怪獣と魔法少女が戦う世界に人型機動兵器を持ち込んだヤツ 作:⅔夜城
「俺が悪かった、だからその魔法?とやらを構えないでくれ」
「〜〜〜!!!///」
巨大な基地の廊下で、顔を赤らめて右手で魔法を構える魔法少女と、それを宥める
いや、押し倒したのは間違いなく俺の否だが、角からいきなり飛び出た君にも一定の過失は……ダメだ、全部言い訳になってしまう。
…………冷静になるためにも、一旦現在の状況を整理しよう。
まずあの後、俺は最寄りと思われる航空基地へと向かっていた。まぁ当然ながら、航空自衛隊の戦闘機が出迎えてくれたんだが……
-不明飛行物体探知-
…あぁ、自分でも信じられなかった。なにせ、航空基地へと誘導された俺の視界に、
俺の元いた世界で、センチネルの飛行機構を人間大にまで縮小する試みは何度も行われてきていた。けど、数年前から音沙汰がなかったのを考えると、頓挫したかでかい壁にぶつかったんだろう。
なのに、この世界ではそれが実現しているというのか?ってな。
ただ、驚いてばかりもいられないとさっさと基地に降下。
そして、大変だったのはここからだ。
機体から降りた俺は、予想に反して拘束されることはなく、逆に気味の悪いほど好待遇を受けることになった。先ほど空を飛んでいた奇妙な格好の少女たちが護衛兼監視に就いてだ。
少し歩かされた後、壁に見たこともない掛け軸などが飾られている豪勢な部屋に案内され、その場で待機していてくれと言われたんだが、まぁ部屋の中に1人残った奇妙な格好の少女が凄まじく警戒した目で俺を見てきていた。
そして正直聞くべきじゃないと思っていたんだが、あまりに軍事基地に似つかわしくない存在だったから、俺は聞いてしまったんだ。君たちは何者だ、と。
んで、返ってきた答えが……魔法少女。
思わずオウム返しに聞き返してしまうほど、予想の斜め上の答え。だが同時に納得もいった。もし彼女たちが創作物に出てくるような存在ならば、軍事基地に10代かそこらの少女がいても不思議じゃない。
加えて、実際に空を飛んでいるのをこの目で見たのも大きかったと思う。後に続いた詳しい説明も、案外すんなり受け入れられた。
この世界に於ける魔法少女は、通常の軍に代わってレイダー対処を専門とする女性達の事を指し、魔法と呼ばれる摩訶不思議な能力を行使して戦う。
ただ、年齢が20を超えると不思議とその能力が弱体化していき、30を超える頃には殆ど普通の人間と変わらない存在に戻るのだそうだ。
『まぁこの後必要な予備知識はこのくらいでしょうか』
『助かった、ありがとう』
『いえ、そこまで感謝されるものでは…』
答えてくれた魔法少女〈橘美桜〉さんへと礼を言い、俺は再び待機へと戻る。
数分待つと、この基地の司令官と急いで飛んできたらしい軍の高官が部屋に入ってきて、早速聴取が始まった。
最初に予想してた未来の世界云々に関する質問は、どうやら現場で何も無い空間から突如俺が現れた瞬間を
そして他の質問に関してだが、ここで下手に隠してもメリットが薄いし、何より信頼を欠いた結果、アグレッサーが存在する世界でバックアップを得られないのは致命的だ。
烈風がナノマシン修復や半無限の動力炉を備えていると言っても、一切の補給が無いままでアグレッサー共と戦うのはかなり厳しい。
そこまで考えた結果、俺は技術の根幹に関わる事柄は知らないと隠し通し、それ以外は全て答えた。
『先ず我々の聴取に応えてくれて感謝する。その上で、もし話が本当なら、君はレイダー…そちらの呼び名ではアグレッサーだったか。ともかく有効な火器を多数保持しているということになるんだが』
『そう認識してくれて構わない。アグレッサー撃滅は俺の最優先命令だ、限定的な技術開示も視野に入れられる』
『………そうか。当然のことだが、私たちは君の事を全く知らない。だが、君のアグレッサーに対する言葉、そして瞳に嘘は無さそうだ。ひとまず、君とあの人型兵器は我が国の特殊戦力群…まぁ魔法少女たちと同類に振り分ける事になるだろう。あとの処遇は追って伝える』
『ご配慮に感謝します』
『構わない、レイダーに対して敵対的かつ友好的というだけで、我々にとってはかけがえのない存在だからな』
……とまぁこんな感じで、聴取は終わった。
さて、現実に戻るとしよう。
「君は確か…橘さん、だったか?」
「そうです…なんて自分を押し倒した相手に言うと思いますか?」
「それはそう、だな…すまん」
「……はぁ…素直に謝られるとそれはそれでやりにくいんですけど」
じゃあどうしろと。
「まぁ…あなたを一瞬見失って焦った私にも否はありますし…すいません」
「あいや、だが君を押し倒してしまったのは事実だし———」
「蒸し返さないでもらって良いですか!?」
怒鳴られた。解せぬ。
…って言ってる場合じゃ無い。割と最悪なコミュニケーション方向へと話が転がっているのは事実だ。
早急に軌道修正をせねば。
「そのー…なんだ、いや、悪かった…本当に」
無理でした。
仕方ねぇだろこちとら碌に異性と会話した事ないんだから。
こんな時部下が居たらなぁ…なんて思うが、状況は結局変わらないままだ。
俺の監視役である彼女と円滑な関係を築くことは必須とも言えるのに、どうすれば。
「はぁーー……もう良いです。なんか怒ってるのもバカバカしく思えてきちゃいましたし」
「うっ…」
「とりあえず着いてきてください、基地を案内するので。さっきみたいにいきなり視界から消えないでくださいよ?」
「……了解だ」
促され、先導する彼女の後ろを着いていく。
さっきは俺が先行し、歩幅の差から距離が離れた結果、こちらが案内役が消えた事に気づきバックした瞬間に接触事故が起こった。
だが今度の彼女が先導する形ならば、事故は起こらないだろう。
などと思いながら、改めて廊下を見渡す。
「にしても、綺麗な廊下だな。手入れが行き届いているし、装飾が美しい」
「そうですか?」
「あぁ、俺の所属していた基地は一面鈍色か灰色でな。鈍色の場所は中々目に悪かったし、美的センスが終わってると思ってた。だけどこの基地はちゃんと兵士に対する考慮がなされてると感じる」
「はぁ…まぁかなりの予算が下りてるので…」
「なるほどな」
聞いた話によると、魔法少女は国をアグレッサーから守るだけじゃなく、アイドル的役割も果たしているらしい。だからこそ、彼女らが過ごす施設にも金がかけられているのだろう。
俺たちの扱いとは大違いだ。いや向こうは向こうで良いところもあったけどさ。
—————その後、橘さんに導かれるままここ〈厚木飛行場〉の見学をほとんどを周り終え、残すは学園棟なるものを残すのみとなった。
「ここが私たち魔法少女が通う学園棟です。普通の学生として過ごすのが難しいので、こうして基地に併設された場所に建ってます」
言われて見てみれば、純白の巨大な校舎が夕陽を浴びて紅く染まり、窓ガラスにその光を反射している様子が目に入る。
建物自体は四階建てだが、横幅と奥行きがかなりあるため、収容人数もそれなりに多そうだ。
「納得のいく対応だな。だが見たところ生徒が殆ど居ない様だが…」
「あー、今は関西の方で魔法少女達の祭典があって、それで大勢が出払ってるからですね」
「魔法少女達の祭典?」
「はい、端的に言うとファン投票と模擬戦を兼ねた行事ですね。アイドル部門とランキング部門で全国の魔法少女が集まって、一位を目指します。一位になれたら様々な報酬が貰えるのでみんな結構ガチですね」
「…そうなのか」
うーん、こうして聞くとどうしてもアイドル的役割の魔法少女と軍事的役割の魔法少女が同一なのに違和感が出るな。
倫理的にもそうだけど、簡単に死にかねない職業の人間をアイドルに起用するってのは、相当リスキーじゃないだろうか。
「あ、ちなみに模擬戦と言っても皆んな魔法出力は実戦と同じですよ。何せ私たち魔法少女は死なないので」
「へぇー……ん?ちょっと待った今なんて言った?」
「え?魔法出力は実戦と……あぁ、そう言えばサザンクロスさんの世界に魔法少女は居なかったんでしたね。えと、まず死なないって言うのも少し語弊があって……」
聞くところによると、魔法少女が死ぬのは〈マジックソウル〉と呼ばれる魂の片側? が破壊された場合だけらしい。ただし、本来の肉体が失われるのは事実なので、復帰には長い時間がかかるとのこと。
なら模擬戦でもダメじゃないかって思うが、普通に自分たちの火力に対して素が頑丈だから大丈夫だそうだ。
……だが、ここで1つ気になった事がある。俺が先ほど歩くペースが早まった理由に、廊下に張り出されたアグレッサー…レイダーの一覧があったんだが、その種類がほぼ例外なく元いた世界において、下級と称される種類ばかりだったんだ。
だからこそ魔法少女が対レイダー戦の主力になっているんだろうが、だとしても何故、この世界では強力な個体が殆ど出現していないのだろうか?