TASでカンストした次の人生。   作:mono-zo

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20話 お見舞いと公式グッズ。

 

前世の親は良い親だったかといえば前世基準では良い親で、今世基準では刑務所に入るか処刑されて然るべき存在だった。

 

父親は俺に野球を教えるべく基礎トレとキャッチボールを朝昼晩欠かさずに練習した。

小学生相手に150キロのボールを投げてくる悪魔だ。基礎トレも靴底に穴があくまで行われた。

 

雨の日も、風が強い日も吹雪いてる日も、台風の日でも……そして、それが風邪だろうと、インフルエンザだろうと、盲腸だろうと関係なく行われた。「これで身体が強くなる」とか言って……確かに身体は強くなったのかもしれないけどいい思い出なんてない。

 

特に台風の日に無人島まで練習中に吹き飛ばされて強制的にサバイバル生活になったのは忘れられない。

 

必死に帰ったら帰ったで母親からの「練習22日サボったわよね?ペナルティね。取り戻すためにもハードモードでやりましょう」とかボールを投げつけられて……鬼のようだったな……。

 

 

だから「親との接し方」など分からない。

 

 

今世では自分のために必死な親のために食べる分を減らし、食料を自分でとったりと出来る限り頑張ったつもりだ。

 

親のためになにかしたいと思ったのも初めてで……自分に何が出来るかはわからないが、できれば生きてほしい。

 

 

病院に行くと母さんは寝ていて、お医者さんと鉢合わせた結果別室で説明を受けた。

 

医師は過労による多臓器へのダメージとストレスによる軽度のうつ症状と診断されてから長期入院。かなり回復して、今は心臓のダメージだけは明確に残っているのと……弱った他の臓器のチェックをして入院している。

 

……残念ながらほかの臓器と違って心臓は不整脈を起こすようだ。もうしばらくの薬と療養で回復してくれればいいが検査ではまだ怪しい部分があるらしい。

 

年齢的にはまだ回復の余地があるし、可能な限り手術はしない方針をとって様子を見ているそうだ。

 

不整脈を起こす部分を焼く手術をするにしても、埋め込み型の除細動器を入れるにしてもリスクもある。

 

 

「それはそれとして……サイン下さい」

 

「え、あ、はい」

 

 

緊張する。こういうのは全部景子ねーさんに任せているが、やはり息子の自分も同意書にサインが必要だったりするのだろうか。

 

渡された真っ白で四角い、ちょっと分厚目の紙……………………。

 

 

「そっちかよ!?」

 

「え?」

 

「手術とか手続きのやつかと思ったわ!?良いけどさ!!」

 

「あっ、ごめんごめん」

 

 

医者の色紙にサインして病室に戻ると母さんはまだ寝ていた。

 

入院してすぐよりは顔色は良いけど、それでも健康とは言い難い。

 

後で知ったが母さんは父親の借金を今でも返していて苦労していたそうだ。……そんなの、全く知らなかったな。

 

起こすのも忍びないし、おっさんに渡されたお土産の成分を見ていく。

 

薬とかとの兼ね合いで食べちゃいけない成分とかあるかもだし、一応の確認だ。さっき医者に確認取っておけばよかった。

 

…………ん?お土産の箱、二つは菓子折りだけど、もう一つは何も書いて無いな。どうせ食べるし開けるか。

 

 

小さな黒い布っぽいものがパッケージされたものがいくつも入ってるのと……手紙が二通入ってる。

 

 

「おっさん……なにも、宛名にまでクソガキと書かなくても…………」

 

 

手紙には「クソガキ様」とかかれた上で「様」に二重線が引かれていた。

 

もう一通は母親向けだしあとで渡そう。……なになに。

 

 

「クソガキへ

 

故郷に錦を飾るにはまだ早いがプロ野球選手になったんだから堂々と凱旋してもいいだろう。

 

箱の中のパッケージの中身はリストバンドの試作品とミニタオルの試作品を先に貰って入れたからそっちでお世話になった人にでも配れ。

 

ミニタオルは一つしかないからお母さん向けだ。入院してると使うこともあるだろうしな。

 

追伸、母親や周囲の親に迷惑をかけるな。後、お前自身も少しでも具合が悪いと思ったら病院にかかれ。療養中ってことになってんだから遊び回るな。絶対に炎上するから。分かったらおとなしく母親の身の回りの世話なり家の片付けなりしろ。」

 

 

……『故郷に錦を飾る』ってどういう意味だ……………??よくわからんが後で調べよう。っていうか追伸クソ長いな。 

 

ビニール袋を開けるとTAIGA KENTOの刺繍と99の背番号は入ったリストバンドがいくつかとミニタオルが一つあった。

 

 

「あんた、なんで顔してんのよ」

 

 

母さんが起きたようだ。

 

 

「あ、おはよう……いや、これどうなんだって思って」

 

「それは?」

 

「おっさんから渡されたリストバンドとミニタオルだって、ミニタオルは母さんに。はい」

 

 

顔色は入院したときよりも良くなっている。

 

ミニタオルと取り出したリストバンド、それに手紙を母さんに渡した。

 

 

「ありがとう……で、なんで微妙な顔してたの?新聞であったけど試合でのケガとかじゃないわよね?……お医者さん呼ぶ?」

 

「ステイステイ、ナースコール探さないで……いや、そのリストバンドなんだけどさぁ」

 

 

母さんは透明な袋に入ったままのそれを観察したようだ。

 

 

「ちゃんと作ってもらったのね。普通にいいものっぽいけど?」

 

「俺、一度もリストバンドって使ったことないんだけど……公式グッズでそれってどうなんだろって」

 

「え、あ、それは……うーん…………」

 

 

母さんも渋い顔になった。だよね。

 




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……ありがとうございますっ!?
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