依存性ゆきのん   作:葵転青

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戸塚彩加

ボールは友達。

俺は友達をラッケットで叩いて壁に打ちつけている。

これが友達にする所業なのか?失望したぞ大空翼くん。

 

今は体育の時間。内容はテニスだ。

 

体育の授業といってもコート数は限られている。

自ずとカースト上位がコートを独占し、弱者は壁打ちをすることになるのだ。世の中は世知辛いね。

 

そんな壁打ち組の1人に、戸塚彩加という男がいる。

女にしか見えないが、男らしい。ホントか?

更衣室に戸塚がいたら大騒ぎになりそうだが、テニス部の個室の更衣室を使って着替えているらしい。やっぱ女だろ。

 

「比企谷くん、やっぱりテニス上手いよ。打つフォームが綺麗だし、壁打ちも狙ったところに打ててるし。」

 

戸塚は俺の事をやけに褒めてくれる。

テニス部にテニスを褒められると悪い気はしない。

 

体育で仲良くなった戸塚はクラスでも話しかけてくるようになり、由比ヶ浜の紹介によって奉仕部に依頼にきた。

 

「やっはろ〜!彩ちゃんが悩みあるらしいから連れてきたよ!」

「比企谷くん、ごめんね急に。それに……後ろの人は雪ノ下さんだよね?ホントにクラスにいる時よりベッタリだね。」

 

今日の雪ノ下はコアラのように俺の後ろに抱きついている。

我が家の柔軟剤が小町の不手際で変更になったのだが、雪ノ下はその匂いが気に入ったようで背中に抱き付いて嗅いでいる。

 

俺は俺で雪ノ下の慎ましい胸が背中に当たる感覚を楽しんでいるので、雪ノ下のコアラ化は大賛成である。

 

依頼人が来た時に反応はしていたが、俺の知り合いと分かるやいなやコアラに戻ってしまった。依頼は俺に任せるということだろう。

 

「雪ノ下のことは気にしないでくれ。後で俺から依頼内容は伝えておくよ。それで、相談ってなんだ?」

 

「えっとね、テニス部のみんなが最近やる気なくて、練習に身が入ってないみたいなんだ。僕も色々やってはいるんだけど、中々みんなのやる気を引き出せなくてさ、それで、他の人の意見も聞けたらいいなって思って。」

 

「やる気出てない理由に心当たりはあるのか?」

 

「部員が何人か怪我で辞めちゃったのが原因かなって思ってる。やっぱり仲間が減るとみんな気分は落ちちゃうからさ」

 

「そこまで分かってるなら俺たちがしてあげれる事なさそうだが……」

 

「それじゃあさ、昼休みに練習付き合ってくれないかな?昼休みに僕が練習してる姿を見て貰えば、みんなもやる気出てくれるかなって思って。」

 

「却下よ。昼休みに比企谷くんはやる事があるのよ」

 

コアラは話を聞いていたらしい。背中越しに話すなんて礼儀を知らないコアラだ。後で叱っておこう。

 

「僕はテニス部だから昼にコートの使用許可出てるんだよね。雪ノ下さん。比企谷くんがテニスをしてる姿を間近でゆっくり見てみたくない?比企谷くんテニス上手いよ?」

 

「いいわよ。さっそく明日から練習始めましょう。私もテニスは経験あるから教えれることがあるかもしれないわ。」

 

俺の意見はお構いなしである。まあ拒否するつもりもないが。

 

 

 

 

 

翌日からテニスの特訓が始まった。

実力でいうと戸塚>雪ノ下>俺>>>由比ヶ浜なので、体力のない雪ノ下がダウンしたら俺に交代する形式だ。由比ヶ浜は玉拾い要員。

 

何日か経つと、目論見どおり戸塚の頑張りがテニス部に広まって徐々にやる気が出てきているらしい。女(戸塚)が頑張っているのだ、これで頑張らない男はいないだろう。

 

 

これでそろそろ依頼達成かなと思っていたら、葉山グループがワイワイしながらテニスコートに入ってきた。なんの用だろうか。

 

「あっ、結衣いるじゃ〜ん!テニスしてんの?あーしらもやりたいし隣借りるね〜?」

 

「あっ、優美子、まって、私たち遊んでるわけじゃなくて」

 

「なに?聞こえないんだけど?ラケットってこれ使えばいいん?」

 

ギャルが由比ヶ浜の制止を聞かず侵入してくる。

ギャルは苦手だが、そんな事を言ってる場合ではない。

 

「ちょっと待ってくれ。ここはテニス部管轄のコートだ。部外者は使っちゃいけないことになってる。」

 

「はぁ?あんたもテニス部じゃないでしょ。あんたは使ってよくて、なんであーしはダメなん?」

 

「俺達はテニス部の戸塚に正式にお願いされて練習に付き合ってるんだ。遊びでコートを使ってるわけじゃない。」

 

「ふーん。んじゃ、結衣も役に立ってるの?」

 

「由比ヶ浜はテニス下手だけど、玉拾いと盛り上げ役で頑張ってるよ。由比ヶ浜を借りちゃってて悪いな。」

 

「役に立ってんならいいや。アンタと……雪ノ下さんは上手いってことなん?雪ノ下さんぶっ倒れてるけど。」

 

「雪ノ下は体力ないから…。俺は上手くないが下手でもない、壁打ちよりマシってレベルだな。」

 

「それなら隼人使えば?隼人テニス上手いし、練習するなら強い方がいいでしょ?私も隼人のテニス見たいし。」

 

見た目とは裏腹に話が通じるし頭良いギャルだった。雪ノ下がいなかったらギャップ萌えで惚れてたかもしれん。

 

「それいいね。比企谷くん、俺と試合してみないか?体育の授業じゃ戦ってくれないし、良い機会だから君と戦ってみたいな。俺が勝ったら、戸塚君の練習は君に変わって俺が付き合うよ」

 

さっきまで黙っていた葉山が口を開いたかと思えば見当違いな提案をしてきた。こいつもしかして馬鹿なんじゃないか?ギャルも『何言ってんの?』って顔してんじゃん。

 

「お前が俺より上手いのは知ってるよ。時間の無駄だ。戸塚、葉山が試合してくれるそうだけどいけるか?」

 

「僕は大丈夫だよ、葉山くんありがとうね!さっそくやっちゃおう!」

 

 

 

戸塚vs葉山の試合が始まった。

 

いくら葉山が上手いとはいえ戸塚はテニス部。戸塚の勝利かと思いきや、俺たちとの練習で体力を使っていた戸塚はジリジリと追い詰められ、葉山に負けてしまった。

 

一悶着あったせいで、この試合はギャラリーがそこそこ増えてしまっていた。何も知らなければ、疲労困憊の女子(戸塚)を葉山が叩き潰してる様にしか見えない。葉山には悪評が少し付いてしまったので悪い事をしてしまったな。今度マッ缶でも差し入れてやろうと思う。

 

 

 

 

 

 

今回の依頼結果。

 

全力を尽くした戸塚の姿は観戦していたテニス部員達のやる気を大いに向上させたらしいので、依頼的には結果オーライだ。次期部長は戸塚になるだろう。

 

 

三浦(ギャル)と雪ノ下は見た目が真逆な割に案外気が合うらしく、葉山の女子グループ3人はたまに俺と雪ノ下の昼食に参加する様になった。

俺と雪ノ下がイチャイチャし始めると、3人とも音も無く姿を消している。気を使わせて悪いね。

 

 

依頼成功したので平塚先生に報告に行くと、タバコを2本同時吸いしながら、デートをドタキャンされたことを逆に報告されてしまった。見た目だけなら平塚先生は良い女性の筈だが、ドタキャンって何やらかしたんだろう。

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