西海岸でマイアミガーディアンズ、マイアミゴールデンズ、サンディエゴファーザーズを相手に10試合対戦した。
「オーナーに気に入られてるからって調子に乗りやがって」
「気に入られてるかは知らないけど、それだけの成績だからな」
「チッ」
そのうち7試合に出ているが、もうタイラーがうざい。
チームメイトもタイラーに一目置いているのがわかるし、気まずそうにする奴らとはホームランで祝うこともやめた。テレビもなにか言ってるが不仲説は当たっている。
いつも数人で話していて、自分を見かけるとコソコソ陰口をいう。一条と同じく廊下でつかりそうにくるも「小さくて見えなかった」などとほざく。紳士として「ボールも見逃すし、俺がもえなかったの?眼科か精神科に行ったほうが良いよ。ほら、座って、誰かスタッフさん呼んでー」と心配してみせた。
何を言われたか分からないのかしばらく固まっていたタイラーだったが、すぐにキレていた。
まぁ自分はタイラーを心配するスタッフを盾に笑顔でその場を去ったが……全面戦争開始である。遠慮なんかしない。
一応、タイラーはナイツのスター選手の1人だ。
身長187センチ、ごつい肉つきなのに俊敏でよく守る2塁種。打率は2割7部と低迷気味だがホームランを含む長打が多い。
メジャーは成績にはシビアだし、プレーには真面目だけど他は噛みついてくる。
守備練習では練習では考えられない重い球を取りにくいタイミングで投げてくる。投げてから声をかけてきたりと……ミスって当たれとでも思っているのだろうな。
ダネルが第二の吉村だったように、タイラーは一条セカンドと言える。
一条はピッチャーだったし、一緒にプレイすることはあまりなかったから問題ないけど、こいつは2塁手で距離が近い。後ろにいられるのは常に警戒する必要があって面倒だ。
バットを間違えたとか言って勝手に使われて一本折られたし、打撃中はグラブは使わないから踏まれて一つだめになってしまった。殴り合いなら負ける気はしないけど、道具を狙う陰湿なことよ。
この状況なのに何人かで笑って会話しているのも見かけるあたり人望もあるのだろう。
「なぁ、お前もそう思うだろ?おもしれーよな」
無視していたのにタイラーが声をかけてくる。怪しいし紳士的に返しておこう。
「聞いてなかったけど、なんも面白くねーよ。俺とお前との成績の差の話し?おもしれーおもしれー」
「あ゛っ!?」
「ジョークだよジョーク、イギリス人はジョークもわかんねぇか?」
「アジアのクソ猿が……!!」
「え?俺が猿に見えてんの?大丈夫?メガネがいるんじゃね?声聞こえてる?ウキーって聞こえてるぅ??」
「……ぶっ殺してやる」
「やめとけ!」
「流石に手を出すのは不味いって」
「あーやだやだ、カルシウム足りてないんじゃないぃ?」
取り巻きに止められているタイラー、軽くあしらってその場を去る。
喧嘩するのは構わないけど、自分から喧嘩してはいけない。相手が追ってくるように周囲に見せて、かつ正当防衛にしないといけない。
財布とスマホはクレアに預けることにしている。もしくは車。
まぁもっと怖いのがベンチコーチであるマルコムだ。
人から説明される人物像はともかく権力を持っている人間でかつ甥の暴走も少なからず擁護もしたことがあるそうだ。
クレアに聞いた話だけではまだ信用できない。
ただベンチコーチはフィールドマネージャーよりも選手と密接で関わる機会が多い。
フィールドマネージャーは監督として選手を使うこともあって選手から一線引いているが、ベンチコーチは作戦の説明に立案、相手の分析に選手の相談まで行う。
当然ピッチャーとしてもバッターとしても出ることもあって関わることも多いけど、親身さにもされず、かといって邪険にも扱われていない。
なにかしてくることもないし様子見だ。
嫌な雰囲気のチームだけど、ふと思った。
コイツラに対して俺が譲ったりしなくてもいいだろう。
投手としてメジャー初失点を自責点無しでしてしまったのには正直にクソったれがと大声で叫んでしまったが、自分を忘れず強く芯さえあればやっていけるはずだ。
うん、なんでメジャーで『リトルリーグホームラン』なんて起きるかな……。
いつの間にかUA20万に総合評価1万ありがとうございます!
なんか色々あったこともあっていつだったかわかりませんが嬉しいです!