ベンチコーチとタイラーとは一対一でOHANASHIしたいところだけど、とりあえず原因がわかってスッキリした。
そんなところで……移動が決まった。
「……やりすぎじゃない?」
「はっはっは!存分にこき使ってくれたまえ」
デカいキャンピングカーに大きめの車が数台、それに運転手やスタッフが用意されている。
アメリカの野球は全米を移動する。
同じチームと連続で2-4戦するがホームでの試合が続いたし次は別の球団に出向くことになる。
ある程度は選手への負担が少ないようにロードトリップがスケジューリングはされている。西で戦い、次に東で戦い、その次は西ということがないように、西地区に行けばその地区で別のチームと数回戦ったりもする。ある程度の調整ではあって全ての球団、全ての選手が平等かつ確実に同じ負担だなんてことは絶対にないが……。
広大なアメリカで飛行機無しでの移動はまず時間が足りなさすぎる。
そのため白おじの部下がアメリカ中に車とスタッフを用意した。飛行機でも大変なのにそれを「車」だ。
つまりこれは――――「無茶をする」ということだ。
「うちは運送会社だからね。陸運がメインだが海運もやっている。…………まぁおかげで1度マイアミを手放すことになったのだけど」
「ん?」
「……陸路、大いに結構じゃないか!スケジュールはこちらで組むから存分に投げてくれたまえ!」
洗車仕立てなのか自慢のキャンピングカーを見せて自信気な白おじだけど……球団の空気を考えると魔王みたいに見えてきた。
「あー……わかった。わかったけどさウィリアム」
「シロオジでいいよ。チャーミングだし」
「……白おじ、色々やりすぎだよ」
「ありがとう」
歯をきらめかせてドヤ顔の白おじ……その顔面に鉄拳を入れたい。しないけど。
「褒めてねーよ、良い意味でも悪い意味でもだからな」
「??」
「まぁきっとそのうち分かるさ」
白おじは白おじなりに良かれと思って改革だろう。現状は自分に対してクソったれだけど、クレアに聞いた話を第三者視点で考えれば悪い話じゃない。
クレアの従兄弟であるマシューはマルコムベンチコーチの信頼を傘にきたクズで、タイラーの弟のスペンサーも遅刻に飲酒運転など、そのうち誰か殺しかねない人物だった。
現状は選手もスタッフもプロにあるまじきクソったれな態度だが、マイアミロイヤルナイツを10年以上支えたマルコムの存在もあるのだろう。
だから今白おじを責めて更に白おじが強引に動けば人間関係が更に悪化しかねない。
どちらにせよ……結果は後で白おじが身を以て分かるはずだ。
とにかく車は用意された。各リーグにキャンピングカーは1台、リーグとリーグの中間に3台、それに普通にごつめで早そうな車が何台かだ。
問題は移動距離が長過ぎることだけど……さーてどうなるか。
出発ってことでセレモニーも兼ねてマイアミの本拠地である東海岸用のキャンピングカーで出発するんだけど……乗りたくねぇ。
なんかナイツのロゴと自分の顔がデカデカとプリントされてて……地元の商店街のあれを優に超えてやがる。
まぁ仕方ないので乗る。ミラーさんに何人かのスタッフも一緒だ。
「豪華ねー」
「それより外のプリントを白おじとかにしよう」
「えー、今のままでも良いじゃない」
「ミラーさんは自分の顔がでかでかとプリントされた車に乗りたい?」
「絶対嫌、あと私のことはミラーさんじゃなくてクレアでいいよ。父さんと被るし」
「えー、まぁ慣れたらね」
正直チームの野郎ども相手には好き勝手言えるがミラーさんは女性だ。しかも自分はお世話になる立場……これは景子ねーさんに教育されたが丁寧に接する必要がある。
大川さんもそうだったけど、気軽には呼びにくい。
車内は広いけど、人はいるし落ち着かない。
ミラーさんは自分の2つ上の18歳で10年前から既にマイアミロイヤルナイツに出入りしていた球団で育ったそうだ。理由はベンチコーチが離婚と再婚を繰り返すから家に居にくかったためだそうだ。
彼女がついてきたのは安全面も考慮してほしいと相談した結果だったが、ボディガードを提案していたはずなのになぜか本人がきた。
「私がいればお父さんが何を考えてても大丈夫なはずだし、それに他の選手からも可愛がられてるから」
「球団での仕事は?」
「この仕事の方が面白そうだし志願したのよ。この広く美しいアメリカを楽しめるチャンスだしね!」
「……仕事してね」
「はぁ~い!」
「まぁいっか、これからよろしく」
車での移動はっじまっるよー!!