無個性は個性をつくる   作:匿名希望

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第29話 脳無

青山さんの装備を納品してからも、依頼はしばらく続いた。

 

一組だけではない。

 

ヒーロー科一年A組。

 

一年B組。

 

学校側から、個性に合わせたサポートアイテムの相談が回ってくる。

 

全員分を私が担当するわけではない。

 

既存の技術で十分なもの。

 

通常の機械工学で解決できるもの。

 

既に担当者がいるもの。

 

そういう依頼までこちらへ集める意味はない。

 

私へ回ってくるのは、主に。

 

個性との連動が難しい。

 

個性そのものの発現特性を詳しく理解した方が設計しやすい。

 

既存装備では処理しにくい。

 

そういう案件だった。

 

結果として。

 

体育祭前より。

 

ヒーロー科の個性を見る機会は増えた。

 

◇ ◇ ◇

 

ある生徒は。

 

出力そのものは十分だが、発動位置が限定されている。

 

なら。

 

装備側で力の経路だけ変える。

 

別の生徒は。

 

個性発動時に身体形状が変わる。

 

なら。

 

変形を妨げない固定方法にする。

 

別の生徒は。

 

本人の操作精度より装備側の反応が遅い。

 

なら。

 

余計な自動制御を減らす。

 

葉隠さん。

 

爆豪さん。

 

青山さん。

 

最初の三件で。

 

学校側にも方向性は分かったらしい。

 

私は。

 

個性を持っている本人へ。

 

別の能力を足すためだけに装備を作るわけではない。

 

元から持っている個性が。

 

どこで。

 

どう発現して。

 

何が不便なのか。

 

そこを見て。

 

必要なら装備側だけ変える。

 

本人の個性因子へ直接手を加えることは。

 

少なくとも学校経由の普通のサポート依頼ではしていない。

 

技術的にできることと。

 

依頼としてやることは別だった。

 

その方が。

 

パワーローダーも扱いやすそうだった。

 

「また来てるぞ」

 

ある日。

 

机の上へ数枚の資料を置かれる。

 

「B組ですか」

 

「ああ」

 

「前回より増えていますね」

 

「体育祭でお前の装備見てたのはA組だけじゃないからな」

 

「そうですね」

 

体育祭は学校全体の行事だった。

 

B組にも。

 

珍しい個性は多い。

 

相談内容を見る。

 

面白い。

 

研究として。

 

ではなく。

 

設計問題として。

 

個性は。

 

同じものがほとんどない。

 

だから。

 

入力条件も。

 

必要な装備も。

 

全部違う。

 

私は普通に受けた。

 

◇ ◇ ◇

 

しばらくすると。

 

その依頼が止まった。

 

理由は単純。

 

ヒーロー科の生徒が学校にいなくなったからだった。

 

職場体験。

 

体育祭後。

 

ヒーロー科の生徒は。

 

それぞれプロヒーローの事務所へ行く。

 

実際のヒーロー活動の現場を体験する。

 

A組も。

 

B組も。

 

当然。

 

依頼人が学校にいなければ。

 

本人を使った測定もできない。

 

装備調整も。

 

試着も。

 

実動確認も。

 

止まる。

 

「静かですね」

 

実習室で言うと。

 

発目さんがこちらを見た。

 

「何がです?」

 

「最近、ヒーロー科の人が来ないので」

 

「職場体験ですからね!」

 

発目さんは自分の作業を続けている。

 

「私たちはないんですよね」

 

「何がです?」

 

「同じような職場体験です」

 

「あー!」

 

サポート科には。

 

ヒーロー科と同じ形の職場体験はない。

 

当然といえば当然だった。

 

私たちは。

 

プロヒーローの事務所へ行って。

 

巡回。

 

救助。

 

ヴィラン対応。

 

そういった活動を体験するための科ではない。

 

サポート科はサポート科の授業をする。

 

実習。

 

設計。

 

加工。

 

製作。

 

それだけ。

 

「行きたいんですか?」

 

発目さんが聞く。

 

「特には」

 

即答する。

 

ヒーロー活動そのものへ興味があるわけではない。

 

むしろ。

 

依頼が減った。

 

それは。

 

自分の研究時間が増えるという意味だった。

 

「暇になりましたね」

 

「私は全然暇じゃないですよ!」

 

発目さんの作業台を見る。

 

確かに。

 

暇ではなさそうだった。

 

私は私で。

 

学校課題を終えれば。

 

追加の依頼がない。

 

悪くない。

 

◇ ◇ ◇

 

その数日後。

 

ニュースで。

 

保須市の事件を知った。

 

最初に目に入ったのは。

 

ヒーロー殺し。

 

ステイン。

 

複数のヒーローが被害。

 

ヴィラン連合。

 

脳無。

 

情報量は多かった。

 

ただ。

 

私が最初に止めたのは。

 

脳無だった。

 

画面。

 

映像。

 

市街地。

 

人型。

 

人間に近い輪郭。

 

だが。

 

普通の人間には見えない。

 

外見。

 

挙動。

 

複数の個性。

 

命令に従って行動。

 

ニュースで分かる範囲は限られている。

 

誰が作った。

 

どう作った。

 

元が何なのか。

 

内部がどうなっているのか。

 

分からない。

 

だから。

 

USJの時のように。

 

映像だけから勝手に中身を決めることはしない。

 

ただ。

 

今回は。

 

前とは違う情報がある。

 

脳無という存在自体が。

 

人工的に手を加えられたものだと。

 

事件後の情報でも扱われていた。

 

それだけで。

 

十分だった。

 

「……人工の身体に、個性」

 

映像を見る。

 

そして。

 

動く。

 

単に個性因子を保存する容器ではない。

 

命令を受け。

 

対象を選び。

 

移動し。

 

攻撃する。

 

最低限。

 

何らかの判断機構がある。

 

高度かどうかは分からない。

 

人間人格が残っているのか。

 

残っていないのか。

 

そこも今の情報では分からない。

 

でも。

 

人工的に用意した身体へ。

 

個性と。

 

命令に従う機構を入れる。

 

その発想そのものは。

 

使える。

 

私は少し考えた。

 

その時。

 

体育祭で保存した。

 

三つ目の個性因子を思い出した。

 

『黒影』。

 

◇ ◇ ◇

 

常闇さんの『黒影』。

 

あれは。

 

普通の個性とかなり違う。

 

炎。

 

爆発。

 

浮遊。

 

透明化。

 

そういう個性は。

 

現象を発生させる。

 

『黒影』は。

 

話す。

 

見る。

 

判断する。

 

命令を理解する。

 

常闇さんを守ろうとする。

 

相手に反応する。

 

明るさで挙動も変わる。

 

体育祭では。

 

強い光で弱らせた状態でも。

 

常闇さんを守るように動いた。

 

命令されていないように見える行動もあった。

 

あの時。

 

私は。

 

独立判断か。

 

常闇さんの無意識制御か。

 

断定しなかった。

 

今なら。

 

もっと詳しく調べられる。

 

すでに因子自体は手元にある。

 

そして。

 

一から人工個性を作れる。

 

「こちらの方が近いですね」

 

脳無そのものを真似る必要はない。

 

そもそも。

 

構造を知らない。

 

でも。

 

人工の身体を動かしたいなら。

 

身体を作る技術はある。

 

個性を作る技術もある。

 

足りないのは。

 

身体を。

 

自分で動かす仕組み。

 

それなら。

 

『黒影』の中に。

 

参考になるものがある。

 

◇ ◇ ◇

 

学校から帰宅する。

 

研究室。

 

『黒影』の試料は保存してある。

 

体育祭後。

 

『創造』。

 

『コピー』。

 

そちらを先に使った。

 

『黒影』は後回しになっていた。

 

今。

 

用途ができた。

 

私は因子を見る。

 

以前とは。

 

解析方法が違う。

 

培養して。

 

少し変えて。

 

待つ。

 

そうする必要はない。

 

十分に構造を理解すれば。

 

必要部分だけ設計し直せる。

 

まず。

 

『黒影』全体を。

 

機能単位で分ける。

 

出力。

 

形態形成。

 

光量との関係。

 

常闇さんとの接続。

 

それだけではない。

 

知覚。

 

何を見ているのか。

 

判断。

 

状況に応じて行動を変える部分。

 

命令理解。

 

常闇さんの言葉や意図を。

 

行動へ変換する部分。

 

行動選択。

 

複数の行動候補から。

 

何を優先するか。

 

自己維持。

 

自分の状態を保つ。

 

命令優先。

 

自律性があっても。

 

使用者の指示を上位へ置く。

 

ここ。

 

欲しいのは。

 

黒い影ではない。

 

常闇さんの人格でもない。

 

『黒影』という存在の性格を。

 

そのまま複製したいわけでもない。

 

必要なのは。

 

自律して動くための構造だけ。

 

◇ ◇ ◇

 

私は。

 

まず人間らしさを捨てた。

 

記憶。

 

趣味。

 

好悪。

 

将来の夢。

 

自分の人生。

 

そういったものは。

 

任務遂行に必要ない。

 

むしろ。

 

入れれば。

 

命令系統が複雑になる。

 

「人格は不要ですね」

 

必要なのは。

 

見る。

 

聞く。

 

認識する。

 

命令を理解する。

 

状況を判断する。

 

自分で行動を選ぶ。

 

必要なら報告する。

 

壊れそうなら。

 

任務との優先度を比較する。

 

それだけ。

 

単純な機械制御よりは高度。

 

しかし。

 

人間ではない。

 

私は。

 

人工的な思考機構として設計する。

 

OS。

 

呼び方としては。

 

それが一番近い。

 

人工OS。

 

ただし。

 

電子計算機で動くソフトウェアではない。

 

個性因子を中核にした。

 

生体的な判断構造。

 

『黒影』由来。

 

ただ。

 

完成品は。

 

『黒影』そのものではない。

 

◇ ◇ ◇

 

最初に。

 

知覚。

 

視覚。

 

聴覚。

 

接触。

 

必要な入力をまとめる。

 

次。

 

識別。

 

自分。

 

命令者。

 

対象。

 

障害物。

 

保護対象。

 

次。

 

命令理解。

 

言葉。

 

単純な指示。

 

位置。

 

対象。

 

行動。

 

停止。

 

次。

 

優先順位。

 

最上位命令。

 

現在任務。

 

安全条件。

 

自己維持。

 

状況変化。

 

競合した時。

 

どちらを優先するか。

 

最後。

 

行動選択。

 

命令が細かく指定されていなくても。

 

目的へ向けて。

 

移動。

 

回避。

 

待機。

 

確認。

 

そういう判断を自分でできるようにする。

 

私は頭の中で。

 

何度も条件を組む。

 

例えば。

 

「この箱を向こうへ運ぶ」

 

命令。

 

途中に椅子。

 

命令には。

 

右から避けろ。

 

左から避けろ。

 

とは書かれていない。

 

なら。

 

自分で避ける。

 

途中で箱を落とす。

 

拾う。

 

通路が塞がる。

 

別経路。

 

目的地が使えない。

 

待機。

 

報告。

 

その程度は必要。

 

逆に。

 

「箱を運べ」

 

と言われたから。

 

壁を破壊して最短距離を進む。

 

それでは困る。

 

通常環境を壊さない。

 

無関係な人間へ危害を加えない。

 

そういう基本制約も入れる。

 

今回は。

 

戦闘用ではない。

 

まず。

 

自律して。

 

命令通り動くこと。

 

そこだけ確認する。

 

◇ ◇ ◇

 

設計。

 

人工OS。

 

一回目。

 

製造。

 

機器へ接続。

 

仮想入力。

 

命令。

 

右へ移動。

 

反応。

 

入力は理解する。

 

だが。

 

障害物判定が弱い。

 

修正。

 

二回目。

 

移動。

 

障害物。

 

停止。

 

止まるだけ。

 

迂回しない。

 

行動候補の評価が足りない。

 

修正。

 

三回目。

 

迂回。

 

成功。

 

次。

 

複数命令。

 

箱を持つ。

 

移動。

 

置く。

 

戻る。

 

順番。

 

成功。

 

途中条件変更。

 

目的地封鎖。

 

別位置指定。

 

反応。

 

成功。

 

私は。

 

以前なら。

 

ここから培養待ちだった。

 

でも。

 

今は違う。

 

設計を直す。

 

作る。

 

確認。

 

また直す。

 

研究速度が。

 

体育祭前とまったく違う。

 

数時間。

 

何度か。

 

失敗。

 

修正。

 

それで。

 

人間人格を持たず。

 

命令を理解して。

 

状況を判断して。

 

自律行動する構造ができた。

 

人工OS。

 

完成。

 

ただ。

 

OSだけでは。

 

歩かない。

 

次。

 

身体。

 

◇ ◇ ◇

 

改造『創造』は。

 

細胞を作れる。

 

血液を作れる。

 

個性因子も。

 

作れる。

 

なら。

 

人工の身体そのものも。

 

設計できる。

 

人間の死体を使う理由はない。

 

既存の人間を改造する必要もない。

 

最初から。

 

必要な肉体を作る。

 

試作なので。

 

人間そっくりにする必要はない。

 

むしろ。

 

人間に見える方が面倒だった。

 

人間と誤認しない外見にする。

 

構造は。

 

移動できる。

 

物を持てる。

 

周囲を認識できる。

 

それで十分。

 

内部。

 

循環。

 

筋組織。

 

支持構造。

 

感覚器。

 

エネルギー管理。

 

修復。

 

最低限。

 

本当に人間の臓器配置を完全再現する必要もない。

 

人工生命として。

 

成立すればいい。

 

改造『創造』。

 

設計。

 

生成。

 

骨格相当。

 

筋組織。

 

循環。

 

外皮。

 

感覚器。

 

一つずつ。

 

だが。

 

培養して育てる必要はない。

 

完成形を。

 

必要な状態で。

 

直接作る。

 

以前なら。

 

到底できなかった方法だった。

 

◇ ◇ ◇

 

身体ができる。

 

人型。

 

ただし。

 

人間とは明確に違う。

 

人工的な外観。

 

表面。

 

顔。

 

機能上不要な部分は簡略化。

 

その中へ。

 

人工OS。

 

次。

 

身体維持。

 

最低限の自己管理。

 

さらに。

 

任務用の人工個性。

 

最初なので。

 

強いものはいらない。

 

移動。

 

物体操作。

 

簡単な防護。

 

それで十分。

 

複数の能力を。

 

大量に積む必要もない。

 

この試作個体に必要な機能だけ。

 

一つの任務用人工個性としてまとめる。

 

最後。

 

命令系統。

 

私の指示を最上位。

 

停止。

 

待機。

 

任務変更。

 

必要な範囲。

 

組み込む。

 

私は。

 

完成した個体を見る。

 

動かない。

 

まだ。

 

起動していない。

 

人工の身体。

 

人工OS。

 

人工個性。

 

全部。

 

私が作ったもの。

 

脳無の構造を再現したわけではない。

 

あれがどう作られているのかは。

 

今も知らない。

 

ニュースで見た。

 

「人工的な身体へ個性を持たせて動かす」

 

という結果。

 

そこから。

 

自分の技術で。

 

別のものを作った。

 

◇ ◇ ◇

 

起動。

 

最初。

 

反応なし。

 

一秒。

 

二秒。

 

内部状態。

 

正常。

 

知覚入力。

 

開始。

 

個体の頭部が動く。

 

周囲を見る。

 

私を見る。

 

識別。

 

命令者。

 

認識。

 

私は言う。

 

「立ってください」

 

個体が立つ。

 

遅れ。

 

ほとんどない。

 

「机の上の箱を取ってください」

 

視線。

 

机。

 

箱。

 

移動。

 

手を伸ばす。

 

持つ。

 

「反対側の棚へ置いてください」

 

移動。

 

途中。

 

私は椅子を動かす。

 

進路を塞ぐ。

 

個体が止まる。

 

椅子を見る。

 

左右。

 

判断。

 

迂回。

 

棚。

 

箱を置く。

 

その後。

 

こちらを見る。

 

待機。

 

「戻ってください」

 

戻る。

 

「停止」

 

動きが止まった。

 

私は記録を見る。

 

命令理解。

 

正常。

 

対象識別。

 

正常。

 

障害物回避。

 

正常。

 

任務継続。

 

正常。

 

余計な行動。

 

なし。

 

もう一度。

 

「起動してください」

 

動く。

 

「この箱を持って、私についてきてください」

 

箱。

 

追従。

 

研究室内を歩く。

 

私は急に止まる。

 

個体も止まる。

 

方向を変える。

 

追従。

 

扉。

 

自分で開ける。

 

通る。

 

閉める。

 

命令していない。

 

でも。

 

移動継続に必要だと判断した。

 

「問題ありませんね」

 

私は言った。

 

個体は。

 

反応しない。

 

返事をする機能は。

 

今回必須ではない。

 

会話機能自体は設計できる。

 

ただ。

 

最初の動作確認には必要ない。

 

◇ ◇ ◇

 

次。

 

少し曖昧な命令。

 

「机の上を片付けてください」

 

個体が動く。

 

ここで。

 

問題が出る。

 

何を。

 

どこへ。

 

片付けるか。

 

定義不足。

 

個体は。

 

机を見る。

 

周辺を見る。

 

止まった。

 

勝手に判断しない。

 

良い。

 

「工具は工具棚。書類は右の箱。その他は動かさないでください」

 

認識。

 

行動。

 

工具。

 

分類。

 

移動。

 

書類。

 

箱。

 

分類できないもの。

 

残す。

 

完了。

 

待機。

 

人工OSとして。

 

十分。

 

命令が足りなければ。

 

無理に補完しない。

 

必要な範囲では自律。

 

知らないことを。

 

勝手に決めない。

 

私にとっても。

 

その方が扱いやすい。

 

◇ ◇ ◇

 

私は個体の内部状態を見る。

 

人工肉体。

 

正常。

 

OS。

 

正常。

 

任務用個性。

 

正常。

 

自己維持。

 

正常。

 

それから。

 

一つ気づく。

 

これ。

 

かなり便利だった。

 

研究補助。

 

運搬。

 

実験準備。

 

危険作業。

 

警備。

 

救助。

 

戦闘。

 

用途ごとに。

 

必要な身体。

 

必要な判断。

 

必要な人工個性。

 

それを作ればいい。

 

人間を雇って。

 

一から訓練する必要はない。

 

ロボットのように。

 

全部の動作を一つずつプログラムする必要もない。

 

命令を理解する。

 

状況を判断する。

 

必要な行動を選ぶ。

 

それで。

 

用途が大きく広がる。

 

最初の目的は。

 

脳無を見て。

 

人工身体と個性を組み合わせられるか。

 

確認することだった。

 

答えは。

 

できる。

 

そこから先は。

 

いくらでも作れる。

 

私は新しい分類名を考えた。

 

人工生命。

 

人工個性を持つ。

 

命令に従う。

 

任務単位で設計可能。

 

「個性兵、でいいですか」

 

兵。

 

少し用途が狭い言葉ではある。

 

将来。

 

戦闘以外へ使う可能性も高い。

 

ただ。

 

分類名として。

 

当面は分かりやすい。

 

記録する。

 

個性兵。

 

試作一号。

 

◇ ◇ ◇

 

起動中の個体を見る。

 

人間ではない。

 

人間の人格もない。

 

自分の人生を欲しがるようには作っていない。

 

命令を理解して。

 

判断して。

 

動く人工生命。

 

これを生命と呼ぶことについて。

 

倫理上どう扱うべきか。

 

そういう議論は。

 

たぶん。

 

必要になる。

 

ただ。

 

今の私にとって。

 

最初に確認したいのはそこではない。

 

設計したOSは。

 

想定通り判断した。

 

人工身体は。

 

想定通り動いた。

 

人工個性も。

 

正常に発現した。

 

三つを組み合わせても。

 

互いに大きな干渉はない。

 

なら。

 

実験として成功。

 

私は個体へ言う。

 

「こちらへ来てください」

 

個体が歩いてくる。

 

「止まってください」

 

止まる。

 

「右手を上げてください」

 

上げる。

 

「下ろしてください」

 

下ろす。

 

単純。

 

それでも。

 

少し前まで。

 

私が作っていたのは。

 

個性だけだった。

 

光。

 

浮遊。

 

耐性。

 

冷却。

 

透明化。

 

能力そのもの。

 

今。

 

個性を使う身体まで。

 

自分で作った。

 

そして。

 

その身体が。

 

自分で見て。

 

考えて。

 

命令通りに動いている。

 

面白い。

 

私はそう思った。

 

ニュースで見た脳無が。

 

どう作られたものなのかは。

 

まだ分からない。

 

でも。

 

あれを見なければ。

 

この使い方を思いつくのは。

 

もう少し後だったかもしれない。

 

私は試作個体の記録を保存する。

 

人工肉体。

 

人工OS。

 

任務用人工個性。

 

統合成功。

 

自律起動。

 

正常。

 

今回の研究で。

 

個性は作れるようになった。

 

その最後に。

 

個性を使うものまで。

 

作れるようになった。

 

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