無個性は個性をつくる   作:匿名希望

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第30話 島への招待

自宅の改築が終わってから。

 

私はしばらく、個性兵を作って遊んでいた。

 

遊ぶ。

 

という表現が一番近い。

 

明確な用途があるわけではない。

 

必要なものを作る研究でもない。

 

既に観察している個性。

 

自分で設計した人工個性。

 

それらを組み合わせ。

 

人工肉体へ載せ。

 

どの程度動くのかを見る。

 

ただそれだけ。

 

例えば。

 

身体能力を大きく上げる。

 

その上で。

 

衝撃への耐性。

 

姿勢制御。

 

高速移動時の知覚補正。

 

必要なものを一つの任務用人工個性へまとめる。

 

起動。

 

走らせる。

 

止める。

 

方向を変える。

 

壁へ衝突しないよう制御する。

 

問題があれば直す。

 

別の個体。

 

飛行。

 

空中での方向転換。

 

複数物体の遠隔操作。

 

周囲観測。

 

それぞれ単独なら。

 

既に作れる。

 

なら。

 

一つの身体へまとめた時。

 

どこまで自然に連携できるか。

 

確認する。

 

別の個体では。

 

防御。

 

別の個体では。

 

拘束。

 

別の個体では。

 

周囲へ作用する能力。

 

目的は。

 

特にない。

 

作れるので。

 

作っている。

 

「右へ移動してください」

 

個体が動く。

 

「停止」

 

停止。

 

「上の標的を処理してください」

 

視線。

 

標的認識。

 

行動。

 

終了。

 

人工OSも。

 

最初の試作品より少しずつ調整している。

 

一度作ったものを。

 

毎回同じ状態で使い続ける理由はない。

 

状況判断。

 

命令理解。

 

優先順位。

 

対象識別。

 

動かすたび。

 

不足が見つかる。

 

そのたび。

 

次の個体で直す。

 

夏休みなので。

 

朝からそれができた。

 

学校へ行く時間もない。

 

授業もない。

 

追加の装備依頼もない。

 

家自体も。

 

少し前までとは違う。

 

工作区画。

 

解析区画。

 

個性因子区画。

 

試作区画。

 

必要な設備は。

 

だいたい揃った。

 

かなり都合がいい。

 

◇ ◇ ◇

 

「終了してください」

 

試作個体へ命令する。

 

停止。

 

測定記録保存。

 

問題なし。

 

次。

 

今回から。

 

もう一つ。

 

「自己分解」

 

個体が反応する。

 

任務用人工個性停止。

 

人工OSが処理順を確認。

 

残す必要のある実験情報だけ転送。

 

個性因子無力化。

 

内部構造分解。

 

人工肉体分解。

 

前回。

 

荷運び用個性兵を。

 

一つずつ自分で解体した。

 

あれは手間だった。

 

だから。

 

それ以降の個体には。

 

最初から自己分解機能を入れている。

 

数分後。

 

試作個体はなくなった。

 

残留物。

 

なし。

 

危険な個性因子。

 

なし。

 

「こちらの方がいいですね」

 

作る。

 

試す。

 

不要なら分解。

 

設計データだけ残す。

 

その方が。

 

試作品を置いておく場所も必要ない。

 

自宅を大きく改築した直後なのに。

 

もう保管場所を節約する方法を考えている。

 

広くても。

 

無限ではないので。

 

合理的だった。

 

◇ ◇ ◇

 

ちなみに。

 

夏休みへ入る前には。

 

期末試験もあった。

 

ヒーロー科では。

 

教師との実戦試験があったらしい。

 

私には関係ない。

 

サポート科は。

 

普通にサポート科の試験と課題を受けた。

 

筆記。

 

設計。

 

製作。

 

その他。

 

特に問題なし。

 

体育祭のように。

 

個性を集める機会でもなければ。

 

新しい研究材料が大量に出るわけでもない。

 

普通に終わった。

 

そして。

 

休み。

 

今の方が。

 

時間の使い方としては好きだった。

 

その日も。

 

次の人工個性を考えていた。

 

強度。

 

出力。

 

身体側との接続。

 

人工OSがどこまで扱えるか。

 

頭の中で構造を組んでいると。

 

端末が鳴った。

 

学校から。

 

夏休みに入ってから。

 

学校側から直接連絡が来ることは多くない。

 

開く。

 

登校依頼。

 

用件。

 

サポート科。

 

パワーローダー。

 

日時。

 

今日。

 

「急ですね」

 

ただ。

 

行けない時間ではない。

 

試験も途中ではない。

 

私は準備する。

 

外出中に。

 

自宅研究設備を動かしておく必要もない。

 

最低限だけ稼働。

 

戸締まり。

 

それから。

 

雄英へ向かった。

 

◇ ◇ ◇

 

夏休みの雄英は。

 

普段より人が少ない。

 

当然。

 

授業はない。

 

部活動や。

 

何らかの用事がある生徒。

 

教員。

 

それくらい。

 

サポート科の実習棟へ向かう。

 

指定された部屋へ入る。

 

「失礼します」

 

「来たか」

 

パワーローダー。

 

そして。

 

もう一人。

 

「空木さん!」

 

発目さん。

 

先に来ていた。

 

「発目さんもですか」

 

「呼ばれました!」

 

それは見れば分かる。

 

ただ。

 

同じ用件らしい。

 

「二人とも座れ」

 

パワーローダーが言う。

 

机の上。

 

封筒。

 

二つ。

 

見慣れない意匠。

 

英字。

 

私は座る。

 

発目さんは。

 

既に封筒へ視線が固定されている。

 

「何ですかこれ!」

 

「今から話す」

 

「開けちゃ駄目ですか!?」

 

「話を聞いてからにしろ」

 

「はい!」

 

返事だけは早い。

 

パワーローダーが。

 

一度ため息をつく。

 

それから。

 

こちらを見る。

 

「急な話で悪い」

 

「はい」

 

「先に言っとくが、無理なら断っていい」

 

それなら。

 

学校行事ではないらしい。

 

「日程も近い。夏休みの予定があるなら、そっち優先でも構わん」

 

「分かりました」

 

発目さんが手を挙げる。

 

「予定ないです!」

 

「まだ中身言ってねえ」

 

「でも面白そうです!」

 

封筒を見ただけで。

 

そこまで判断するのは早い。

 

パワーローダーは。

 

もう一度ため息をついた。

 

「I・アイランドからだ」

 

発目さんが止まった。

 

一秒。

 

「――I・アイランド!?」

 

今度は声が大きかった。

 

私も。

 

封筒を見る。

 

I・アイランド。

 

知っている。

 

世界でも最大級の。

 

個性。

 

ヒーロー。

 

サポート技術。

 

それらを研究するための。

 

人工島。

 

多数の研究者。

 

企業。

 

研究施設。

 

開発設備。

 

個性社会に関係する。

 

かなり大規模な研究拠点。

 

「招待状が来てる」

 

パワーローダーが言った。

 

◇ ◇ ◇

 

発目さんが。

 

封筒とパワーローダーを交互に見る。

 

「誰にですか!?」

 

「お前らだよ」

 

「私に!?」

 

「そう言ってる」

 

「何でですか!?」

 

「そっちも書いてある」

 

発目さんが。

 

今すぐ開封しそうになる。

 

パワーローダーが止める。

 

「待て」

 

「待てません!」

 

「待て」

 

「はい!」

 

私は聞く。

 

「学校宛てに来たんですか?」

 

「ああ。正確には学校を通して、お前ら二人へ話が来た」

 

「それぞれですか?」

 

「理由は別だ」

 

なるほど。

 

私と発目さんを。

 

一組として招待したわけではない。

 

同じ雄英サポート科。

 

だから。

 

学校でまとめて説明している。

 

そういうことらしい。

 

「急に決まった話だからな。向こうも、絶対来いって招待じゃない」

 

パワーローダーが続ける。

 

「日程が合うなら来ないか、程度だ。だから今日呼んだ」

 

「断っても問題なし」

 

「そういうことだ」

 

なら。

 

検討。

 

発目さんを見る。

 

検討する顔ではない。

 

「行きます!」

 

「まだ説明終わってねえ!」

 

やはり。

 

◇ ◇ ◇

 

パワーローダーは。

 

まず発目さん側の書類を置いた。

 

「発目は、サポート科の発明系の学生として」

 

「ベイビーを見せられるんですね!」

 

「展示するとは言ってない」

 

「持っていけば見せられます!」

 

「持ち込み規定を先に読め」

 

「はい!」

 

パワーローダーが。

 

次。

 

私の方へ。

 

「空木」

 

「はい」

 

「お前は体育祭だ」

 

想定できる。

 

「サポート科なのに本戦上位。しかも独自装備を大量に持ち込んでた」

 

「そうですね」

 

「光のやつは特に目立ってた」

 

壊れたベルトを思い出す。

 

もう。

 

同じものならいつでも作れる。

 

「体育祭は外からも注目される。技術関係者も見る」

 

「はい」

 

「その関係で名前が上がったらしい」

 

なるほど。

 

サポート科生徒。

 

体育祭三位。

 

人工個性搭載装備。

 

外部から見える情報だけでも。

 

珍しい。

 

興味を持つ研究者がいても。

 

不自然ではない。

 

「ただし」

 

パワーローダーが言う。

 

「お前の研究内容全部が向こうへ伝わってるわけじゃない」

 

「分かっています」

 

学校自体。

 

全部知らない。

 

「招待理由は、あくまで体育祭で見せた装備と実績だと思っとけ」

 

「それなら問題ありません」

 

むしろ。

 

その方がいい。

 

◇ ◇ ◇

 

もう一つ。

 

パワーローダーが資料を見る。

 

「ヒーロー科側にも話が来てる」

 

「誰ですか?」

 

発目さんが聞く。

 

「爆豪」

 

分かりやすい。

 

「体育祭優勝者だからだ」

 

「爆豪さんも行くんですね」

 

「行くならな」

 

まだ。

 

参加確定とは言っていない。

 

理由も。

 

私たちとは違う。

 

爆豪さん。

 

体育祭優勝。

 

発目さん。

 

発明家。

 

私。

 

体育祭上位と独自装備。

 

同じ場所へ行く。

 

ただ。

 

経路が別。

 

「他にも招待客はいる。別に雄英の研修旅行じゃない」

 

「分かりました」

 

「向こうへ行っても、全員で固まって行動する必要もない」

 

その方が助かる。

 

I・アイランドへ行って。

 

一日中。

 

雄英の生徒だけで行動する理由はない。

 

見るべきものは。

 

研究設備。

 

技術。

 

研究者。

 

製造環境。

 

そちら。

 

◇ ◇ ◇

 

「で」

 

パワーローダーが。

 

二つの封筒を前へ押す。

 

「改めて聞くぞ」

 

発目さんは。

 

受け取る前から。

 

答えが決まっている。

 

「行きます!」

 

「お前はそうだろうな」

 

私も。

 

封筒を取る。

 

中を見る。

 

I・アイランド。

 

滞在。

 

見学可能区画。

 

イベント。

 

研究展示。

 

技術関係者。

 

詳しい内容。

 

一つずつ確認する。

 

かなり大きい。

 

自宅を研究所へ作り替えたばかり。

 

雄英の設備も見ている。

 

それでも。

 

I・アイランドは。

 

規模が違う。

 

一人で作った設備ではない。

 

学校でもない。

 

研究都市。

 

多数の研究機関。

 

企業。

 

技術者。

 

サポートアイテム。

 

個性研究。

 

そのために。

 

一つの島全体が使われている。

 

見に行く価値はある。

 

かなり。

 

「私も行きます」

 

「即決か」

 

「研究施設を見られるなら」

 

他に。

 

断る理由がない。

 

夏休み。

 

時間もある。

 

今進めている試作は。

 

途中で止めても困らない。

 

自宅の設備も。

 

無人で管理できる範囲にしておけばいい。

 

「そう言うと思った」

 

パワーローダーが言う。

 

発目さんが。

 

こちらを見る。

 

「空木さん!」

 

「はい」

 

「I・アイランドですよ!」

 

「そうですね」

 

「世界中のサポートアイテムがありますよ!」

 

「研究設備もありますね」

 

「工房も!」

 

「製造設備も気になります」

 

発目さんの目が。

 

明らかに輝いている。

 

話題として。

 

私にも分かる。

 

I・アイランドについては。

 

技術の話をする意味がある。

 

「何持っていきます?」

 

「まだ決めていません」

 

「私はベイビーを――」

 

「持ち込み規定読めっつっただろ!」

 

パワーローダーの声。

 

発目さんが封筒を開く。

 

私は自分の案内を見る。

 

渡航。

 

施設。

 

規則。

 

持ち込み。

 

確認することは多い。

 

ただ。

 

予定そのものは決まった。

 

少し前まで。

 

自宅を。

 

十分大きな研究施設にしたつもりだった。

 

その直後に。

 

世界最大級の研究都市を見る機会が来た。

 

比較するには。

 

ちょうどよかった。

 

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