やあ、どうも。
別の世界から私を見ている観測者さん。
私は……なんだろう、宇宙を漂う上位存在?自分のことを上位なんていうのはちょっと偉そうで嫌だから生きてるスペースデブリのように思ってくれて構わない。
ただ真空空間を生きることができて、このようにそちらを認識することができるだけの存在だ。定義的に近しいのは……邪神?自分を邪な存在とも、神みたいな存在だとも思っていないけど、貴方たちの認識ではその方が適切だろう。
このように私が意志を持ち、会話することができるようになったのは……えーっと、ちょっと待っててくれ。今、記録回路を弄って……そうそう、2億光年前の話だった。
宇宙の誕生と共に私が生まれた。しかし、もちろんそんな私に意思などはなくただの漂う宇宙の藻屑であり、自意識のない生命体。正直、あの頃の私は植物プランクトンとなんら変わりなかったのだ。
「だが!……おっと失礼。ついテンションが上がって発声器官を作ってしまった」
ごほん。
だがある時転期が訪れる。ある銀河の果てで私は一個体の意志を観測した。そう、それこそ君たち地球の生命体だ。これまで生命のいる星をいくつか見てきたことはあるけれど、ここまで自由意志にあふれる生命の惑星を見るのは初めてだった。
結果として貴方たちという生命を理解するために、私は個体としての意志を得た。どうやってやったのかを人語で訳して説明するのは私にはできなそうなので省略させていただこう。
意志を持ったことで私は感情を得た。
宇宙にある星屑が美しいと思えるような感性を。輝きを失いエネルギーの塊となって爆ぜてしまった惑星を悲しいと思えるような感覚を。
だがそれと同時に私は感じてしまった。ものすごい退屈さを。寂しさを。
銀河を1人遊泳っていうのは思ったよりも寂しいもので15億年過ぎたあたりで発狂して惑星群を一つ破壊しかけることが起きてしまった。時空を曲げて元に戻せたからいいけど、このままあと10兆年も経ったら流石にヤバいと感じ始めたんだ。
「つまり……寂しさを紛らわすために、そちらに少々伺ってもいいだろうか?」
もちろん、迷惑はかけない。虐殺もしないし支配とかもしたりしない。ちょっとした観光ってやつだ。若者が路頭に迷った時に一人旅に出るのと同じ。
来るだけで迷惑だって?それは……そうだね。
でも最終的に私がストレス発散のために太陽系惑星をスクイーズみたいに潰す方がやばくない?ガスってのは適度に発散させた方がいいって観測した覚えがある。どこの時空間帯の噂かは忘れてしまったけど。
というわけで早速やってきました銀河系。肉体をなるべく小さく縮めていきながら私は青くて緑のある惑星を頑張って探し続ける。GPSもないのでどうやって行けばいいのかわからなかったので、本当に勘と当てずっぽうで他の惑星を眺めていった。
「赤は……違う。あれは青いけど寒すぎるし……あの天体の周りを回ってるのは何……岩?氷?」
それがようやく太陽系ということを理解した私はなんとか地球を見つけることに成功した。
青い海、緑の大地、そして白い雲。うん、見間違えるはずもない。
とはいえ見つかったのはいいものの、この姿では間違いなく迷惑をかけられるだろう。そのためには現地の生命体になりすますところから始めなくてはいけない。
ならとりあえず……体をもっと小さくしなくては。とりあえず一番確固たる自由意志を持っている生物にしてみよう。手と足を作って……指を4、いや5本か。大きさはバラバ……いや違う、この真ん中の指が一番長くなる感じで……そうそう。
「いや、これ腕1本多いな」
とりあえず3本目になった腕をしまって、なんとかガワを完成させた。とりあえずこれで人間フォルムの完成だ。
で。次中身なんだが……
内臓。内臓……うわぁめんどくさい……脳みそと心臓逆にしちゃったよ……何これパズルゲーム?人間ってよくこんなめんどくさいもの入れて動けるね。
「肺と腎臓は二つ?なんで?」
片方欠損した時のためだろうか。じゃあ全部2つとか3つにした方がよくない?きっと収まりが悪いんだろうけど。静脈と動脈……あと神経を肉の中に埋め込んでと。
かんせ……あれ、ダメだ。バランスを保てなくて内側から壊れちゃった。内臓の向きは合っていたはずなんだけど……人型を安定させるために必要なのは……あっ、骨か!
骨格を肉体に埋め込んでようやく本当の意味で完成。
顔を作るために適当に埋め込んだ眼球や口を動かして……と。顔の造形はどうしよう。美的センスとか絶対私にはないからおかしな形になってしまうかも……あっ、周囲の認識を変えればいいのか。髪の毛を適当に生やし、白いワイシャツと青いジーパンを履く。性別は……ま、状況に合わせて変えるとしようかな。
あとはこれを地球の内部に送ればいい。方法はとりあえず瞬間転移でいいだろう。物理的に送ったら目立ちすぎるし、時代が時代なら人工衛星で観測される可能性だってある。
とりあえず指を鳴らし、誰もいないであろう路地裏へと転移した。
「はい、到着」
足をつける。硬いコンクリートの感触、そして酸素、窒素の混じった大気の味。
やっぱり目で見るのと実際に体験してみるのでは全く違う。この星の一つの生命体になれたって感じがしてスッキリスッキリ。
あ〜、
「よしっ、とりあえず散歩に行こう!」
新たな一歩を踏み出すために間違えないように右足を踏み出そうとして……私は足を止めた。
周囲に人間がいないことは確認済み。視力はいい方だからポカしてない限り生命体から視認される可能性は極めて低い。
ならば私に視線を向けている
「貴方たちに一つだけ確認させて欲しいのだけど……そちらの地球に胴長短足に白い肌、口以外何もない異形の生命体はいるかい?」
長い首だな〜。キリンかと思ったけどそれにしては太いし。足8本あるし、1本の足には指がまばらについてる。おっと涎も垂らしてる。ちょっとバッチぃ。
地球にこんな生命体っていたっけ?私の確認不足かな。
——動物園該当なし、水族館該当なし、博物館該当なし。
……もしかして新種?
「あ、ああ、あそ、あそぼ?あそぼ?あそぼぉ?」
しかも喋れる。
日本語うまいな……というかここ日本だったのか。世界でよく使われている言葉は英語と聴いていたのでそちらは完璧なんだけど日本語かぁ。
うん、おっけ。だいたい把握した。
「あー、あー、うまく喋れてる?」
「あそばないのぉ?」
「私たちには言語間のコミュニケーションができるんだから、遊ぶ前にちょっとした自己紹介を……」
「あそばないんらぁ……いらない」
有無を言う前にソレは私の頭蓋を食い潰してしまった。
やっぱり私の知ってる地球じゃないんだけど!?
オリジナル初投稿です。