怪獣と魔法少女が戦う世界に人型機動兵器を持ち込んだヤツ 作:⅔夜城
「謝りたい?」
「えぇ、初めて会った時、貴方に対して失礼な言動を繰り返したこと。その後も何回もあなたにとって不愉快な言動や行動をとったこと……」
言いながら、更衣室から出てくる赤雛さん。服装は元のモノに戻っている。
彼女はそのままこちらを真っ直ぐと見据えて、言った。
「本当に、ごめんなさい」
深く頭を下げる彼女に、思わず狼狽える。
無論、主題が分からないとかそう言うモノではなく、てっきり嫌われているものだと思っていたからだ。
それに、初めて会った時の言動に関しては謝罪を受け取っていたはずだ。だからこそ、ここまでしっかり謝る理由もピンとこない。
「……」
「あー…なんだ、人によって合う合わないはどうしてもあると思う。これで任務遂行に明確な支障が出た等あれば話は別だけど、そんな状況にはならなかった。だから謝罪は不要だ。ただまぁ…仲良くしてくれとまでは言わないけど、ある程度コミュニケーションが円滑に行えるようにしてくれると…その、助かる」
「分かったわ……ありがとう」
少し晴れやかになった顔で、彼女はそう答える。
メガネを通して見える紅い瞳からは、もう敵意など微塵も感じられなかった。
「……赤雛さんは…」
「要、で良いわ。そこまで年離れていないでしょう?」
「なら要さん」
「か、な、め」
「…要、は、どうして魔法少女になったんだ?」
謎に強い圧に押し切られつつも、俺は浮かんだ疑問を口にする。
この国では12歳以降に魔法に目覚めた人間は、先ず心身能力の測定と魔法少女という存在について、分かりやすくかつ事細かな説明がなされる。
その過程で、レイダーと戦う際の極めて凄惨な状況も伝えられるため、後に続く魔法少女になるかと言った希望で3分の2は希望しないを選択するらしい(そう言った子らは魔力封じの腕輪をつけて生活することになる)。
だから普通に気になったのだ。ただの好奇心によるものではあるが、話題には丁度良いだろう。
「私が魔法少女になった理由? そうね……姉の背を追いかけたかったから、かしらね」
「へぇ、お姉さんが居るのか。追いかけたかったからと言うことは、お姉さんも魔法少女なのか?」
「……居た、と言う方が正しいわ」
「……なるほど。悪い、嫌なことを」
「謝る必要はないわ、もう2年も前だし、何より———」
そう言い、じっとこちらに視線を向けてくる。
何かを視線だけで訴えられている?だが何を?
思い当たる事柄が浮かばず、俺は黙ってしまう。
「あなたのお陰で、乗り越えられたと言えるかもしれないわね」
「……えっ…と?」
「ふふっ…今はまだ分からなくて良いわ。でもいつか…必ず」
「あーー! 要ちゃんの服が元に戻ってるー!」
何かを言いかけた赤雛さんだったが、そこへ響いた橘さんの声が言葉を遮った。
視線を向けると、橘さんの手元にはいくつもの服が提げられており、それを見た赤雛さんの頰が引き攣る。
てかパッと見た感じ……5着以上ないかあれ?
まぁでも、着せ替え人形にされるのは赤雛さんである。少し申し訳ないが、俺は感想のボキャブラリーを脳内で予め列挙しておけば……
「要ちゃんが終わったら次はルカさんの服ですね!」
「えっ」
なにそれ聞いてない。
唐突に飛んできた矛先に、思考が一瞬エラーを起こす。幸い数秒で再起動は出来たが、状況は何一つ変わっていない。
「待て、服選びに付き合うとは言ったが、俺は着せ替え人形になる気はないぞ。第一、俺のは既に間に合ってる」
「良いじゃないですか。ルカさんの今着てる服も基地から支給された無難な…言葉を選ばず言うなら地味なものですし」
「だからって、そもそも俺はあまり外出するのが望ましくない人間だし…」
「あら?私の事は散々辱めたくせに、自分だけ逃れようと言うの?」
「なんでそうなる!?」
その後もなんとか回避しようと言葉を繰り出すが、数的不利は如何ともしがたく、連行が確定するのに時間はそうかからなかった。
数十分後。
「つ、疲れた……」
精神的に疲労が蓄積した。
単純な羞恥や年下の女性に服を選ばれる行為への違和感というか、忌避感のようなものもそうだが、何より周囲の視線が一番辛かった。
なぜなら、俺が連行されたのはメンズ服も売ってるとは言え、大体の商品は女性向けかつ、それなりに高い部類に入るであろう企業の店舗だったからだ。
それに、今の俺はメガネを掛けている状況。
普段の姿でさえ、元の世界では纏う雰囲気が暗いだの陰気っぽいだの言われていたんだ。そこへ原則として雰囲気が落ち着くメガネというパーツを加えたらどうなるか。
直接聞いていないため被害妄想と言われても反論は出来ないが、俺の主観では間違いなく店内にいた客は、俺のことを「なんでこんな地味野郎が女の子と」等、マイナスな印象を持って見ていた事だろう。
「うん、改めて見てもかなりマシになったわね」
「ですね!かなり印象は変わったと思います!」
「なら良いんだが……」
この2人からは概ね高評価のようだが、実際自分ではよく分かっていないのが現状だ。まぁでも、少なからず障壁は埋まったなら、それで良いか。
「じゃあ次はどこ行きましょうか?」
「そうね…少し早いけどお昼にする?」
「あ、そうしよっか!ルカさんもそれで良いです?」
「問題ない」
俺が答えると、橘さんは、わかりましたとだけ答え、携帯型液晶端末…スマートフォンと言ったか、で、何やら調べ物を始めた。
恐らく、付近にある飲食店か何かを探しているのだとは思うが……
「うん?」
ふと、ジェットエンジンの轟音に似た音がした気がして、空を見上げる。
すると、青空と真っ白な雲が交互に染める空を背景に、2本の黒鉄色の槍が上空を通過していくのが目に入った。
高度は3000m超。速度凡そ
一昨日だったかに資料に目を通したが、現在の横田基地は完全な航空自衛隊管理下に置かれていて、厚木、百里と並んで首都防空の要となっているはずだ。
「嫌な予感がする……」
「嫌な予感?」
「…いや、気にしないでくれ」
もし何か緊急事態があれば、即座に連絡が来るはず。今はまだ、口に出して空気を壊すべきではない。
…だが、念のため。
橘さんと赤雛さんに気取られぬよう、俺は手を背後に回して
「お、このお店今の時間からやってるって!」
「良いじゃない、行きましょう」
「……あぁ、そうだな」
◇
東京湾沖合200km
高度3200m
ルカ達が食事を取りに移動した、十数分後。
どこまでも続く青空を切り裂きながら飛行する2機の戦闘機があった。
『クーガー1よりクーガー2。目標は依然、速度
『クーガー2、
高速偵察機型に改修された〈RF-35AJ〉を駆る彼らの任務は、東京湾沖合に出現した国籍不明機への緊急対応……ではなく、〈正体不明飛行物体〉への接触及び監視であった。
魔法少女は決して万能で便利な戦力ではなく、展開には慎重な判断が求められる。仮に目標が別国家の軍用機だった場合に、要らぬ諍いを生む原因にもなりうるためだ。
だからこそ、目標の正体がレイダーか否かを確実に識別するための部隊が必要とされ、彼ら、クーガー隊はその任を全うする存在であった。
そして、彼らの任務はすぐに果たされる事となる。
『司令部、こちらクーガー1。目視及び赤外線映像にて確認完了。目標は30m級空翔型と思われる。直ちに魔法少女の出撃を要請。我々はこれより、後方からの監視任務へと移行する』
『…クーガー1、こちら司令部。駿河湾沖合に別の反応が出現した。直ちにそちらの対応へ回られたし。後詰めは既に上がっている』
『…クーガー1。了解』
通信を受け、レイダーの後方から離脱するクーガー隊。
……ここで彼らがミスを犯したとするならば、
だが、レイダーに対して戦闘機で至近まで接近するのは自殺行為である上、これまでなかったパターンであるため仕方が無かったとも言えよう。
腹部に、小型のレイダーが複数付属しているなどと。
本当はもうちょい魔法少女との関係性深めときたかったけど、作者のミリタリー欲が暴れ始めたのでここらで解放( ᐖ )