TASでカンストした次の人生。   作:mono-zo

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38話 電話!

 

息がしにくい。

 

走って走って、限界まで走って、それでも監督している鬼人どもは許してくれない。

 

自分もなぜこんなことをやっているのかわからない。

 

普通の野球選手はピッチャーかバッターに専念して、それも片方の打ち方、一つのフォームで戦う。全部できるまで満足しなかった前世。

 

 

なんでこんなに……苦しまないといけないんだ。

 

 

全身あらぬ方向に曲げられて、脱臼の範囲だろうにそれをストレッチなどと言い張られる。

 

動いてはいけないのに体の芯の痛みでビクつく。酸素が足りなくて、でも吸うことが出来ない。

 

動かせない体勢のまま岩が投げられ――――

 

 

「はぁっ……はぁっ……」

 

 

夢だ。

 

幼い頃はよく見ていた。最近見ることもなかったのに。

 

ペットボトルの水を飲んでベランダに出る。

 

12月も終わりなのに、日本の夏よりもそれなりに風もあって涼しい。

 

スマホで時間を確認すると……4時前か。時差は13時間だし、日本は17時前……母さんに電話をかけてみる。

 

 

「もしもし、また悪い夢見たんでしょ」

 

 

2コール目には出た。そして当てられた。

 

検査か寝ているかの可能性もあると思ったけど出るのが早い。というよりなんで起きた原因がわかったんだ?

 

 

「いや、まぁそうなんだけど。なんで分かるのさ」

 

「母親だから」

 

「えぇ……いや、まぁいいや体調はどう?」

 

「もう働かせてほしいわ。落ち着かないったらないし」

 

 

母さんの体調は安定した。

 

自分とじーさんによってお金の心配もなくなったし、うつ症状も心臓以外の臓器の数値も安定した。

 

後は不整脈だけど、それも確実に倒れるほどではない。

 

その状態で働いている人もいるため母さんは退院して働きたいと言っているようだが皆で止めている。本人は休んでいてもこれ以上治療の効果も感じられなくなったから手術でもさせてくれ、もしくはもういいから働かせてくれと言ってくる。

 

気持ちはわからないでもないけど、まだ若いし健康に治る可能性が僅かにでもあるなら休んでもらいたい。

 

本人も今休めば治る確率もあるとわかっているので説得すると渋々病院にいてくれる。

 

 

「むしろ、あんたこそ大丈夫なの?めちゃくちゃ食べてるじゃない」

 

「食べ物が美味しくて……なんで知ってるのさ」

 

「景子ちゃんが入れてる健康管理アプリ、こっちに来るのよ。見事な食べっぷりと言うか…………あまり食べさせてやれずにごめんね」

 

 

あのアプリにそんな機能が……結構色々食べてるし、いや、差し入れされたお菓子とかはカウントされてないはず。

 

それよりも……

 

「母さんが謝ることじゃないよ。仕方ないって、俺人一倍食べるだけだから」

 

「一倍どころじゃないでしょうに……健康には気をつけるのよ」

 

「わかってるって。むしろ母さんのほうが今は心配だよ」

 

「くっ、人のこと言える立場じゃないわね。そっちは深夜でしょ。寝れる時に寝ちゃいなさい」

 

「わかった。おやすみ」

 

「おやすみ、電話ありがとね」

 

 

二度寝した。……今度は悪夢を見なかった。

 




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