下種ドーパントのヒーローアカデミア   作:しゃしゃしゃ

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そろそろストックが尽きます(というか尽きました。今書いてます)


障害物競走!

 

 

 雄英高校の一年ステージは、割れんばかりの大歓声と熱気に包まれていた。

 

 

 注目度の影響か、例年に比べても超満員の観客席。ずらりと並ぶテレビカメラ。そして全国から集まったプロヒーローたちの熱視線。その狂乱の中心に立つのは、雄英高校1年生の全生徒たちであった。

 

 

 

「選手宣誓ッ!!」

 

 

 中央ステージに踊り出たのは、1年生担当の主審を務める18禁ヒーロー・ミッドナイト。

 

 過激なコスチュームを纏った彼女が鞭を打ち振るうたびに、スタジアムの男子生徒や観客から野太い歓声が上がった。

 

 

「静かにしなさい! 選手代表! 1-A 瞬静一!! 」

 

 

 

 スタジアムの巨大モニターに、静一の整った容姿がアップで映し出された。

 

 女子客席からは「きゃあああ!」「カッコいいー!」と黄色い歓声が響き渡る。

 

 静一は少し驚いたような表情を作ってみせると、洗練された動作で一礼し、ゆっくりとマイクの前へと進み出た。

 

 

(まぁ、爆豪くんには悪いけど、原作と違って僕が入試一位通過だったからね。それにしても、ミッドナイト先生体のライン出すぎだろ……! こーれはいけませんよ……! )

 

 心の中でミッドナイトのドスケベボディに内心大歓喜しながら、そんな様子をおくびにも出さず静一は爽やかな笑みを湛えてマイクに向かった。

 

 

 

「選手宣誓。僕たちは今、この歴史ある雄英体育祭の舞台に立っています。応援してくださるすべての人々に感謝し、支えてくれる先生方、そして切磋琢磨し合う仲間たちへ敬意を払い……正々堂々、己の全力を尽くして競い合うことを誓います。1年A組、瞬静一」

 

 

 特に文句のつけようのない、いたって普通の優等生然とした宣誓。

 

 

(ここではっちゃけるのは僕のキャラじゃないし、実力と能力を見せるのは競技の方で十分だ)

 

 

 見た目の良い僕が一部の隙もない宣誓を決めたことで、観客席からは雷鳴のような拍手と喝采が巻き起こった。

 

 

 

「すっごい爽やかだな……」「A組でもあいつとは大違いだぜ」と他クラスの生徒たちが感嘆の声を漏らす中、静一は優雅な所作で自席の列へと戻った。

 

 

 

 

「さーてそれじゃあ、早速第一種目行きましょう! 」

 

 

 

 ミッドナイトの鞭が翻り、背後のホログラムモニターにスロットが回転する。ピタリと止まった文字は―――【障害物競走】。

 

 

「全11クラス合同のレース! 総延長約4キロのスタジアム外周を舞台にした過激な障害物レースよ! 我が校は自由さが売り文句! コースを外れない限り、何をしたって構わないわ!さあさあ位置につきまくりなさい! 」

 

 

 

 ゲート前に全11クラス、数百名の生徒が一斉に押し寄せる。狭いトンネル状の出入口を見つめ、静一は競技の開始を待つ。

 

 

「スタート―――ッ!!」

 

 

 ミッドナイトの叫びとともに、狂乱のレースが切って落とされた。

 

 

 

「ぐわっ!? 狭い!」「押すなよ!」

 

 

 原作通り、スタート直後の通路は押し合いへし合いの地獄絵図と化した。生徒たちがダンゴ状態になって揉み合っている。

 

 

 その瞬間、先頭集団にいた轟焦凍が冷酷な眼光を走らせた。

 

「悪りぃな」

 

 

 右足を踏み抜くと同時に、爆発的な氷結が床一面を駆け抜けた。後続の生徒たちの足元が一瞬で凍りつき、悲鳴とともに大勢が足止めを喰らう。

 

 

「甘いわ、轟さん! 」

 

 

 爆豪が爆破の推進力で頭上へ跳び上がり、切島や八百万といった対応できる個性持ちも自身の個性を駆使して氷結を破り、即座に追撃へ移る。

 

 

 一方、静一はスタートのはるか後方で縺れる同級生たちを静観していた。

 

 まだ動く気配がない。

 

 

 

 一方、混乱のトンネルを抜け出すと、そこは広大な第1の障害エリアであった。

 

『さぁいきなり障害物だ!まずは手始め…… 第一関門『ロボ・インフェルノ』ッ!!』

 

 

 実況席のプレゼントマイクが大声を張り上げる。

 

 目の前に立ちはだかったのは、ヒーロー科の入試で使われた巨大な「0ポイントヴィラン」の群れであった。見上げるような鋼鉄の巨躯が、生徒たちを見下ろしている。

 

 

「マジか! ヒーロー科あんなんと戦ったん!? 」

 

 

 足を止める後続の生徒たち。だが、先頭を走る轟は迷うことなく氷結でロボを氷漬け!

 

 これ幸いと駆ける轟の後に続こうとしたものもいたが、不安定な体制で凍らされたロボは倒壊!

 

 

 巨大な鉄の塊が崩れ落ち、後続の道を完全に塞ぐ。

 

 

 スタート地点はずいぶん人がはけ、通りやすくなった。ここで、静一は悠々とスタート。

 

 先頭が見えないほどの最後尾ながら、余裕しゃくしゃくという雰囲気で走り出した。

 

 すでにロボはあらかた片づけられ、障害の意をなしていない。

 

 

 瞬静一、第一関門突破!

 

 

 

 つづく第二関門――『ザ・フォール』。

 

 

 底が見えないほど深い谷に、何本ものロープが張り巡らされた絶壁のエリアである。蛙吹梅雨が蛙らしくひたひたと渡り、サポート科の発目明が自作のアイテムで谷を滑空していく。

 

 

「そろそろいいかな」

 

 

 静一がぽつりとつぶやく。

 

 順位は依然最後尾。しかしそれは演出だった。

 

 最後尾から一気に追い上げてトップになる。それが彼の計画。圧倒的に勝つということ。

 

 

「あひるちゃんたちも見てるし、カッコいい幼馴染の面目は守らないとね」

 

 

 静一はロープに目もくれず、自然体で歩き、そのまま谷底に身を投げた。

 

 

「あ、おい最後尾の生徒が落ちたぞ! 」

 

 

 かろうじて映っていたカメラの一つを見た観客が叫ぶ。

 

 

 しかし問題はない。静一は、右手を鳴らすと同時に個性を発動。

 

 

 すべてが静止する。静一の真の個性『時間停止』。

 

 

 止まった時の中で彼は手の中にメモリを出現させる。

 

 

 そして起動。

 

 

「バード! 」

 

 

 ガイアメモリが宙を舞い、彼の体に浮かんだ生体コネクタに自動的に吸込まれ、変身が始まる。

 

 

 静一は止まった時の中で鳥の怪人――バードドーパントへと変身を完了した。

 

 

 

 個性解除。

 

 

 地面にたたきつけられる前に、上空へ飛びあがる!

 

 

(バードの最高時速はマッハ2.5……。悪いけど、ぶっちぎらせてもらうよ……! )

 

 

 変身に驚く観客たちの反応を尻目に、静一は障害物なんて存在しない空という最短ルートを高速で飛んでいく。

 

 

 

 

 

◇

 

 

 

 最終関門、一面の地雷原『怒りのアフガン』

 

『ちなみに地雷! 威力は大したことねぇが、音と見た目は派手だから、失禁必至だぜ! 』

 

『人によるだろ』

 

 

 注目のトップ集団では、轟と爆豪が互いに攻撃をぶちかまし合いながら、熾烈な首位争いを繰り広げていた。

 

 先頭ほど地雷が残っていて、もたついているうちに後続がどんどん追い上げてくる。

 地雷原の入り口付近では、緑谷出久が拾ったロボの装甲板を使って、地雷を爆破させた推進力で一気に吹っ飛ばんとする作戦の準備を進めている。

 

 

 

『先頭二人がリードかあ?!!! 』

 

 

 首位争いをする二人、その間を風となって駆け抜けていくのは、瞬静一。

 

 

『ここで先頭に躍り出たのは、1-A 瞬静一! 個性を使って空を飛び、地雷原も完全無視!! こんなのアリかー?!!! 』

 

『アリだろ。飛ぶだけなら爆豪もやってる』

 

 

 

 翼がはためき突風が地雷原の地面を激しく吹き散らした。

 

 静一は二人をおちょくるように低空を飛行し、そのまま抜き去った。

 

 

「なっ……!?」

 

 トップを争っていた爆豪と轟が、思わずその異形の存在を直視した。

 

「クソが……!! 俺の前を行くんじゃねぇ!! 」

 

 

 爆豪が怒髪天をつき爆破を巻き散らし、無理やり静一へ追いすがろうとする。轟も巨大な氷の柱を地面からはやして進路を妨害し、静一を撃ち落とそうと氷結を伸ばす。

 

 

 さらには地雷の爆風を背に受け、ロケットのように飛んできた緑谷出久が、爆豪と轟、さらには静一の頭上を越えて突き進んできた。

 

 

「うおおおあぁぁぁッ!!」

 

 地頭と根性で1位争いへ躍り出た緑谷、追撃する爆豪と轟。

 

 

 

 静一は更に速度を上げた。風を切り、限界を超えたスピードで上空を疾走する。

 

(プルスウルトラ……だろう? やってやるとも! 全力で! )

 

 

 

 爆豪の爆炎も、轟の氷柱も、地雷の爆風で飛んできた緑谷の猛追も――そのすべてが静一の遥か後方を虚しく通過していく。

 

 

 弾丸のように加速した静一が地雷原を超え、そのままスタジアムに戻ってくる。

 

 

『速い! 早すぎるーーーっ! 地上の猛追をあざ笑うかのように、瞬静一が空を制したーーーっ!! 瞬静一! 今、堂々のゴールインッッ――! 』

 

 

 ゴールテープを切った後。静一は優雅に空中回転を決めると時間停止、バードドーパントの変身を解き、人の姿へと戻った。

 

 

 トッと、軽やかな音を立てて両足で着地。そのまま一切の乱れもない足取りで、会場の観客全員に優雅にお辞儀をしてのけた。

 

 

 

 

『第一種目、障害物競走―――1位! 1-A、瞬静一―――ッ!!』

 

 一瞬の静寂の後、スタジアム全体を揺るがす割れんばかりの拍手と大歓声が巻き起こった!

 

 

「すげええええっ! 圧倒的じゃないか!」「空飛ぶとかズリーぞ! 」

 

 

 大歓声の渦の中、静一は髪を軽くかき上げ、観客席に向かって爽やかに手を振ってみせた。

 

 

 そして、そのわずか数秒後――。

 

 

 地雷原の2段階目の爆速ターボを決めた緑谷出久が、砂ぼこりに塗れながら凄まじい執念で駆け抜けた!

 

 

『そして2位! 地雷を逆利用した大博打野郎! 1-A、緑谷出久ーーーッ!!』

 

 

「ハァ……ハァ……! 2位……っ!」

 

 

 地面に膝をつき、肩を上下させて荒い息を吐く緑谷。そのすぐ後ろに、冷ややかな眼光で歯かみする轟が3位、僅差で悔しさに顔を歪ませた爆豪が4位で飛び込んできた。

 

 

 緑谷は砂埃にまみれた顔を上げ、前方で涼しい顔をして立つ静一を見上げた。

 

 

「……瞬……くん……」

 

 

 緑谷の目には、オールマイトとは全く異なる、底知れない「絶対的な強者」としての静一の姿が焼き付けられていた。

 

 

 静一は緑谷に歩み寄ると、優しく手を差し伸べた。

 

 

「すごいね、緑谷くん。あの状況で地雷を使うなんて素晴らしい発想だ。ナイスファイト」

 

「……っ、ありがとう、瞬くん……!」

 

 緑谷が悔しそうにしながらその手を取る。

 

 これにて第一種目は終了。上位42名が予選通過となる。

 

 雄英体育祭はまだまだ始まったばかりである。

 

 

 




障害物競走、ぶっちゃけ空飛べたらほぼ勝ちだと思うんですよね。
ロボも銃火器とかなさそうですし。障害物ぜんぶ素通りできそう。

今回主人公がやったこと(空飛んでぜんぶ素通り)顰蹙買うんじゃないかって?
……ほら、最後尾から巻き返してトップでゴールっていう演出したから。
手ぇ抜いてるのバレバレ? ……モニターに映ってるのはほとんど先頭の映像だって(最後尾がどんなかなんて誰も気に留めないって……)。



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