冷静に考えたら年間百数十人の行方不明者出してる主人公相当ヤベェじゃん(盲点)。
第10話「訓練の余波と裏町の歓楽」
「──お互いの個性の相性を完璧に理解し、最小限の被害で相手を無力化させた見事な戦術! 素晴らしかったぞ、瞬少年、砂藤少年!!」
モニタールームに響き渡るオールマイトの大音声。
1-A 20名の全試合が終了し、生徒全員が集まる中で行われた総括。
その中で、僕と砂藤くんのペアは最も隙のない完封勝利を収めたとして、絶賛の言葉を賜っていた。
轟くんの試合もあれは完封だったけど、あっちは轟くんが一人で完全勝利決めたからね。ペアで訓練に挑んでる以上、スタンドプレーよりもチームプレイの方が評価が上になるってことなのかな?
「いやあ、俺はただ瞬の指示通りに砂糖を食って突っ込んだだけだしなぁ……」
砂藤くんが照れくさそうに頭を掻く。まぁそうだけども。
「……いや、砂藤くんの立ち回りのおかげさ。僕の変身は周りを巻き込んじゃうから、彼がいなかったら成立しなかったよ」
僕が謙虚にそう言うと「そうか? 」と砂藤くんが言うので、「そうだよ」と返しておく。
ちなみに三奈ちゃんと青山くんはもう元気になっている。
フルパワーでやってたらこの程度じゃすまないだろうけど、こっちは雄英で活躍するためにいろいろ準備してきてるんだ。
「手加減」もその一環。
殺傷能力が高すぎるメモリは、そのままじゃ使えないから、「裏町」で人体実験をしながら出力の調整をできるようにしといたんだよね。
数百人の尊い犠牲で無事後遺症を残さないレベルまで、手加減ができるようになりました。
感謝。
「もう〜! 瞬のあれ、本当に苦しかったんだから! 」
三奈ちゃんがぷくっと頬を膨らませて抗議してくるが、その瞳には恐怖ではなく、うっとりとした熱がこもっている。
「ごめんね、三奈ちゃん。でも、君の無防備な顔も可愛かったよ」
「〜〜〜っ!? なっ、何言ってるのもうっ!」
耳まで真っ赤にする三奈ちゃん。隣で青山くんも「ふっ……僕の輝きもかすむ美貌だね☆」とウインクを投げてくる。こいつはマイペースだな。
で、最終だった僕らの訓練も終わり、男子更衣室で着替えを済ませた後は、それぞれ帰宅の途につくため靴箱や下校ルートへと向かっていた。
校門へと続く雄英高校の広い敷地内、夕日に照らされる並木道を歩いていると、前方を歩いていた女子グループ──三奈ちゃん、お茶子ちゃん、響香ちゃん、八百万ちゃん、梅雨ちゃん、透ちゃんたちが、楽しそうに今日の訓練の反省や感想を言い合っているのが見えた。
女子でまとまっているのはなんかアニメのEDでも見た気がする。
「あ、瞬! 」
振り返った三奈ちゃんが、ぱっと表情を明るくして大きく手を振ってくる。僕も歩調を早めて彼女たちの輪に合流した。
「みんな、お疲れ様。ヒーロー基礎学、初めての授業からかなりハードだったね」
「本当ですよ……皆様の個性の応用法やコンビネーション、とても勉強になりましたわ。瞬さんの機転もお見事でした」
八百万ちゃんが感心したように深く頷く。お茶子ちゃんも「私も、気の緩みがあったから、それを直していかないと! 」と気を引き締めている様子だ。
響香ちゃんもイヤホンジャックを弄りながら、「まあ、初日にしちゃかなり濃い内容だったよね」と同意する。
「それにしても瞬、さっきは心配してくれてありがとね。食べたらすぐ楽になったし! 」
「よかった。三奈ちゃんが倒れた時はちょっと焦ったからさ。無事で何よりだよ」
僕が優しく視線を合わせながら微笑みかけると、三奈ちゃんは「〜〜っ」とまた頬を染めて視線を小さく泳がせた。
ふっふっふ。顔が良すぎるのも困ったものだねぇ。悪い気はしないとも!
すると、隣を歩いていた透明な透ちゃんが、僕の腕にすっと寄り添ってくる。改造済みの僕の目には、制服姿の彼女の誰もが見惚れる可憐な素顔がバッチリ映っている。
「どうしたの透ちゃん」
「ん~? 別に~? 」
僕は抱き着かれた柔らかさとか温かさとか、それに付随して湧き上がってくる邪心を務めて無視して彼女を優しく距離をとり、
「女の子が男の子にくっつくもんじゃないよ」
とたしなめた。
「はーい……」
注意されながら、見えないと思ってめちゃくちゃニコニコしてる透ちゃん。
その可憐な素顔が至近距離で弾けるのを見て、僕の心の中の自分が笑みを浮かべる。
これは惚れたのか? 僕は鈍感じゃないから普通に気づくぞ?
「蛙吹さん、どうしよう。透ちゃんが可愛いんだけど」
「梅雨ちゃんと呼んで。確かに可愛いわね」
「耳郎さんはどう思う? 」
「ウチに振らないでよ……」
そんな感じでわいわい喋りながら親交を深める。
なんだかんだあって、みんな下の名前で呼んでいいことになった!
「そういえばまた起きたらしいですわね」
「あー、ニュースでも言ってたね」
「起きた? 何が? 」
「瞬、あんたヒーロー目指してんならもっとアンテナ張っときなよ」
「あれだよ! 『神隠し』! 」
「今回も女の子が何人も行方不明になったって。十中八九『神隠し』よね。怖いわ」
「あー……あれね」
『神隠し』――それは世界中を十年単位で悩ませている未解決事件の総称だ。
行方不明となり、一切の足取りがつかめなくなる事件。
事件発生から約一年が経つと、その間の記憶を失くした被害者が帰ってくることから「まさに現代の神隠し」と、いかがわしい都市伝説のように噂されている。
事件を起こしているのが誰なのか、個人で行うには不可能なことから組織的な
かつて、№2ヒーローエンデヴァーが実行犯を追い詰めたこともあったらしいが、それ以来発見・撃退に成功したという話はない。
攫われるのが女性に限定されていて、被害者たちが客観的に美女ばかりであることから、ネット上では下世話な推測がされているが公式には『神隠し』の目的は不明。
事件が起き始めた当時は、外出を避けたり、見目の整った少女にヒーローが護衛に付いたり、GPS発信機を携帯したり、被害を警戒する動きが見れていたが、正常性バイアスというのか最近は慣れてしまって過度な警戒をするものも少なくなったのが現状である。
実際に被害は出ているのに、むしろ被害が出たからこそ、警戒は薄くなる。誘拐は月に一度。その決まった流れが破られたことはないからである。
と、まぁ。
その神隠しというのは僕の誘拐拉致監禁の世間での通称なわけ。
いつからかそういうふうに呼ばれ始めたんだよね~。
ネットではガチの『神隠し(個性とか使ったもんじゃなくて、妖怪とか神様とかの仕業)』と見る雰囲気もあるほどけっこう大事になっちゃった。
何事も継続は力なりってことだね! 違う? 違うかな……?
「怖いよねー。ネットで見たけど『神隠し』ってかわいい女の子が狙われるんでしょ? 大変だ! みんな可愛い! 」
「うえ?! 急に褒められた?! 」
「茶化すのは不謹慎ですわよ、瞬さん。実際に被害に遭われた方がいるんですから」
「あう。ごめんなさい」
「私、中学で講習あった。……実際の被害者の人が来て話してくれたけど、本当に何も覚えてないって……、一年間何も覚えてないのも怖いけど、友達とか家族とかみんなとの時間がずれてしまったのが悲しいって泣いてた……」
「……許せない、よね」
「一日でも早く、立派なヒーローになろう。ヒーローになって、もう二度とそんな被害者が生まれないようにしよう! 」
「「「「「「うん(ええ)(もちろんですわ)! 」 」」」」」
「じゃあ僕、今日はちょっと寄り道があるからここで。みんな、また明日ね」
「うん! また明日ね、静一くん!」
◆
雄英の敷地を出て、夕闇が街を黒く包み込む頃。
僕は制服から私服に着替え、ヒーローの光も警察の目も届かない僕の楽園──「裏町」へと足を運んでいた。
クエストドーパントに変身し、魔法陣から異空間に道を作る。
まるで魔法みたいな印を抜けると、そこには外界の法も倫理も一切届かない、僕だけの秘密の町が広がっている。
「ひっ……! 嫌……来ないで……っ!」
ある住居に入ると、部屋の隅で縮こまっていた数人の少女たちが、悲鳴をあげてガタガタと震え上がった。先日、入学式帰りに拉致してきたピカピカの女子高生たちだ。
そして集団から遠巻きにされたところには、前回の「オールドメモリ・レベル2」の地獄──50年分に及ぶ感覚遮断と時間感覚延長の体験を受けた、かつて一番反抗的だった生意気な少女が、虚ろな目で床に座り込んでいた。
「やあ、みんな。いい子にしてたかい?」
「あ……あ……ご主人様……っ! ご主人様……っ!」
僕の姿を見るやいなや、その少女は狂ったように床に額を擦りつけ、這いつくばって僕の靴先に抱きついてきた。
「ごめんなさい! ごめんなさい!! もう逆らったりしません! 何でもします! 服も脱ぎます! だから……あの恐ろしい暗闇に……あの地獄に二度と戻さないでええええっ!! 」
たった数分の現実時間。だが彼女の精神にとっては、動けない身体と真っ暗な絶望の中で50年もの歳月を過ごしたのだ。精神は完全に屈服し、僕という存在を絶対的な管理者として認識しきっていた。
「ふふっ、偉いねぇ。ちゃんと『理解』できたみたいで安心したよ」
僕は冷ややかに笑うと、靴に縋りつく彼女の髪を掴んで顔を上げさせた。絶望と恐怖で瞳孔の開ききった表情だ。
「さあ、今日学校でちょっと疲れたからね。たっぷり癒してくれると嬉しいな」
「はい……っ! はい、ご主人様……っ! 喜んで……ッ!」
彼女は何も言わなくても自らの意思で僕の服を脱がして濃厚な
恥も外聞もまったく気にしない。自分と同じ境遇、攫われてきた他の少女たちから見られていたとしてもそんなことはどうでもいい。
目の前の男の機嫌を損なうことが何より恐ろしい……かつてのプライドも反抗心も完全に吹き飛び、ただ僕の機嫌を損ねないため、地獄に戻されないために、必死で従順な態度を見せる彼女。
「ん……いいねいいね。その調子その調子」
他の拉致された少女たちも、そのあまりの完全屈服ぶりに恐怖で息を呑みながらも、「恐怖」に突き動かされ、一人また一人と自ら服を脱ぎ捨て、僕の前に平伏してきた。
「私達も……私達も従います! だから許してください……っ! ひどいことしないで……っ! 」
「いいよ、みんなまとめて面倒を見てあげよう。僕の言うことに従うならなにもしないさ。本当だよ? 」
それからの時間は、彼女たちの従順な姿勢を確認する作業となった。
屈服した少女たちを意のままに扱い、支配する感覚。
(最っ高……ッ! 支配している実感……! 絶え間ない肉体の快楽! ここはまさに僕にとっての楽園だ……!! )
僕は心の底から笑いながら怯えて媚びを売る少女たちにどろどろの欲望をぶちまけるのだった。
◆
翌朝。
何事もなかったかのように、僕はピシッとした制服に身を包み、眩しい笑顔で雄英高校の門をくぐった。
門の前にはマスコミがうじゃうじゃしていて厄介だったけど、まぁなんてことはなかったね。
カメラをめちゃくちゃ向けられたけど、なんでだろうね? 僕わかんないや。
「おはよう、静一くん!」
「おはよう、緑谷くん、お茶子ちゃん」
爽やかに挨拶を交わし、1-Aの教室に入る。
HRの時間になり、担任の相澤先生が教壇に立った。
「昨日の戦闘訓練お疲れ。Vと成績見せてもらった」
先生から爆豪くんと緑谷くんに諸注意。
で、その後、
「急で悪いが、君らに……学級委員を決めてもらう」
「「「「「学校っぽいの来たーーーー!!」」」」」
クラスのテンションが異常に跳ね上がる。
学級委員なんてクラスのまとめ役兼雑用係でしょ? となるのは普通の話。
さすがヒーロー科。みんながみんな進んで「やりたいやりたい!」と主張してはばからない。
ちなみに僕はやりたくない。原作の流れを無視したくないし、学級委員とか面倒だし。こういうところも、僕の性根がヒーローに向いてないってわけなんだろうなー……。
その後、無記名投票で決めることになり、
「僕 三票ーー!? 」
「私も、三票……」
はい。僕は百ちゃんに入れました。
その後は二人でじゃんけんをして、
「じゃあ、委員長が緑谷で、副委員長 八百万だ」
ということになった。
委員長になれずに悔しがる百ちゃんかーいいよー!
お昼休みです。学食です。
なんとなく緑谷くんたちトリオに混ざるのは気後れしてこっそり会話を盗み聞きしている僕です。
「規律を重んじ人を導く愛すべきヒーロー! 俺はそんな兄にあこがれヒーローを志した」
「人を導く立場はまだ俺には早いのだと思う。上手の緑谷くんが就任するのが正しい」
いい台詞や。そんな風にほっこりしてたら、突如学園中に警報が鳴り響いた。
『セキュリティが突破されました。生徒の皆さんは速やかに屋外へ避難してください』
警報とともにアナウンスが繰り返される。
食堂はパニック。全員が出入り口に殺到して押し合いへし合いの大渋滞。
僕はというとその場で食事を続けていた。
原作知識のある僕には、これがただマスコミが侵入しただけの空騒ぎだって知ってるからね。避難する必要はない。
そうこうしていると、飯田くんが宙を舞い、「非常口飯田」になった。
飯田くんの呼びかけで、在校生のみんなも平静さを取り戻し、粛々と避難を始めて騒動はひと段落したのだった。
「委員長はやっぱり飯田くんが良いと……思います! 」
緑谷くんの一声にクラスのみんなが賛同する形で飯田くんが委員長になった。
百ちゃんが悩ましげにしているけど、委任と考えればまぁ、切島くんとかも賛成してるし、今の時点で再投票したら飯田くん三票以上獲得しそうだから……。
そんなわけで飯田くんが委員長になりましたとさ。
◇
「今日のヒーロー基礎訓練だが……俺とオールマイト、そしてもう一人の三人態勢で見ることになった」
「ハーイ、なにするんですか!? 」
「災害水難なんでもござれ、人命救助訓練だ」
「場所はここから少し離れた場所にあるからバスに乗っていく。以上準備開始」
レスキュー訓練という言葉に、ざわめきが起こる。
災害救助に向いてるかというと、僕は全く向いてないんだけど胸が高鳴る。
コスチュームの着用は自由だという指示を受け、生徒たちが騒がしく着替えの準備を始めた。
そんな騒がしい教室の中で、僕は窓の外の青空を眺めながら、不敵に口元を歪めた。
(いよいよ
誤字報告ありがとうございます!