「ストライッ!!」
いきなり東海岸から西海岸まで行って投げている。
長時間の車移動は快適だった。
白おじの計画として「睡眠する時間」と「東海岸・西海岸・中区」では宣伝も兼ねたキャンピングカーを使う計画のようで、その他は結構速く、ゴツく、それでいて揺れの少ない車に乗り換えてかっ飛ばした。
乗り物酔いとかしないしクレアから貰った選手データを眺めて、景子ねーさんに深夜に電話して、あとは寝て……あっという間だった。
スタッフの頑張りに報いるためにも投げる。
陰気臭いキャッチャー共には悪いが、選手と違って話せるサポーターに一つ良い解決策を考えてもらえた。
「ストライッ!!」
それは「キャッチャーそれぞれの取りやすい球種から選んで投げる」ことだ。
スライダーを捕りやすいキャッチャーにはスライダーを、カーブを捕りやすいキャッチャーにはカーブを多めに投げる。
「ストライッ!!バッターアウッ!!」
打者の狙いから外して投げるが、フォームも球種も多いし選択肢はある。
無理な場合は仕方ないが、それでも負担が減れば交代は減るだろう。
そしてフィールドマネージャーに強請ってDHでも出してもらった。腕が鈍るって言ったら一発だった。
「ボール!」
歓声といつもの「オコサマー」と「クソガキー」が聞こえてくる。
相手ピッチャーを見ると「舐めてんのか、ガキが捻り潰してやる」と考えていることがすぐに分かった。
……一球目、顔面近くへのブラッシュボールだった。
投手の様子を見るに立ち上がりが悪いわけじゃなくて……わざとだな。
無視して見送る。
「ボール!!」
次もまたブラッシュボールのコース、相手はビビらせたいみたいだな。
当たらないコースだし……いや、後ろにのけぞるように避ける!!
「くそー」
「オコサマー」
「オコサマー!」
「クソガキー!」
それにしても応援か罵倒かわからんな。なんでどっちのチームからもこれが聞こえるんだよ……。
「マジで子どもだな。言われてんぞ」
野次が大きいしキャチャーがなにか呟いている。
これも無視する。後でインタビューされれば口で返すが今はその時じゃない。
次の球は……外角いっぱい、少し低めへの速球――――真芯で捉えた。
顔面や胸近くの玉を投げられると自然と体が危ないと判断して外角には手が出なくなるものだ。
だが、それを狙った。
こっちもピッチャーやってんだ。しかもそういうおちょくりボールは多様してる。狙いぐらいわかるっての!!
「ハッハー!!」
手応えはあったし、走る必要もない。ダネル仕込みのバットフリップを見せて悠々と走る。
高く飛んでいったボールは看板に当たったか、それか超えたか――――メジャーでの初打席は初ホームランである。
この日、3本ホームランを打った。
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勝負が終わって昨晩電話した景子ねーさんのためにサインを書く。
景子ねーさんは代理人として5000万円ほどの報酬を得たわけだけど、そこから住民税や所得税の申告がーとかアメリカでの申告ってどうやるのよーって頭を抱えているようだった。
副業OKの会社ではあるものの有給をギリギリまで使い切ったそうで職場で負担をかけてしまったそうだ。しかしじーさんが景子ねーさんの立場を強くするため、景子ねーさんの会社と景子ねーさんを窓口にして仕事の契約を申し込んだ。結果景子ねーさんは経理なのに営業成績が一位になったという。
それまで会社では極力バレないように頑張っていたそうだけど、テレビでふつーにエージェントをやっていたことがバレて職場内で謎の見られ方をしているのだとか。
なんだか大変そうだけどとりあえず景子ねーさんの会社の社長さんにサインをねだられたそうだ。
……ん、メッセも来てるな。
『飲んだ真那がゲロったけど真那がプロポーズしたみたいじゃない。相手にされなかったって嘆いてたけど軽く〆といたから。あの子結構チャラいし本気にしないでいい。あれが義理の妹になるとか断固拒否する』
大川さん……ドミニカまでお世話になってその後は野球で忙しい間にいつの間にか居なくなってたけど、うーむ。
酔っ払った状態だったし本気じゃなかったと思うんだけど、景子ねーさんにしめられたようだ。というか景子ねーさん。貴方は従兄弟であって実の姉じゃないんだが……。
しかしめっちゃ愚痴られたし、これは結構ヤバい状態であるとみた。早々に送らねば…………なんかお土産もつけておくか。
大川真那 看護師資格持ち
母親の病院の看護師をやっていた。大河景子の後輩。ミーハーな部分がある。
バッドフリップ
打った後にバットを華麗に投げるパフォーマンス。