ネフェルピトー! 異世界で王をお救いなさい! 作:SUAPF→NFLPT
翌日からも、ボクたちは変わり映えのしない真っ白な銀世界をひたすら進んでいった。
行程の半分までは比較的順調だったものの、そこから先は、山が牙を剥き出し、状況は厳しくなる一方だった。
まず襲いかかってきたのは、荒れ狂うブリザード。
2日間も猛吹雪が吹き荒れ、ボクたちは天幕の中で足止めを余儀なくされてしまった。
幸いにもハイヤの用意した食料は十分にあり、飢えに苦しむことはなかった。
けれど、降り積もる豪雪によって天幕が丸ごと埋もれかける事態が頻発した。
一晩中交代で除雪作業に追われたため、魔術で環境を維持するサポート組…特にポックルとハイヤの消耗が目に見えて激しくなっていく。
こうした未知の秘境探索において、最大の脅威となるのはやはり、大自然そのものだった。
それでも、何とか天候が回復するまで持ち堪えたボク達は、再びゆっくりと山頂を目指して進軍を再開した。
「魔獣だ! 皆、また来るよ!」
前方の雪煙を見据えながら、ボクが声を上げる。
疲労が重なったタイミングを見計らったかのように、魔獣の襲撃が繰り返された。
そんな時は、体力の落ちている除雪・サポート組を天幕に待機させ、ボクとウボォーギン、カイトの3人が前線に出て瞬く間に片付けた。
激しい戦闘の後は、ハイヤの灯す暖かな火がボクたちを癒やしてくれる。
「どうだい、魔獣の焼肉も意外とイケるだろ? 焼き具合ならオレの火系統の魔術で、レアからウェルダンまでどうにでも調整できるぜ」
「このベア型の頭蓋焼きは、オレの故郷じゃあちょいとした名物だったんだ。たまに寄生虫か何かに当たってくたばる不運なヤツも居たけどなァ! …そういやピトー、お前は獣人だが共食いになっちまうのかね?」
ウボォーギンが肉汁の滴る塊を齧りながら、豪快に笑いかけてくる。
「ボクは大丈夫だよ、ベースが違うからね。へぇ…焼くとこんな感じになるんだ」
ボクは面白そうに肉を咀嚼しながら、その不思議な食感を楽しんだ。
そんな血臭いサバイバルを何度か繰り返しながら、ボクたちは着実に山を登ってゆく。
険しい山脈の最奥地。
かつての黄金の地ダイタイまで、あと数キロの地点にまで、ボク達は迫っていた。
「よし、よぉーし! ここまで来りゃあダイタイまでもうちょいだ」
地図を片手に、ハイヤが嬉しそうに声を上げた。
現在、ボクはそんな彼をひょいと抱えて上空を飛行中だ。
眼下を見下ろせば白銀の世界のなかに、古びた監視塔がぽつんと佇んでいるのが見える。
2階以上の部分だけが、かろうじて雪上に露出している状態だ。
ハイヤ曰く、これが見えたら目的地はもう目と鼻の先らしい。
ここに到達するまで、何と20日間。
戻る日数を差し引いても、一ヶ月近くはここダイタイに滞在できる計算になるけれど……
そこから数分ほど空を飛んで進んだ先には、やはり、屋根の部分だけが辛うじて突き出た集落らしき建物群が、深い雪の底に埋もれていた。
本来なら、吐き出す息すら凍りつくような極限の気温だが、ハイヤの魔力暖房がしっかりと効いているため、肌寒さは全く気にならない。
着地したボクたちは、ポックルの雪操作の能力と人力を合わせ、どうにか住居を雪の底から救出した。
さすがは過酷な環境に耐えるだけのことはある頑丈な作りで、雪の重みや圧力にもビクともしていなかった。
中は想像以上にしっかりしている。
ひとまず全員で埃っぽい床に腰を下ろし、無事に辿り着けたことを静かに祝した。
「まずはお疲れさん!! これからは本格的なコーノトリの捜索になるが、まぁ、これはイージーだ。多分すぐに見つかるだろ?」
「ボクの【円】…こっちの世界でいう探知魔法の上位互換だね。それを広げたらすぐだニャ」
「その通り。問題は、見つけた後の捕獲方法だ。ウボォー、アレの準備はいいか?」
ハイヤの問いかけに、ウボォーギンが不敵に笑う。
「おう。対象の魔力の一切を強制的に封じる特殊な鎖があるんだが、お前ら知ってるか? オレが昔、ちょいとヘマをしてとっ捕まった時に、身体にこれでもかってくらいガチガチに巻かれた忌々しい代物だ」
「罪人用の『
カイトが納得したように頷く。
「そうだ。存在をコピーするなんて芸当、どうせ魔術的な能力だろうからよ、ソイツで縛り上げちまえばただの鳥だ。問題は、鎖を持っている人間の魔術も阻害しちまう事。つまり魔術を一切使わずに、ただの肉体的な能力だけで空飛ぶ鳥に肉薄する必要がある。ソイツができるのは、ここじゃお嬢ちゃん、アンタだけってことさ」
「にゃるほど。要するに、まぁたボクのワンオペってことだね」
ボクが肩をすくめてみせる。
だってそうじゃないか。
ボクが【円】で探知して、ボクが一人で飛び込んで捕まえに行くんだから。
「はは、そう拗ねないでくれよ。オレたちも裏から十分なサポートを――」
ハイヤが苦笑しながらフォローを入れようとした、まさにその時だった。
『――人類共ォ!! 帰れェェェ!!』
表の吹雪の向こうから、地鳴りのような凄まじい大音声が轟き渡った。