怪獣と魔法少女が戦う世界に人型機動兵器を持ち込んだヤツ 作:⅔夜城
「ごめんね〜…要ちゃん男嫌いなとこあるから…」
「いや、あれは完全に俺の落ち度だ。感情に任せて発言してしまった」
あの後、結局俺と赤雛さんはやや険悪な雰囲気のまま戻ることはなく、淡々と作戦通達が進み解散となった。ただ、橘さんがどうせならこのまま自己紹介がてら昼食を取ろうと提案してきたので、今は移動している真っ最中である。
今俺におっとりした口調で話しかけてきた目元を隠した少女……〈
「フンッ…」
「要ちゃんもそんな怒らなくても…」
「私は間違ったことを言ったつもりはないわ。若干煽り口調が入ったのは認めるし、謝罪もするけど、撤回はしないわよ」
「あはは…」
……前途多難だ。せめてこの後の食事で挽回できれば良いのだが。
◇
「着きました」
歩くこと数分。辿り着いた先は、やや古風なカフェだった。
厚木基地の中でもかなり外れの位置にあるため、他者の目をほとんど気にする事なく話ができるらしい。
橘さんに促されるまま中へと入り、席に着く。
俺と橘さんが隣り合い、日野原さん、灰室さん、赤雛さんが向かいの席だ。
「ご注文が決まりましたらお呼びください」
ウエイターが人数分の水とおしぼりをテーブルに置きつつ、チラリとこちらに視線を向けてくる。やはり、この様な場所で男は珍しいのだろうか。
「あ、一応もう決まってます。私と要ちゃんは……」
常連らしく早々に注文を始める魔法少女達。さてさて、俺はどうしようか。
彼女らが注文をするのを横目に、メニュー表を開いて吟味……ちょくちょく知らない料理があるな。
数百年で食事の形態も異なっているとは思っていたが、ここまで違うのは、俺の世界が料理という概念自体を軽視していたからだろうか。もちろん知っているものもあるけど。
「そちらのお客様は如何なされますか?」
「そうですね…このシーフードパスタというのをお願いします」
「かしこまりました」
パスタ…写真を見た限りだとなんらかの素材を麺状に加工した料理だとは思うが、果たしてどの様な料理なんだろうな。
注文を取り終えたウエイターが戻っていくと、橘さんがこちらを見ながら手を叩き、口を開いた。
「じゃ、自己紹介と行こっか。改めて私は橘美桜です。この厚木基地所属の魔法少女で、コトノハ隊の隊長もやらせてもらってます。で、こっちが…」
「灰室凛だ。貴方は少し興味深いと思ってる…よろしく。それから、僕は目つきが悪いから睨んでる様に見えることがあると思う。もし驚かしたら、ごめん」
小さく会釈しながら話す灰室さん。なるほど、初対面の時は睨まれてるわけじゃなかったのか。
「そして私が日野原悠。気軽に悠で良いわ〜」
「……赤雛要」
相変わらず柔らかい雰囲気で手を振ってくる日野原さんと、腕を組んだまま目を逸らす赤雛さん。……対照的すぎやしませんか。
まぁ良いや。
「俺はルカ・サザンクロス、知っての通り未来から来た。よろしく頼む。呼び方は特に気にしないけど、ルカが一番反応が早いと思う」
「ルカくんねぇ〜、分かったわ」
「…では、ルカさんで。その、改めてお話する際に聞こうと思ってたんですけど、ルカさんの乗ってきたあのロボット…いえ、
やや硬い面持ちでそんなことを聞いてくる橘さん。初手からなかなか答えにくい質問が飛んでくるとは、10代とは言え、部隊指揮官を務めるだけはあるということか。
「それ…僕も気になってる。戦ってる映像を見たけど、少なくとも新兵には見えなかった」
「私も気になるわぁ〜」
「………」
他の人も、か。
具体的な指標を出してもこっちの世界で通用するか分からないし…
「そうだな…強いの定義にもよるが、先ず俺は重型……この世界で言う50m級を10体以上単独で撃破してる」
「な」
「え!?」
「は?」
「っ!?」
「え、50m級を10回以上単独で…!?」
「あぁ、友軍や部下と共闘した回数も合わせれば50回は超えるだろうな」
俺の言葉に、唖然とする魔法少女達。
……この反応は確定か。やはりこの世界には、強力な個体が世界レベルで出現していない。
確かこの世界に最初にアグレッサー…レイダーが出現したのが15年前。そして、俺のいた世界でアグレッサーが最初に出現したのは30年前だ。年数にして、ちょうど2倍。
加えて、俺の世界では15年前から低脅威度アグレッサーの出現率が大幅に減っている。
果たしてこれは、偶然なのだろうか。
「あり得ない…50m級をそんな数…だって一体でも大変だったのに」
「でも…私達が魔法を使うまでに訓練が必要な様に、多分ルカも相当頑張ってる。そこに数百年の技術格差があったら、これも納得出来る」
「ちょっと予想外過ぎたかも〜…」
各々が自分の思考を整理するフェーズに入る。するとちょうど、ウエイターが料理をテーブルに持ってきた。
俺の前に置かれたのは、写真で見た通りの料理だ。
麺状の炭水化物に、魚介類が多数載っているパスタ。さて、どんなものか……
初めて食べる料理に僅かに高揚しながら、口に運ぶ。…その瞬間だった。
音を立てて、赤雛さんが席から立ち上がる。
「……私は信じないわ。この目で見るまでは、絶対に」
「え?ちょっと要!?……行っちゃった」
橘さんが慌てて止めるが、それも叶わず彼女は店から出ていってしまう。
ふと視線を落とすと、彼女の前に置かれた料理は完食されており、その値段と一致しているだろう金額の紙幣がテーブルの上の置かれていた。
………食べるの早。
◇
食事を終えると、既に作戦準備は進んでいた様で、魔法少女達は基地の要員によって連れられていった。何かと準備があるらしい。
なお俺はその足で格納庫に向かい、回収されていたパイロットスーツを受け取って着用。
そして烈風の前でブリーフィングの招集を待っていると、背後から準備を終えたらしき橘さんに声をかけられた。
「これが…未来の…」
「第3世代センチネル。日本国神城重工製24式高機動戦機、烈風。パーソナルネームは〈南極星〉…俺の愛機だ」
「こうして見ると、意外と小さい?」
首を傾げながら言う橘さん。確かに、烈風はセンチネルの中では小型だろう。あくまで汎用性が最重点ではあるものの、その中でも機動性と生存性に振られている。この観点からなら小型の方が有利だ。
……橘さんは他のセンチネルを知らないのに何を言ってるんだか。
「まぁ12m級の機体だし飛行形態だから、F-15とか比べるとかなり小さく見えるかもね」
「なるほどです……ってぁぁ司令官がブリーフィングなので集まれだそうですっ」
「了解した」
その後のブリーフィングは概ね問題なく進んだ。大体が午前中に話されたものと同じ内容で、俺が主体となって敵に対応。コトノハ隊は上空で待機しつつ、必要に応じて援護、救援というものだ。
終始赤雛さんに睨まれていた気がするが、まさか上から撃ってくるなんて事はないだろう。
『厚木
「ハイド了解。2番滑走路に移動する」
操縦桿を操作して、指定されたコースに沿いつつ2番滑走路へと向かう。
垂直離陸で上がっても良かったんだが、烈風の吐き出すプラズマジェットの高音に滑走路が耐えられないと判断され、結局通常の空力航空機と同様の離陸手順が取られた。
『コトノハ1よりハイド。上からちゃんと見えてます』
「そうか。なら事故っても安心だな」
『そもそも事故を起こさないでください…』
その返に苦笑いしつつ、俺は滑走路に出る。
こっちが複雑な手順を踏んでいる間に、空へと上がっている彼女達。もし元の世界の軍が見たら、喉から手が出るほど欲しい存在かもしれんな。……さて。
「ハイドより厚木管制塔。離陸準備完了」
『了解。離陸を許可する。グッドラック』
管制塔からの言葉を背に受けつつ、俺はスロットルを上げ————大空へと舞い上がった。