「よぉクソガキ。大変だな」
「うっせ」
吉村に絡まれてた。
ピッチャーとしてキャッチャーとの触れ合いは多くなる。他のキャッチャーも絡んでくるが、とりわけ吉村はズイズイ絡んでくる。
他のキャッチャーに比べて打率はよくないものの肩が良く、明るい性格をしているおっさんだ。
「普段から生意気にしてるから出ちゃうんだよ。敬意もて敬意」
「説教はもういいって」
「それより練習しようぜ」
「だっる」
開幕戦前に練習でキャッチャー二人に怪我をさせたのだけど、物怖じせずに来る。
練習はダルいが、ボーナスのためである。
前世なら一流のピッチャーとキャッチャーなら視線だけで会話みたいに晩ごはんのメニューまで理解できていたし、捕球の失敗も珍しかったのだけど……こちらではそういうことはないらしい。
どのキャッチャーと試しても無理だったし……いや、お給料のためには頑張ろう。
まずは投球練習だ。パーンといい音がして吉村のミットにボールが入った。
「球はいいんだよなぁ。言動は生意気なのに」
「次、右角」
「おけ……ってお前から見てか?!」
なんとか捕球に成功した吉村。
狙ったところに投げるのは練習になる。
前世のようにナノ単位で投げることは出来ない。酷い時は2、3センチぐらいはズレてしまう。それにこちらがストライクと思えるコースに投げても審判次第でボール扱いだ。
四隅に投げることは確定で各種投球フォームと変化球で投げ込んでいく。
「なんでこんなに曲がるんだよ……」
「変化球だからな」
「変化球ってだけでこんな曲がるわけ無いだろ?!」
「変化球だからな」
「……」
軽口を叩きながらも投げ込む。
投げ込む場所は決まっているが、キャッチャーにとって変化球は捕球しやすい角度が違う。特に手元でストレートのスピードと軌道で目の前でギュインと曲がるカットボールとストライクゾーンをまたぐほどのスライダーとカーブはとりにくそうだ。
「バッターとしても成績残してんじゃねーか」
「まぁね」
「ピッチャーなのにな」
「ピッチャーも打つだろ」
「だな、おっと」
ただ、やはり捕れないときもあるようだ。
吉村が悪いわけじゃなく、他のキャッチャーでもこうなる。お前ら野球鬼人あたりに稽古をつけてもらえ。捕れなきゃ岩が投げつけられるぞ。
⚾⚾⚾⚾⚾⚾⚾⚾
「大河、付き合ってくれてありがとな」
「おう」
「そこは「こちらこそ」とかだろ……やっぱクソガキだな」
「うっせ」
笑っている吉村だが、人間が出来てるんだろうな。
年齢や先輩という立場関係なく、相手に「ありがとう」と言える。
他のキャッチャーなら怒りが表情に出ることもあるのに……変な奴だ。
ランニングやバッティングのような練習もあるけど、とりあえず球団は自分にピッチャーとして機能させたいらしい。
サインやバッターの情報、味方のクセなんかを教わる。……あと炎上対策。
正直バッターやる方が覚えることが少なくて楽なんだけどな。バッターよりもピッチャーとして売り込んだから仕方ないか。
よかったら感想や評価などよろしくお願いします!