無個性は個性をつくる   作:匿名希望

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第45話 入れ替える

これでようやく、中身も整理できるようになった。

 

翌日、私は自分の個性因子を改めて確認する。

 

今までも、何が入っているか把握はしていた。当然、自分で作って、自分で入れたものだから。

 

ただ、把握していることと、整理していることは少し違う。

 

必要になった。作る。入れる。もっと便利なものができた。そちらも入れる。古い方は使わなくなる。でも、外せない。だから、そのまま。

 

そうやって積み重なっている。

 

「多いですね」

 

困ってはいない。

 

それが一番の原因だった。

 

◇ ◇ ◇

 

最初、個性因子の研究を始めた頃、私は普通の人間だった。

 

正確には、無個性の人間。

 

観測、機械、顕微鏡、測定、試料。全部、外部設備。

 

そこから少しずつ、個性因子を道具として使えるようになった。さらに、自分用の研究補助個性を作った。

 

個性因子を直接知覚するもの。

 

これは今でも、研究の中核。

 

でも、そこへ至る途中、いろいろ作っている。

 

微細な差を見つけやすくする感覚補助。手作業を安定させる精密操作補助。測定中、一定条件を維持する補助。小さな試料を扱うためのもの。観測範囲を少し広げるもの。実験時の誤差を減らすもの。

 

一つ一つ、当時は意味があった。

 

今見ると、かなり古い。

 

◇ ◇ ◇

 

私は一覧を頭の中で分ける。

 

一、今でも必要。

 

二、機能は必要だが、設計が古い。

 

三、別の個性と役割が重複。

 

四、現在の設備や別の能力で完全に代替済み。

 

五、試験用に入れただけで、もう使わない。

 

かなり、三から五が多い。

 

「残す理由がありませんね」

 

上限、問題なし。負荷、ほとんどなし。だから、残しても実害はない。

 

でも、実害がないから残す、というのは設計理由ではない。

 

使わない部品を機械へ付けたままにする。私は普段、そんな作り方をしない。

 

必要な機能。必要な性能。必要な安全性。

 

それだけ。

 

身体も同じでいい。

 

◇ ◇ ◇

 

まず、簡単なものから。

 

昔、微細作業用に作った精密操作補助。現在、ほぼ使っていない。

 

理由は単純。

 

性能が低い。

 

中学生の頃の設計。今なら、同じ機能をもっと高精度に、もっと広い対象へ、もっと自然に使える。

 

外す。

 

着脱用個性、発現。

 

対象、指定。発現経路、停止。身体との接続、順番に解除。因子、分離。保存。

 

成功。

 

身体、異常なし。

 

古い精密操作、使えない。

 

当然。

 

「問題ありません」

 

次、観測補助。外す。

 

次、実験条件維持。外す。

 

次、感覚補助。外す。

 

一つ一つ確認。

 

急ぐ理由はない。

 

◇ ◇ ◇

 

途中、少し妙な感覚がある。

 

能力が減る。

 

今までは、増えることしかなかった。新しい個性を入れる。使えることが増える。

 

でも、今日は逆。

 

できていたことが、一時的にできなくなる。

 

それでも困らない。

 

外した能力の多くは、そもそも何か月も使っていない。

 

「あっても、使わないなら同じですね」

 

正確には違う。

 

使おうと思えば使えた。今は使えない。

 

でも、必要になればまた作れる。設計ももっと良くできる。

 

なら、古いものを保存する価値はさらに低い。

 

◇ ◇ ◇

 

ただし、何でも外すわけではない。

 

個性因子知覚。残す。

 

人工個性製造。残す。

 

個性兵との共有、命令。残す。

 

精神干渉への防御。残す。

 

研究、運用、防御。今使っている基盤は触らない。

 

更新するにしても、代替を先に設計する。

 

当然。

 

今の自分を、わざわざ不便にする必要はない。

 

今回整理するのは、古い補助系中心。

 

◇ ◇ ◇

 

外した個性因子が、保存容器に並ぶ。

 

昔なら、これだけの個性因子を一つ作るだけでも、かなり手間だった。

 

改変。培養。安定化。また改変。

 

時間がかかる。

 

だから、完成したものは多少性能が低くても、使い続ける価値があった。

 

今は違う。

 

構造を考える。設計、完成。作る。終わり。

 

なら、古いものへ執着する必要はない。

 

私は一つ目、精密操作を再設計する。

 

◇ ◇ ◇

 

目的、研究作業。

 

対象、微細部品、生体試料、測定器、機械加工、個性因子関連作業。

 

以前のものは、単純に手指の精密性を上げる。それだけ。

 

今なら、もっと広くできる。

 

身体動作、補正。微細な力、調整。震え、抑制。対象物の破損限界、推定。

 

必要なら、人工個性製造や知覚した情報と連動。

 

ただし、自動で作業するわけではない。

 

考えるのは私。個性は手段。

 

そこは変えない。

 

設計、完了。

 

生成。自分へ入れる。定着。

 

試験。

 

ピンセット。極細線。微細部品。

 

問題なし。

 

古いものより、かなりいい。

 

◇ ◇ ◇

 

次、観測補助。

 

以前、光、音、温度、微細な変化。それぞれ別に作ったものもある。

 

当時、一つの人工個性へ複雑な機能をまとめる技術は、今より低い。だから、目的ごとに分けていた。

 

今、分ける理由は薄い。

 

ただ、何でも見える万能感覚。そんなものにする必要もない。

 

研究で使う範囲。必要な観測。通常感覚を邪魔しない。必要時だけ詳細。

 

それで一つにまとめる。

 

設計。生成。実装。確認。

 

以前、複数あった機能。一つで足りる。

 

古いものは戻さない。

 

◇ ◇ ◇

 

次、実験補助。

 

これも似ている。

 

昔、一定温度、一定圧力、小さな振動抑制。そういう細かな条件ごとに補助を作ったことがある。

 

今、研究室側の設備はかなり良い。必要なら個性兵も使える。

 

本人へ恒久搭載する必要は、ほとんどない。

 

考える。

 

削除。

 

更新しない。

 

「これは要りませんね」

 

外したまま、終わり。

 

能力を新しく作れる。

 

だからこそ、作らないという選択が簡単になった。

 

◇ ◇ ◇

 

一日、二日、続ける。

 

外す。確認。必要性を評価。必要なら再設計。作る。入れる。不要なら戻さない。

 

重複しているものは統合。

 

使う可能性が低いものは、外部装備か個性兵へ任せる。

 

自分へ入れる意味があるものだけ残す。

 

結果、数は減った。

 

機能は減っていない。

 

むしろ、よくなっている。

 

「こちらの方が自然ですね」

 

私は現在の個性因子構成を見る。

 

以前は、古い構造、新しい構造、試験用、似たもの。いろいろ混じっていた。

 

今はかなり単純。

 

基幹。研究。個性兵運用。防御。必要な補助。

 

それだけ。

 

◇ ◇ ◇

 

古い個性因子。

 

保存容器にまだある。

 

再移植できる。

 

でも、する理由はない。

 

研究資料として残すか、考える。

 

構造は全部覚えている。必要なら、同じものを再現可能。

 

現物の保存、不要。

 

なら、処理。

 

因子、中和。安全に分解。

 

いくつか比較用に残す理由も、特にない。

 

「処分でいいですね」

 

順番に処理。

 

容器、空。

 

昔、かなり時間をかけて作ったもの。

 

でも、だから残すという判断はしない。

 

役目が終わった。

 

それだけ。

 

◇ ◇ ◇

 

最後、個性因子知覚。

 

これだけ、少し考える。

 

最初に本格的な研究補助として作った個性。今までずっと使っている。

 

当然、設計は古い。

 

ただ、途中で何度か調整している。完全に最初のままではない。

 

それでも、現在の技術ならもっと整理できる。

 

個性因子。存在。構造。適合。異常。後付け。発現。観測情報。人工個性製造との連携。

 

これが研究の中心。

 

止める時間は短くしたい。

 

だから、先に新しい設計を完成。

 

古い個性因子知覚を外す。

 

一瞬、世界から一つの情報層が消える。

 

人はいない。

 

研究室。人工個性。試料。

 

今まで直接分かっていたものが、普通の感覚だけになる。

 

珍しい。

 

昔は、これが普通だった。

 

でも、感慨は特にない。

 

新しいものを生成。実装。

 

視界ではない。

 

知覚が戻る。

 

前より明確。

 

個性因子。構造。接続。周囲の人工個性。自分の内部。

 

全部分かる。

 

人工個性製造系との連携、確認。

 

正常。

 

「こちらの方がいいですね」

 

古い方は戻さない。

 

◇ ◇ ◇

 

更新、終了。

 

私は今の構成を記録する。

 

数。目的。依存関係。更新日。

 

以前、そこまで管理していなかった。

 

自分で覚えている。だから、必要なかった。

 

でも今後、外す、入れ替える。それを普通にするなら、管理した方が早い。

 

ただし、詳細な設計図を外部へ残すとは限らない。

 

危険。重要。

 

そういうものは今まで通り、頭の中。

 

記録するのは、機能、状態、更新履歴。必要範囲。

 

それでいい。

 

◇ ◇ ◇

 

今回、分かった。

 

個性をいくつ持てるか。そこは重要ではない。

 

百、千、もっと入れられるとしても、使わないなら意味がない。

 

必要になった時、作ればいい。必要がなくなれば、外せばいい。古くなれば、新しくする。

 

それで十分。

 

私は自分を、個性の倉庫にしたいわけではない。

 

研究に必要なもの。個性兵を運用するためのもの。普段邪魔にならず、持つ意味のある防御。

 

それ以外、本人へ恒久的に入れる理由はあまりない。

 

戦うための能力は、個性兵へ持たせればいい。

 

救助、個性兵。

 

移動、必要なら専用品。

 

何でも自分でやる必要はない。

 

◇ ◇ ◇

 

着脱用人工個性。

 

これは残す。

 

更新。

 

今後、何度も使う。

 

新しい技術を得る。古い能力を更新。必要な機能が変わる。

 

そのたび、身体も変えられる。

 

追加しかできなかった頃より、ずっと扱いやすい。

 

私は最後に、自分の中をもう一度確認する。

 

不要な旧式個性、なし。

 

重複、必要範囲。

 

研究補助、最新版。

 

中核能力、正常。

 

「これでいいですね」

 

持てるものを全部持つ必要はない。

 

必要なものを、必要な時に、必要なだけ。

 

それが一番、使いやすかった。

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