雄英襲撃事件の翌日。雄英高校は警察による捜査と敷地内の安全確認のため、急遽「臨時休校」の措置が取られていた。
世間のニュースやネット掲示板は、突如として報じられた「雄英へのヴィラン侵入」と「オールマイトの健在」の話題で持ちきりだ。
平和の象徴がヴィランを撃退したという英雄譚に沸く一方で、プロヒーロー養成の最高峰である雄英のセキュリティが突破されたという事実は、人々の心に確かな不安の影を落としていた。
そんな世間の喧騒を余所に、僕──瞬静一の自宅のリビングは、甘々で賑やかな空気に包まれていた。
「静一くん! 昨日は怪我とかなかった!? 本当に大丈夫だったの!?」
「静一くん……ニュース見て、私たちすっごく心配したんだからね……っ」
「……お兄ちゃん、無事でよかった。はい、あーん」
僕の両脇と背中を占領しているのは、幼馴染のあひるちゃん、ミルクちゃん、ひょうちゃんの三人だ。
心配で居ても立っても居られなくなった彼女たちは、朝早くから僕の家へ押し寄せてきていたのだ。学校は休むらしい。エッチしまくる予定らしい。まったくエッチなことばっかり考えるように育っちゃって……嬉しい!
「あはは、大丈夫だよみんな。僕はちゃんと物陰に隠れてたから、擦り傷ひとつないよ」
僕が優しく微笑むと、あひるちゃんが「あ兄ちゃんったら〜! 」と甘えるように僕の首に抱きつき、ミルクちゃんは安心したように瞳を潤ませながら後ろから僕を抱きしめてくれる。。ひょうちゃんも無表情ながらも僕だけに見えるうっとりした表情で抱き着いてくる。
三人ともエロい体してるからマジで最高……!
特にミルクちゃんの特大オパーイがむにゅううう!って!
ああ、マジでガキの頃にこの子達誑し込んでおいてよかった!!
「あ……。静一くん、おっきくなってる」
「ほんとだ。もう、お兄ちゃん……昨日の夜あんなにしたのに、私だけじゃ満足できないの? 」
「あはは、仕方ないでしょ。こんなかわいい子たちとくっついてたら反応しない方が失礼ってもんだよ」
「可愛い……。静一くん、私も? 」
「もちろんだよミルクちゃん。ミルクちゃんの顔も体も性格も、おっぱいもおしりも全部可愛いって思ってるよ」
「…………ん~~~~! 」
ぎゅうっ! と感極まったミルクちゃんに抱きしめられる……!
「ぐふぅ……! 」
死――! フィジカルエリートのミルクちゃんのハグは普通に内蔵飛び出そう!
「あ、ごめんなさい……! 」
「お兄ちゃん大丈夫?! 」
「はぁ、ふぅ……うん、平気平気」
そんなふうにイチャイチャを楽しみながら幼馴染たちとスキンシップ。
もちろんその後は場所を寝室に移して、生まれたままの姿でプロレスごっこ()に縺れ込んだわけだけど、詳細は秘密にしておこう。
ともあれ、最高のひと時だった。
雄英でも、裏町でも味わえない、僕にラブラブな女の子との時間。
とでも言っておこうかな?
◆
シーン……と静まり返る暗いバーの中。
死柄木が包帯だらけの身体を強引に起こそうとした、その時だった。
カウンターの真上にいつの間にか、何の変哲もない「右腕」が浮遊していた。
「ッ!? これはッ!? 」
黒霧が瞬時に反応し、全身のモヤを広げて死柄木を庇う体勢をとる。
「なんだこの手……俺への当てつけか……? 」
負傷により満足に動けない死柄木は、殺意に満ちた瞳で浮遊する右腕を睨みつけた。
その浮遊する右腕は、優雅に指先を躍らせると、無駄にいい声で流暢に話し始めた。
『やあ、初めまして……ヴィラン連合の諸君。怪我の具合はどうだい?』
「貴方は何者ですか、ヒーロー……ではないのでしょうが」
『失礼だな。プロヒーローの犬と一緒にしないでほしいね。それに、君たちに敵対するものでもないよ。僕が姿を現すのに気づかなかっただろう? 僕たちがその気になれば、君たちの首を跳ねることだって容易だったのだから』
浮遊する右腕が、腕だけとは思えないほど感情豊かに飛び回り話す。その圧倒的な異物感と、底知れない能力の気配に、場の空気は完全に掌握されていた。
『単刀直入に言おう。……僕たちは、世間を密かに騒がせている『神隠し』を行っている組織──『財団』という者たちさ』
「財団……だと?」
黒霧が眉をひそめる。
もう何年も昔から未解決事件として半ば都市伝説化している怪事件──世間を騒がせる『神隠し』の正体が自分たちであると明かす「右腕」。
――実際には、僕が個人で気まぐれに人間を誘拐・拉致・監禁して遊んでいるだけに過ぎないのだが、背後に存在する組織を匂わせるハッタリとして、僕は『財団』という大層な名前をぶち上げたのだ。
『君たちの雄英での大立ち回り、実に見事だったよ。ただ、あの脳無というの以外の兵隊はお粗末だったね……そこで提案だ。僕たち『財団』は、君たちヴィラン連合の「傘下」に入ってあげてもいいと思っている』
「……はあ!?」
死柄木が怒りで顔を歪めた。
「傘下だと? どこだかも知れないふざけた組織が、この俺の配下に就くだと……? いったい何を企んでる……? 」
『ふふっ、勘違いしないでくれよ? 僕たちにも利があるから提案しているのさ。僕たちの目的は『オールマイトの失脚』と『偽りの平和の破壊』……君たちと利害は完全に一致している。だが、僕たちは表舞台に出るのは嫌いでね。君たちという『大きなお神輿』の陰に隠れて、裏から協力してあげる方が都合がいいのさ』
右腕が、人差し指をチッチッと左右に揺らす。
(ま、『財団』なんて存在しないんだけど! 敵の側に伝手ができて、そっちでも暴れる身分ができれば重畳ってね! )
ついでに言うと目的もでたらめ。治安はある程度悪くなってほしいけど、平和なら平和が一番だ。
原作終盤みたいに国がヤバくなったら、攫う女の子のレベルも下がっちゃうからね。
『どうだい? 優秀な手駒が増えるのは、君にとっても悪い話じゃないはずだ。……例えば、次の大きな機会で、僕たちの仲間の力を使わせてあげてもいい』
死柄木は苛立ちながらも、包帯の巻かれた手を顎に当てて考え込んだ。
『死柄木弔……悪くない提案だ』
黒霧と死柄木の二人の奥に置かれているモニターからとてもいい声(オール・フォー・ワン)が聞こえた。
多分この部屋についてる……あそこと、あそこと、あそこの反応だな。盗聴器と隠しカメラが一つ二つ三つ……。
ハイドープとしての能力で検討をつけた電磁波の発信源に一つずつ指差し行為。
『なかなか面白い相手じゃないか』
声は上機嫌に聞こえる口調で続けた。
『君は脳無を失った。それ自体は別にいいが、戦力の補充は必要だ。『神隠し』を引き起こす『財団』と名乗る組織が協力を申し出ている。実に結構なことだ、利用できるものは何でも利用するといい』
彼らが本物かどうかは扱っているうちに分かるだろう、と。
「……チッ。先生がそう言うなら、いいさ」
死柄木が歪んだ笑みを浮かべ、浮遊する右腕を睨みつけた。
「いいだろう、『財団』。お前たちを俺の連合の傘下に加えてやる。だが裏切ったら……分かるな」
死柄木が凄んで見せるが、まだまだだね。
覚醒した彼ならともかく、今の彼にはまだ狂気が足りない。気圧されてなんかやれないね。
『交渉成立だ。これからの共闘が楽しみだよ、死柄木弔……♪』
最後に威圧しておくのも悪くない。これを使った方が後々有利に働くだろうしね。
そう考えた僕は腰のガイアドライバーrexのスロットルにメモリをレイズした。
「テラー! 」
『フッフッフ…………! ハァーッハッハッハッ!! 』
パズルドーパントの右腕から、禍々しい恐怖が溢れる。
恐怖、恐怖、恐怖。
恐怖をまき散らしながら、右腕は砂のようにバラバラの粒になって部屋の隙間から出て行った。
あとに残ったのは、常とは違った静けさだけだった。
★ちなみに、パズルドーパントの右腕が崩れて出て行ったのは、そういう個性の人から腕を奪ったからです。
パズルドーパントの覚醒した能力って便利ですよね。腕を奪えばその人の才能(ヒロアカ世界で言えば“個性”)を使える……。
それこそ死柄木の腕を奪えば個性である「崩壊」を使えるし、爆豪くんの腕を奪えば「爆破」が可能。
一番欲しいのは治崎の腕ですね。治療系能力欲し~! どうせ潰されるんだから、その前にゲットできないかな~。
次点でヴィジランテに出てきたヒーローのコンパスさん(コンパス・キッド)の腕。あの個性なんらかのアカシックコードに接続してない……? 八百万さんの個性と並んで、ヒーローなんてやってる場合じゃない個性ですよ……。