怪獣と魔法少女が戦う世界に人型機動兵器を持ち込んだヤツ 作:⅔夜城
『……せよ。繰り返す、直ちに指示に従い、我々に追従せよ。こちらは日本国航空自衛隊…』
『もう良いでしょう?撃墜しましょうよ』
『だが相手は日の丸を備えているんだぞ? 幾らこのご時世だからといって…』
うる…さい。
誰だ、耳元で言い合ってる奴らは。
いや、通信機から聞こえているのか? てか、あの後どうなったんだ? アイツらは?
痛む体を動かして、顔を上げる。
幸い計器類に異常はない。それに飛べてもいるから今すぐどうこうとはならないだろう。
だが、全天周モニターには大いに異常があった。
「はぁ…? なんだって海上なんか飛んでんだ俺」
空間異常でぶっ飛ばされたか、はたまた周りが海になってしまったか。どちらにしろ、俺が浮かんでいたのは意識を失う前とは遠くかけ離れていた、
それに……
『イーグル1より国籍不明機に告ぐ。直ちに武装を解除し、我々に追従せよ。こちらは日本国航空自衛隊である』
通信で警告を発しながら俺の斜め後ろを飛ぶ、2機の戦闘機。形から見て恐らくF-15…か?なんでそんな骨董品も超えた骨董品が?
……と言うか待て、航空自衛隊だと?
あり得ない。航空自衛隊は50年以上も前に解体されて国防空軍へと変わったはずだ。何故その存在しない組織の名前を、F-15が使っている?
……まさか。
「ッ…こちら日本国国防空軍所属、第22戦術戦闘隊アイビス1。航空自衛隊機へ、尋ねたいことがある。……今は西暦何年だ」
『日本語だと…? いやそれより、西暦…?』
「頼む、答えてくれたら直ちにそちらの指示に従う」
よし、これで仮説がハッキリするはず。仮に無視されて攻撃されても、F-15の武装で俺の機体、24式高機動戦機〈烈風〉に損傷を与えるのは困難だ。
出来ればそうならない事を願いたいが…
『……イーグル1より国籍不明機に告ぐ。我が国には国防軍もアイビス隊なる部隊も存在しない。正確な所属を明かされたし。なお、先の質問に答えると、現在は西暦2026年である』
やっぱり、か。どうやら俺は、何百年も前の日本に飛ばされてしまったらしい。
ともかく、今は誤解……と言うか敵対意思がない事を伝えなければ。
「航空自衛隊機へ告ぐ。こちらは日本国国防空軍所属、第22戦術戦闘隊アイビス1である。信じがたいだろうが、当機が存在していたのは西暦2328年だ。この世界からすれば、当機は未来から来た存在、と言うことになる。無論、こちらに敵対の意思は一切ない」
言いながら、俺は
『……イーグル1よりアイビス1。我々だけでは貴機の扱いを判断出来ない。よって、本土で調査を受けてもらうことになる。我々に追従せよ』
「アイビス1、了解」
ふぅ、どうにかなった。
にしても、まさか空間断裂に飲み込まれた先が過去の地球とは……絶対に面倒な事になるな。
特にこの時期は、世界中のあちこちで戦火が上がっていたはずだ。俺の存在が火種となって、この世界の日本に悪影響を与えなきゃ良いんだが。
だが、全く訳の分からない世界に飛ばされるよりはマシだな。
とりあえず今俺にできるのは、可能な限り世界に影響を与えない様に、未来へ帰ること。
俺が飛ばされてきた時点で元いた世界とは別軸になってるはずだから、絶対に何もしちゃいけないって訳じゃないけど……まぁ影響は少ない方が良いだろう。
「ま、そもそも帰れんのかって話ではあるが」
うん、口に出してみたら急に自信無くなってきたぞ。
この年代じゃ空間掌握や慣性制御はおろか、核融合発電も実現してないはず。となると、烈風の動力炉を使うことに—————
『イーグル2よりイーグル1!方位2-1-1に不明反応探知!!』
『何!?』
おっと、これはマズイか。ロシアや中国とかなら烈風は見られない方が良いだろうし、アメリカでもまぁ同じだ。なら俺は降下してさっさと隠れた方が……は?
-警告 アグレッサー3体 探知 識別 先遣飛翔型-
何で、この時代にコイツらが居る?
『イーグル1より司令部!〈レイダー〉だ!!位置は———』
通信機からイーグル1の叫びが響く。後ろを振り返ると、彼の僚機は既に俺の後ろを離れて攻撃態勢に入っていた。
ッ、呑気に眺めている場合じゃない。相手が先遣飛翔型でも、この時代の対空ミサイルの炸薬量では致命傷を負わせるのは困難だ。
ならば…!
「アイビス1、交戦を開始する」
『…法少女を…っておい!!勝手に動くな!』
「悪いが今はそれどころじゃない!」
イーグル1から咎める声が聞こえるが、意に介すことなく俺は機体を上昇。
スラスター全開。加速粒子砲、問題なし。…ッ太陽を背中に向かってくるのは同じか! だがんなもん…!
『な、何と言う上昇性能だ…』
「呆けてないでさっさと退避しろ!アンタらの性能じゃ狙われたら逃げられないぞ!」
『ッ! すまん…ッ! イーグル1、退避する!』
言い残し、機体を反転させるイーグル1。続けてイーグル2も攻撃態勢を解除して現空域から離脱する。
これで憂いは無くなった。なら手早く———!
-アイビス1 交戦-
真正面から突っ込んでくる、翼竜と鳥を足して2で割った様な見た目のアグレッサー。
「んのッ!」
すれ違いざまに、一体の先遣飛翔型へ粒子砲を叩き込む。
胴体に風穴が開いた先遣飛翔型は、途端に力を失い海へと落下していった。
「脆さも同じか、なら攻撃は…ッ!?」
刹那、俺の眼前を紅い光線が通過。
さっき戦った奴と比べればかなり細いが、破壊力はバカに出来ない。
「それにこの
飛行形態である烈風と同等か、少し上回る機敏さで俺の周囲を飛び回り、隙あらば攻撃を叩き込んでくる。
このままでは埒が開かない。
-変形機構作動 汎用形態-
人型に変わったことで烈風は飛行形態時の運動エネルギーを失い、空中に停滞する様な形となる。空中機動戦では不利ならば、俺の得意な戦法に付き合わせれば良い。
次に、飛来する攻撃をシールドで受け止める。専用の加工が施されてるコイツなら、この位で貫かれることは絶対ない。…損傷は無し。やれる。
そしてラスト。まるで攻撃を喰らったかの様に緩やかに落下だ。ここまでやれば、先遣飛翔型程度の相手なら騙されてくれる。
さぁ、来いよ。敵さんの動きが鈍ったぞ?
「「Gyuaaaaaa‼︎‼︎‼︎」」
もちろん、落下中も背中にシールドは構えたままだ。だが、先遣飛翔型は総じてそこまで頭が回らない。
加えて、アグレッサーはセンチネルを捕食対象と捉える性質がある。
……だからこの手は有効だ。
大口を開き、俺に直接襲い掛かろうとする先遣飛翔型。対する俺はシールドを前面に押し出して急降下、粒子砲を構え、2連射。
シールドに襲い掛かってる先遣飛翔型は、それに気付かない。
閃光。
粒子砲をまともに喰らった2体の先遣飛翔型は、最初に撃墜した奴と同様、海へと落下していく。
それを見送り、俺は念のため広域レーダーを起動して周囲を索敵……南に20km程に
さてと、これで脅威は去ったと言えるが、ある意味本番はここからだ。
「本土はどっちですかね…と」
◇
「あれは一体、何」
ルカが飛行形態で離脱した空域に、1人の金髪の少女が浮かんでいた、
名前は〈
出撃要請を受けて急行したところ、ロボットが戦っているのを目撃してしまい固まっていたのだった。
…ルカは勘違いしていたが、この世界は単なるパラレルワールドではない。
この世界は
魔法少女が存在することである。
そしてルカは、そんな世界でレイダーを撃破してしまった。彼がこの先どうなるかは、まだ誰も知らない。