ネフェルピトー! 異世界で王をお救いなさい!   作:SUAPF→NFLPT

5 / 25
ピトー! そんな偽物に騙されるんじゃありませんピトー!

 

ーースラクストン大陸南東部。アバラボネ原始森。

 

やってきてみれば、とにかく暑くてムシムシするし、人間の手がほとんど入っていない未開の地みたいだ。

 

ボクも最初、踏み込むのを躊躇する程度には原始を色濃く残す大地だった。

 

事前に得た知識によると、数多の危険な魔獣が存在し、植物までもが攻撃を加えて来るような所。

 

(こんな所に王が居るのかにゃあ? 自信なくなってきた…)

 

人間文明の痕跡が消えて2時間…魔獣の屍を軌跡に残しながら、ボクは途方に暮れていた。

 

始めは、王ほどの存在が世界に認識されていない訳がない、探索は容易と決めつけていた。

 

でも王はおろかキメラアントの情報すらも一切掴めない。

 

蛇ァッ!! と飛び出した蛇魔獣の、丸太が如き胴を両断し、溜息1つ。

 

(コイツらはどうだろ。美味いかニャ…)

 

仕留めた魔獣のいくらかを口にしたが…体躯の大きな個体ほど薄味傾向ってことしか分からなかった。

 

普段、調理なんてほぼしないキメラアントの、ひいては自分の舌を満たせるのはオーラの多い少ない、舌触り、喉越しといったところだろうか。

 

でも好き嫌いのはっきりした自分の舌は、呪わしい。

 

食べられたものじゃない! と感じるものの方がずっと多かった。

 

(げぇぇ…やっぱ人間が一番美味いか…)

 

特に、猿型魔獣の脳は人間のそれと近しい味だった。

…ウソ。遠く及んでいないよ。

 

だけど背に腹は代えられない。

猿型魔獣を見掛けたら積極的に狩る。

 

幸いだったのはボクに、昆虫魔獣の持つ…致死毒に耐性があった事か。

 

蚊、蛭、肉食百足などの針や牙などは、表皮を喰い破ることは出来なかったし、肉食魚も自慢の毒棘をズタズタにされて逃げ帰った。

 

だから一番キツいのは、顔の周りを常時ブンブンと飛び回る虫。

 

念のオーラで叩き落としても、またすぐに寄ってくる。際限がない。ホントに苛つく。

 

ブン、ブン、ブーン、ブン…

 

「モシモシ…モシモシ…」

 

「煩いニャ!!」

 

特に奇妙な鳴き声をする羽虫を叩き落とすーーすんでのところで、ボクは目を剥いた。

 

今しがた叩き落とそうとした蜂程の羽虫。

 

それは蝶の様な羽根を持ち、タキシードの様な模様の体色をした、人間じみた顔。

 

あまりにも見知った何か。

 

「ぷ、プフ!?」

 

そう、キメラアント、シャウアプフをデフォルメした様な存在。

それがボクの周りをブンブン飛び回っていた。

 

「良かった。キミが居るなら、近くに王が居るってコトだよね?」

 

「モシモシ…モシモシ…」

 

「プフ…? ねえ、さっきから何を言ってーー」

 

直後、ボクの視界は黒一色に。

 

咄嗟に何かに丸呑みにされたのだと理解した。

 

「ッ!?」

 

すぐに内壁を全力で蹴り、とにかく上へ、入り口をこじ開けるように跳んだ。

 

無理矢理身体を射出し、なんとか脱出に成功したが…

 

身体は粘液の様なものでベトベトだ。

 

「けほっ、けほっ…何もうっ!?」

 

振り返れば、無残に引き裂かれたツボミの様な…植物か? 

 

そしてやっと、プフっぽい何かが、この植物の擬似餌である事に気付いた。

 

多分こちらの記憶を読み取って作った?

 

そして見知った擬似餌に油断した対象を、パクリかぁ。

 

ブルブルと身体を振り粘液を弾き飛ばすと…なんだか一気に脱力してきた。

 

「うぅ、ボクがどうしてこんな目に…王、早く会いたいニャ…」

 

「あの、すみません」

 

プチン、とボクの中で何かが切れた。

 

またか! また擬似餌か!

振り返りざまに裏拳を繰り出したが…それは空を切った。

 

「ニャッ!?」

 

「お、お待ち下さい!! 貴方は、王が仰った強き方であるとお見受け致します」

 

声の主…今度は、ユピーの姿をしたものが飛んでいた。

 

モントゥトゥユピー。

かつての、ボクの同僚。

キメラアント護衛軍の一匹だ。

 

でも、ボクの知るユピーとはまるで違う。

 

彼は体が護衛軍でも一番大きく、強面だ。

それき筋肉質で、凄まじいパワーを持つ、正に獣といったイメージである。

 

こんな、デフォルメチビキャラ羽虫の様な感じでは断じてなかった。

 

とはいえ擬似餌と違って、今度のはきちんと言葉を発している。

 

「…あの、もしかしてユピー?」

 

今度は円もしっかり張り、警戒しつつ話し掛ければ、

 

「やはり私の名をご存じでしたか。モントゥトゥユピーと申します」

 

と、丁寧な返事があった。

 

違う。

元のモントゥトゥユピーからは絶対に、絶っっっ対に聞けない言葉だ。

 

“当然だろ。それ以外に何があるってんだピトー”みたいな返事であろうところに、これだ。

そのギャップと来たら…

 

「………………ま、まあ、いいニャ。ユピー、王って言ったけど、もしかして…」

 

「ええ。我らが王が貴女にお会いしたいと言っております。どうか王を、救って欲しいのです!」

 

「救う…救うって、王はどうなされているの!?」

 

「王はその身を、病に蝕まれております」

 

 

 

 

ーー断罪騎士は、王命である【獣人を始末せよ】を受けるや否や宿場を飛び出し、馬を駆った。

 

そうして、異常個体獣人の痕跡を辿った。

目撃情報、各現地騎士団の証言も集めた。

 

最期に目撃された地点から、どうやら南東に向かった様だ。

 

あちらは未開の地が多い。

更に、大小雑多な樹木も生い茂り、人はほぼ居住していない。

目撃情報も極端に減ることだろう。

 

だが、断罪騎士は分かっていた。

確実に彼女…ネフェルピトーの行程を追っているのだ。

 

(見、エル)

 

アバラボネ原始森付近、最後の村にまで彼は辿り着いていた。

 

 

 

【羽虫獣人モントゥトゥユピー役・・・モントゥトゥユピー(チビ)】

 

【擬似餌役・・・蠅の王形態シャウアプフ(友情出演)】

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。