タイラーと取り巻きのような嫌な連中は嫌な連中だけど、メジャー球団では選手のトレードが常に行われる。
そのうち新陳代謝でいなくなる。
それに「新参者の子供」が何を言ったところで潰される可能性があった。
だから証拠取りである。
音声は常にとっているが可能なら動画をスタッフに撮ってもらった。
スタッフはスマホやタブレットで選手のデータのチェックをする。そのためカメラはどこにでもある。
度重なる移動で何度も交代するスタッフ、彼等は球団の味方であり一選手の味方ではないが……状況を知ってる人は多かった。だからお願いしておいた。
証拠を取っておけば子どもの我儘ではなくなる。
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球団に関して泣き寝入りすることもなく自分なりに色々やってるうちにもう8月、そろそろ暑くなってきた。
我慢していれば良くなることもあるし、我慢したって良い方向に転ばないこともある。じーさんから送られてきた日本のビジネス本で学んだが、自分なりにやるしか無い。
自分なりには球団を良くしようとしてきたが……転機はいきなり訪れた。
アメリカでU18国際大会が行われるとのことだった。
学生の大会に自分が出るのかと思ったが始球式だけ出てほしいとのこと。
8月だしまだ普通に試合がある。
中区でミネソタトリニティとの試合の中日である。その日は確実に試合に出れないし、前後どちらかは出場が危ぶまれる。意味がわからなかった。しかも開催は東海岸のニューヨーク。
アメリカの始球式では野球界のレジェンドやポップスター、人気な歌手に財界の大物のような目立つ人間がやることが多いらしい。
ウィンターリーグで大暴れしてMVPをとったこともあるし、野球界で目立ったからこそのオファーだったらしい。白おじもうちの球団が目立つからとOKを出したようだ。マジで今シーズンの成績を気にしない動きである。成績は良くないけど。
U18国際大会は18歳以下の選手を対象としている。アンダー18なんだから18歳未満で17歳じゃないかとちょっと思ったがそういうものらしい。
自分も8月10日に誕生日だったし、17歳、一応出場は可能らしいが……メジャーのシーズン中だしそれはずるいと思う。
そして、会場のニューヨーク。
移動時間だけでもかなりだ。もう慣れたがクソ眠い中移動する。
そう言えばキャッチャーは誰かと思ったのだけど。
「ダネル!?」
「久しぶりティグレ」
なんかダネルがいた。眠気も吹っ飛んだ。
ドミニカで最後に見たときよりも健康そうな肌艶をしている。
カリビアンシリーズでダネルもキャッチャー部門で賞をとっていたしそういう組み合わせか。
開催側にも求められたので、全力全開のストレートを、ド真ん中に投げることにした。
何度か投球練習をしたが、いつもより肩が軽い気がする。
遠慮せず投げられるキャッチャーだ。ナイツのキャッチャーも段々と捕れるようにはなってきたがそれでもダネルや吉村とはレベルが違う。
ワインドアップ、全身全霊の力を込めて投げた。
――――……167キロ、自己ベストだ。
ダネルのグローブから良い音がした。たった一球だけど別れが恋しくなる。
ダネルと一緒に国際大会に出てくる子たちに挨拶して……なんか自分より年上もいるんだが??終わったらダネルはドミニカに帰るどころか、なんと一緒の車に乗った。空港まで乗るのか?
「サプラーイズ」
「は?」
「その顔が見たかった」
白おじからビデオ通話が入ったの出てみるとふざけたことを言い出した。
ダネルはナイツとメジャー契約契約していたらしい。他のスタッフは知っていた。
「サプライズよサプライズ。オーナーがサプライズだって隠してたのよ」
「何だ知らなかったのかティグレ。またよろしく」
怒ることでもないか。
ダネルの実力ならメジャーに来たっておかしくはない。
「嬉しいよ、マジで」
「それより成績不振ってニュースで見たけど、体調でも悪いのか?それとも日本で投げて、俺達と投げてのアメリカだし疲れが出てるのか?」
なんか一気に疲れた。
ダネルの心配はもっともだが――――
「ダネルがいなかったからだよ」
「??」
いや、ほんとにそう。
仕事で毎日上手くいかず、更に人間関係が悪ければストレスになる。
スタッフと白おじは味方でもチームメイトは微妙だったからな。
「……?ならこれで調子も良くなるだろ、テレレ飲むか?」
「飲む」
渡されたテレレを飲んで落ち着く。
いや落ち着けないな。またダネルと投げるのが楽しみ過ぎて。
ダネル キャッチャー。
ドミニカのウィンターリーグとカリビアンシリーズでキャッチャーをしていた。
明るい性格のムードメーカーで英語が話せてよく打つ。弱点は嫁と娘。
テレレ ドミニカよりも南、南米パラグアイの飲み物。
マテ茶に冷やしたフルーツジュースを混ぜたような健康ドリンク。