今回は転生者の双子もの、オリ主ものとなっております。
序盤に軽いナギアンチがあります。
注意はこんな所です。それでは本編をお読み下さい。
第1話 転生しちゃったよ……悪い?
俺は転生した。いきなり何を言うかと思うかも知れないが少しだけ黙って聞いて欲しい。そんなに難しい話ではないのだから。
まず、俺は死んだのだ。死んだ後のことは語りたくない。意識が無いのに、自分が
冷たい場所に居るのが分かるのだ。あんな体験二度としたくない。でも生まれ直して
しまった以上また死ななきゃいけないんだよなぁ……。はぁ、鬱だ。
俺が死んだ時の話は省かせてもらう。あんまり楽しい話ではないし、話の要旨ではないから。
そしてずっと冷たい場所に存在していた……いや存在していなかったのだが、あるとき
光が溢れてそこから脱出できたのだ。それが起きてからしばらくは意味が分からなかった。だが
時間が経つに連れて、自分が輪廻転生したのだと気づいた。視覚があり、聴覚があり、味覚などもある状態になったのだ。それは俺が再び肉体を得たことを意味していた。
そんで、話は転生した後のことになるのだが、控えめに言っても3歳くらいまで、俺には意識が無かった。どういう仕掛けになっているのかは分からないが、俺が自分の存在を知覚した時には
既に3歳くらいの赤ん坊だったのだ。
そして、現在に至るわけだ。
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「ネギー!
「久しぶり! ネカネお姉ちゃん」
「……久しぶり。ネカネ姉さん」
この会話を聞いただけで大体の人が状況を正しく認識してくれたと思う。何がどういうことかと言うと、魔法先生ネギま! の世界に転生して、ネギの双子の兄(弟)になったというわけだ。
今は従姉のネカネさんが一ヶ月ぶりに魔法学校から帰ってきたので迎えているところだ。
俺達の住む街には今、雪が降り積もっている。……3歳、雪、ネカネが帰って来ているとき。
条件は揃っているな。……ひょっとして今日か? 俺は戦々恐々としつつもネギ達と会話をした。
俺が恐れているのは、原作において起きたウェールズの故郷襲撃事件だ。俺の持つ知識に
よれば、上で述べた三つの要素が揃った時に襲撃事件が起きる筈なのだ。さすがに細かい
所までは覚えてない。もし手元に原作漫画があればもっと情報が得られたかも
知れないが。
話は変わるが、俺の持つアドバンテージ、原作知識についてはメモ書きという形で蓄積させている。といっても俺もそこまで熱心な読者だったわけではないので、大まかな部分しか覚えていないが。
「もう会えないってどーゆーこと? お父さんどこか遠くへ引っ越しちゃったの?」
お? 思考に落ち込んでいたら話が進んでいたらしい。なんだなんだ? なんの話だ?
「……そうね。遠い遠い国へ行ってしまったの。「死んだ」というのはそういうことよ」
なんだ。生んだというのにろくに育てることも出来なかった屑の話か。
「じゃあさ じゃあさ。もし僕がピンチになったら、お父さんは来てくれるの?」
「う う~ん。そうね……」
「ネギ、それは間違いだよ。死んだ人には二度と会えないんだよ。ネギがピンチに
なろうが何しようが、絶対に会えない。それが「死ぬ」ってことだ」
俺はネギに死ぬという言葉の意味を教えてやる。
「そ そんなことないもん。お父さんは来てくれるもん」
「……はぁ。分かりやすく言ってやるか。ネギ、例えば俺が明日死ぬとしよう。そうすると
俺とネギは絶対に、二度と、会えなくなるんだよ。それが「死」だ」
俺は更に言葉を変えてネギに死ぬということを知らしめてやる。ネギは納得できない
ようだったが、まあいい。歳を取れば少しずつ分かってくることだ。それにここで父親が来ないと懸命に主張するのも意味が無いというか虚しい。どうせ奴は絶妙のタイミングで助けに来るんだからな。そのせいでネギの人生はねじ曲がっちまうというのに。
「じゃあまた一ヶ月後にね。元気にしてるのよネギ。ムギ」
「魔法の練習してなさいよー」
「うん」
「はい」
ネカネと幼友達のアーニャが帰る時間になった。ということは、襲撃はまだということか。簡単に来てくれても困るが、来ないのは来ないで肩すかしを味わうことになって疲れるな。
アーニャが言った魔法の練習とは、初心者用の練習杖をもらったことに起因している。俺達も
来年から魔法学校に通うということで、その練習をしなさいともらったのだ。
これで俺も魔法の練習ができるな。俺達は双子、しかも一卵性の双子なんだから才能も同じ
くらいあると良いのだが……。まあとにかく魔法に関しては要練習だ。その結果によって
今後の方針なども決まってくるしな。とはいえ全ては村襲撃事件を乗り切ってからだが。
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その後、俺はネギの行動を監視し、厳しく躾けた。躾けというと同い年のお前が偉そうに!
と思われるかもしれないが仕方ないのだ。ネギは「ピンチになったら現れる~どこからともなく
現れる~」などと言いつつ無茶をしようとしたのだから。具体的には木から飛び降りる。他人の家で飼っている犬を挑発する。冬の湖に飛び込もうとする。
その他にも様々な行動をね。無茶をするにも程がある。奴が大人になったら黒歴史として存分に人の前で語ってやる。
そんなネギの行動も、湖に飛び込もうとした時に俺が本気で泣いたことでだいぶ
落ち着いたようだ。ネギは「泣かないでムギ。もうしないから……」と言ってくれた。
それを信じよう。
原作でもこの下りは過去回想にされてたな。アレ? それじゃやっぱり襲撃の日は近いのか?
そろそろ俺の襲撃事件への対応を話すとしよう。俺は事件に対して……基本的に何もしない。
まず最初に浮かぶ行動、逃げるというのは却下だ。その日が限定して分からないというのも理由の一つだが、子供の身でどこまで逃げられるというのだ。無駄に逃げた結果、あのクソ野郎の魔法に巻き込まれてしまうかもしれない。だから逃げるのは却下だ。
次に魔法などを使って敵を撃退する……現実的じゃない。これも却下だ。
そうなると取れる行動は限定的になる。ネギに寄り添い、彼に行動を任せるか。
あるいは自分が主導権を取って行動するかだ。どちらを取るか考えた時、取れる道は一択だ。
原作においてネギは石化にもさらされないし、攻撃も加えられない。ならネギに行動を任せてしまった方が良い。俺が主導権を握って行動した結果、俺だけでなくネギも死んでしまうなんてことになってしまったら目も当てられない。
それに、俺は石化してしまうことはそこまで悪いことだと思っていない。原作において石化してしまった彼らのその後は詳しく語られない。だだエピローグで石化が解呪されたことだけ書かれていた。最終的に解呪されるなら石化はそこまで悪いことじゃない……と思う。この世界には地縛霊というものの存在が保証されているが、それと似たようなもんだ。というか俺はこの世界で死ぬなら是非幽霊になりたい。意識があるならそれは俺が体験した「死」じゃない。大丈夫だ。俺はできうる限り死にたくないのだ。その為に最適な行動は「動かないこと」だ。
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また一ヶ月が経ち、ネカネ姉さんが来る日がやってきた。今日はネギが釣りをやろうと言うので、一緒に釣りをしている。
「ピンチになったら現れる~♪ どこからともなく現れる~♪」
その歌気に入ったんかい。
「ネギ~。そろそろネカネ姉さんが帰って来る頃じゃないか? もう帰ろうぜ」
ネギに帰ることを促す。
「そうだね。早く村に戻らなきゃ」
俺達は簡単に片付けを行うとその場を引き払った。そして村に向けて走り出す。
「ネカネお姉ちゃーん」
そんなに走ると転ぶぞー。……って、あれは……。
ゴオオオオオオオオオオオオオ
村が、燃えていた。やばい、襲撃が始まったんだ。俺はネギの後ろに隠れるように身をすくめた。ネギに行動の主導権を取ってもらおうと思ったのだ。
「ネギッ! 村が……」
「あ、ああ、あ」
ネギは村に放たれた火に怯えているようだった。
「ネカネお姉ちゃん。おじさーん」
だがネギはすぐに気をとりなおすと、ネカネ姉さん達を探して歩き回った。本当は今回のような災害に見舞われた時は無闇に歩かない方が良いのだが、ここはネギに任せる。その方が結果的に
良い方向へ行ってくれるはずだ。
「おじ……さん……?」
ネギと俺の視線の先には、知識通り石化させられた人々がいた。
「クソッ。何だよ。何なんだよコレ!?」
俺は目の前で起きた出来事に悪態をつくしかできない。
「うっ……ぼ 僕が。僕がピンチになったらって思ったから……? ピンチになったら
お父さんが来てくれるって……ボクがあんなコト思ったから……!」
「何言ってるんだネギ! そんなの関係無いに決まってるだろ! お前が悪いわけ
じゃない!」
俺は自分を責めるネギに必死になって言葉をかける。その時だった。地中から悪魔の
大群が現れたのは。
(お、おい。どうしたら。どうすれば!? どうしたら良いんだネギ!?)
俺は情けなくも腰が抜けそうになって、ネギにすがることしか出来ない。
「僕があんなこと思ったから。お父さん。お父さん。お父さん」
ネギもただ泣くしか出来ない。俺は完全に進退窮まっていた。
ボッ
そんな凶悪な音と共に、悪魔の拳がネギに向けて振るわれる。
「ネギ!!」
俺はとっさにネギを突き飛ばそうとした。
ドン!!!!
激しい衝撃音がして、悪魔の拳が受け止められた。……杖を持ったマントの男……クソ野郎(父親)だ。……そうかよ。こういうタイミングで助けに来るのかよ。これじゃネギが憧れてしまうのも無理はないな。俺は半分現実逃避気味にそんなことを考えていた。
男は俺達に分からない言葉――多分ラテン語かギリシャ語だ――を呟くと魔法を発動
させた。激しい雷の魔法が発動して悪魔を吹き飛ばす。すると悪魔共はその男に対象を
定めたのだろう、一斉に襲いかかった。男は拳や蹴りでそれを撃退する。多分強化魔法で身体を
強化しているのだろうな。男はまた呪文を詠唱すると強大な雷の魔法を放った。
それは遠くの山まで破壊する程の威力で、当然のように悪魔共は全滅した。
「ソウカ……貴様……アノ……。フ……コノ力ノ差……。ドチラガ化ケ物カワカランナ」
男は一匹の悪魔の首を掴むと吊り上げた。悪魔がそんな言葉を発したと思ったら、
腕に力を込め、首の骨を砕いた。ゴキッ! と首の骨が砕ける音がした。
するとネギは怯えてしまったのだろう。その場から脱兎の如く逃げ出した。
「ネギ!」
俺はネギに離されまいと後を追いかけた。
「ネギ! 危険だ! まだあの悪魔共の生き残りが居るはず……」
俺がそこまで言った時だ、瓦礫の影から一匹の悪魔が姿を現した。くそっ先に走り出されたからまだ距離がある、間に合えッ!
バシイイイン
悪魔が口から放った石化ビームがネギを直撃……しなかった。直前でネギの前に飛び込んだ
スタンお爺さんとネカネ姉さんが盾になったからだ。くそぅ。原作通りかよ。スタンお爺さんは
全身を、ネカネ姉さんは両足を石化させられている。
「ぐむ……」
「う……」
「お……お姉ちゃ……」
ベキベキビキッ
石が割れるような音が響き,ネカネ姉さんの両足が砕ける。
「お姉ちゃん!」
「ネカネ姉さん!」
「六芒の星と五芒の星よ悪しき霊に封印を――
スタンお爺さんが封印の魔法を唱えて悪魔を壺に封じる。
「フゥ……無事かぼーず。ぐむ……」
「スタンおじいちゃん!」
「スタンお爺さん無理しないで!」
「フン……大方 村の誰かに恨みでもある者の仕業じゃろう。この村にはナギを慕って
住み着いたクセのある奴も多かったからな……。じゃが召喚された
負けはせん……ハズじゃからな……ぐっ」
「おじいちゃん!」
ネギはぽろぽろと涙をこぼしている。ネギが泣いている。スタンお爺さんが石化して
しまう。ネカネ姉さんは両足を砕かれている。俺は何も出来ない。俺は……無力だ。
「逃げるんじゃ ぼーず達……。お姉ちゃんを連れてな。ワシャもう助からん。この石化は強力じゃ。治す方法は……ない。頼む……逃げとくれぃ……。どんなことがあっても
お前らだけは守る。それが……死んだあのバカへのワシの誓いなんじゃ。誰か 残った
治癒術者を探せ……。石化を止めねばお姉ちゃんも危ないぞい……。さあ ぼーず達
この老いぼれは置いて……はや……く……」
「おじいちゃん……スタンおじいちゃん……?」
「ネギ……スタンお爺さんはもう……」
俺は涙を拭ってネカネ姉さんに近づくと、その体を持ち上げようとした。
「ネギ……手伝ってくれ……。ネカネ姉さんを連れてこの場を離れるんだ。早く」
「ぐっ、ひっ。お姉ちゃん……」
俺とネギは必死になってネカネ姉さんの体を持ち上げた。するとそこに影が差し込んだ。
俺達は揃ってビクッとしながら後ろを振り向いた。そこにはあの男……クソ野郎の姿が
あった。
「すまない……来るのが遅すぎた」
ネギは練習用の魔法杖を構えている。目の前に立っている人物が自分の父だと気づいていないのだろう。なので俺が口火を切ることにした。
「あんた……ひょっとしてナギ・スプリングフィールドか? 俺はムギ、こっちはネギだ」
男は双子の子供(一卵性)という事で当たりをつけていたのだろう。納得した様子で
こちらに言葉をかけてきた。
「……そうか。お前らが……ネギとムギか……。……お姉ちゃんを守っているつもりか?」
「ネギ、安心していいぞ。このクソ野郎が俺達の父親だ。どうやら生きていて駆けつけてくれた
らしい」
「え? え? え?」
ネギは突然父親とか言い出した俺にも目の前のクソ野郎にも混乱している。まあ無理
ないか。
「クソ野郎とは……ひでーな」
男はこちらに近づくと、俺とネギの頭をくしゃりと撫でた。
「クソ野郎はクソ野郎だろ。生むだけ生んで育てるのを放棄しやがって。てめえを父親
なんて呼んでやるかよ。それは毎日頑張って子供を育てている世界中の「父親」に失礼だ」
「フ……。それもそうだな。すまない。にしても大きくなったなぁ」
だから頭を撫でるんじゃねえよ。気が弱ってるんだ。感動しそうになっちまうだろ。
「……お、そうだ。お前らに……この杖をやろう。俺の形見だ」
「……お、父さん……?」
ネギはようやく目の前の人物を正しく認識出来たようだ。にしてもこの杖重いな。子供の俺が
一人で抱えるには重すぎる。
「ハハハ、重すぎたか。……もう時間がない。ネカネは大丈夫だ。石化は止めておいた。
あとはゆっくり治してもらえ」
そこまで話すと男はゆっくりと空に浮かび始めた。行っちまうのか。
「悪ぃな。お前らには何もしてやれなくて」
「……お父さん? お父さん!」
「こんなこと言えた義理じゃねえが……元気に育て。幸せにな!」
ふざけろ、クソ野郎。てめえがこの絶妙のタイミングで助けに来たことで、ネギの
その後の人生が決まっちまったんだよ!
「お父さあーーん」
ネギは泣いている。どんなに強がっても3歳の子供だ。父親には会いたかったんだろうな。俺にはネギの涙は止められない。それが無性に悔しかった。
サブタイトルはとあるライトノベルの、一話目のものを頂きました。
主人公の名前はアギ、イギ、ウギ、と順番に試していって一番自然なものを採用
しました。マギというのも考えましたが作中用語とかぶってしまうので泣く泣くムギに。
主人公は基本的にナギを嫌っています。詳しくはこの後の話のどこかで語らせます。
基本ナギアンチなので読まれる方はご注意下さい。と言っても今後、そんなにナギは作中に出て
こないでしょうが。