怪獣と魔法少女が戦う世界に人型機動兵器を持ち込んだヤツ 作:⅔夜城
『〈エンジェルアイ〉より、コトノハ隊へ。間も無く目標付近よ。警戒して』
『了解』
小笠原諸島上空を通過した少し後、空中管制機……否、
半径200kmの空域を高性能レーダー染みた性能で監視出来るらしいが……本来の空中管制機より機動力が段違いな分、戦闘空域へと接近が可能なんだろう。
『哨戒機は既に撤収していますが、目標が現場に留まっているのは確定していますので、焦らなくても大丈夫です』
ちなみに基地を発ったのは凡そ1時間前、つまり時速1000km以上で飛行しているが……魔法少女達は一切遅れる事はなかった。そして高度は平均して3500m。
この時代の戦闘機に匹敵する速度と航続距離、加えて戦闘機以上の火力と防御力。対レイダー戦で魔法少女が中心となるのも納得だ。
幸い、国際協定で国家同士の諍いに魔法少女が介入する事は禁止されているらしいが、もし対軍で投入されればどうなることやら。
-警告 方位0-3-3 高度6000 距離100 先遣飛翔型5体探知-
『コトノハ隊!2時の方向から10m級空翔型5体確認!!』
『ッ!皆備えて!!』
突如、機体のシステムが警告を発する。やや遅れてエンジェルアイから通信が飛び、俺の前方に位置していた魔法少女達が散開。
足を止める事なく統制攻撃の備えを取れるあたり、かなり実戦慣れしているようだ。
—————しかし。
『サクラよりハイド!どうしま—————』
「ハイド、
-ハイド 交戦-
メインスラスター起動、噴射。
瞬く間に魔法少女達を追い越し、衝撃波の心配が無くなると同時に音速を突破。
そのまま真正面から接近する先遣飛翔型へと距離を急速に詰めていく。
-警告 目標口腔部 高エネルギー反応-
ディスプレイに表示される敵の頭が紅く光った。
俺は咄嗟に機体を傾け、そのまま速度を落とす事なく水平に螺旋旋回を行い……紅い光条全てを躱す。
通常なら凄まじいGが掛かっているが、烈風には慣性制御装置が搭載されているため、体への負担は殆どない。
『なんて機動…!』
さて、第一射は躱した。ヘッドオンで2体もって行きたいが……ッ!
-回避 回避-
刹那、編隊を組む先遣飛翔型、その両端の個体が光条を放ってきた。流石に5対1だと隙も小さいか。それにシールドを囮にする作戦も使えないだろう。
ここで航空機動戦に移行するのは悪手だ。負けはしないが時間がかかるからな。
…だから、こちらから距離を詰める。
「行くぞ相棒」
スラスター全開。先程の数倍の速度で先遣飛翔型の姿が大きくなっていく。
奴らは俺の急加速に慌ててエネルギーチャージを開始するが、もう遅い。
-変形機構作動 汎用形態-
すれ違いざま、俺は南極星を人型へ変形させ、同時に背部のフレキシブルスラスターを前方に指向し急減速を行う。
ビームセイバー、抜刀。
一閃。
———やや遅れて、2つの爆発が起こる。
足は止めない。振り向き様に粒子砲を指向して、放つ。3連射だ。
-敵2体撃破 残敵数3-
「もうやった」
再びの、爆発。
紫の眩い光が放たれ、一瞬魔法少女達の姿を見失う。レーダーに付近の敵影なし。
交戦時間にして20秒程だが、露払いは済んだだろう。
思いつつ、ビームセイバーを納めて飛行形態へ変形。魔法少女達との合流を図る。
なお分散していた彼女達だが、俺が視線を向けた時には既に編隊を組み直していた。
『嘘…でしょ…』
『これが、未来の…』
合流し、ホバリングを開始。その際こちらに向けられる彼女達の視線からは、畏怖と興味が見て取れた。
これで最低限の能力は伝わっただろうか。
『え、エンジェルアイより各員。敵30m級が移動を開始しました。直ぐに向かってください』
「了解」
尖兵が落とされてこっちを脅威と判断したか。ならば————
-警告 方位0-1-0 高エネルギー反応-
「ッッ!!!」
視界の端、紅い光が瞬く。
水平線のギリギリから放たれたそれは、間違いなく敵の攻撃。
狙いは……魔法少女達か!
「
『ッ!?』
俺の声に驚きつつも急降下を開始する魔法少女達。発見が早かったから間に合いはするか。
なら俺は、奴を仕留めに行くべきだろう。だがまずは————
-
「ッ…!」
光条が迫る。
莫大な熱量を擁するそれは、実に音速の5倍以上の速度で俺たちを呑み込まんと猛進。
凄まじい速度、しかし真っ直ぐ向かってくるならば回避は難しくない。
姿勢制御、脚部スラスター全開。
機首上げ20度。螺旋旋回。
相対速度、マッハ10。
接触まで、0.5秒。
「こんのォ…!!」
——————圧倒的な熱量が、掠める。
途端に機体の熱センサーが甲高い音を鳴らし、メインシステムからも警告が飛ぶ。
-警告 機体表面温度 2030℃ 装甲融解危険域まで820℃-
ふと視線を横にズラすと、ディスプレイに映る翼が熱を持ち、紅く光っている様子が見て取れた。余波だけでこれだ。まともに食らっていたらどうなっていたことか。
……しかし、もう掻い潜った。後は肉薄するだけ。
スラスター、全開。
-
-警告 敵口腔部 高エネルギー反応-
またか。だが、不意を突かれたさっきとは違うぞ…!
目標までの距離は120km。高度3500の現在位置からなら、十分狙える。
-粒子砲 狙撃標準-
メインディスプレイに十字のレティクルが表示され、その中心に奴を捉える。
……閃光。再び放たれた紅い光条が、俺の頭上を掠めて通過していく…が、速度は決して緩めない。
-エネルギーチャンバー圧力上昇 粒子圧縮率80 仮想銃身 展開完了-
-目標 敵機動拠点型アグレッサー 過加速粒子 発射準備良し-
————蒼白い光条が、一直線に敵へと向かう。
こちらの攻撃に気付いた機動拠点型は回避を試みるが、もう間に合わない。
-
爆光、やや遅れ、咆哮。
「Guoooooooooo!!!!!!!!」
胴体を抉り飛ばされた奴は、ここまで響く程の叫びを上げ、のたうつ。数秒の後、自身を痛めつけた存在である俺へと、その漆黒の瞳を向けてきた。
ここからでも分かる、怒りに染まっている瞳。……悪いが、お前の怒りは発散させん。
-変形機構作動 汎用形態-
『ルカさん!大丈夫ですか!?』
「問題ない」
通信に応えつつ、俺は
海上に浮かぶ黒く小さい島のような機動拠点型。形容するなら細長い首を持つ
初めて見た時は中々グロテスクな見た目だと思ったものだ。
「…まぁでも、見た目の割にか」
呟き、すれ違い様に再生途上の部位を斬りつけての、離脱。
対して奴は、海中から無数の触手を繰り出して俺を捕らえようとしてくる。
「食らうかよ」
『すごい…』
ビームセイバーで斬り払い、或いは粒子砲で撃ち抜き触手群を沈黙させていく。別に無限にある訳でもない触手は、思いの外直ぐに飛び出してこなくなった。
無論、再生はされるだろう。もう一度掻い潜るのは面倒だ……終わらせる。
粒子砲を構えて、牽制射。同時に2度目のハイ・マニューバを実行。人型形態では速度が落ちるが、この距離なら十分だ。
肉薄。
-ビームセイバー 最大発振-
左手に持たせたビームセイバーの刃渡りが、20mを超える程まで伸びた。
アグレッサーの急速再生を封じる手立てには、一定以上の再生負荷をかける事が有効だ。胴体の切断もその内の一手。加えて、今のアイツは触手と胴体の再生で既に相応の負荷を負っている。
頭部の爆砕や、少中規模の斬撃では困難だろうが……これなら。
「Guooooooooooo‼︎‼︎‼︎‼︎」
咆哮と同時、いち早く再生が終わった触手の一本が繰り出される。既に速度が乗ってる俺に追いつく訳など、ない。
——————斬。
……巨体が海に沈むまで、そう時間はかからなかった。
『ホントに………勝ったの…?あの男……ッ』