無個性は個性をつくる   作:匿名希望

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第44話 個性を着脱する個性

戦闘の勝敗より、今、頭の中に残っている奪取の感覚。そちらの方が重要だった。

 

私は机へ座ったまま、記憶を順番に再現する。

 

接触。対象個性の認識。個性因子への干渉。身体との接続、切断。因子構造を壊さず保持。奪取側へ移動、再接続。

 

一連。

 

ホークス型から共有された感覚は、まだかなり鮮明だった。

 

「外せるんですね」

 

知識として、個性を与える技術が存在する可能性は、青山さんを見た時から分かっていた。

 

でも、実際に成立した個性を身体から完全な形で取り外す過程。それは初めて見た。

 

◇ ◇ ◇

 

翌日、研究室。

 

外はまだ、神野の事件で騒がしい。ニュース、警察、雄英、オールマイト、オール・フォー・ワン。いろいろ流れている。

 

私はほとんど見ていない。

 

必要な情報は、もうある。

 

机。人工組織。人工個性。解析装置。

 

私は昨日の感覚を、構造へ落とす。

 

オール・フォー・ワンそのものを再現する必要はない。

 

他人の個性を奪う。他人へ好きに与える。複数を抱える。

 

そこまで要らない。

 

欲しい機能は、もっと限定的。

 

個性を安全に外す。外した個性を壊さず保持。必要なら、同じ身体へ戻す。

 

それだけ。

 

◇ ◇ ◇

 

今まで、個性を入れることはできていた。

 

人工個性を作る。自分へ組み込む。発現させる。それで終わり。

 

一度入れた後、必要なくなっても、そのまま。

 

別に困っていなかった。

 

私の場合、個性数に現実的な上限を感じていない。一つ増えても、二つ増えても、身体がそれだけで破綻することはない。

 

だから、昔作った個性。役目を終えた個性。上位互換を後から作った個性。そういうものも中に残っている。

 

使わなければいい。

 

そう考えていた。

 

実害、ほぼない。

 

でも今、外せる可能性が見えた。

 

改めて考える。

 

使わない機能。古い機能。役割が重複した機能。それが身体の中へ残り続ける。

 

「……あまり綺麗ではありませんね」

 

必要なら持つ。不要なら外す。その方が合理的。

 

機械でも、使わない機構を理由なく残すことはしない。重さ、故障点、管理対象が増える。

 

私の個性に重量はない。でも、考え方は同じ。

 

持てるから全部持つ。

 

必要性がない。

 

◇ ◇ ◇

 

まず、試験。

 

人間は使わない。

 

人工肉体。小型、単純、試験用。

 

役割用人工個性、『微冷却』。何度も使っている。構造は全部分かる。

 

人工肉体へ組み込む。発現、正常。

 

金属片、接触。温度、低下。

 

次、摘出。

 

昨日見た切断順序を再現。

 

ただし、オール・フォー・ワンと同じ方式にはしない。あれは相手の個性を自分へ奪う。

 

私が欲しいのは着脱。

 

だから、切断した後、個性因子を私へ移さない。外部保持、保存。そこまで一つの機能にする。

 

設計。

 

作用対象、指定個性のみ。身体側、接続点、確認。発現停止。因子状態、安定化。接続解除。摘出。保存状態へ移行。

 

個性因子本体、損傷禁止。身体側、損傷禁止。異常検出、即中止。

 

一つずつ条件を入れる。

 

作る。

 

◇ ◇ ◇

 

最初、失敗。

 

個性因子は外れた。でも、一部、身体側の接続構造が残る。因子側も、発現経路の一部が身体へ引っ張られた。

 

壊れてはいない。

 

ただ、綺麗ではない。

 

やり直し。

 

二回目。

 

接続解除の順番を変更。

 

先に発現経路を停止。次、身体側の受容構造を一時的に非接続状態へ。最後、因子を分離。

 

成功。

 

人工肉体から『微冷却』が消失。

 

外部、保存。

 

個性因子、完全。測定、異常なし。

 

もう一度、同じ身体へ戻す。

 

接続位置、認識。身体側、受容。因子、再接続。

 

発現。

 

金属片、温度低下。

 

元通り。

 

「そうですか」

 

難しい部分は、切断より戻す方だった。

 

個性因子は単なる部品ではない。身体側と接続し、発現系へ組み込まれている。

 

でも、接続状態さえ正確に扱えるなら、着脱可能。

 

◇ ◇ ◇

 

二つ目、発光。

 

摘出、保存、再装着。

 

正常。

 

三つ目、念動。

 

正常。

 

次、二個性を同時搭載した人工肉体。

 

片方だけ外す。

 

これ、重要。

 

全部まとめて抜けるなら、使いにくい。

 

対象、念動。指定。

 

摘出。

 

発光、残る。発現、正常。

 

念動、外部、保存。

 

戻す。

 

両方、正常。

 

「対象指定も問題ありませんね」

 

さらに三個性。複合。

 

一つずつ外す。順番を変える。戻す。

 

接続競合、なし。

 

◇ ◇ ◇

 

保存。

 

これも今まで、個性因子サンプルとしての保存はできている。

 

血液。培養。人工因子。大量に保存してきた。

 

でも今回、必要なのは、本人から機能していた個性をそのまま外したもの。

 

可能なら、再加工なしで戻せる状態。

 

だから、普通のサンプル保管より接続情報を多く持たせる。

 

元の身体。どこへ、どう接続。発現経路、どの状態。外した時の構成。

 

全部、付随情報として保持。

 

そうすれば、再装着時、ゼロから適合させる必要がない。

 

同一人物なら、かなり簡単。

 

別人。

 

それは別問題。

 

身体適合。接続先。拒絶。負担。調整。

 

必要。

 

今はやらない。

 

目的、自分。

 

まず、そこ。

 

◇ ◇ ◇

 

数日、試す。

 

人工肉体。人工組織。個性兵。単純個性。複雑個性。複数個性。

 

外す。戻す。外したまま時間を置く。再装着。

 

発現、正常。因子損傷、なし。身体損傷、なし。発現性能、変化なし。

 

それなら、実用できる。

 

ただ、一つ問題。

 

この着脱機能自体を、どこへ置くか。

 

外部装置、可能。個性兵、可能。

 

でも私は、自分の個性を今後、必要に応じて入れ替えるつもり。

 

毎回、外部装置を出す理由はない。

 

それなら、着脱能力そのものを私へ入れる。

 

自分の個性を、自分で外す。戻す。

 

その方が早い。

 

◇ ◇ ◇

 

設計。

 

着脱用人工個性。

 

機能。対象個性指定。安全停止。身体側接続解除。因子完全保持。外部保存。再接続。適合確認。再発現。

 

対象、まず私自身。

 

他人へ自由に使えるようにする必要は、今はない。

 

むしろ、範囲を絞る。

 

自分の中の個性因子。自分で指定したものだけ外せる。

 

他人へ触れて、勝手に抜く。

 

不要。

 

オール・フォー・ワンは再現しない。

 

あれは奪取。

 

これは整備。

 

目的が違う。

 

◇ ◇ ◇

 

完成。

 

人工個性、生成。

 

自分へ実装。

 

身体の中、新しい構造、定着。

 

個性因子知覚、確認。

 

異常なし。

 

まず、この着脱個性を発現。

 

自分の中、個性群が見える。

 

昔作った研究補助。今も使うもの。あまり使わないもの。役割が重なっているもの。体育祭以前に試験的に入れた古い補助系。

 

いろいろある。

 

「思ったより残っていますね」

 

今まで、数えようとは思わなかった。

 

必要な時、使う。新しい方があれば、そちら。古いものは放置。

 

上限で困らない。

 

だから、整理する理由がなかった。

 

でも、着脱できるなら話は違う。

 

これ、次にやる。

 

◇ ◇ ◇

 

ただ、最初から古い研究補助個性を大量に外すのは、試験として少し雑。

 

まず、簡単なもの。

 

今、使っていない試験用。以前、自分に入れて、そのまま残していた小規模な感覚補助。

 

対象、指定。

 

発現停止。接続、確認。解除。

 

個性因子が身体から離れる。

 

感覚は、AFOに奪わせた時と似ている。

 

でも、違う。

 

向こうは外から強制的に掴まれた。今回は、自分の身体側から順番に接続を閉じる。

 

そして、安全な状態へ外す。

 

痛み、なし。

 

欠損感、少しある。

 

今まで使わなくても、そこにあった機能がなくなる。

 

でも、身体異常なし。

 

私は外した因子を、保存容器へ出す。

 

透明な小型容器。

 

中、個性因子。状態、安定。

 

「外れましたね」

 

当然、もうその感覚補助は使えない。

 

発現を試す。

 

何も起きない。

 

正常。

 

次、戻す。

 

保存、解除。

 

因子、自分へ接続。発現経路、復帰。

 

試す。

 

元通り。

 

性能、変化なし。

 

◇ ◇ ◇

 

一度、外せた。

 

戻せた。

 

それで、かなり大きい。

 

今まで人工個性は、作る、入れる、増える。一方向だった。

 

これからは違う。

 

作る。入れる。外す。保存。作り直す。戻す。不要なら戻さない。

 

身体の中も、研究設備と同じ。

 

更新できる。

 

私は自分の個性を、もう一度見る。

 

古いもの、多い。

 

中学以前。個性因子知覚を作る途中で使っていた補助。精密作業。観測。実験。体育祭以前、段階改造を少しでも効率化するために作ったもの。

 

今、任意人工個性製造がある。個性兵がある。研究設備も大幅に良くなった。

 

当時の能力を、今そのまま使う意味は薄い。

 

同じ役割でも、今ならもっと良く作れる。

 

「一度、整理した方がよさそうですね」

 

全部持てる。

 

だから、全部残す。

 

その必要はない。

 

必要な機能を、必要なだけ。できれば、一番良い形で持つ。

 

その方が、私には合っている。

 

◇ ◇ ◇

 

私は着脱用人工個性を、恒久搭載側へ分類する。

 

少なくとも、今後、自分の能力を更新するためには使う。

 

次、やることは決まった。

 

自分の中にある旧式人工個性、全部、棚卸し。

 

必要。不要。重複。現行。旧式。

 

分ける。

 

古いものは外す。

 

必要な機能は、現在の技術で作り直す。

 

それから、改めて入れる。

 

今まで、増やすことしかできなかった。

 

でも、もう違う。

 

個性は、入れたら終わりではない。

 

必要に合わせて、着けて外せる。

 

私は自分の中へ新しく入れた着脱用の個性を、もう一度確認した。

 

問題なし。

 

これでようやく、中身も整理できるようになった。

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