依存性ゆきのん   作:葵転青

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折本かおり_前編

一色いろは生徒会長の率いる生徒会は順調だ。

 

雪ノ下の仕事が早いのは勿論だが、雪ノ下の選んだ3人もよく働いている。

 

三浦はギャルなのに書記の仕事を正確にこなしている。元々頭が良いギャルだと思っていたが、なんでギャルなんてやってるんだろうか。

 

海老名は同人活動でお金管理はお手のものらしい。なにやらグレーなお金の流れを聞いてしまったが、プライベートには踏み込まないでおこう。

 

由比ヶ浜もちゃんと雑用をせっせとこなしてくれている。由比ヶ浜は唯一の1年生の一色の機微に良く気付いてくれるので、実はこれがかなり助かってる。

 

この生徒会はどこまでいっても一色いろはの為の生徒会だ。一色が成長する為には俺たちを上手く使う必要がある。先輩だからといって遠慮なんてしてる暇はない。由比ヶ浜がいなければ一色は俺達に遠慮して萎縮し、仕事にならなかっただろう。

 

 

 

さて、俺はどうしてるかって?俺は特に何もやってない。

副会長を無理やり2人にしたもんだから仕事がないのだ。

 

それに加えて生徒会室では一色いろはによる恋人接触禁止令が施行されているので、雪ノ下とは離れ離れ。今も長机を挟んでお喋りするしかやる事がない。

 

 

「比企谷くん、今週末はプールに行くわよ。」

 

「ずいぶんと急だな。水着なんて持ってないぞ。」

 

「友達がいないからプールに誘われた事が無かったのよね、ごめんなさいね配慮が足りなかったわ。」

 

「そういう意味じゃない。いる。今は沢山友達いるから。戸塚とか戸塚とか戸塚とか。」

 

「戸塚くんだけじゃない。それと、戸塚くんとプール行くのは浮気だから許さないわよ。」

 

「戸塚は男だから浮気じゃな……いや、浮気になるな。戸塚が上半身裸で泳いでると警察がすっ飛んできそうだ。」

 

「戸塚くんとは健全な遊びだけにしなさい。」

 

「プールも本来は健全だぞ。それで、水着は何とか用意するけど、なんでわざわざ12月にもなってプールに行くんだ?」

 

「私達ってこれまで海にもプールにも行かなかったじゃない?」

 

「そういやそうだな。雪ノ下は水泳も得意って言ってたし久々に泳ぎたくなったのか?」

 

「得意ってことはないけれど、たまに水中の感覚が恋しくなるのは確かに事実ね。でも理由はそれじゃないわ。」

 

「ぜんぜん分からんから教えてくれ。」

 

「仕方ないわね。クリスマスよ。」

 

「クリスマス?クリスマスとプール行く事が何の関係あるんだよ。初めて聞く組み合わせだぞ。」

 

「先月から私、一人暮らし始めたじゃない?その………今年のクリスマスは私の家で一緒に過ごしたいから、プールで肌を見せるのを慣れておこうと思って………」

 

「…………たぶん意味ないぞ。雪ノ下のことは服着てても毎日見惚れるくらいだから、露出度の問題じゃない。」

 

「比企谷くんではなくて私の問題よ。最初の日は、余計な事に気を回さないで比企谷くんを感じたいのよ。」

 

「…………俺も初めてだから、そんな期待されても困る。雪ノ下のために頑張るけどさ。」

 

「本来なら男の人がリードするものなんでしょうけど、それは私の性に合わないから、私も初めてだけど頑張るわ。比企谷くんを満足させてあげるから覚悟してなさい。」

 

「今のままでも満足しっぱなしなのにこれ以上があるのか。雪ノ下こそ覚悟しとけよ。俺の事しか考えられなくしてやるよ。」

 

「あら?私は今のままでも比企谷くんの事しか考えられてないのに、これ以上があるのかしら。楽しみね。」

 

 

うふふ。あはは。と2人で話していると、いつの間にか俺達は立ち上がって近付こうとしていたらしい。俺は一色と由比ヶ浜に羽交締めにされ、雪ノ下は三浦と海老名に羽交締めにされていた。

 

「結衣先輩!このまま引き摺って海浜まで行きましょう!神聖な生徒会室で子作りさせる訳にはいかないです!」

 

「ほらヒッキーも正気に戻って!ヒッキーが止めてくれって頼んだんだからしっかりしてよ!」

 

「離せ馬鹿コンビ!最近雪ノ下に触れてないんだから少しくらいいいだろ!手に触れるだけ!手に触れるだけだから!」

 

「馬鹿なのは結衣先輩だけです!昨日もそう言ってキスまでしてたじゃないですか!ダメです!生徒会長権限で今日は接触禁止です!」

 

「そうだよ!ヒッキーもゆきのんも油断すると直ぐイチャイチャするんだから!あといろはちゃん!私馬鹿じゃないから!」

 

 

 

馬鹿コンビに連行され、俺は海浜幕張駅まで来た。

 

野心溢れる一色いろは生徒会長は総武の仕事だけじゃ物足りないのか、海浜総合高校とのクリスマスイベントの仕事を見つけてきた。見つけてきたというよりは、お手伝いの打診があっただけだが。今日はお互いの高校の顔合わせ日だ。

 

本来なら生徒会メンバー全員で行くのが筋だが、俺と雪ノ下が一緒に行くとまずいという結論が出たので、生徒会を2つに分けた。

 

一色は生徒会長なので当然参加。女だけでは舐められるので男の俺も参加。そしてムードメーカーの由比ヶ浜。この3人が校外チーム。

 

雪ノ下・三浦・海老名は校内のお仕事担当だ。3人とも優秀なので俺達3人が居なくても仕事が回る。むしろ俺が居ない分、雪ノ下の仕事がブン回りしているらしい。だろうね。

 

 

 

 

顔合わせ場所はクリスマスイベントで使用する文化会館の会議室。海浜側は生徒会フルメンバーで参加している。俺達は『お手伝いしてあげる』立場なので下手に出る必要はないのだが、一年生の一色、ポワポワした由比ヶ浜、ヤル気無さげな俺というメンツだったせいで、海浜側は完全に俺達を下に見ているようだった。

 

海浜総合高校の生徒会長である玉縄はルー大柴のような話し方をするので非常にめんどくさい。そして、そんな玉縄が生徒会長なだけあって海浜総合高校は非常に意識高めのメンバーが集まっていた。インセンティブだのクリエイティブだのとティブティブ言いまくっていた。

 

横文字を多用するものだから、頭が弱めな一色と由比ヶ浜は早々に話についていけておらず、会議は海浜総合高校の独壇場。まあ独壇場といっても横文字使ってただけで会議自体は何も進んでなかった。

 

会議が終わり解散。玉縄から明日もトゥゲザーしようぜと言われてしまった。頭悪くなりそう。今日だけで偏差値が10は下がった気がする。あの中身の無い横文字会議を明日も聞かなければならないとは地獄だ…….。

 

俺は一色と由比ヶ浜に『疲れた脳を癒す為』だと言われてスイパラに連行された。甘い物は好きだけど大食いは得意じゃないんだよなぁ。ケーキなんて2個も食えば充分なのだ。

 

そんな俺を尻目に、由比ヶ浜はケーキを無限に食ってる。その細い腰のどこにケーキが消えてるんだ?胸か??雪ノ下が羨ましがりそうだ。

一色も由比ヶ浜に負けじとケーキを頬張っている。一色の場合は胸はそれほど無いので、ケーキがどこに消えているかは謎である。

 

そんな2人を見ながらゆっくりとマシュマロを食べていると、横から声を掛けられた。顔を向けると、海浜総合の制服を着た女子が立ってた。なんか見覚えある顔だけどだれだっけ。

 

「やっぱり比企谷じゃん!こんなとこで会うとかまじウケるんだけど!比企谷ってそんなキャラじゃないじゃん!」

 

思い出した。折本かおりだ。中学の頃の同級生。

 

「そこでケーキを食ってる2人の付き添いだ。俺だってホントはこんな女子しかいない店に入りたくなかったよ」

 

一色と由比ヶ浜に指をむける。

 

「せんふぁい!だれでふか!そのひと!」

 

一色がケーキを頬張りながら質問してきた。行儀の悪いことするのやめろ。やばいな、これがうちの生徒会長だとバレたら総武は終わりだ。

 

「え?あたし?折本かおりだよ〜。比企谷とは中学の同級生でさ、あたし比企谷に告白されたんだよね!まじ話したこと無いのにいきなり告られてビビったし!」

 

話した事はある。しかし、数回だ。俺の告白は翌日にはクラス中に知られ、俺は笑い物になった。折本のせいで女子に対してトラウマができたのは事実だ。

 

しかし、トラウマは雪ノ下が治してくれた。

 

そもそも、折本は俺に勘違いされて告白された被害者だ。クラスに知られたのだって、よく知らない男から告白されてクラスの人に相談した結果広まったと考えるべきだろう。

 

折本に罪はなく、罪があるとしたら俺の方だ。

 

「あの時はすまなかったな。お詫びにスイパラでパシリくらいならしてやってもいいぞ。俺はもう食う気ないしな。」

 

「なんで比企谷が謝ってんの?告白してきた男に謝られたの初めてで謎すぎるんだけど。あたしはスイパラ出るとこだし、その貸しはどっかで返してくれればいいや!」

 

しまった……軽く罪滅ぼしするつもりが、貸しにしてしまった。変なこと頼まれなければいいけど。

 

「ってかさ、この2人のうちどっちが比企谷の彼女なん?もしかして彼女2人とか?比企谷もやるねーモテモテじゃん!」

 

折本が肘で俺の肩をグリグリしてくる。こういうスキンシップのせいで、中学の俺は勘違いしたんだったな。懐かしい。

 

「ただの付き添いだって言っただろ。それに、俺には彼女2人なんて無理だ、1人を好きになるので精一杯な男だよ。」

 

雪ノ下は今頃なにしてるんだろうなぁ

 

「そうです!私が先輩の彼女だなんでありえません!絶対ないです!ありえないです!」「私だって無理!ヒッキーと付き合うとか無理無理!絶対無理!」

 

「やば、比企谷めっちゃ嫌われてんじゃん。何したの?あんまあたしの中学の評判下げるような事しないでよ?」

 

一色と由比ヶ浜にあるのは、俺への嫌悪ではなく雪ノ下に対する恐怖だろう。雪ノ下はよく冗談で「浮気したら殺す」なんて事を真顔で言ってるから、それを2人は真に受けているのだ。雪ノ下の冗談は分かりづらいからなあ。

 

「なんもしてねーよ……。それに、俺は総武行ったんだから中学の評判は上げてる方だ。逆に折本は海浜みたいだし評判下げてるだろ。」

 

「あっ、いまあたしのこと遠回しに馬鹿って言ったでしょ!言っとくけどウチの中学から海浜きたのめっちゃ多いからね!」

 

「すまんすまん言い過ぎた。海浜も偏差値は低いけど良い高校なのは知ってるよ。俺も一応第二志望は海浜だったしな。」

 

「第二志望海浜だったんだ、意外!てゆーか、比企谷って性格変わった?なんか中学の時より全然話しやすいっていうか面白くなってんだけど!」

 

「2年も経ってりゃ性格ぐらい変わるもんだろ。でも、折本はそんな変わってないな。俺の記憶のまんまだ。」

 

「性格なんて普通は変わんないでしょ。……そっか、もしかしたら比企谷って最初からこんな面白かったのかもしんないね。私が気付けなかっただけかも」

 

「折本とは全然話さなかったからな。仮にそうだったとしても気付くのは無理だろ。」

 

「それもそうだね。ねぇ?せっかくだしもうちょい話さない?」

 

「スイパラの退出時間なんだろ?さっきから店員がこっち見てるからさっさと出た方がいいぞ。俺はクリスマスまではこのあたりウロウロしてるだろうから、何か話すことあるならまた会った時にでも話せば良いだろ。」

 

「比企谷はこの辺でなんかしてんの?」

 

「そっちの生徒会様のクリスマスイベントのお手伝いだよ。あっ、くそ、玉縄のこと思い出したらまた頭悪くなりそうだ。」

 

横文字使うだけならまだしも使い方微妙に間違えてるから聞いてて腹立つんだよなアイツら。

 

「あー…玉縄君ね。あたしもそんな好きじゃないなぁ。」

 

「あいつの存在が海浜の癌だから弾劾した方がいいぞ。」

 

「どんだけ嫌いなの……まあいいや。それならまた会いそうだね。それじゃあね!それと、マシュマロ食べてんなら焼くのオススメだよ!店員に言えばバーナー借りられるし!」

 

ほう。いい事を聞いた。店員にバーナーを借りて焼いてみるとマジで美味かった。表面がカリカリで中がトロトロ。これなら海原雄山もご満悦間違いなしだ。一色と由比ヶ浜に強奪されつつ、その後も俺は無限にマシュマロを焼き続けた。

 

 

 

海浜総合高校との会議はそれからも頻繁に行われた。というかほぼ毎日だった。そして会議自体は何も進まない。ビッグでグレイトでスーパーなクリスマスイベントにしたいらしいので、ずっとアレしたいコレしたいで会議が終わるのだ。マジで頭悪くなった気がする。

 

一色と由比ヶ浜は2人仲良く横文字に撃沈している。玉縄のルー語を議事録を見ながら辞書で調べて解読しているようだが、そもそも玉縄は横文字の使い方をちょくちょく間違えているので解読しても無駄なのだ。

 

雪ノ下に玉縄の議事録を見せてみたら眉間に皺が寄っていた。可愛い。珍しい顔の雪ノ下が見れたので玉縄には感謝しておこう。

 

 

 

 

クリスマスまで残り2週間。そろそろ期日がヤバそうだがいまだに何も決まっていない。やりたい事は多いが、それの精査ができていない。こりゃ失敗かな。

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