無個性は個性をつくる   作:匿名希望

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第118話 二人のワン・フォー・オール

「まず、お前らから壊す」

 

死柄木が笑った直後、地面が爆ぜた。

 

危機感知が鳴るより早く、視界から死柄木の姿が消える。違う、消えたんじゃない。踏み込んだだけで、僕の目が追いつかない速度まで一気に加速したんだ。

 

「少年!」

 

オールマイトの声と同時に、正面から衝撃が来る。

 

僕を狙った死柄木の拳を、オールマイトが横から叩き落としていた。二人の腕がぶつかっただけで空気が爆発し、地面へ放射状の亀裂が走る。

 

そこへ僕も踏み込む。

 

ワン・フォー・オール。

 

出力を上げる。

 

右足へ力を集め、死柄木の脇腹へ蹴りを叩き込んだ。

 

「ぐっ!」

 

入った。

 

普通なら、それだけで何十メートルも吹き飛ぶ威力だ。

 

でも死柄木は数メートル滑ったところで片足を地面へ突き立て、強引に止まった。

 

「硬すぎる……!」

 

超再生は止まっている。

 

『崩壊』も使えない。

 

オール・フォー・ワン由来の個性だって、周囲の常時抹消型が全部封じている。

 

それなのに。

 

今の一撃で。

 

骨が折れた感触すらなかった。

 

◇ ◇ ◇

 

死柄木の身体は、個性を使って強いわけじゃない。

 

長い改造を受けた肉体そのものが、オールマイトに近い領域まで引き上げられている。

 

だから。

 

抹消されても。

 

強い。

 

分かっていた。

 

作戦会議でも。

 

何度も聞いていた。

 

でも。

 

実際に殴ると。

 

理解の意味が変わる。

 

「考えてる暇あるか?」

 

声。

 

近い。

 

危機感知。

 

頭の奥で警報が弾ける。

 

僕は反射的に身体を沈めた。

 

頭上を死柄木の拳が通過する。

 

風圧だけで。

 

髪が引っ張られる。

 

そのまま死柄木は腕を振り切らず、肘を落としてきた。

 

黒鞭。

 

腕へ巻きつける。

 

軌道をずらす。

 

地面へ。

 

肘が刺さる。

 

轟音。

 

直径数メートルの地面が沈んだ。

 

「チッ」

 

死柄木が黒鞭を掴む。

 

まずい。

 

解除。

 

ほんの一瞬遅ければ。

 

僕ごと引き寄せられていた。

 

◇ ◇ ◇

 

横から。

 

オールマイト。

 

「CAROLINA――!」

 

死柄木が振り向く。

 

「SMASH!」

 

両腕を交差させるような一撃が死柄木の上半身へ入る。

 

空気が捻じれる。

 

死柄木の身体が地面から浮いた。

 

僕は。

 

もう動いている。

 

浮遊。

 

足を地面から離す。

 

黒鞭を射出。

 

空中へ飛ばされた死柄木の足首へ巻きつける。

 

引く。

 

さらに。

 

発勁。

 

それまでの踏み込みで溜めていた力を解放する。

 

死柄木を。

 

オールマイトの正面へ。

 

戻す。

 

「オールマイト!」

 

「分かっている!」

 

拳。

 

腹。

 

鈍い音じゃない。

 

爆発みたいな音がした。

 

死柄木の身体が。

 

今度こそ。

 

遠くへ飛ぶ。

 

◇ ◇ ◇

 

僕は追う。

 

待たない。

 

あの身体には超再生がない。

 

なら。

 

今だけは。

 

与えたダメージが残る。

 

もし個性が使えたら――なんてものは知らない。

 

でも。

 

これまでの死柄木との戦闘では。

 

どれだけ傷つけても。

 

その場で治っていた。

 

今は違う。

 

一発ずつ。

 

積み上げられる。

 

それなら。

 

押し切れる。

 

「逃がさない!」

 

黒鞭を地面へ。

 

引く。

 

加速。

 

浮遊で抵抗を減らし。

 

さらに。

 

変速。

 

自分自身の速度を引き上げる。

 

景色が。

 

引き延ばされる。

 

死柄木がまだ着地していない。

 

追いつく。

 

拳。

 

「DETROIT――!」

 

死柄木の顔が。

 

こちらを向く。

 

「SMASH!」

 

殴った。

 

手応え。

 

頬が変形する。

 

血が飛ぶ。

 

それでも。

 

死柄木の目は。

 

閉じない。

 

「やっぱ」

 

殴られたまま。

 

笑った。

 

「近くに来るよな」

 

危機感知。

 

最大。

 

まずい。

 

◇ ◇ ◇

 

死柄木の左手が。

 

膨らんだ。

 

一瞬。

 

そう見えた。

 

次の瞬間。

 

腕そのものから。

 

大量の指が伸びた。

 

「なっ――!」

 

個性じゃない。

 

抹消は続いている。

 

なのに。

 

指。

 

手。

 

さらにその先から。

 

また指。

 

肉が。

 

枝分かれするように増殖していく。

 

黒鞭を出す。

 

間に合わない。

 

無数の指が。

 

視界を埋める。

 

「少年!」

 

オールマイトの声。

 

僕は腕で顔を守る。

 

衝撃。

 

全身を。

 

巨大な波に飲まれたみたいに叩かれた。

 

身体が地面へ落ちる。

 

一度。

 

二度。

 

三度。

 

転がる。

 

黒鞭を地面へ刺し。

 

強引に止まった。

 

「ぐ……!」

 

腕が。

 

痺れている。

 

骨は。

 

大丈夫。

 

ワン・フォー・オールで強化していても。

 

それでも。

 

重い。

 

◇ ◇ ◇

 

「緑谷!」

 

オールマイトが。

 

僕と死柄木の間へ入る。

 

伸びた無数の手を。

 

拳で薙ぎ払う。

 

千切れる。

 

潰れる。

 

だが。

 

止まらない。

 

「これ……個性じゃないのか!」

 

「違う!」

 

僕は起き上がる。

 

事前に聞いていた。

 

死柄木の身体は。

 

大量の個性を内包し続けた結果。

 

個性特異点へ近づき。

 

肉体そのものが。

 

その負荷へ適応し始めている。

 

個性を発動しているわけじゃない。

 

身体が。

 

変わっている。

 

だから。

 

抹消では止まらない。

 

「気持ち悪いだろ」

 

手の塊の向こうで。

 

死柄木が笑う。

 

「俺もそう思う」

 

◇ ◇ ◇

 

無数の指が地面を這う。

 

速い。

 

一本一本が。

 

ただの指じゃない。

 

人間の腕に近い太さのものもある。

 

絡みつけば。

 

終わる。

 

僕は煙幕を広げた。

 

視界を。

 

奪う。

 

死柄木が。

 

鼻で笑う。

 

「それで隠れたつもりか?」

 

返事はしない。

 

危機感知。

 

黒鞭。

 

振動。

 

音。

 

全部。

 

使う。

 

煙の中で。

 

僕は上へ。

 

浮遊。

 

そのまま。

 

変速。

 

移動速度を落とす。

 

煙の動きに。

 

自分の気配を紛らわせる。

 

死柄木の手が。

 

別方向を薙ぐ。

 

今。

 

◇ ◇ ◇

 

黒鞭。

 

四本。

 

違う角度から。

 

死柄木の本体へ。

 

一本は。

 

手の群れに弾かれる。

 

二本目。

 

腕。

 

三本目。

 

腰。

 

四本目。

 

首の近く。

 

「捕まえた!」

 

引く。

 

でも。

 

逆。

 

死柄木が。

 

僕を引いた。

 

「っ!」

 

力が違う。

 

空中から。

 

一気に引き寄せられる。

 

途中。

 

無数の手。

 

口を開けた罠みたいに。

 

待っている。

 

黒鞭を解除。

 

浮遊。

 

変速。

 

速度を。

 

横へ。

 

変更。

 

身体が。

 

慣性を無視するように。

 

軌道を折る。

 

指の隙間。

 

抜ける。

 

一瞬遅れて。

 

背後で。

 

無数の手が閉じた。

 

◇ ◇ ◇

 

「今だ!」

 

オールマイト。

 

煙幕の外から。

 

一直線。

 

死柄木の側面へ。

 

拳。

 

死柄木は。

 

手の塊を。

 

壁にする。

 

衝突。

 

空気が割れる。

 

指が。

 

何十本も吹き飛ぶ。

 

その奥へ。

 

オールマイトが。

 

さらに踏み込む。

 

「TEXAS――!」

 

死柄木の本体。

 

肩。

 

「SMASH!」

 

直撃。

 

身体が。

 

横へ飛ぶ。

 

僕は。

 

その先へ先回りする。

 

発勁。

 

蓄積。

 

変速。

 

加速。

 

ワン・フォー・オール。

 

全身。

 

「うおおおおおっ!」

 

拳を。

 

振り抜く。

 

死柄木が。

 

腕を交差。

 

受ける。

 

衝撃。

 

地面。

 

沈む。

 

でも。

 

倒れない。

 

「二人で」

 

死柄木が。

 

歯を見せる。

 

「これかよ!」

 

反撃。

 

肘。

 

僕の頬。

 

危機感知で分かっていた。

 

分かっていて。

 

完全には避けられない。

 

顔をずらす。

 

直撃を外す。

 

それでも。

 

視界が白くなる。

 

身体が回る。

 

◇ ◇ ◇

 

死柄木は。

 

そこへ追撃しようとした。

 

だが。

 

オールマイトが。

 

止める。

 

拳。

 

拳。

 

膝。

 

肩。

 

二人の肉弾戦が。

 

目で追うのも難しい速度で続く。

 

オールマイトは。

 

全盛期に近い。

 

でも。

 

完全な若者じゃない。

 

空木君が作った人工個性で。

 

筋力。

 

速度。

 

耐久。

 

反応。

 

循環器。

 

代謝。

 

昔の傷。

 

全部。

 

補っている。

 

だから。

 

戦える。

 

目の前で。

 

昔の映像でしか知らなかったオールマイトみたいに。

 

いや。

 

今の。

 

僕の先生として。

 

戦っている。

 

「少年!」

 

呼ばれる。

 

意識が。

 

戻る。

 

「はい!」

 

僕も。

 

入る。

 

◇ ◇ ◇

 

死柄木の右。

 

オールマイト。

 

左。

 

僕。

 

同時。

 

挟む。

 

死柄木が。

 

身体を沈める。

 

無数の手が。

 

地面から。

 

壁みたいに持ち上がる。

 

オールマイト。

 

正面から。

 

破る。

 

僕は。

 

上。

 

浮遊。

 

黒鞭で。

 

さらに加速。

 

危機感知。

 

右から。

 

指の束。

 

変速。

 

減速。

 

止まる。

 

目の前を。

 

指が通る。

 

再加速。

 

その上を。

 

踏む。

 

発勁。

 

解放。

 

死柄木の肩へ。

 

蹴り。

 

「ぐっ!」

 

初めて。

 

明確に。

 

体勢が崩れた。

 

◇ ◇ ◇

 

オールマイトが。

 

逃さない。

 

腕を掴む。

 

「少年!」

 

黒鞭。

 

腰。

 

脚。

 

巻きつける。

 

死柄木を。

 

その場に固定。

 

一瞬。

 

だけ。

 

「離せ!」

 

無数の手が。

 

僕へ。

 

オールマイトへ。

 

同時に伸びる。

 

危機感知が。

 

頭を焼く。

 

僕は。

 

避けない。

 

黒鞭を。

 

さらに増やす。

 

「今です!」

 

オールマイトの拳。

 

死柄木の胸。

 

僕の蹴り。

 

腹。

 

同時。

 

轟音。

 

死柄木の身体が。

 

黒鞭ごと。

 

吹き飛ぶ。

 

僕も。

 

引かれる。

 

解除。

 

着地。

 

◇ ◇ ◇

 

死柄木は。

 

今度はすぐに起きなかった。

 

数秒。

 

地面へ手をつく。

 

血を吐く。

 

やっと。

 

効いている。

 

超再生は。

 

ない。

 

積み重なっている。

 

そう思った。

 

次の瞬間。

 

死柄木の身体が。

 

さらに変わった。

 

「……何だ」

 

オールマイトの声。

 

死柄木の胴。

 

肩。

 

脚。

 

そこから。

 

大量の手が。

 

覆うように生えていく。

 

さっきの。

 

攻撃するための指とは違う。

 

身体そのものを。

 

包む。

 

守る。

 

外殻。

 

みたいに。

 

筋肉も。

 

大きくなる。

 

左腕。

 

特に。

 

異常に膨らむ。

 

人の身体が。

 

個性なしで。

 

ここまで変わる。

 

「個性特異点……」

 

僕の口から。

 

言葉が漏れる。

 

身体が。

 

大量の個性を抱えた結果。

 

一つの生命として。

 

耐えるために。

 

変化している。

 

個性を使えないなら。

 

身体だけで。

 

最適化する。

 

そんな。

 

滅茶苦茶な適応。

 

◇ ◇ ◇

 

死柄木が立ち上がった。

 

さっきより。

 

大きい。

 

重い。

 

なのに。

 

遅くなっていない。

 

地面を蹴る。

 

危機感知。

 

来る。

 

「オールマイト!」

 

二人。

 

左右へ。

 

別れる。

 

死柄木の拳が。

 

二人の間。

 

地面へ。

 

落ちる。

 

爆発。

 

じゃない。

 

ただの。

 

打撃。

 

それだけで。

 

地面が。

 

大きく陥没する。

 

瓦礫。

 

飛ぶ。

 

僕は黒鞭で。

 

弾く。

 

オールマイトは。

 

拳の風圧で。

 

逸らす。

 

死柄木は。

 

もう次へ。

 

◇ ◇ ◇

 

速い。

 

さっきより。

 

さらに。

 

危機感知が。

 

ほとんど鳴りっぱなし。

 

右。

 

避ける。

 

左。

 

黒鞭で身体を引く。

 

上。

 

浮遊。

 

無数の手。

 

空まで。

 

追ってくる。

 

煙幕。

 

意味は。

 

少しある。

 

視線は遮れる。

 

でも。

 

手が多すぎる。

 

範囲そのものを。

 

潰してくる。

 

なら。

 

正面。

 

僕は。

 

煙から出る。

 

死柄木の目。

 

合う。

 

「来たな」

 

「行く!」

 

◇ ◇ ◇

 

変速。

 

一段。

 

二段。

 

三段。

 

身体が。

 

前へ。

 

飛ぶ。

 

死柄木の拳。

 

危機感知。

 

軌道。

 

読める。

 

身体を。

 

低く。

 

滑らせる。

 

拳の下。

 

懐。

 

黒鞭。

 

死柄木の腕へ。

 

固定。

 

発勁。

 

脚。

 

解放。

 

「SMASH!」

 

顎。

 

蹴り上げる。

 

死柄木の頭が。

 

跳ねる。

 

でも。

 

手の外殻が。

 

衝撃を分散した。

 

効いてる。

 

ただ。

 

足りない。

 

◇ ◇ ◇

 

「緑谷!」

 

背後から。

 

オールマイト。

 

分かっている。

 

僕は。

 

黒鞭を引く。

 

死柄木の身体を。

 

ほんの少し。

 

後ろへ。

 

重心。

 

ずらす。

 

オールマイトの拳。

 

そこへ。

 

入る。

 

「DETROIT――SMASH!」

 

死柄木の背中。

 

外殻。

 

砕ける。

 

血。

 

散る。

 

死柄木が。

 

振り向きざま。

 

オールマイトを殴る。

 

「オールマイト!」

 

腕で。

 

受ける。

 

でも。

 

身体が飛ぶ。

 

遠く。

 

地面を。

 

何度も。

 

跳ねる。

 

「先生!」

 

追おうとする。

 

危機感知。

 

前。

 

死柄木。

 

僕へ。

 

「余所見すんな」

 

拳。

 

間に合わない。

 

黒鞭。

 

腕へ。

 

引く。

 

軌道を。

 

ずらす。

 

でも。

 

肩。

 

入った。

 

◇ ◇ ◇

 

世界が。

 

回った。

 

地面。

 

空。

 

地面。

 

息が。

 

抜ける。

 

身体が止まる前に。

 

危機感知。

 

また。

 

立て。

 

動け。

 

僕は。

 

黒鞭を地面へ。

 

身体を。

 

強引に引き起こす。

 

死柄木が。

 

もう。

 

目の前。

 

「捕まえた」

 

巨大な左手。

 

僕の頭へ。

 

伸びる。

 

ワン・フォー・オール。

 

狙い。

 

それ。

 

◇ ◇ ◇

 

触れさせない。

 

浮遊。

 

上。

 

死柄木も。

 

跳ぶ。

 

追ってくる。

 

煙幕。

 

全開。

 

視界。

 

紫の煙。

 

危機感知。

 

後ろ。

 

僕は。

 

変速。

 

急停止。

 

死柄木が。

 

前へ。

 

通る。

 

その背中へ。

 

黒鞭。

 

十本。

 

絡める。

 

発勁。

 

全部。

 

解放。

 

「下だ!」

 

黒鞭を。

 

地面へ。

 

叩きつける。

 

死柄木の巨体が。

 

空から。

 

落ちる。

 

着弾。

 

地面が。

 

大きく割れる。

 

◇ ◇ ◇

 

「少年!」

 

声。

 

オールマイト。

 

立っている。

 

腕。

 

少し。

 

下がっている。

 

さっきの一撃。

 

効いている。

 

でも。

 

動ける。

 

「大丈夫ですか!」

 

「問題ない!」

 

嘘。

 

多分。

 

完全には。

 

大丈夫じゃない。

 

それでも。

 

戦える。

 

僕も。

 

肩が痛い。

 

息も。

 

速い。

 

変速の負荷も。

 

少しずつ。

 

来ている。

 

それでも。

 

死柄木より。

 

条件はいい。

 

あいつは。

 

治らない。

 

こっちは。

 

二人。

 

個性も。

 

使える。

 

勝てる。

 

そう。

 

思う。

 

でも。

 

死柄木は。

 

立つ。

 

◇ ◇ ◇

 

地面の穴から。

 

手。

 

一つ。

 

二つ。

 

何十。

 

何百。

 

指が。

 

土を掴む。

 

その中心から。

 

死柄木が。

 

身体を起こす。

 

血だらけ。

 

外殻も。

 

壊れている。

 

でも。

 

目。

 

まだ。

 

死んでいない。

 

「いいな」

 

笑っている。

 

「やっとゲームっぽくなってきた」

 

オールマイトが。

 

僕の横へ来る。

 

「少年」

 

「はい」

 

「次で大きく削る」

 

「分かりました」

 

師弟。

 

並ぶ。

 

死柄木。

 

正面。

 

常時抹消型は。

 

まだ。

 

一度も視線を切っていない。

 

空木君の個性兵が。

 

周囲を。

 

完全に封鎖している。

 

逃げ道も。

 

ない。

 

増援も。

 

必要なら。

 

来る。

 

でも。

 

これは。

 

僕たちが。

 

やる。

 

◇ ◇ ◇

 

僕は呼吸を整える。

 

ワン・フォー・オール。

 

身体強化。

 

変速。

 

発勁。

 

危機感知。

 

黒鞭。

 

煙幕。

 

浮遊。

 

全部。

 

使える。

 

ずっと。

 

練習してきた。

 

一つずつ。

 

暴れた個性を。

 

自分のものにしてきた。

 

最初は。

 

腕一本。

 

壊さないと。

 

殴れなかった。

 

今は。

 

違う。

 

「オールマイト」

 

「何だい」

 

「合わせられます」

 

一瞬。

 

先生が。

 

笑った。

 

「ああ」

 

拳を。

 

握る。

 

「私もだ」

 

◇ ◇ ◇

 

死柄木が。

 

再び。

 

地面を蹴る。

 

同時。

 

僕も。

 

オールマイトも。

 

前へ。

 

三人。

 

中央。

 

衝突。

 

死柄木の右拳。

 

オールマイト。

 

受ける。

 

左。

 

僕。

 

黒鞭で。

 

外へ。

 

逸らす。

 

死柄木の膝。

 

僕の腹。

 

危機感知。

 

足を。

 

浮遊で。

 

抜く。

 

身体。

 

上。

 

死柄木の頭上。

 

発勁。

 

蹴り。

 

肩。

 

オールマイト。

 

腹。

 

拳。

 

連続。

 

死柄木。

 

それでも。

 

倒れない。

 

◇ ◇ ◇

 

手の外殻が。

 

弾ける。

 

指。

 

伸びる。

 

僕の脚へ。

 

黒鞭。

 

先に。

 

絡める。

 

引く。

 

逆に。

 

指束を。

 

固定。

 

オールマイトが。

 

根元へ。

 

拳。

 

破壊。

 

死柄木の腕。

 

開く。

 

胸。

 

無防備。

 

「今です!」

 

二人。

 

同時。

 

僕は。

 

変速。

 

最大。

 

発勁。

 

全解放。

 

オールマイト。

 

全身。

 

沈み込む。

 

死柄木の目が。

 

見開かれる。

 

拳。

 

二つ。

 

左右から。

 

胸部へ。

 

叩き込む。

 

轟音。

 

今までで。

 

一番。

 

大きい。

 

衝撃が。

 

戦場全体を。

 

走った。

 

◇ ◇ ◇

 

死柄木の身体が。

 

地面から消える。

 

遠く。

 

飛ぶ。

 

何百メートル。

 

地面を。

 

削る。

 

その先。

 

停止。

 

砂煙。

 

僕は。

 

息を吐く。

 

膝が。

 

少し。

 

震える。

 

変速。

 

使いすぎた。

 

でも。

 

まだ。

 

動ける。

 

「効いた……」

 

「油断するな、少年」

 

オールマイト。

 

すぐ。

 

構える。

 

僕も。

 

危機感知へ。

 

意識。

 

向ける。

 

砂煙の向こう。

 

反応。

 

ある。

 

◇ ◇ ◇

 

人影が。

 

出る。

 

死柄木。

 

立っている。

 

片腕。

 

下がっている。

 

胸。

 

大きく。

 

凹んでいる。

 

血。

 

口から。

 

流れる。

 

超再生が。

 

あれば。

 

一瞬で。

 

戻る。

 

今は。

 

戻らない。

 

それでも。

 

歩く。

 

一歩。

 

もう一歩。

 

「……しつこい」

 

僕が呟く。

 

死柄木が。

 

聞こえたみたいに。

 

笑った。

 

「お互い様だろ」

 

その身体の周囲で。

 

また。

 

手が。

 

蠢く。

 

変異。

 

まだ。

 

止まらない。

 

◇ ◇ ◇

 

危機感知が。

 

鳴る。

 

さっきまでとは。

 

違う。

 

強い。

 

一つの攻撃じゃない。

 

死柄木の身体全体から。

 

嫌な感じがする。

 

オールマイトも。

 

気づいた。

 

「来るぞ!」

 

「はい!」

 

死柄木が。

 

姿勢を低くする。

 

肉体の変異。

 

オールマイト級の身体能力。

 

それだけ。

 

それだけなのに。

 

圧力が。

 

凄い。

 

僕は。

 

拳を握る。

 

決着は。

 

まだ。

 

ついていない。

 

でも。

 

次。

 

次のぶつかり合いで。

 

大きく。

 

動く。

 

そう。

 

分かった。

 

「死柄木!」

 

呼ぶ。

 

死柄木が。

 

顔を上げる。

 

「何だよ」

 

「ここで終わらせる!」

 

「やってみろ」

 

三度目。

 

地面が。

 

爆ぜた。

 

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