TASでカンストした次の人生。   作:mono-zo

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22話 祖父が来た。

 

しばらく実家にいることにはなったが、やることもない。

 

練習も禁止だし、かといって中学は卒業して学校に行く必要もない。

 

 

家に帰って、まず掃除した。

 

 

景子ねーさんはコンビニ弁当で済ませているようで、ゴミが溜まっていた。

 

そして俺の布団は完全に占領されていた。なぜ自分の布団ではなく景子ねーさん用兼任客用布団で寝ないといけないのか……。

 

広いアパートでもないし掃除はすぐに終わった。

 

 

「暇だな……買い物でも行くか」

 

 

冷蔵庫の中身は空っぽというわけではないけどまともな食材がない。

 

お世話になった人もいるし……余ったリストバンドを紙袋に入れて商店街に向かう。

 

 

「なんだこれ……壊していいかな」

 

 

ほんのり寂れた商店街……だったはずが、前に来たときよりもなんだか活気がある。

 

そして見覚えのありすぎるものが設置されていた。

 

自分の等身大パネルだ。ドラゴンナイツのユニフォームを着ている自分。……等身大パネルの方が若干大きいな。

 

スマホをもらってから動画を見ると自分のことが話題にはなっていたけど……それは最年少投手とかアンダースローにサイドスロー最速記録という部分であって「地元が盛り上がっている」とか初耳なんだが。

 

毎日鏡で見る自分の顔がそのままのパネル、壊したいけど……まぁいいや、壊していいか確認してからにしよう。持って帰るにしても邪魔そうだし。

 

 

「お、健人ちゃん!休養ってこっちでだったんだね!」

 

「大したことないのに2週間も休めって言われちゃってさー。おっちゃん、あのパネル壊して良い?」

 

 

パネルの前で足を止めていると肉屋のおっちゃんが出てきた。

 

何度も買い物して話してきたし、知った仲だ。

 

 

「ははは!だめだな!あれのお陰で商店街は盛り上がってんだから!サービスするよ!何が欲しい?」

 

「いつもの豚肩500グラムで」

 

「あいよ!」

 

 

大型スーパーの方が若干安いけど家から遠い。

 

朝から夜まで働く母さんの手助けを少しでもしようとお使いを買って出て、遠くの大型スーパーまで行こうとしたけど危ないからと商店街に行くように言われた。

 

田舎のネットワークというものは恐ろしく、借金残して消えたゴミパパの悪評もあって初めは警戒されていたものの……足繁く通っているうちにおまけがどんどん増えてきた。

 

大根一本買ったらもう一本もらえたり、商店街繋がりで伝手が出来て農作業の手伝いをやって市場に出せない野菜をもらえるようになったり、腰を痛めた市場の人の手伝いとかやってると色々もらえるようになったりと……この商店街のおかげで我が家の台所事情的に大いに助かった。

 

肉屋、魚屋、八百屋と顔を出してリストバンドを渡し、サインを書いて、いつもの安い食材を買って……買った分の何倍ものおまけが付いてくる。

 

なぜか帰りには食材で一杯になった登山用リュックにクーラーバッグまで渡されて帰ることになった。休養中だし出歩くのはよくないだろうと電話すれば食材の配達までしてくれるそうなので電話番号を肉屋のおっさんと交換した。なお、等身大パネルはどれも壊しちゃだめだった。

 

 

「車で送ろうか?すごい荷物だし」

 

「店閉めちゃだめでしょ。これぐらい軽いし歩いて帰るよ」

 

「だな!気をつけるんだぞ!!」

 

「子供扱いすんなって……まぁ、あんがと」

 

「おう!」

 

 

しかし、家に帰ってもやることもない。

 

中学の頃だったらいつもなら釣りに行くか農作業の手伝いに行くかだった。市場か商店街で具合の悪い人がいれば手伝いをしたり……でも、やることもないしどうしたもんか。

 

冷蔵庫は一杯になり、ちょっと外装に傷のついた貰い物のクーラーバッグに食材を詰め直していく。

 

 

それも終わって、しばらくゴロゴロしていると……電話が入った。知らない番号だった。

 

 

「もしもし?」

 

「……大河健人君の電話でしょうか?」

 

 

年を取った男性の声だった。

 

このスマホは景子ねーさんに渡されたものだし、景子ねーさん、母さん、球団関係者、大川さんしか知らないはず。あとさっき番号交換した肉屋のおっちゃん。

 

ということは球団関係者かな。

 

 

「はい、どちらさん?」

 

「初めまして、岡野則俊という……健人君からすれば父方の祖父に当たる」

 

「…………はい??」

 

 

――――予想外すぎる。

 

初めて話したぞ父方の祖父。母方の祖父は会ったことあるけど、父方の祖父はろくでなしゴミパパの父親だし、生きているかも知らなかったんだけど

 

 

「電話を切らずに聞いてほしい。安全のためにも」

 

「電話番号どうやって知ったの?」

 

「商店街の浩二に聞いた。緊急だったから許してやってほしい」

 

 

浩二……肉屋のおっちゃんの名前か。

 

スマホの機能で番号交換したけどそんな名前が登録されたはず。しかし、電話の相手は会ったこともない我が祖父らしい。そしてなにやら緊急らしい。

 

聞いてみると、借金を残して逃げたゴミパパが野球選手である息子の存在を知り、金をたかりに来る可能性を聞いたそうだ。

 

じーさんとゴミパパは仲が悪く、度重なる悪行に何度何度も各所に頭を下げに行き、最後は大喧嘩して縁を切ったそうだ。

 

 

そして縁を切って――――その後に自分が生まれた。

 

 

母さんや孫の存在は知らなかったそうだけどじーさんはテレビで山口出身の最年少プロ野球選手の存在を知った。なんとなく山口出身の選手頑張れと応援していたそうだ。

 

昔の友人である肉屋の浩二さんから電話が入り、ついさっき孫の存在や身重で捨てられた母親に借金を残して逃げたゴミパパの事情など知ったそうだ。

 

そして、浩二さんからの情報によるとゴミパパは近頃近隣の病院や商店街をウロついていることもあるそうで……もしかしたら自分や母親を見つけてまた良からぬことをしようとしている可能性があると連絡をもらい、緊急で来たそうだ。

 

 

そう――――「来た」のだ。

 

 

「じーさん?」

 

「孫……でいいのか?」

 

「多分?」

 

 

お互い何を話せばいいかわからない。

 

 

「…………」

「…………」

 

 

とりあえず、お茶でもてなした。

 




なんだか総合評価が9倍ぐらいになっててびっくり。
ありがとうございます。
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