怪獣と魔法少女が戦う世界に人型機動兵器を持ち込んだヤツ 作:⅔夜城
斬ッッ!!!
轟音と共に、空が裂ける。
青空に走った亀裂は淡い光を放ち、中から「それ」が飛び出してきた。
「Gyuoaaaaaaa‼︎‼︎‼︎‼︎」
降り立ったのは、紅い瞳に4つの腕と2つの足を持つ、巨大な黒い怪物。
ビルの高さにも匹敵するそれは、廃墟と化した街並みが広がる眼下を睥睨すると、口腔部を紅く光らせる。
……莫大なエネルギーが渦巻き、喉奥から解き放たれようとした、瞬間だった。
「ターゲット捕捉、撃て」
3本の蒼い光条が怪物の頭部を撃ち抜き、爆散させる。
爆発から少し遅れて雲上から降下してきたのは、3機編隊を組んだ灰色の人型機動兵器だ。
先の攻撃を行ったのは、蒼いバイザーを輝かせ、スラスター炎を灯す彼らである。
「目標頭部の爆砕に成功。だが依然生命反応あり」
『司令部了解。アイビス隊はそのまま現地対応を継続しろ。
「アイビス1、了解」
人類を「それ」等が襲ったのは突然だった。
既に惑星間航行を実現していた人類の母なる星……地球の空を割いて顕れた〈アグレッサー〉と名付けられた怪物達によって、人類は瞬く間に混乱と恐怖に叩き込まれることとなる。
通常のミサイルや砲弾は有効打になり得ず、極超音速ミサイルや電磁加速砲、さらに開発途上にあった加速粒子砲等でのみ撃破が可能なアグレッサー相手に、人類の既存の兵器体系では太刀打ち出来なかったからだ。
……対抗する兵器が必要だった。
顕現した場所へ速やかに急行し、アグレッサーの表皮を貫徹出来る武器を携行し、あらゆる場所での戦闘が可能で、一定の継戦能力を持ち、またあらゆる不測の事態に対応出来る兵器。
汎用機動兵器〈センチネル〉が生まれた。
人型の超硬フレームを軸として、アグレッサーの攻撃に耐えうる装甲と強力な火器を備えたセンチネルは、対アグレッサー戦の主役へと躍進を遂げる。
件のアイビス隊も、センチネルを扱う専門部隊の一つで、中でもトップクラスの腕を持つエース部隊であった。
◇
『スターグングニル到達まで5分』
『早くしてくれー、天から地を睨む大槍のくせして肝心な時に役にたたねぇな』
『仕方ないだろ、まだ発射計画は途中なんだ。それに5分で文句言ってたら発展途上地域とか未管理地域はどうなるんだ』
文句を言いつつ、彼らは自分たち目掛けて飛んでくる紅い光条を軽快な動きで躱し、お返しとばかりに手に持った加速粒子砲を撃ち放つ。
放たれた光条は今度はアグレッサーの胸部に突き刺さる、が、分厚い表皮に阻まれて有効打にはならない。
なお、この結果はアイビス隊にとっては
『あん?コイツ超重装型だったか?』
「いや、波形では機動弓兵型のはずだ」
『だけどアイツ今ビーム弾きやがったぞ』
その結果に怪訝な声をあげるアイビス隊。
警戒は続けながらも一時的に攻撃を中止し、目標の解析に移った。
3機で固まっていたところを分散し、スラスターの炎を靡かせながらアグレッサーの周囲を飛び回る。
対するアグレッサーは鬱陶しそうにしつつ時折口から紅い光条を放つが、容易に躱される結果に終わった。
しばしの後、スキャンが完了する。
-スキャン完了 目標胴体に変質を確認 表皮構造 超重装型と一致-
「胴体に変質…?」
怪訝な表情を浮かべ、モニターを凝視するアイビス1…〈ルカ・サザンクロス〉。
まだ20歳ながらアイビス隊の隊長を任される腕と判断能力、そして経験を有する彼ですら、今回の様な事例に遭遇したのは初めてであった。
「おいそっちはどうだ」
『隊長と同じだ。なんだって胴体だけ?』
『分からん。だがひとまず奴の胴体に攻撃しても無意味だってことは分かった』
「なら別の場所を撃つだけだな」
言い、自らの機体を駆動させてアグレッサーの背後に回り込むルカ。
速やかに粒子砲の標準を合わせた彼は、頭部と胴体の接続部を狙い撃つ。
—————爆発。
アグレッサーの体内を巡る
通常、アグレッサーの撃破には3つの手段が用いられる。
先ず最も早く到達したセンチネルがそのまま撃破。続いて到達した爆撃機や艦艇による大火力攻撃による撃破。そして、衛星軌道を周回するスターグングニルによる撃破だ。
アグレッサーの型にも左右されるが、大体はセンチネルによる直接撃破か、それが不可能であった場合にスターグングニルの軌道砲撃で葬られる事が多い。
「……ダメか」
……よって、
ただし、撃破することを諦めたからと言って攻撃を行わないわけではない。
「アイビス1より各機、奴の足を止めるぞ」
『『了解』』
短く応えたアイビス2、3は、進行を再開したアグレッサーの前方から、射撃を行いつつ急速接近。
腰からビームセイバーを抜き放つ。
『食らいやがれッ!』
『ハァッ!』
放たれる紅い光条を躱し近付いた2機は、アグレッサーの眼前で急上昇を行い、すれ違いざまに頭部へ巨大な裂傷を負わせることに成功した。
「Gyuaaaaaaa⁉︎⁉︎⁉︎」
先ほどまで発する口が破壊されていた分、巨大な悲鳴があたり一帯に響き渡る。
道路に放置されていた車が吹き飛び、建物に僅かに残されていたガラスも粉々に割れる大音響だ。
「よし……いや、ッマズイ」
一瞬笑みを浮かべたルカだったが、2機が与えた傷はアグレッサーの両目を潰していた————視界を失った巨大が暴走を開始するのを見て、焦りの声をあげる。
粒子砲でアグレッサーの足を撃ち、行動に一時的な制限をかける、と同時に、自らもビームセイバーを抜刀。
暴れ狂う巨体へ斬りかかった。
『おいバカあぶねぇぞ!』
「大丈夫だ!」
-スラスター全開-
光の軌跡が一瞬、長い帯の様になり、刹那、アグレッサーの胸部から紫の液体が大量に噴き出した。
振るわれた4本の腕全てを掻い潜っての斬撃。
それを見ていたアイビス2と3は思わず感嘆の声をあげ……
やや遅れて響く、絶叫。
全長50mを超える巨体が地面へ倒れ込み、動きが止まった。
「今だッ!!」
『了解、スターグングニル、発射』
痛みに悶えるアグレッサー。
そこへ畳み掛ける様に、天空から光の槍が降り注ぐ。
「———————ッッッ!!!!」
先ほどまでの爆発とは、比べ物にならない爆光。
センチネル数百機が束になってやっと同格になり得るエネルギー量の攻撃は、アグレッサーの巨体を焼き尽くし、その生命活動の停止へと。
……光が徐々に収まり、建物の陰に退避していたルカは機体を歩かせ、状況の確認に動く。
ある程度の距離にまで近づくと、黒焦げになって息絶えたアグレッサーの骸が横たわる様子が確認出来———
「何だあれ?」
もうもうと立ち昇る煙の中。
そこに、裂傷の様な穴が空いていた。
一見するとアグレッサーが出現する際の空間断裂にも見えたが、光を放つあちらとは違い、隙間は漆黒である。
ルカが異常に気づいたのは、裂傷まで30m程に近づいた時だった。
「ん?」
裂傷周辺の煙の挙動に違和感。まるで、吸い込まれているかの様な動き。
……嫌な予感がしたルカは離れようする。しかし動けず、
逆に、引っ張られ始めた、
「何だってんだ…!?」
『どうしたルカ!』
『隊長! そこを離れてください!』
「このッ……!!」
-警告 正体不明の空間断裂を探知 警告 正体不明の…-
アイビス2、3、そして機体のシステムが叫び、或いは警告を発する。なおルカは咄嗟の判断で、推力に優れる飛行形態に変形して離脱を図っていた。
だが、それでも徐々に機体は穴の方へと引き込まれていく。
「クソ…が…!!」
『ルカ!』
『司令部! アイビス1が正体不明の空間断裂に巻き込まれている!救助の可否を!』
『何だと…!? …クソ、ダメだ離れろ! お前らまで失う訳にはいかん!』
『しかし!』
「俺なら大丈夫だッ! だからすぐに離れろ! こんの——————」
『…隊…長…? 隊長!?』
『おいルカ!? 返事しろ!』
通信が途切れた事で、慌てて周囲を見回す2機。
しかし、ルカの痕跡はどこにも無く、あったのは、