カリビアンシリーズ、決勝で負けた。
腕のぶっといキューバの打撃力は半端じゃなかった。
自分は50球の間失点はなかった。それでもチームが負ければ負けは負け。
結果はキューバが1位、2位がドミニカ、3位がメキシコとなった。
勝てなかった。でも結果は結果だ。ルールの中でベストを尽くした結果がこれだ。受け入れる。受け入れないといけない。
…………いや、やっぱ悔しい。
結果は受け入れる。
受け入れるにしても悔しいし、後悔も反省もどんどんわいてくる。あの時自分が抑えられれば、あの時自分が打てれば……試合展開が変えられたんじゃないか?そう、モヤモヤしてしまう。
「ここまで来れたのもティグレのおかげだ!ありがとうな!」
「んー!我らが勝利のティグレ!一緒にプレーできて楽しかったぜ!」
「ロドリー、ダネル、マルチネス、マイコル。わかった!わかったから!暑苦しい!」
何のノリかはわからないが、自分の体は団子になったチームメイト共にハグされてチームメイトにポイポイ受け渡されて行く。
子供にやるたかいたかいである。足がつかずにプラプラ持ち上げられ優勝カップのような扱いをされて思わずジト目にもなってしまう。
気の弱いマイコルに渡され、じっと目を見ると降ろしてくれた。
「いつでもドミニカに来い」
「母親も一緒でいいぞ!」
「むしろ住め」
「ティグレの母親って美人だったりするか?」
「日本人はいつまでも若いからな。ティグレなんて小学生ぐらいに見えるし」
「だな。美人な女性は大歓迎だぜ」
「 ゴ ル ァ ー !! 」
「「「ははははは」」」
英語ができる数人で俺にわかるようにクソなことを言ってくる。
この陽気なアホどもには悔しさとかそういう雰囲気はなく、むしろ「ここまでやり遂げた」という気持ちが見える。勝負に負けても……そういうものなのか?
悩む時間など無く、直ぐに迎えが来た。
カリビアンシリーズの終わる時期、それはメジャーのキャンプの開始時期と被る。
マイアミロイヤルナイツのキャンプは始まったところであり、それに参加する必要がある。
しきたりと言うか通過儀礼としてまずはマイナー契約なんだから行くのはマイアミジャックスじゃないかとも疑念に思うのだが、マイアミロイヤルナイツとの契約が前提のマイナー契約だからマイアミロイヤルナイツのキャンプに行くのが正しいらしい。
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「オカリ、マッテタ」
「英語で話して」
白おじが真っ白なスーツにやけに白い歯で出迎えに来た。
白色が好きなのはわかったけど、やはり目立つ。
「日本語練習してるんだよ……んんっOK、カリビアンシリーズでは素晴らしい活躍だったね。まさかシカゴのオリバーを4打席も抑えるなんて驚いたよ、肩は大丈夫かい?」
「すぐにでも投げたい」
「良いね。行こう」
キャンプに行くと選手がゆるく投げたりストレッチしていた。
キャンプの始まりと言えばまずはメディカルチェックだ。健康状態に問題がないか、また関節の可動域についてなど調べられる。
自分の場合、メジャー昇格は予定していたし、あの飛行機による体調悪化だ。既に徹底的に調べられた後である。
関節の可動域チェックなんていつでも出来るけど精密検査は済んでいる。
「4キロも太っちまった」
「俺むしろ痩せたわ」
「良いな。年取ると肉が落ちねぇ」
「サウナ行けサウナ」
「スポンサーのシューズがまだ慣れねぇ。でもかっこよくね?」
「良いね」
「だっる。まだ動けねぇよ」
「寝ぼけてんじゃねぇよ」
「まーた肩が固くなっちまった。ほぐすの手伝ってくれー」
「おーう」
メディカルチェックの後はトレーナーと調子の確認なんかをしていく。
怪我の具合を聞かれ、スイングの確認や新たな道具のチェックをしたりとゆるくもありながらプロの調整を感じる。
これからシーズンを戦っていくのに体を整えていく……この空気は嫌いじゃない。
そこに白おじと自分が入った。
「はっはっは、みんなその場でいいから聞いてくれ!やっと皆に紹介できるね。ケント・タイガーだ!ウィンターリーグで投げてたから知ってる人も多いとは思うが……私が日本から連れてきた。よろしくしてやってくれ!」
「健人 大河です」
タイガーではなく大河だ。しかし白おじめ……この扱いはちょっと問題があると見た。
わざわざ球団のオーナーが紹介する。一選手にすることじゃない。つまりはなにか問題が起きそうだから先手を取ったとみた。
新しいチームメイトから期待した視線が向けられるが、いつも通り懐疑的な視線を感じる。何人かから嫌悪感も向けられている?自分を見てつばを吐いたやつもいるな。
やはり自分には一目で納得できるだけの威圧感が足りない。まず身長、そして体重と筋肉とヒゲもあれば良いかもしれない。それに十字傷とか。
「まぁ投げてみてくれ」
「おっけ」
「誰か受けてやってくれー」
投げることで評価を変えることができただろうか。
参加は数日遅れてしまったがいつものように投げることが出来たし、戦力としては認められたはず。
サイドスロー161キロ、アンダースロー160キロ、ワインドアップ163キロ。言われるがままに指定されたコースに指定された変化球で投げ込んでいくが、途中問題が起きた。
「捕れるかこんなもん!?いってーな?!」
キャッチャーがカットボールで怪我したようだ。
なんでもとってくれるダネルと同じ感覚で投げてしまった。
「えぇ……」
とりあえずいなくてもいいし、いないならいないで都合の良いナックルボールも投げた。……156キロか。
自分でもなんでこんなに球速が落ちないのか、変化がとんでもないのか不思議だが……まぁ出来るもんは出来る。152-158キロで安定しているけど、どこに飛ぶかわからないし使えない秘密兵器である。
白おじは上機嫌だが周りのスカウトらしき人が白おじにこそこそなにか言っているようだ。少し気になったけど……自分の仕事は出来たはずだ。
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(/>ω<)/ガンバルヨー✨️