『ANOMALOCARIS』
『BIRD』
『CITY』
『???』
『EYES』
『???』
『GENE』
『HUNGRY』
『INVISIBLE』
『JEWEL』
『???』
『LAUGH』
『MEMORY』
『NIGHTMARE』
『OLD』
『???』
『QUEST』
『REACTOR』
『???』
『???』
『???』
『???』
『WEATHER』
『???』
『ZONE』
「行こうか、砂藤くん」
「おう!」
僕の呼びかけに、砂藤くんが力強く拳を叩き合わせた。
ビル最上階──僕たちヴィランチームが防衛すべき「核兵器(ハリボテ)」が置かれた部屋。
窓からは外の演習場(市街地)の光景が一望できるが、これから行われるのは密室での屋内戦だ。制限時間スタートまでのカウントダウンが、配られた小型の通信機から静かに刻まれている。
「なあ瞬、作戦はどうする? 俺が前線に出て、侵入してくる相手を食い止めるか? 自由に動き回れる広い室内でじっと待ってるより、狭い廊下で迎撃した方が俺の個性も活きそうだしな」
砂藤くんが太い腕を組みながら、頼もしく提案してくれた。実に素直で力強い、いい奴だ。
砂藤くんには悪いけどその提案は否定させてもらう。
「ううん、砂藤くん。とりあえずここで待ち構えて、ヒーローチームが建物の中に入ったら僕の個性を使う」
「個性? そういえば、個性の話もしてなかったな……。俺の個性は『シュガードープ』! 糖分を摂取することで3分間身体能力が上がる個性だ! 」
「増強系か……! 腐らない良い個性だね! じゃあ次はこっちの個性の説明だね。僕の個性は『変身』。姿を変えて、その姿によって色んな能力を使い分けることができる個性なんだ! 見た目がだいぶヴィランっぽくなるのが欠点かな? 」
「変身か! そういえば瞬は体力テストでも個性使ってなかったな」
「うん、体力テストで使うにはいろいろピーキーでね。でも今回の戦闘訓練なら役に立つと思うんだ。特に砂藤くんとならね……」
「作戦があるんだな? 」
「聞いてくれる? 」
「聞かせてくれ! 俺もやるからには勝ちたいからな! 」
「僕が今回変身するのは『ハングリー』って呼んでる姿なんだけど、この形態に変身すると半径100mくらいに強烈な【空腹感】と【脱力感】を撒き散らす特殊な波動を放つんだ。生半可な精神力や体力じゃ、立っていることすらできなくなる。だから普通なら仲間を巻き込まないように、僕一人で動くべきなんだけど……」
「砂藤くん、コスチュームに入れてるでしょ? 食べるもの」
「ああ、要望出したからな。個性の関係で使用も認められてる。そうか、巻き込まれても食ってればいいのか? 」
「うん、試したことはないけど、来るとわかっていれば空腹感を覚えても食べながら行動可能だと思うんだ。そうなれば制限時間いっぱい粘ればいいだけなんだけど、この能力だいぶ危険なんだよね……制限時間は残り10分だけどその間ずっと飢餓状態にしてたら後に響きそうだから、砂藤くんが倒れてる2人から捕縛テープを奪って逆に拘束してほしいんだ。そこまでいったら、流石にオールマイト先生もゲームセットにしてくれると思うし」
「確かに、ルールではヒーローが捕縛された場合は言ってなかったけど、普通に考えてヴィランが捕まって試合終了するなら、ヒーローが捕まっても試合終了だよな。わかった! それでいこうぜ! 」
そうこうしているうちに、5分が経過してそろそろヒーロー組――青山くんと三奈ちゃんが潜入してくる時間になった。
◆
「時間だ。もう入ったんじゃねぇか? 」
「わかった。じゃあいくよ」
僕は砂藤くんに声をかけると、モニターで見ているみんなにも分かりやすいように、ゆっくりと右手を挙げ、
「変身」
フィンガースナップ。本当の個性『時間停止』を発動する。
静止する世界。僕の斜め前で構える砂藤くんもぴたりと凍り付いたように動かない。
僕以外は、知覚さえできない刹那の時間。
ガイアメモリを手中に取出し、起動する。
『ハングリー! 』
起動したガイアメモリは、止まった時の中で宙を舞い、浮かび上がる僕のコネクターに突き刺さり、埋め込まれていく。
そうして僕はハングリードーパントへの変身を完了した。
時は動き出す。
「――うおっ! それがお前の個性なのか?! すっげぇ! 」
「ヴィランっぽいって言ってくれていいよ。自分でもそう思うし」
まぁ、今回僕らヴィランチームだし、それっぽいほうが加点になったりするのかな?
「それじゃあ、作戦開始だ! 砂藤くん、頑張って耐えてくれよ! 」
「おうっ! 」
ところ変わって、メモリールーム。
「あれが瞬の個性か! 」
「変身とかスゲェ! 見た目はちょっとあれだけども! 」
「なんか……可愛い……」
姿を変える、瞬静一の個性の発動に湧く1-Aの面々。
(あれが、瞬少年の個性……! 入学試験で見た姿ともまた違う! 姿によって能力が異なるとは聞いているが、あれはなんだ……? )
「ねぇ見て! ヒーローチーム様子変じゃない? 」
葉隠の声で皆がモニターに映る青山・芦戸両名に目を向ける。
「なんか、苦しそう? 」
「おい、急にうずくまったぞ! 」
「お腹おさえて……もしかしてお腹痛いのかな……? 」
「少し違いますわね……、痛いとか苦しいとかより、力が入らないという風に見えますわ」
「ハラ痛じゃないってことは? 」
「空腹……飢餓状態ということではないか? 」
常闇が言い当てたそれに全員が納得する。
「あ、砂藤なんか食ってるぞ! 走り出した! 早ぇ! 」
「なんで砂藤は動けるんだ? 」
(逆だな。奴も能力の対象になってる。だから糖分を補給した。だが、なんでわざわざ敵に近づく? )
「ケロ。もしかして、動けないヒーローチームを逆に捕まえる気かしら? 」
「なんと! オールマイト先生! それはルール違反では!? 」
「んー! 飯田少年、ナイスな質問だ! 結論から言うと、ルール違反ではない! ヴィランが逆にヒーローを捕えても、今回の想定では問題ない! 恐らくヴィランチームの二人は、『ヒーローがヴィランを捕まえて試合が終わるなら、逆でもアリ! 』と考えたんだろう! それは正しい! 」
「でも、なんでそんなことするんだ? 青山たち動けないんだからそのままタイムアップまで粘ればいいんじゃ」
「何言ってんの、よく見なよ。二人とも相当キツそうじゃん。だから早く終わらせるために作戦立てたんじゃない? 」
耳郎の指摘に疑問を感じていた面々も納得する。
確かに無力化と言えば聞こえはいいが、相当負担がかかっていそうだ。できるだけ早めに解放してあげたい気持ちもわかる。
「……これ勝負はもうついてるんじゃ? 」
モニターに映るのは、変身した後微動だにせず不気味に佇む静一と、当分補給をしながら階下に降りる砂藤。そして頽れてピクリとも動けない青山と芦戸。
そして遂に二人を発見した砂藤が、ヒーローチームの荷物から【捕縛用テープ】を奪うと、抵抗できない二人を逃がさないようガッチリとぐるぐる巻きにして固定した!
二人が確保されたのを確認して、オールマイトは訓練の終了を宣言した。
「…………………………」
巨大モニターの前で観戦していた1-Aの生徒たちは、改めてざわついていた。話題はもちろん、瞬のあの『変身』だった。
「な……なんだったんだ……? 瞬の『個性』……?」
切島くんがゴクリと唾を飲み込み、喉を鳴らしながら震える声で呟いた。
「一瞬で……芦戸と青山が動けなくなったぞ……? 常闇は空腹って言ってたけど、腹が減って動けなくなって言うのかよ……!? 攻撃らしい攻撃なんて一切してねぇのに! 」
「瞬くんのあの変身……凄まじい威圧感でしたわね……。画面越しでも伝わってくるほど、まるで本物の悪魔か怪物のようでした……」
百ちゃんも胸元に手を当て、青ざめた顔で画面を見つめている。
爆豪くんですら、不快そうに顔を歪めながらも、一言も喋らずに静一の「異形」と「理不尽な能力」を鋭い眼光で睨みつけていた。
(一言も発さず……広範囲に影響を与え、完封した……。砂藤少年が携帯食料を持っていたのは偶然だとして、それを組み込んで捕縛役に選んだこと……合理的で隙のない素晴らしい連携だ。だが……あの姿、あの全身から溢れ出る禍々しい威圧感は……一体何なんだ……!?)
オールマイトすらも、マッスルフォームを強ばらせ、額に一筋の冷や汗を流していた。
終了の合図があったのと同時に、僕は時間を止めてハングリーメモリの変身を解除した。
そうして軽やかに階段を下りて砂藤くんと合流した。
「ふぅ……お疲れ様、砂藤くん! ちゃんと捕まえてくれてありがとう! ナイス連携だったね」
「おう! 瞬の個性のおかげだ! マジで胃袋がひっくり返りそうな空腹感だったけど、聞いてたから何とかなったぜ! お前の作戦通りにして大正解だった! 」
砂藤くんと爽やかにハイタッチを交わしたあと、僕は床でぐったりしている二人へと歩み寄った。
「ごめんね、三奈ちゃん、青山くん。大丈夫?」
しゃがみ込み、優しく声をかける。
三奈ちゃんはまだ空腹の脱力感から完全には抜け出せず、はぁはぁと荒い息を吐きながら、涙目で僕を見上げてきた。
「ね、ねぇ……さっきの……なに……? 私……お腹が減りすぎて、本当に死ぬかと……」
「僕の個性の特殊能力で、周囲に強烈な空腹感を与えちゃうんだ。苦しい思いをさせてごめんね。砂藤くん、なにか食べるものある? 」
「あー、こんなんしかないけど……」
砂藤くんから受け取ったイチゴ味のキャンディの包みを素早く剥がし、僕は三奈ちゃんの小さな口元へ優しく運んであげる。
「あむ……っ」
キャンディを舐めて、糖分が行き渡ると、三奈ちゃんの顔に少しずつ赤みが戻ってきた。
「ん……おいしい……。あ、ありがと、えっと……」
「瞬。瞬 静一だよ。芦戸さん」
さっきまで悪夢のような空腹感に苦しんでいたはずなのに、目の前には自分を心配そうに覗き込む超絶美形のイケメン。
三奈ちゃんの顔が、空腹とは別の理由でポッと赤くなった。
(やだ……顔が良すぎる……! さっきの恐怖、一瞬で吹き飛んじゃったじゃん……っ!)
隣で砂藤くんから角砂糖を大量に口に放り込まれた青山くんも恍惚とした表情を浮かべている。
(ふふっ、三奈ちゃんの苦しむ顔も可愛かったし、最後に飴を舐める顔も最高にエロかったね♪ 役割分担してペアでうまく連携したことで、僕の評価も上がるだろうし。うーん、満点満点! )
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