ネフェルピトー! 異世界で王をお救いなさい!   作:SUAPF→NFLPT

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それじゃあボク達の実力を見せてやるかニャ

 

ハイヤの偽物を仕留めた矢先、扉の先に多数の反応がある。

 

扉の外には、すでに魔獣の群れと、新たなる偽ハイヤ(ハヤイ)の影が蠢いていた。

 

「ここに籠もったままじゃジリ貧だ! 外に出て、コーノトリの本体を直接叩くしかねぇ!!」

 

ハイヤが叫ぶ。

 

「コーノトリは殺っちまっても構わねえのかァ!?」

 

「出来るだけ生かして捕獲する方向で頼む! それが無理なら、これ以上コピーが作れなくなるまで徹底的に叩き続けろ!」

 

「「「了解!!!」」」

 

ウボォーギンの濃厚な魔力を纏った拳による一撃が、扉付近に渋滞を起こしていた魔獣たちをまとめて吹き飛ばす。

 

それを合図に、全員が一斉に屋外の白銀の世界へと飛び出した。

 

上空からはコーノトリたちのけたたましい絶叫が響き渡り、呼応するように魔獣のコピーが周囲に大量発生していく。

 

だが、檻から解き放たれた凶獣の如き一行は、その混沌とした戦場を駆け抜けた。

 

カイト、ポックル、ウボォー、ハイヤが襲い来る地上のコピーらを足止めし、そしてピトーはと言えば…

 

【封魔鎖】を片手に、視線を遥か上空へと向けた。

 

広大な【円】のレーダーによって、50羽を超えるコーノトリたちの正確な位置はすべて捕捉している。

 

「じゃあ、さっさと片付けるニャ!」

 

ピトーは背中の翼を羽ばたかせ、雪煙を巻き上げながら、一気に天空へと舞い上がった。

 

重力を嘲笑うかのような飛翔に、上空で旋回していたコーノトリたちが一斉に目を見開く。

 

『マタ飛ブ!? 猫獣人ガ、何故、空を、ケェェェェェ!?』

 

「まずは、キミからだニャ!」

 

空中で鋭く身を翻し、手にした封魔鎖を鞭のようにしならせて神速の一閃を叩き込んだ。

 

――バシィィンッ!!!

 

打撃と同時に一時的に魔力を封じられ、意識を刈り取られたコーノトリが、地表へと真っ逆さまに落下していく。

 

『ススルゥゥ! 殺セ!!』

『コイツ、危険! コイツ、最優先ッ!!』

 

危機感を募らせた無数のコーノトリが四方八方から超高速で肉薄。

しかしピトーは三次元機動ですべてを紙一重で回避。

 

流れるような鎖の打撃で、見る見るうちにその数を減らしていった。

 

そして、すべてのコーノトリの注意が上空のピトーへと完全に向けられたその瞬間、戦場にある明確な変化が訪れた。

 

地上でカイトたちに襲いかかっていた大量の魔獣や偽ハイヤたちが、一丸となって上空のピトー目掛けて盲目的に走り出したのだ。

 

「コイツら、もしかして…」

 

敵が自分たちを完全に無視していく様子に、ポックルが目を見張る。

 

「恐らく、コピーたちの思考はコーノトリ本体と直接連動しているな。本体の意識がピトーの排除に集中しすぎて、地上の統率が疎かになっている」

 

カイトが走りながら冷静に分析し、ハイヤがニヤリと不敵に口元を歪めた。

 

「なるほどなァ! 完全に自律して動いているタイプじゃねぇって事か! なら話は簡単だぜ」

 

コピーを作り出している大元の支配者たちが、上空のピトーただ一人に完全に翻弄されている。

 

(にゃるほど…つまりボクのお陰だね)

 

地上組からすれば、上空を見上げ無防備な背中を晒し続ける木偶の坊を、一方的に撃ち抜くだけ。

完全なイージーゲームへと成り果てている。

 

空にはギャアギャアと、耳を突き刺すような地獄の断末魔が響き渡っていた。

 

ピトーの手によって撃ち落とされていくコーノトリに反比例するように、地上のコピー軍勢も目に見えてその数を減らし、瓦解していく。

 

だが、50羽を超える怪鳥の執念もまた、凄まじいものがあった。

 

『――脳味噌ォォォォッ!!!』

 

激しい乱気流の中、死角から音もなく肉薄した一羽のコーノトリの鉤爪が、ピトーの頬をわずかにかすめた。

 

白い頬に一本の赤い線が走り、一滴の鮮血が宙を舞う。

 

『クェェェェ!! ヤッタ! ヤッタァ!! 化け猫のコピー、作ルゥゥゥッ!!!!』

 

コーノトリは触れた敵存在の、その能力と肉体を100%完璧に再現した複製を作ることができる。

 

もしもネフェルピトーという、規格外のバケモノのコピーがこの戦場に大量発生したなら…勢力図そのものが、一瞬にして書き換わりかねない。

 

地上のカイトたちにも一瞬、戦慄が走る。

しかし…

 

『…何故!? 出来ナイ!? ドンナ存在でも、コピー可能!! 何故、形、作れナイッ!?』

 

歓喜の絶叫が、またたく間に困惑と恐怖の悲鳴へと変わった。

 

コーノトリの能力が、ピトーのデータを取り込んだ瞬間、完全にエラーを起こしていたのだ。

 

この世界の生物であるなら、コピーが作れる筈の能力がだ。

 

『クェェェ!? マサカ、マサカ!?』

 

コーノトリが、とある結論に辿り着くのはすぐだった。

 

もしも、目の前で飛び回る、この化け猫獣人が、そもそもこの世界の住人ではないとしたら?

 

そう、ネフェルピトーはキメラアント。

この世界の生態系から言えば、全く未知の生命体であった。

 

「にゃはっ、残念だったね!」

 

ピトーの金色の瞳が、獲物を捕捉し細められる。

 

ーー限界を…ううん、極限を超えて舞え!!

 

彼女の四肢からパチパチと、莫大なオーラが噴き出し、光の魔術と絡み合って、輝く念人形を形成する。

 

人形の糸が肉体に絡まるや、ピトーを操り、彼女を極限を超えた速度へと引き上げてゆく。

 

「黒子舞想・極光(テレプシコーラ・エオス)!!」

 

爆発的な加速に、ピトーの姿が一瞬で消失した。

 

網膜に残るは、引き千切られたような光の残像のみ。

コーノトリたちが消失を脳で知覚することすら、その速度は許さなかった。

 

『アッ!!?』

 

コーノトリが目を見開いた刹那、すでにピトーの手の中でしなる封魔鎖が、大気を爆音と共に叩き割っていた。

 

遅れて届く、音速を超えた衝撃波。

 

『ケェェェェ!?』

『ススーーキェアアア!?』

『ノゥゥエアアア!!』

 

(次ッ! 次、次次次次次次次ッ!!)

 

一匹、また一匹、いや、全て同時に叩き落とされているかの様だ。

。

天空に並んだ標的が、一斉に、糸の切れた人形のように落下してゆく。

 

「ラストニャ!」

 

音が置き去りにされた空間で、衝撃波を伴った一撃が、最後の一羽の脳天を正確に捉える。

 

最後の一匹もまた、爆発的な加速に押し潰されながら、白銀の雪原へと真っ逆さまに叩きつけられていった。

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