろう。紙の地図じゃ自分の位置は表示されないから……。
「野球選手なんだからこういうのも使っときな」
「体調管理アプリ?」
「そう、何時に寝たとかトレーニング時間とか、それに何を食べたのかとか写真を撮って自己管理できるソフトよ」
「へー、便利」
「お菓子も食べたらちゃんと写真に撮ること!」
「はーい」
景子ねーさんは結構過保護だ。
社会人になってから頻繁に家に来てはお惣菜を差し入れしてくれた。母さんと、いくらでも食べる自分の為だったんだろう。
山口で働いてるのにわざわざスマホを届けに来てくれるあたり足を向けて寝られない。
「あと、香織叔母さんにも電話すること」
「番号はどうやって入力すればいいのかな」
「ここ押して……えーと」
「番号は覚えてるから」
「そう」
とりあえず母さんにかけてみた。
「もしも――――「あんた何やってんのよ!?病院でお茶噴いたじゃない!」
電話をかけるとすぐに母さんは出た。
検査とかしてるわけじゃなかったようだ。
「なにって、プロ野球を」
「そうだけどそうじゃない!高校は!?」
「人に顔向けできないことじゃないし好きなことやれって」
「言ったけど言ってない!だいたいあんた野球嫌いじゃない!?」
「野球は嫌いだけどできるし、ほら、母さんの治療費のためにやろっかなって」
「やろっかなでできるもんじゃないでしょ!!?」
「できるんだって、何故か」
うん、なぜか出来るし、好き嫌い関係なくやっていることに後悔はない。
「サイン頼まれて大変なのよ!山口に有名人がでたって大騒ぎよ!なんか病院での扱いもよくなったわ!!?」
「よかった、じゃあ専門性の高い病院に移る?お金は出すから」
うむ、母さんの待遇が良くなったのはすごくいいことだ。
先払いの契約金は治療費は全部景子ねーさんに渡したし、治療費は……よくわからないけど足りればいいなぁ。
「わかった!けどわかんない!息子が何考えてんのか全くわかんないわ!!?」
「母さん、今日はやけに元気だね。へへ、久しぶりに声を聞けて安心したよ」
「お前、親孝行で嬉しいけどいつの間にか宇宙人みたいに……!」
この後すごい説教された。
ちなみに母さんは新聞は読まないし、病院のテレビはお金がかかるとかで病院では寝るか検査を受けるか病院内にある図書館の本を読んだりしていたそうだ。野球とか自分に関係がないと思ってたら息子が出ていて驚いたらしい。
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監督「重い病とかが出ないといいけど……」
医者「何も見つからないんで乗物酔いか高所恐怖症ですかね。定期的に病院に来てね―」
景子「体調大丈夫?スマホ持ってきたよ。叔母さんに電話しな」
香織「なんか息子が高校行かずにプロ野球やってる。なにやってんのよー?!」