無個性は個性をつくる   作:匿名希望

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第23話 一週間

一週間もあれば。

 

前日の私は、そう考えていた。

 

実際。

 

一週間かかった。

 

◇ ◇ ◇

 

一日目。

 

学校へ行く前に、『創造』と『コピー』の培養槽を確認する。

 

どちらも前日に入れた小改変は維持されていた。

 

崩壊なし。

 

異常増殖なし。

 

主要構造も残っている。

 

だから次へ進める。

 

ただし、すぐには触らない。

 

培養量が足りない。

 

変更した因子を一つしか持っていない状態で次の改変を重ねれば、失敗した時に比較対象がなくなる。

 

増やす。

 

分ける。

 

一部を保存。

 

一部へ次の変更。

 

それが基本だった。

 

培養槽の条件を設定する。

 

私は制服へ着替えた。

 

家を出る。

 

学校へ行く。

 

授業を受ける。

 

課題を終える。

 

帰宅する。

 

その間に因子が増える。

 

帰ってから測定。

 

安定していれば次の変更。

 

この工程は、私がどれだけ速く考えられても短縮できない。

 

細胞や個性因子が増える時間は、考える速度とは別だった。

 

◇ ◇ ◇

 

帰宅。

 

まず『創造』。

 

外部エネルギー入力側。

 

昨日は入力経路の一部を変えただけ。

 

今日は光吸収系の既存因子構造を小さく接続する。

 

そのまま付けるわけではない。

 

『創造』側が外部入力として認識できる形へ調整する。

 

一度目。

 

過剰反応。

 

生成機構まで信号が届かず、途中で因子の一部が不安定化。

 

失敗。

 

保存していた系列からやり直す。

 

接続箇所を一つずらす。

 

入力強度を落とす。

 

二度目。

 

光への反応。

 

微弱。

 

生成には足りない。

 

ただし。

 

脂肪消費側とは別の経路で、外部からエネルギーが入った。

 

成功。

 

私は記録する。

 

ここで止める。

 

もう一段変えたい。

 

だが今やれば、今の成功個体まで失う可能性がある。

 

培養。

 

増やす。

 

明日。

 

次。

 

『コピー』。

 

接触した人間から情報を読む部分を、外部から与えた設計情報へ置き換える。

 

昨日、ごく一部だけ反応した。

 

今日はその入力範囲を広げる。

 

既知の単純な因子構造を使う。

 

全体ではない。

 

発動に関係しない一部分。

 

情報入力。

 

変換。

 

反応。

 

一部一致。

 

その後。

 

元へ戻る。

 

復元機構が動いた。

 

想定通り。

 

今日はここまで。

 

復元機構を完全に壊す前に、どこまで変換側と独立しているか確認する必要がある。

 

培養。

 

保存。

 

次。

 

夕食。

 

入浴。

 

睡眠。

 

研究を続けてもいいが、翌日の判断速度が落ちる。

 

一晩で終わる研究ではない。

 

なら、寝た方がいい。

 

◇ ◇ ◇

 

二日目。

 

朝。

 

『創造』の改変個体は増えていた。

 

『コピー』も同じ。

 

学校へ行く前に一部を分ける。

 

保存。

 

培養継続。

 

学校。

 

帰宅。

 

再開。

 

『創造』へ今度は熱入力系を追加する。

 

光だけに限定すると、暗い場所で効率が落ちる。

 

熱。

 

光。

 

将来的には電気でも構わない。

 

ただ、最初から入力形式を増やしすぎると原因を追えない。

 

まず二つ。

 

光。

 

熱。

 

それぞれを取り込み。

 

共通の蓄積側へ送る。

 

問題は蓄積だった。

 

入力してすぐ使うだけなら簡単。

 

だが。

 

研究設備として使うなら、余っている時に溜めておいた方がいい。

 

私は既存の蓄積系因子を比較する。

 

そのまま移植すると干渉が大きい。

 

必要部分だけ残す。

 

改変。

 

失敗。

 

次。

 

不安定。

 

次。

 

維持。

 

ただし漏れる。

 

蓄積したエネルギーが少しずつ逃げる。

 

実用にはならない。

 

「ここですね」

 

漏出部分を確認する。

 

変更候補を記録。

 

今日は触らない。

 

培養待ち。

 

一方。

 

『コピー』。

 

自動復元。

 

完全に削除する案はやめた。

 

変換途中で異常が出た場合に、戻せる機構は残した方がいい。

 

だから。

 

時間経過による自動復元を外す。

 

外部命令がある時だけ戻す。

 

そう変える。

 

最初の改変。

 

復元しない。

 

成功。

 

しかし。

 

変換状態の維持が不安定。

 

元へ戻らない代わりに、少しずつ崩れていく。

 

失敗。

 

復元と安定化が同じ経路を一部共有していた。

 

切ればいいというものではない。

 

また設計を修正する。

 

培養。

 

待つ。

 

◇ ◇ ◇

 

三日目。

 

研究だけをしているわけではない。

 

学校は普通にある。

 

サポート科の課題もある。

 

体育祭が終わったからといって授業が止まるわけではない。

 

加工。

 

設計。

 

材料。

 

課題。

 

私はいつも通り終わらせる。

 

発目さんは体育祭で見せた装備について何か話していた。

 

新しいベイビー。

 

改良案。

 

企業への見せ方。

 

私は聞かれた部分だけ答える。

 

自分の研究について細かく話す必要はない。

 

帰宅。

 

培養槽。

 

こちらの方が重要だった。

 

『創造』。

 

エネルギー蓄積部を修正。

 

再測定。

 

光を当てる。

 

蓄積。

 

照射停止。

 

保持。

 

時間経過。

 

まだ残っている。

 

熱入力。

 

蓄積。

 

同じ領域へ入る。

 

「これなら使えますね」

 

まだ完成ではない。

 

入力経路ができただけ。

 

生成機構へ接続する。

 

元々は脂肪由来の資源を使っていた部分。

 

そこへ外部エネルギーを渡す。

 

発動刺激。

 

生成。

 

小さな無機物。

 

ほんの僅か。

 

生成できた。

 

使用者の脂肪に相当する供給は入れていない。

 

外部光から蓄えたエネルギーを使っている。

 

一つ目。

 

通った。

 

ただし効率が悪い。

 

入力した量に対して生成量が少ない。

 

変換途中で損失が大きい。

 

後で直す。

 

今は。

 

動く構造を保存する。

 

培養。

 

『コピー』。

 

変換維持部分を修正。

 

設計情報入力。

 

既知構造へ変換。

 

維持。

 

五分。

 

十分。

 

元へ戻らない。

 

崩れない。

 

外部から復元命令。

 

元構造へ復帰。

 

「こちらも通りましたね」

 

保存。

 

培養。

 

まだ全体ではない。

 

一部分の変換。

 

次は対象範囲を広げる。

 

◇ ◇ ◇

 

四日目。

 

『創造』側では、生体物質生成の制限へ入る。

 

元の個性は。

 

生物に関係する対象を指定した時点で止まる。

 

それも一か所ではない。

 

入力時。

 

構造処理時。

 

出力時。

 

複数の制限。

 

昨日までに、一番外側の判定は緩めてある。

 

今日は次。

 

最初から個性因子を作ろうとはしない。

 

単純な生体由来物質。

 

構造が分かっているもの。

 

生体由来だから拒否されるだけで、生成そのものは難しくない対象。

 

指定。

 

停止。

 

二つ目の制限。

 

変更。

 

再試行。

 

生成途中で停止。

 

三つ目。

 

変更。

 

今度は出た。

 

量は少ない。

 

構造も一部不完全。

 

ただ。

 

生体由来という理由だけでは止まらなくなった。

 

次。

 

より複雑なもの。

 

失敗。

 

また変更。

 

培養。

 

私は時計を見る。

 

午前一時を過ぎている。

 

明日も学校。

 

続きは明日。

 

装置を設定。

 

寝る。

 

◇ ◇ ◇

 

五日目。

 

朝。

 

不安定化した系列が一つ死んでいた。

 

別の二系列は生存。

 

失敗個体を捨てる。

 

原因を記録。

 

学校。

 

帰宅。

 

『コピー』側を優先する。

 

これまでは構造の一部だけ。

 

今日は一つの既知人工個性因子を、対象として使う。

 

もちろん。

 

危険な能力ではない。

 

発現させなくても構造一致を確認できるもの。

 

元になる因子。

 

設計図。

 

変換開始。

 

途中。

 

停止。

 

構造不整合。

 

失敗。

 

原因。

 

変換順序。

 

元の『コピー』は相手の完成した個性を読みながら、自分を合わせている。

 

全体情報を持っていても、全部を同時に書き換えているわけではない。

 

内部に順序がある。

 

土台。

 

接続。

 

発動。

 

出力。

 

制約。

 

順番を無視して一気に変えれば、途中状態が成立しない。

 

私は設計情報側に変換順序を追加する。

 

再試行。

 

今度は最後まで進む。

 

測定。

 

比較。

 

一致率。

 

まだ足りない。

 

一部に元構造が残る。

 

そこを指定。

 

再変換。

 

一致。

 

「かなり近いですね」

 

発現させる必要はない。

 

因子構造として一致すればいい。

 

ただ。

 

一回成功しただけでは使えない。

 

もう一系列。

 

同じ条件。

 

変換。

 

一致。

 

三回目。

 

不安定。

 

原因確認。

 

調整。

 

また培養。

 

再現性が必要だった。

 

◇ ◇ ◇

 

六日目。

 

『創造』。

 

細胞。

 

最初の試験。

 

既知の細胞構造を入力する。

 

生成開始。

 

途中で崩れる。

 

細胞膜。

 

内部構造。

 

物質として部品を作ることはできる。

 

ただ。

 

一つの生きた細胞として成立する配置が維持されない。

 

修正。

 

順序。

 

同時生成ではなく。

 

外側と内側。

 

成立条件。

 

環境。

 

一つずつ。

 

二度目。

 

形にはなる。

 

機能しない。

 

三度目。

 

短時間維持。

 

四度目。

 

生存。

 

私は生成された微量の細胞を別容器へ移す。

 

観察。

 

時間経過。

 

異常なし。

 

増殖能力までは確認しない。

 

今必要なのは。

 

『創造』が生体物質を生成できること。

 

次。

 

血液。

 

単純ではないが、細胞より評価しやすい部分もある。

 

生成。

 

測定。

 

既知試料と比較。

 

問題なし。

 

最後。

 

個性因子。

 

ここが目的。

 

いきなり『創造』そのものを作らせない。

 

既に構造を熟知している単純な因子。

 

長年扱ってきた研究用人工個性。

 

設計情報。

 

外部光をエネルギーとして供給。

 

生成。

 

反応。

 

極微量。

 

私は個性因子知覚で見る。

 

ある。

 

人工個性因子。

 

元試料を材料にはしていない。

 

培養でもない。

 

外部エネルギーを使い。

 

指定した構造に従って。

 

新しく生成された。

 

「成功ですね」

 

ただし。

 

これは既知の因子。

 

完全新規ではない。

 

それでも大きい。

 

今までなら。

 

因子を増やすには培養するしかなかった。

 

今は。

 

構造情報があれば。

 

『創造』で物質として出せる。

 

少なくとも既知構造なら。

 

私は生成した因子を保存。

 

同じ操作をもう一度。

 

二つ目。

 

比較。

 

一致。

 

完全ではない。

 

ごく僅かな差。

 

生成条件を調整。

 

三つ目。

 

差が減る。

 

まだ改善できる。

 

でも。

 

機能の中核は完成していた。

 

次。

 

『コピー』。

 

指定設計情報による全体変換。

 

昨日の調整を反映。

 

変換。

 

安定。

 

再測定。

 

既知因子との比較。

 

一致。

 

別系列。

 

一致。

 

外部復元命令。

 

元へ戻る。

 

問題なし。

 

今度は復元しない設定。

 

維持。

 

問題なし。

 

こちらも。

 

使える。

 

◇ ◇ ◇

 

七日目。

 

私は朝から二つを並べていた。

 

改造『創造』。

 

改造『コピー』。

 

体育祭で手に入れた時とは、かなり違う。

 

『創造』。

 

使用者の脂肪だけに依存しない。

 

外部の光。

 

熱。

 

そこからエネルギーを取れる。

 

蓄積できる。

 

生体物質を拒否する制限も外した。

 

細胞。

 

血液。

 

個性因子。

 

生成できる。

 

『コピー』。

 

他人へ接触する必要はない。

 

相手の個性を自動で読み取る必要もない。

 

私が構造情報を与える。

 

その情報に従って、対象となる個性因子を指定状態へ変換する。

 

一時的に似せるだけではない。

 

その状態で維持できる。

 

必要なら戻せる。

 

二つ。

 

別々なら、もう動く。

 

私は一週間分の記録を見返す。

 

失敗した培養皿。

 

廃棄した系列。

 

不安定化。

 

変換不足。

 

生成不良。

 

経路干渉。

 

復元暴走。

 

出力不足。

 

一つずつ。

 

変更して。

 

増えるまで待って。

 

測って。

 

駄目なら戻して。

 

また変えた。

 

これが。

 

今までの人工個性研究だった。

 

私は自分が作ってきた体育祭用装備を思い出す。

 

光。

 

浮遊。

 

ジェット。

 

精神干渉耐性。

 

報復。

 

ループ。

 

その他。

 

どれも。

 

思いついた日に完成したわけではない。

 

元になる個性因子を用意する。

 

少し変える。

 

培養する。

 

壊れていないか見る。

 

また変える。

 

一つの改変が成功しても。

 

十分な量になるまで待つ。

 

次の変更を加えれば。

 

また待つ。

 

頭の中では完成形が見えていても。

 

実物がそこまで進むには時間が要る。

 

今回は。

 

それを一週間続けた。

 

そして。

 

おそらく。

 

大規模な人工個性改造をこの方法で行うのは。

 

これが最後になる。

 

◇ ◇ ◇

 

机の上。

 

二つの因子。

 

改造『創造』。

 

改造『コピー』。

 

ここから先は。

 

今までと同じ方法で新しい個性を作る必要がない。

 

少なくとも理屈の上では。

 

私が個性を設計する。

 

構造を決める。

 

『コピー』で、その設計図の状態を因子へ反映する。

 

『創造』で、必要な個性因子そのものを作る。

 

問題は。

 

本当に。

 

存在したことのない個性でも作れるか。

 

既知因子の再現だけでは確認にならない。

 

二つを組み合わせた時。

 

完全新規の設計が。

 

実物になるのか。

 

試せばいい。

 

そのためには。

 

まず、簡単な個性を一つ設計する。

 

既存の個性を改造するのではなく。

 

最初から。

 

発動条件。

 

作用。

 

対象。

 

出力。

 

制約。

 

安全装置。

 

全部。

 

私が決める。

 

私は新しい記録ファイルを開いた。

 

これまでなら。

 

そこから先に。

 

試料を探す工程があった。

 

近い個性を探す。

 

血液を得る。

 

培養する。

 

少しずつ作り変える。

 

今回は。

 

それがない。

 

必要なのは。

 

設計だけ。

 

まだ確認はしていない。

 

だから。

 

できるとは断定しない。

 

明日。

 

実際に作ってみれば分かる。

 

一週間動き続けた培養装置を見ながら、私は新しい設計欄の最初の一行へ入力した。

 

完全新規。

 

その文字を見ても、特別な感慨はなかった。

 

作れるかどうか。

 

確認すればいいだけだった。

 

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