「どっかに良い選手いない?」
「うちみたいな弱い球団にはきたがらないって」
「俺等の首も危ういってのに……」
うちの球団はとてもよろしくない状況だ。
なにせ金が無い。
10年前まではたしかに強かったが母体となる企業が統廃合を失敗しさらにオーナーが金目的に球団を売り、野球に興味のないボスとなってそこから数年後に更に身売り。
創業者一族がまたオーナーに返り咲いたのは良いものの、立て直そうにもなかなかうまくいっていない。
「選手の獲得がなぁ」
「この条件、マイヤーズはどうだ?」
「ワシントンが持っていくってよ。奴の爺さんはワシントンでゴールデン・グローブとってたからな」
マイヤーズは良いと思ったんだが……少々安くてもそっちで契約するか。いや、うちよりかは高値での契約になるだろう。
どっかに無名で契約金が安くて強い選手とかいねぇかな。
「そりゃ爺様も鼻高々だろうな」
「ケントはどうだ?」
「大学でまだ投げるってよ」
「違う、話題の方のケントだよ」
「話題って……あぁ、ケント・タイガーな。契約金が足りないだろ」
16歳167センチ58キロ、打率6割9分、OPSは2.64。
投手としても1シーズンに8回のパーフェクトゲーム、143試合中98試合に出て防御率0.348。投球フォームごとに変化球をもち、アンダースロー世界最速の159キロを記録した怪物だ。
正しくはケント・タイガらしいが、なぜか「タイガー」と「クソガキ」、そして「お子様」と言われている。
本人の言動や素行に難はあるそうだけど……数字を見ればとんでもない逸材だ。
「そこはほら、創業者パワーで」
「えぇ……」
日本の兵庫ドラゴンナイツと我がマイアミロイヤルナイツは姉妹球団だ。
姉妹って意味不明だが、要は同じような名前で経済パートナーとなったことでお互いにプラスになるようにって試みで…………そう言えば今のオーナーがいた10数年前に決まったはず。
十年前なら日本からの観客を割安で呼んだりもしていたが……オーナーの移り変わりで日本人が見に来る日本人選手の採用もなくなったから付き合いは浅い。
むしろオーナーが変わったとは言ってもうちが不義理を働いていたはず。
「とは言えうちは弱いし、来てくれるかって考えると難しいだろうな」
「そこはオーナー任せで。駄目なら駄目でオーナーが忙しくしてれば俺らの耳の休暇になるだろ」
「確かにな」
GMは無理ばかり言う。良い選手は良いと評価がされるだけの価値があるのだ。
安く、それでいていい選手を見つけろと喚かれても限界がある。
まぁ発掘されていない原石を探すのも俺等の仕事か。
そもそも修復中のうちに呼ぶ前にまずはマイナーで様子見となるけど……。
あー戻ってきたオーナー、事業整理はいいけどこっちにも金流してくれないかな。出来ることに限りがあるっての。
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そうしてオーナーが小柄な少年とビデオ通話をしてきた。
どこかの船の上みたいだな……いや、それより一緒にいる少年だ。
毎日テレビかスマホで見るようになった子供だ。太ったオーナーと比べるとより細く見える。
……何をどうやったのかオーナーは日本のドラゴンナイツからケントを連れてきているらしい。それも訴訟対策か小冊子はありそうな契約書付きで。
「あれ?言ってなかったかな。ドラゴンナイツの伊賀は僕とはブラザーだからね」
「どんなご関係で?」
「大学の同期。それで同室だった」
豪運っ!!?
「話してみたら彼を気に入ってね。借金してでも、赤字になってもケントを雇うと決めた」
「あの、となれば予定された若手枠を大きく調整することになりますが……」
「ははは!かまわん。やれ」
「…………………………はい」
クソったれがぁぁ!!!??
風邪は引いたものの、連続更新してるのを急にやめるのもなんだか胸がざわついてしまうので書いてしまう。
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