無個性は個性をつくる   作:匿名希望

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第75話 抹消が切れる

死柄木の視線が、相澤先生へ固定されている。

 

もう隠す気もないらしい。

 

自分の個性を止めている相手が誰なのか。

 

そこへ到達すれば何が起きるのか。

 

理解した上で、身体を低く沈めた。

 

「来るぞ!」

 

現場から声。

 

同時に死柄木が地面を蹴った。

 

速い。

 

正面にオールマイト。

 

側面からエンデヴァー。

 

その後方に相澤先生。

 

死柄木は最短距離で相澤先生へ向かう。

 

「させん!」

 

オールマイトが踏み込む。

 

正面衝突。

 

拳と腕がぶつかる。

 

衝撃だけで地面が割れた。

 

力ではオールマイトが上。

 

死柄木の身体が横へ押し流される。

 

そこへ炎。

 

「逃がさん!」

 

エンデヴァー。

 

死柄木が炎を浴びる。

 

皮膚が焼ける。

 

再生はしない。

 

相澤先生の『抹消』はまだ続いている。

 

このままなら、押し切れる。

 

そう見えた。

 

◇ ◇ ◇

 

死柄木は一度距離を取った。

 

呼吸が荒い。

 

身体にもかなり損傷が残っている。

 

完成前に培養を中断された影響もあるのかもしれない。

 

ただ。

 

逃げる様子はない。

 

再び相澤先生を見る。

 

「やはり、相澤先生を優先していますね」

 

私が言う。

 

「分かっている」

 

公安担当者の返答。

 

相澤先生の前には、防衛型個性兵を一体置いてある。

 

死柄木本人へ攻撃する必要はない。

 

接近を遮断する。

 

攻撃を防ぐ。

 

それだけに任務を絞っている。

 

「防衛型、接近阻止を継続してください」

 

「承知しました」

 

死柄木がまた動く。

 

今度は一直線ではない。

 

オールマイトへ向かう。

 

拳を避ける。

 

エンデヴァーの炎を身体を沈めて抜ける。

 

リューキュウが横から腕を伸ばした。

 

死柄木を掴もうとする。

 

その瞬間。

 

防衛型から警告が入った。

 

「高速投射物を確認」

 

小さい。

 

観測型の映像を拡大する。

 

死柄木の指先から、何かが飛んでいる。

 

相澤先生へ。

 

◇ ◇ ◇

 

防衛型が動いた。

 

障壁を展開する。

 

だが同時に、死柄木本人が突っ込んできた。

 

「接触」

 

防衛型の前面へ死柄木の蹴りが入る。

 

障壁が歪む。

 

個性ではない。

 

身体能力だけ。

 

それでも強い。

 

防衛型が死柄木の突進を受け止める。

 

その一瞬。

 

小さな投射物が、展開した障壁の外側を抜けた。

 

完全に相澤先生を包んでいたわけではない。

 

正面の死柄木を止めるため、防衛範囲がそちらへ偏っている。

 

「相澤先生!」

 

投射物が右脚へ刺さった。

 

小さな弾丸。

 

相澤先生が一度だけそこを見る。

 

表情が変わった。

 

「個性消失弾か!」

 

現場側でも気づいたらしい。

 

私にも見覚えがある。

 

死穢八斎會が作っていたもの。

 

個性因子そのものを破壊する薬剤。

 

「医療型を――」

 

言い切る前に。

 

相澤先生が動いた。

 

ナイフを抜く。

 

迷わない。

 

自分の右脚を切断した。

 

◇ ◇ ◇

 

「……早いですね」

 

私は映像を見る。

 

投与された薬剤が全身へ回る前に、侵入した部位そのものを切り離した。

 

判断としては正しい。

 

個性因子を壊す作用が局所から広がるなら、拡散前に切断すればいい。

 

乱暴ではあるが。

 

「抹消、継続中!」

 

現場から報告。

 

相澤先生の髪はまだ浮いている。

 

視線も死柄木から外していない。

 

『抹消』は残っている。

 

片脚を失っても。

 

「医療型を送るぞ!」

 

公安担当者が言う。

 

「治療自体はできます」

 

失った脚でも戻せる。

 

問題は治療するためには、相澤先生を戦場から下げる必要があることだった。

 

「ただ、下げれば視線が切れます」

 

担当者が止まる。

 

相澤先生自身も分かっているらしい。

 

防衛型が身体を支えようと近づく。

 

「まだいい」

 

短い声。

 

「俺が見てる間にやれ」

 

現場のヒーローへ向けた言葉だった。

 

オールマイトが死柄木を見る。

 

「……分かった」

 

次の瞬間。

 

踏み込んだ。

 

◇ ◇ ◇

 

オールマイトの拳が死柄木へ入る。

 

さっきより強い。

 

死柄木の身体が大きく浮いた。

 

エンデヴァーが待っている。

 

「プロミネンス――」

 

炎が集まる。

 

死柄木も分かったらしい。

 

身体を捻る。

 

それでも完全には避けられない。

 

炎に飲まれる。

 

地面へ叩き付けられる。

 

再生しない。

 

焼けたまま。

 

そこへリューキュウ。

 

巨大な腕が死柄木を押さえ込む。

 

「今だ!」

 

他のヒーローも動く。

 

拘束。

 

打撃。

 

炎。

 

一度に集中する。

 

相澤先生が見ている間に終わらせる。

 

誰が見ても、そういう戦い方だった。

 

「死柄木の損傷率、かなり上がっています」

 

正確な数値までは出せない。

 

しかし外見だけでも分かる。

 

腕。

 

肩。

 

胸部。

 

脚。

 

全身に損傷が残る。

 

再生がないから、そのまま蓄積している。

 

「このまま持つのか?」

 

公安担当者が言う。

 

「普通の人間なら、とっくに行動不能だと思います」

 

死柄木は違う。

 

また立つ。

 

改造された身体だけで。

 

◇ ◇ ◇

 

死柄木が地面へ手をつこうとした。

 

何も起きない。

 

『崩壊』は消されている。

 

自分でも分かっているはずだ。

 

それでも、一度動きを止めた。

 

次に。

 

ポケットへ手を入れる。

 

「また何か持っています」

 

私は言う。

 

死柄木の手の中。

 

先ほどと同じ形。

 

個性消失弾。

 

「防衛型、投射物を最優先で遮断してください」

 

「承知しました」

 

今度は分かっている。

 

同じ方法は通さない。

 

防衛型が相澤先生の周囲へ障壁を広げる。

 

死柄木が投げる。

 

障壁。

 

弾丸が当たり、落ちる。

 

「遮断成功」

 

問題ない。

 

だが。

 

死柄木の狙いは弾丸だけではなかった。

 

投げた直後、オールマイトへ飛び込む。

 

「!」

 

オールマイトが受ける。

 

死柄木はその腕を蹴り、方向を変えた。

 

エンデヴァーの炎が迫る。

 

身体を低くして抜ける。

 

リューキュウが掴む。

 

死柄木の腕が龍の指へ食い込んだ。

 

個性がなくても強い。

 

力任せに身体を引き寄せ。

 

そのまま蹴る。

 

拘束が緩む。

 

「抜ける!」

 

死柄木がまた相澤先生へ向かった。

 

◇ ◇ ◇

 

防衛型が前へ出る。

 

「遮断します」

 

死柄木と正面からぶつかる。

 

拳。

 

障壁。

 

一撃目を止める。

 

二撃目。

 

外装が割れる。

 

三撃目。

 

防衛型の上半身が大きく歪んだ。

 

それでも止まらない。

 

両腕で死柄木を掴む。

 

「拘束」

 

「離せ!」

 

死柄木が力を込める。

 

防衛型の腕が一本千切れた。

 

すぐ再構築が始まる。

 

もう一本。

 

肩ごと壊れる。

 

それでも、数秒は稼いだ。

 

その間にオールマイトが追いつく。

 

「そこまでだ!」

 

拳。

 

死柄木の身体が横へ飛ぶ。

 

相澤先生まで、まだ距離がある。

 

「防衛型、修復しながら後退。護衛を継続してください」

 

「承知しました」

 

完全破壊ではない。

 

直せる。

 

ただし、一時的に性能は落ちる。

 

その数秒が問題だった。

 

◇ ◇ ◇

 

相澤先生の状態も良くない。

 

片脚。

 

出血。

 

目の乾燥。

 

それでも視線を維持している。

 

マニュアルがいれば目を潤せるが、今の戦場配置ではすぐそばにいない。

 

原理上、人間の眼である以上限界はある。

 

私は医療型の位置を確認する。

 

十分近い。

 

退避さえできれば治療できる。

 

脚も。

 

その他の傷も。

 

問題は、そこまで『抹消』を切らずに持たせられるかだった。

 

「あとどの程度維持できますか?」

 

公安担当者に聞かれる。

 

「本人の生理状態なので、正確には分かりません」

 

私は相澤先生本人ではない。

 

「ただ、かなり無理をしているのは見れば分かります」

 

「代替は?」

 

「今すぐ公安へ出せるものはありません」

 

相澤先生の『抹消』構造は知っている。

 

私自身の研究にも使っている。

 

しかし、その個性を戦闘用個性兵へ勝手に搭載する許可は取っていない。

 

ここで都合よく出すことはできない。

 

「本人に維持してもらうしかありません」

 

「……分かった」

 

◇ ◇ ◇

 

死柄木がまた立つ。

 

さすがに遅くなっている。

 

片腕の動きが悪い。

 

身体の各所が焼けている。

 

それでも目だけは相澤先生を見ている。

 

「しつこいですね」

 

「お前が言うと妙に淡々としてるな」

 

「実際、目的が一つなので分かりやすいです」

 

死柄木が相澤先生を止める。

 

そうすれば全部戻る。

 

なら、それ以外の攻撃を受けても、そこへ向かう価値がある。

 

合理的ではある。

 

そして。

 

今度は動き方が変わった。

 

相澤先生へ直接突っ込まない。

 

オールマイトへ向かう。

 

拳を誘う。

 

避ける。

 

エンデヴァーの攻撃を受けながら、わざと横へ飛ぶ。

 

その先にいるのはリューキュウ。

 

死柄木が身体ごとぶつかる。

 

龍の巨体がわずかに揺れた。

 

その陰。

 

相澤先生から死柄木への視線が一瞬だけ遮られかける。

 

「位置をずらしてください!」

 

私が言う。

 

相澤先生も気づいている。

 

身体を傾ける。

 

視線を維持。

 

切れない。

 

死柄木が舌打ちした。

 

「失敗ですね」

 

だが。

 

それだけでは終わらなかった。

 

◇ ◇ ◇

 

死柄木が地面を蹴る。

 

リューキュウの腕へ乗る。

 

そこからさらに跳ぶ。

 

オールマイトが追う。

 

「相澤!」

 

死柄木へ手を伸ばす。

 

わずかに届かない。

 

エンデヴァーの炎が横から当たる。

 

死柄木の身体が焼ける。

 

軌道がずれる。

 

それでも。

 

相澤先生の前まで来た。

 

防衛型はまだ再構築途中。

 

残った身体で割り込む。

 

死柄木がそれを蹴る。

 

半壊した個体が横へ飛ぶ。

 

次。

 

相澤先生。

 

「先生!」

 

現場の声。

 

死柄木の手が伸びる。

 

相澤先生も捕縛布を動かした。

 

腕へ巻き付く。

 

止める。

 

完全には止まらない。

 

死柄木の指先が顔へ届いた。

 

◇ ◇ ◇

 

血が散る。

 

相澤先生の顔。

 

眼の周囲。

 

深い傷。

 

反射的に瞼が閉じた。

 

それだけだった。

 

一瞬。

 

だが。

 

『抹消』には十分だった。

 

髪が落ちる。

 

「抹消解除!」

 

現場から叫び。

 

私は死柄木を見る。

 

最初に起きたのは再生だった。

 

焼けていた皮膚が戻る。

 

潰れていた部分が整う。

 

傷が消えていく。

 

速い。

 

「超再生復活」

 

次。

 

死柄木の身体から何かが広がる。

 

空気が震えた。

 

複数の個性因子が同時に動いている。

 

映像だけでも分かるほどだった。

 

「全個性が戻ったと考えた方がいいですね」

 

公安担当者が即座に指示を出す。

 

「相澤を下げろ!」

 

今度は本人も反対しなかった。

 

もう維持できない。

 

防衛型が再構築を終えきっていない身体で相澤先生を抱える。

 

「後送します」

 

「お願いします」

 

私は安全な位置を確認する。

 

観測型が見ている後方地点。

 

そこへワープゲートを開く。

 

「出口安全確認。通過してください」

 

防衛型が相澤先生を抱えたままゲートへ入る。

 

後方。

 

医療型の待機地点。

 

到着。

 

「右脚欠損、顔面・眼部損傷。完全治療を開始してください」

 

「承知しました」

 

治せる。

 

問題はそこではない。

 

治療が終わるまでの間。

 

死柄木の個性は、もう戻っている。

 

◇ ◇ ◇

 

「全員、地面から離れろ!」

 

現場で声が飛ぶ。

 

『崩壊』を警戒している。

 

死柄木が地面へ手を向ける。

 

エンデヴァーが炎を放つ。

 

「させん!」

 

オールマイトも踏み込む。

 

二人同時。

 

死柄木は受けない。

 

さっきまでとは違う。

 

身体が急に加速した。

 

何か別の個性。

 

横へ抜ける。

 

炎を避ける。

 

オールマイトの拳も外れる。

 

さらに上空へ。

 

「飛行?」

 

公安担当者が言う。

 

「可能性はありますが、まだ断定できません」

 

浮いている。

 

単純な跳躍とは軌道が違う。

 

何らかの移動系。

 

他にもあるだろう。

 

AFOから渡された個性。

 

何種類あるのか分からない。

 

「観測型、死柄木の発動を可能な限り記録してください」

 

「承知しました」

 

これはかなり価値のある情報になる。

 

生き残れば。

 

◇ ◇ ◇

 

死柄木の傷が次々と消える。

 

オールマイトとエンデヴァーが与えた損傷。

 

相澤先生が止めている間に蓄積させたもの。

 

全部が治っていくわけではない。

 

再生にも時間はある。

 

身体の状態も完全ではない。

 

それでも。

 

数十秒前までより明らかに状況が悪い。

 

「重戦闘型を出しますか?」

 

私は聞く。

 

公安担当者が画面を見る。

 

「……待て」

 

まだ許可しない。

 

救助側には大量投入している。

 

戦闘だけは制限を残している。

 

「オールマイトとエンデヴァーがいる。まずは現場に任せる」

 

「分かりました」

 

私は従う。

 

ただ、必要になった時にすぐ出せるよう準備だけはする。

 

工廠型へはまだ命令しない。

 

標準重戦闘型の素体状態を確認。

 

問題なし。

 

ワープも使用可能。

 

必要なら出せる。

 

◇ ◇ ◇

 

死柄木が空中で止まった。

 

追っていたオールマイトも止まる。

 

「死柄木!」

 

呼びかけ。

 

返事がない。

 

死柄木は片手で自分の頭を押さえた。

 

様子が変だ。

 

痛みではないように見える。

 

顔を歪める。

 

何かと争っているような動き。

 

そして。

 

「……黙れ」

 

小さな声。

 

通信が拾った。

 

「俺の身体だ」

 

誰に言っているのか分からない。

 

周囲には誰もいない。

 

オールマイトが表情を変えた。

 

「まさか……」

 

死柄木がまた頭を押さえる。

 

その口が動いた。

 

今度の話し方は、少し違った。

 

「まだ不完全だ」

 

落ち着いている。

 

直前までの死柄木とは調子が違う。

 

「ここで消耗させる必要はない」

 

公安担当者が画面を見る。

 

「誰と話している?」

 

「本人以外の意識が混じっている可能性はありますね」

 

私は答えた。

 

AFOは個性を奪うだけではない。

 

個性因子と人格の関係については、これまでの研究でも無関係ではないと分かっている。

 

OFAの内部にも過去の所有者に由来する意識が存在した。

 

なら。

 

AFO由来の個性因子を大量に移植された死柄木の中へ、元の所有者に由来する意識が強く現れていても不思議ではない。

 

ただ、今の段階で断定はできない。

 

観測事実は一つ。

 

死柄木が自分自身と会話しているように見える。

 

◇ ◇ ◇

 

「ワン・フォー・オール……」

 

死柄木が呟いた。

 

オールマイトの表情が変わる。

 

私もその言葉は知っている。

 

学校から正式に情報提供を受け、緑谷君の解析もしている。

 

OFA。

 

死柄木がそれを探すように周囲を見る。

 

一瞬。

 

何かの個性を使ったように感じた。

 

視線が遠くへ向く。

 

「……ここにはいない」

 

声。

 

今度も、死柄木本人とは少し違う調子。

 

オールマイトが踏み込む。

 

「貴様――!」

 

死柄木が距離を取った。

 

戦おうとしない。

 

「追うぞ!」

 

エンデヴァー。

 

炎。

 

死柄木が回避する。

 

反撃はする。

 

だが、さっきまでのように相手を倒すためではない。

 

距離を作るため。

 

「行動目的が変わりましたね」

 

私は言った。

 

「逃げる気か?」

 

「そう見えます」

 

OFAがこの場にいない。

 

自分は不完全。

 

ヒーロー側には近全盛期のオールマイトがいる。

 

エンデヴァーもいる。

 

相澤先生は下がったが、こちらにはまだ戦力が残っている。

 

この状況なら。

 

戦う理由より、離脱する理由の方が多い。

 

◇ ◇ ◇

 

死柄木が大きく後退する。

 

オールマイトが追う。

 

エンデヴァーも。

 

ただ。

 

市街地では今も救助が続いている。

 

崩壊で壊れた区域。

 

倒壊した建物。

 

取り残された人間。

 

オールマイトの視線が一度そちらへ向いた。

 

追跡と救助。

 

両方を一人でやることはできない。

 

救助型は増やしている。

 

医療型もいる。

 

それでも、人間のヒーローが不要になるわけではない。

 

「救助側はこちらでかなり補えます」

 

私は公安担当者へ言う。

 

「ただ、全部ではありません」

 

「分かっている」

 

担当者も映像を見ている。

 

死柄木。

 

市街地。

 

負傷者。

 

そして山荘側。

 

複数の問題が同時に動いている。

 

「死柄木の追跡を観測型で維持します」

 

「頼む」

 

「戦闘型の投入は?」

 

「まだ待て」

 

「分かりました」

 

今は観測。

 

必要な状況になれば、次を作る。

 

それでいい。

 

◇ ◇ ◇

 

後方から医療型の報告が入った。

 

「イレイザーヘッド、治療中。生命状態安定」

 

「眼は?」

 

「修復可能です」

 

「脚も?」

 

「可能です」

 

なら問題ない。

 

死亡していない。

 

治療できる。

 

ただし戦場では、その数分の中断だけでも十分に状況が変わった。

 

死柄木の個性群は戻った。

 

超再生も動いている。

 

AFO由来と思われる意識も強く出てきた。

 

そして本人は、正面戦闘より撤退を選び始めている。

 

「治療完了後の再投入は、本人と現場側で判断してください」

 

「承知しました」

 

私は医療型への指示を終える。

 

その直後。

 

別の観測型から高優先度通知が入った。

 

病院側ではない。

 

群訝山荘。

 

「高優先度変化」

 

画面を切り替える。

 

山荘側でも。

 

戦況が大きく動き始めていた。

 

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