悪いことが続けば、良いことも続くこともある。そして……イレギュラーなことが起きることもある。
メジャーの球団ではトレードが常に行われる。
結果として不快な連中は徐々に減っていき……ついにタイラーも居なくなった。
そもそもボールを後ろに行かせないように本気で勝負するようになってから野手の守備自体が減った。
となればタイラーは「打率は悪いが長打があるといった選手」である。それなりの評価で他の球団に飛ばされた。証拠を提出したのも理由の一つかもしれない。
そしてもう一つ、フィールドマネージャーも解雇されることが決定した。
白おじの方針は「数年がかりでの球団の再生」だ。そのためゼネラルマネージャーもフィールドマネージャーもその方針で動いている。
なのに自分の使い方があまりにも酷い。
成績が悪くなるような「打たれる投げ方」を止めないし、選手間の不和をそのままにした。改善するような指示は何もしない。これは客観的に考えても「次の契約」が危ぶまれる采配だ。
となれば誰がフィールドマネージャーの立場に納まるかとなればベンチコーチのマルコムが最有力候補だけど、元々本人がやりたがっていない。
どうなるのかと思っていたのだけど、そんなタイミングでクレアに誘われてクレアの家で夕飯を食べることになった。
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ベンチコーチを始めて12年。
ロイヤルナイツではオーナーもフィールドマネージャーもすぐに交代する。だから彼らには信用がない。
長く続けて指導していくうちにいつの間にか頼りにされていた私だが……ついに解雇の危機に陥っている。
確かに私がケントを優遇して保護するのも手だった。しかしチームがどう動くかわからなかった。むしろ悪化の可能性もあった。
とはいえ16歳で入団したケントの境遇は良いものではなかったのは見てわかっていた。そして改善できる可能性があったのも私くらいだった。しかし……やはり考え直しても私が動けば結果が悪くなっていた可能性もある。
結果として……自分の立場はどうあれ、人間として謝罪するように娘に言われた。
謝罪したは良いけど、この体勢はかなりきつい。
「だからこの……クレア、足が痛くなってきた」
「駄目よパパ、それが日本の謝罪の姿勢だから」
「とにかく、私まで優遇して見せれば他の選手が自分たちの立場が危ういと考えて何をしでかすかわからなかった。……だから動かなかったんだ」
申し訳ない気持ちは確かにあった。
クレアによると彼は契約金のためマシューを放出した原因でもある。そのため私が彼を恨んでいる可能性があると考えていると言われ……そんなつもりはなかったが、私のそっけない態度はそう見えてもおかしくないと反省した。
慣れないスーツを着て、日本の謝罪方法……土下座で話をしているが、靴が悪くなりそうだし、膝が痛くて足の裏が痺れてきた。
「パパ、本音は?」
「選手とか球団の人間関係めんどくさいし、関わりたくない」
本心だ。
私はそれぞれの選手に助言したり育成することは得意だが、契約金だの怪我だの報復合戦で揉めている選手に介入したくない。
「ってことなの……パパは毎日毎日野球のことしか頭になくて、マイナーどころか高校に大学野球の選手のクセやフォームまで研究してて、だからアドバイスも上手いし、アドバイスをした選手からは感謝されて今のポジションになったんだけど、基本的に変人なの」
「なるほど?マシューという甥については?」
クレアの評価が「変人」となってるのには異議を唱えたいけど、自分でも変人と自覚している。
私の土下座に困惑しているケントにマシューについて聞かれた。
「マシューは、私が甘やかしすぎたからで、君を恨む気持ちなんて無い」
「わかりました」
マシューは私が名付けた私の愛する甥だ。ただ、可愛がりすぎて、悪さをしているなんて考えもしなかった。きっと他の選手にも迷惑をかけていたことだろう。
クレアは私に土下座させたが、ケントはクレアと私の行動にひいている。
謝っても許されないことだったはずなのに……土下座は効果的な謝罪方法だな。
「で、フィールドマネージャーはするの?」
投打の両方で彼を温存して出そうとしない。かといって別の方面では保護もしないフィールドマネージャーの運用にウィリアムオーナーは激怒している。結果、自分まで解雇されそうな状況だ。
チーム内の不和を起こしていたタイラーもトレードされたし……私も彼のためを思って無関心に接していたのに……いや、それもよくなかったか。しかもGMの手柄である。
チャンスが有るのならこのままベンチコーチには残りたいけど――――
「したくない。今とはやることが違う。選手のデータ分析こそ得意だが、指示を出すのは苦手なんだ。可能な限り出たくない」
「って言ってもよく出てるよね。それでそういう時の成績もいいよね?」
それはそう。フィールドマネージャーは主審の判定が不服だったりすると強く抗議するし、そうなれば退場もよくある。
弱小となったナイツではフィールドマネージャーの力で判定を覆せる。結果を出せるフィールドマネージャーが求められてきたし、その文体定回数は多い。
となれば仕方なーく自分が指示を執ることになる。それでそういう時は何故か指示がうまくいくことが多い。
「…………はい」
「じゃあ面倒なだけよねパパ」
「はい。面倒なことは人に任せたいです」
「じゃあやろっか?やらなきゃクビだってわかってるよね?選手へのいじめを知ってて黙ってたんだから。しかも16歳」
彼は17になったが?……いや、これ言ったら殴られかねんな。
「やります。クレアは誰の味方なんだ……」
「私は球団と選手の味方よ。パパの適性と再就職考えると……フィールドマネージャー、やってほしいなぁ」
「うまく出来る自信がない」
「みんなさ、何度も変わるフィールドマネージャーよりもパパのこと信頼してるから。パパが指導すれば打てるし打たれないってそれに」
「それに?」
「新しい仕事するにしても信用なしでまともに新しい職場でコミュニケーション取れるの?何度も離婚してるよね」
「――――……やります」
さて、一条にもタイラーにも意味はあったのか?そモゴー!モゴモゴモゴー!!(´・×・`)※ネタバレ防止自主規制!
コメントありがとうございます!僕も読んで楽しんでます!