「子ども一人に情けねぇな。しっかりしろよ、大人だろ? 」
吹雪のような氷の刃と、極寒の冷気が一瞬にして「土砂ゾーン」の広大な空間を支配した。
ビキビキビキッ……と音もなく凍りついていく岩肌と崩落現場。先ほどまで刃物や個性を振りかざし、粗暴な笑みを浮かべて襲いかかろうとしていた数十人のヴィランたちが、自らの体勢を整える間もなく、一瞬にして首から下を強固な氷塊に閉じ込められていた。
「ぐあああっ!? つ、冷てええええっ!! 」
「……動けねえ! なんじゃこの氷はッ!? 」
絶叫と悲鳴が響き渡る中、ゆっくりと歩みを進める人物が一人。
右半分を氷で覆った独特の戦闘服を身に纏い、冷たいオッドアイの双眸でヴィランたちを見下ろす少年──轟焦凍である。
「なぁ、このままじゃあんたら、じわじわと身体が壊死してくわけなんだが……。俺もヒーロー志望。そんな酷え事は
氷の結晶が舞う静寂の中、轟の声は穏やかでありながら氷のように冷徹そのものだった。
「あのオールマイトを殺れるっつう根拠……策って何だ? 」
「ひっ……! は、話す! 話すから溶かしてくれ! 俺たちはただ、オールマイトが来るって聞いて集められただけで……! 奴を殺す計画だって……ッ!」
脅迫交じりの尋問に、怯えきったヴィランは容易く口を割った。
詳しい詳細を聞いた轟は静かに息を吐き出し、鋭い視線を巡らせる。
(あの得体のしれない手のひら塗れの男と仲間がオールマイト殺しの実行役……そんくらいしか末端は知らないか)
轟は周囲の氷の世界を一瞥した。
このエリアに転送されたのは自分一人だけ──そう確信していた轟は、一切の躊躇なく広範囲の氷結技を行使したのだ。仲間が巻き込まれていないことを改めて確認した彼は、すぐさま中央広場へと続く通路へ視線を向けた。
「中央に急がねぇと……間に合うか? 」
轟は俊敏な動きで氷の上を滑るように駆け去っていく。
まさか、目に見えないところでクラスメイトが静かに囚われているなどとは知る由もなく──。
◇
轟くんが離脱したあとの土砂エリア。
氷漬けになったヴィランたちが絶望の悲鳴を上げる物陰で、僕は事の顛末を観察していた。
(……ふむ描写外ではこんな風になってたんだね。流石はNo.2ヒーロー・エンデヴァーの息子の轟くん。味方が誰もいないと踏んでの、容赦のない一瞬での全域凍結。この時期、実力トップの彼ならこんなのピンチでも何でもないか)
気配を完全に消し去り、透明なドーパント『インビジブルドーパント』へと変身した僕は、拘束した葉隠透の身体を揉んだり擦ったり吸ったりしながら、去り行く轟の背中を冷ややかな目で見送っていた。
「……んぐ……っ、……っ!」
静一の腕の中で、同じく透明な透ちゃんが口を押さえられて身体を硬直させている。
僕から見たら丸見え全裸だけど、傍から見たら透明同士重なってても、なにも異常に感じることはできないだろう。
施設内のカメラ類は
ちなみに透ちゃんの手袋とブーツは脱がしてあります。泣く泣く。
苦渋の決断でしたが、浮遊していると発見のリスクがありますからね! 泣く泣く!
あー、それにしても透ちゃん柔らかくて暖かくて最高……!
おっぱいもおしりもおなかも、すべすべ柔柔エロエロで神!
気持ちよくて癒される~……!
「しーっ……声を出しちゃダメだよ、カワイ子ちゃん」
僕はドーパントに備わった変声機能で本来の僕の声とは全然違う声で、彼女の耳元で囁く。
「……ひっ……!?」
「氷の彼は行ってしまったよ? 君はこの土砂エリアに一人きりだ。……僕という『見えない怪物』と一緒にね」
ひひひひっ! と妖怪のように笑いながら、彼女の華奢な体を撫でまわす。
透ちゃんは恐怖におびえ身体をこわばらせながらも、敏感な箇所を擦られてはビクンッ! と身体が勝手に反応を示してしまう。
「……っん! ……っ! 」
なんて可愛いんだろう!
美少女が恐怖と快感に震えて嬌声を必死に我慢する姿にはまさに神が宿っている! 尊い……。
透ちゃんは恐怖と羞恥で身体をガタガタと震わせるが、インビジブルドーパントの不可視の能力と(一応ドーパントなので)圧倒的な腕力の前では、指一本動かすことすら叶わない。
(ふふっ、透ちゃんの反応も最高に可愛いけれど……他のエリアに行ってみたいな。でも、中央広場に高みの見物へ行くのは味気ないかな。あそこは相澤先生と脳無の独壇場だ。それよりも……)
僕の興味は、お隣のエリアゴツゴツとした岩山が広がる「山岳ゾーン」に向いていた。
(あっちには、上鳴くん、百ちゃん、響香ちゃんが飛ばされたはずだ。あそこなら大勢の雑魚ヴィラン相手に苦戦しているだろうし、面白いことができそうだ♪ )
僕は透ちゃんの反応を十分に楽しむと、今までで探り当てた彼女の弱点を本気で攻めてイかせた後、ぐったりした透ちゃんを寒さの及ばない安全な物陰へと静かに転がした。
手袋とブーツは履かせました。じゃないと救助に来た先生とか警察が見つけるのに手間だろうからね。
◇
静一が姿を消したまま、軽やかな足取りで山岳ゾーンへと向かって移動を開始したその頃、岩山が幾重にもそびえ立つそこでは、凄まじい怒号と戦闘音が響き渡っていた。
「うぅわ!! 」
敵の大振りをかろうじて回避したのは上鳴。
「コエ――――!! マジ!! 今見えた! 三途見えたマジ!! なんなんだよこいつらは!! どうなってんだよォ!? 」
「そういうの後にしよ」
「今はこの数をどう切り抜けるかですわ」
動揺して大声で喚く上鳴を制したのは、耳郎と八百万。
周囲は無数のならず者たち――
「放電できるけど操れるわけじゃねー。二人とも巻き込んじまうの! あれだ! 轟と一緒よ!? 」
この数を一網打尽にできる可能性のある上鳴の個性は、巻き添えを懸念して使用不可。
とはいえ、ヒーロー志望の三人の動きも個性も悪いものではなく、集団に囲まれながらも時間を稼ぎ、
「出来た! 時間がかかってしまいますの。大きなものを
八百万が大きな大きなシートを個性で生み出す。
「厚さ1000㎜の絶縁体シートです。上鳴さん」
「……なるほど。これなら俺は、クソ強え――! 」
周囲の敵を一網打尽にする稲妻の一撃。
それを受け、バタバタと倒れる雑魚
静一はそれを少し離れた場所から観察していた。
(原作通り、撃退に成功したっぽいな……。あははっ、上鳴くんがアホになってる。かなり大爆笑……! それにしてもくそっ、見えないな……百ちゃんの服がえろいことに――もといえらいことになってるはずなんだけど……もっと近づけばよかったな)
そんな風に考える静一はこの先の展開に介入するため、彼らの元に近づく。
近づく彼の透明な怪人態の腰には、「ガイアドライバーrex」が既に装着されていた。
◇
一方その頃──USJの中心部、「中央広場」では凄惨な地獄絵図が広げられていた。
単身で大群のヴィランを相手に孤軍奮闘していた1-A担任、イレイザーヘッドだったが、スタミナの消耗と「瞬き」の合間の隙を突かれ、死柄木弔の『崩壊』によって右肘の皮膚をボロボロに崩壊させられる重傷を負っていた。
さらに、死柄木が引き連れてきた漆黒の怪物──『脳無』が動き出す。
個性に拠らない圧倒的な筋力とスピード、規格外の性能を持つ脳無の前に、ヒーロー、イレイザーヘッドは手も足も出ず、石畳の上へと叩き伏せられた。
バキッ! ゴッ! グシャッ!!
脳無の巨大な拳が、容赦なく相澤の頭部を地面へ打ち据える。
血飛沫が舞い、地面がクモの巣状に砕け散っていく。
「あ……ああ……先生……相澤先生……ッ!!」
水難ゾーンからの脱出に成功し、「自分たちにもできることはあるはず」と自信をつけて戻ってきた緑谷出久たちは、あまりの凄惨さに歯を喰いしばり、恐怖と無力感に身体を震わせていた。蛙吹梅雨と峰田実も息を殺し、顔を青ざめてすくみ上っている。
その頃、出入口ゲート付近では、13号と生徒たちが黒霧を相手に命がけの攻防を繰り広げていた。
13号が自らの『ブラックホール』を黒霧のワープで背後から受け、重傷を負って倒れる中、麗日や障子たちの決死の援護を受け、クラス委員長の飯田天哉が全開のエンジンで重厚な扉を突破。外部への救援要請のため、雄英本校へと脱出することに成功した。
「死柄木弔」
「黒霧、13号はやったのか」
「行動不能にはできたものの、散らし損ねた生徒がおりまして……一名逃げられました」
「はーーーー…………黒霧おまえ、お前がワープゲートじゃなかったら粉々にしてたよ」
「……ゲームオーバーだ。あーあ、今回はゲームオーバーだ
帰ろっか」
飯田の脱出を知った死柄木弔は、激しいイライラから自分の首筋を血が出るほど掻きむしり、撤退を決意する。
だが──死柄木は去り際、水難エリアに潜んでいた緑谷たちへと矛先を向けた。
「せっかくだ。平和の象徴としての矜持を少しでも、へし折って帰ろう」
一瞬で緑谷たちの元へと移動し、死柄木の五本指が蛙吹梅雨の顔面へと迫る!
触れられれば崩壊して即死する絶体絶命の危機。その瞬間、血みどろになりながらもイレイザーヘッドが土壇場で個性を発動し、間一髪で崩壊を防ぐ。
「………………。本っ当、かっこいいぜ。イレイザーヘッド」
死柄木が素直な賞賛をイレイザーヘッドにこぼすのと同時、緑谷は右腕を振りかぶっていた。
「手っ……離せぇ! ――スマッシュ!! 」
ズドン!!
会心の一撃。腕の折れないレベルでのワン・フォー・オールの全力の拳。
しかし、死柄木との間に脳無が割って入り盾となった。盾となった脳無は無傷
緑谷が命がけの一撃を放つも、その拳は割り込んだ脳無の分厚い胸板に虚しく吸収されてしまう。脳無の巨大な手が緑谷を掴み上げ、死柄木の手が再び迫る──全員の死が脳裏をよぎった、その時だった。
──バァンッッ!!!!
USJ全体を揺るがす地鳴りのような号砲が轟き、メインエントランスの巨大扉が吹き飛んだ。
立ち込める煙と砂塵の中から踏み出された足音。
そこに立っていたのは、ナンバーワンヒーロー──オールマイトであった。
「……もう大丈夫。私が来た!!」
「あー……コンテニューだ」