TASでカンストした次の人生。   作:mono-zo

21 / 26
21話 大河と大川。

 

近況を話してると看護師さんが来た。母さんは検査の旅とやらに病院内を回るそうで、お使いを頼まれた。

 

病院内の売店に売ってるらしいリップと髪留めを御所望だ。

 

唇が割れて痛いし、なにかと髪が邪魔なんだとか。

 

 

「景子ちゃんには色々頼んでるし申し訳なくてね。自分で行ければ良いんだけど……あんたがきたならちょうどいいかって。髪留めは安くて数があるやつでお願い」

 

「わかった。まかせて」

 

「後結構時間かかるらしいからお腹空いてるなら食堂でなんか食べて来なさい。もしくは売店で菓子パンでも買って……屋上で食べてくるとか、どれぐらいかかるかわからないから時間的に無理そうなら帰ってもいいからね」

 

「わかったって」

 

 

わかったと言ったのだが、わかってはいなかった……。

 

 

まず売店。――――……リップと髪留めって…………どれ選べば良いんだよっ!?

 

 

リップは色付き、保湿成分、天然由来とかの種類がある。髪留めも母さんがいつも使ってる黒いゴムのことかと思ったらヘアピンだとか洗濯バサミみたいなやつがある……「数が多い」ってどういうことだ。この歯が数が多そうなやつのことか??それともいつものゴムのやつか、いやピンのやつか???あ、髪留め「は」って言ってたし、リップは良いやつを買うべきか?

 

わからん……。わからんすぎて連絡したいところだけど母さんは検査に行っちゃったし、昼間から仕事中の景子ねーさんに連絡するのもな。

 

うーん、頭が痛い。頭を打ったからとかではなく。

 

迷いながらもとりあえず成分の良さそうなやつを探すべくリップの裏側の説明を見ておく。

 

こういうのも成分見て薬との兼ね合いを考えないといけないのか???多分色付きとかじゃない……はず。だけど4人部屋だったし、気を使ってなんかいいやつっぽいのが必要だったりするのか?…………………どれだよぉぉ!!!??

 

 

「あの、大丈夫ですか?」

 

「あ、すいません」

 

 

他のお客さんの邪魔になってるかと思ったので商品を持ったまま横に一歩ズレた

 

 

「いえ、大河さんのところの健人君?」

 

「はい?」

 

「看護師の大川です。大河さんの話は有名ですので」

 

 

看護師さんと名乗る私服の女性がいた。

 

 

「えと、母がお世話になってます」

 

「お世話してます?……でいいのかな?この場合。何かお困りですか?」

 

 

優しそうな人だ。母さんのことを知っているのなら聞いてもいいかな。

 

 

「母さんが髪留めとリップ買ってきて欲しいって、でも種類多くて」

 

「あぁ……なるほど、リップはこれですね。病室で見かけたことがあります。髪留めは……たぶんこっちの売店じゃなくて向こうの棟のやつかな。黒の髪ゴム」

 

「多分それです。売店ってどっちですかね」

 

「案内しますよ」

 

「いえ、お手間かけますし」

 

 

この病院の売店はもう一個あったはず、向こうの売店になら母さんの求める髪留めがあるのかもしれない。

 

忙しい看護師さんにそんなことを頼むのは気が引ける。

 

 

「仕事終わりなんで……話題の人に会えるとか結構面白いですし」

 

 

大川さんは楽しげで、迷惑とかそういう感じはなさそうだ。

 

 

「じゃあよろしくお願いします」

 

「お願いされましたー♪」

 

 

変わった人だなと思う。なにかひどく面白がっている気がする。

 

大川さんは大河という名前に親近感があるらしい。大河はおおかわと読む場合もあるし、なんとなくわかる。

 

 

「たまに来る若い方はお母様の妹さんで?」

 

「いえ、従姉妹です」

 

 

景子ねーさんのことかな?

 

母さんの入院や治療費などは全部景子ねーさんがやっている。年齢的に母さんとねーさんの関係が気になったのかもしれない。

 

 

「どんな方ですか?」

 

「景子ねーさんですか?……そうですね。頼りになる人です」

 

「確かに」

 

「ん?」

 

 

景子ねーさん。病院でもなにかやらかしたのかな?

 

 

「いえ、続けて続けて」

 

「家に来ては結構ダラダラしてダル絡みもしてきてたんですが……母さんが倒れてからはもう、頭の上がらない存在です」

 

「ほうほう」

 

「母さんの病院の世話もしてくれてますし、未成年の自分の保護者っぽい感じにもなってます。まぁ、自分は職にもついてますが未成年ですし……ホント景子ねーさんは頼りにしてます」

 

 

うん、景子ねーさんは自分の従姉妹だけど、もうほぼ姉で、家族だ。

 

ろくでなしの父親と母さんが結婚するのに母方の祖父や祖母は猛反対し、半ば駆け落ち。家族仲に亀裂が走った。

 

自分の伯母にあたり、母さんの姉は結構きつい人で……その娘である景子ねーさんはかなりグレていた時期がある。

 

 

「家でダラダラってとこ詳しく」

 

「そうですね。外だとスーツで割とカチってしてるんですが、家に来ると、スーツ投げ捨ててシャツとタイツでゴロゴロして母さんによく注意されてましたね」

 

 

景子ねーさんは景子ねーさんの実家よりもうちに入り浸っていることが多かった。もはや住んでいたと言ってもいい。

 

大体うちに帰ってきていたし、そうじゃない日は仲の良い友人の家に行っていた。何日かに一回は自分の寝床をとられていたし困ったものだ。自分の布団を出せばいいのに……。

 

 

「ぷくくっ……いえ、私生活と仕事を分けるのは大事ですよ」

 

 

笑っている大川さん、よくわからない反応である。言われたこともかなりテキトーな気がする。

 

大川さんは話上手で野球のこととか、なんでこっちにいるのかと聞かれて……なんとなくこちらも彼女について聞く。

 

彼女は看護師になってまだ日は浅いそうだ。親切に案内してもらって、髪ゴムの黒色10個入りは無事に買えた。

 

 

「助かりました。ありがとうございます」

 

「他に何かお母様に言われたことはありますか?」

 

「食堂で何か食べるか、売店でなにか買って屋上とかで食べるように言われてるぐらいです」

 

 

検査の時間とかよくわからないし、早く終わるようなら起きている母さんと話してから家に帰るが、帰ってこない母さんを待って女性ばかりの四人部屋に居座るのも居心地が悪い。

 

時間を潰す必要がある。

 

 

「なるほど、じゃあおねーさんとどっか食べに行く?」

 

「えっ……」

 

「くくくっ、警戒しないでいーよ。ほらこれ見て」

 

 

くつくつと笑いをこらえながらスマホを見せてくる大川さん。

 

自分に対してやけに親しげだったし、今の態度で不審者かと思ったが納得した。

 

スマホには景子ねーさんとの親しげなツーショットがいくつもあったからだ。

 

 

「景子ねーさんとの関係は?」

 

「私大河先輩の後輩なんです。仲良くなったのは名前繋がりで」

 

「おぉ……田舎社会…………」

 

 

家から一番近い総合病院だし、そういうこともあるか…………。

 

というわけで外に食べに行った。車で連れて行かれたのはスイーツパラダイス食べ放題。

 

 

「いや~、一人じゃ入りにくかったけどちょうどいいかなって。めっちゃ食べるって有名だしね。あ、私の奢りだから遠慮しないでね」

 

 

この後、時間いっぱい食べ続けた。

 

スイーツパラダイスのはずが、ピザやカレー、オムライスのような洋食も食べ放題だった。大川さんは食べ物や自分の写真をかなりの数撮っていた。

 

 

 

…………この日、どこかのOLが一人、後輩から突然送られてきた写真でコーヒーを噴いたそうだ。

 




田舎で初対面の人と話してみると、親や親族と何かしらの関係がある場合があったり。

良かったら評価や感想もらえるとうれしーです!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。