第10話 学園祭
学園祭の当日になった。前夜祭とか色々あったが特に語ることは無かった。学園祭と
いえば厄介なのが、これだな。
「ネギ坊主、普段お世話になっているお礼にこれを上げるネ♡」
でたなタイムマシン。だが俺の目が黒い内はそんなこと許すかよ。
「ネギ。よく知らない相手からよく知らないものをもらうんじゃねーよ」
俺は無警戒にタイムマシンの時計を受け取ろうとしていたネギを止めた。お前の面倒事に巻き
込まれてなんかやるもんかよ。
「あいやームギ坊主、私もコレもそんなに怪しくないヨ」
その後、俺と超の間でネギは板挟みになった。だが俺が絶対に受け取るな、もし受け取っても俺が超に突き返すぞと言うと受け取るのを断念してくれた。
「すいません、超さん。ムギがこう言うものですから……」
「…………」
超は納得できないような顔をしていたが、最終的には矛を収めてくれた。
「分かったヨ。受け取ってくれないというならそれは仕方ないネ……。ムギ坊主、君は何を知ってるのかな?」
「……へ、俺は何も知らないよ。ただ怪しい相手からのよく分からない贈り物なんて受け取るべきじゃないと思っただけさ」
しばしの間俺と超は睨み合った。だがややあって超は視線をずらした。超は“未来人“だ。だが俺の事も知っているか、それとも知らないのか判断がつかなかったが、今の言葉を聞く限り、
どうやらネギ一人だけの世界からやってきた未来人らしいな。その世界では俺はいなかったんだろう。だとすると俺の存在は想定外ということだな。
超はタイムマシンを渡せないと悟ると、その場を立ち去った。俺はネギに、ああいう物とかは
気軽に受け取っちゃダメだ。と言い含めておいた。
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祭りを見て回っていたら、まほら武道会というものに行き着いた。優勝賞金1,000万の大きな大会らしい。しかし原作と違って犬上小太郎もいなければ古菲から武術を習ってもいないネギは参加の意思を示さなかった。
25年前の大会の優勝者が当時10歳の少年だったナギ・スプリングフィールドだと聞くと
参加したがったが、お前の腕じゃ出ても恥をかくだけだ。どうしても挑みたいなら、今から表の世界の格闘技を習って、1年後にでも参加しろと言っておいた。
悪いな、超。それにクウネル・サンダースだっけ? あんたらの望みは叶えてやれそうにねえなあ。
そう言えば、この大会中にタカミチが地下に閉じ込められるんだっけ? まあでも大丈夫
だろう。確か原作では誰の助けもなく脱出できてたような気がするし。
それから、原作でネギが散々やっていた女子生徒達とのデートイベントだが、基本的に起こらなかったと言っておこう。まず、ネギの性格としてネギ「だけ」が誘われてる催し物があったとしても、俺も一緒に行こうと誘ってくれるのだ。そして俺が同道するなら、生徒とのデートイベントなど起こさせてなるものか! とばかりに止めるのは必然だろう。原作と違ってこの世界ではそれほど3-Aの生徒達と親しくなっていない(逆に言うと違うクラスの生徒達とは原作より親しくなっているのだろう)状況だとそれほどモーションかけられないしな。せいぜいコスプレお化け屋敷で委員長こと雪広あやかに迫られただけだった。それもあわあわ言うネギに代わって俺がさばいたしな。ネギはまだこーいうのは早いよ。俺もな。
あ、そういや今気づいたけど原作でまほら武道会が行われている時にそれを利用して魔法の
存在を流布しようとするんだっけ? でも確か麻帆良の魔法先生達とで拮抗すると思うから、俺達は何もしなくていーか。
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「ええーーっ!? 超さんが学校を辞めるーーーっ」
学園祭2日目の夜、3-Aの生徒達と一緒に歩いていたら、中国人留学生の
そんなことを聞かされた。
「ホ……ホントですか!?」
「うー……まあ冗談を言てる顔じゃなかったアル。それも明日学園祭が終わったらすぐ
学園を発つそうアル」
「えええっ。そんな突然」
ネギは騒いでるが原作知識を持ってる俺からしたら既定事項だ。そうこうしていると、学園用の携帯電話に連絡が入った。電話を持っているのはネギの方だ。ネギは電話に出た。
「ええっ超さんが!? ど どういうことですか!?」
その後、電話で連絡を受けた俺とネギは、魔法先生達の元へ急ぐこととなったのである。
魔法先生達との集まりで、超について聞いた。
「ど どういうことですか!? 超さんが……!?」
「そうだ。ネギ先生、
そうして俺達は魔法先生達から超について聞かされた。タカミチを地下に閉じ込めた
こと。それと、
「俺達「魔法使い」総人口6千7百万人。その存在を全世界に
その企みについて、俺の口からも問いただす。俺達の呼び出しに応じて姿を見せた超は静かに口を開く。
「悪いコト……ネ。魔法先生達に話を聞いたカ?」
「で でもまだ先生達から話を聞いただけです! 先生として超さん自身から話を聞く
までは信じません」
「もしそれが本当だとしたらどうするネ?」
ネギと超が舌戦を繰り広げる。俺は基本傍観だ。原作知識をまとめる時に一通りの考えはまとめてあるし。
「そ……それは先生として……ホントなんですか!?」
「事実ネ」
「……!! り……理由を、理由を聞かせて下さい!! どうしてそんなこと……」
「理由は言えない……と言たら?」
ネギは僅かに黙考したようだったが、すぐに超を止める意思を見せた。この決断の早さもネギの主人公力の一つだよな。
「と……止めます! 先生として……悪いコトをするのは止めなければいけないと
思います」
「面白い。それでいこうカ。私を止めてみるがいい。ネギ先生。そしてムギ先生」
「ま……待って下さい! まず理由を」
ネギはそう言うが、もうことは止められないところまできてると思うぞ。
その時、世界樹が発光しだした。22年に一度の大発光だ。
「世界樹が!?」
「おー これは素晴らしいネ。そろそろ最終日だしネ。22年に一度の大発光ヨ。一般
市民には特殊な光ゴケの一種の異常繁殖などと説明されているらしいがネ。そして……
これで私を止めることは、かなり難しくなたネ。」
「!?」
「ネギ坊主、ムギ坊主。現実が一つの物語だと仮定して、君は自分を正義の味方だと思うかネ? 自分のことを……悪者ではないかと思たことは? 世に正義も悪もなく、ただ百の正義があるのみ……とまでは言わないが……」
超がふっとかき消えて、次の瞬間、いや俺の知識が確かなら同時に、ネギの後ろに出現した。
「想いを通すは、いつも力ある者のみ。正義だろうが、悪だろうがネ」
ドンッ ザッ
ネギは瞬動術を使ってその場から離れる。俺は一歩離れた場所から見ていたから把握
できたが、そうでないネギは突然超が背後に現れたように感じたはずだ。
「ま 待って下さい。超さんと戦うつもりはないんです。理由だけでも教えてくれないと僕は……」
「……ふむ♡ いいことを思いついたネ。理由は話そう。……悪いコトもやめるヨ」
「え……♡」
おいおい何気―抜いてんだネギ。そんなの方便に決まってるだろ。
「この勝負で、ネギ坊主達が勝てたらネ。そんで……ネギ坊主達が負けたら、こちらの
仲間になてもらうネ」
「えっ……ちょ」
「もちろん理由も教える。お♡ 良かたネ。どちらにせよ理由わかるヨ。納得したカ?
いくヨ♡」
「
俺は完成度の高い白兵戦用の魔法を使って自分の身体を強化した。持続性の高い対物
魔法障壁によって保護され、かつ筋肉の収縮によるパワーとスピード、筋持久力の全てが飛躍的に向上する!
俺は余裕を持って超の拳や蹴りを避けると、こちらも拳や足を使って反撃に出た。京都の天ヶ崎千草や犬上小太郎との戦いでもやったが、俺も肉弾戦は(見よう見まねだが)何とかできる方だ。魔法学校で一人、暗い奴と言われながら行った反射訓練は伊達じゃないぜ!
「ネギ! 戒めの風矢だ! それで超を拘束するんだ!」
「あ、そ、そうか。
ネギから戒めの風矢が飛んだ。相手を拘束する効果のある魔法の射手だ。これなら……。俺の
近接攻撃でつかず離れずの距離を保ったのも良かったのだろう、超は戒めの風矢を食らって
拘束された。
「おおっ。これは……素晴らしいネ二人とも」
「す すみません生徒にこんなコトを……。でもまず理由と話し合いを……」
「いやいや気にするコトはない。これは私から挑んだ勝負ヨ」
ガシッ ガシッ ガシッ キュ キュ キュ
戒めの風矢が超の体を縛る。……だが、
ガシイッ
「残念だたネ、ネギ坊主」
超はまたいつの間にかネギの背後に出現していた。戒めの風矢は何もない中空を掴んでいる。
「ちょと痛いがこれも勝負ネ。悪く想うナ」
超は紫電の走る拳でネギを思いっきりぶん殴った!! 超の踏み込んだ足先はど派手な音を響かせ、殴られたネギは大きく吹き飛ばされて柱を折り、壁に叩きつけられた。俺はネギの心配もそこそこに、超の出方を見た。
「さて……これでネギ坊主は脱落ということでヨロシイカ?」
俺の持つ知識が合っているならこの超には絶対に勝てない。そういう相手なのだ、この超鈴音というのは。だが俺には奥の手がある。
「うん! 超さんには勝てそうもないな! 逃げるぞネギ!」
俺はネギの体を担いで魔法の浮遊術を使うと空を飛んだ。
「フフ。どこへ逃げるかナ?」
「お、追ってくるよ、むぎ。どこに?」
息も絶え絶えな状態でネギが俺に問う。回復してやれなくてすまねえな、ネギ。
「第3廃校舎だ! ここに切り札がある!」
「ム、ムギ。こんな所に逃げてどうするの?」
まあ落ち着けネギ。俺はダメージを負ったネギの体を治癒してやる。
「ここが、決戦の場ということでヨロシイカ?」
魔法で拡大された知覚領域に多数の気配を感じる。よし、これでいい。
「多勢に無勢では私も大変ネ。こちらも応援を呼ばせてもらおう」
ズシャッと音を立てて二人の人間(?)がその場に現れる。
「やあ、ネギ先生達」
「龍宮さん!? 茶茶丸さん!? な 何で!?」
「ムギ先生、貴方とは一度戦ってみたかったよ」
「ああそーかい。だがそれはこっちの奥の手を見てから言いな」
廃校舎の屋上にあった壁、柵が取り払われる。魔法先生といえどもタカミチと学園長
以外はたいしたことねーとか思ってるんだろうな。
「ようこそ。超りんお別れ会へ!!」
「お……」
超はさすがに虚を突かれたような顔をする。そこにいたのは3-Aの生徒達……多数の一般人だ。
「ちゃおちゃおーっイキナリお別れなんて 突然すぎるよーーっ」
「その服 何!? コスプレ!? カッコイー♡」
「何で何も言ってくれなかったの!? てゆーか転校するってホントにホントなの!? 超!!」
未来人・超鈴音といえどこれは予想できなかっただろう。
「な……む……。話はほんとネ。どうしようもない 家の事情でネ……」
「そっかーホントかー……」
「家の事情じゃ仕方ないねー……」
「てことはもう格安激旨肉まんは食べられないってこと1? 死活問題ッ」
「ハハハ
へへへ、謀ってやったぜ超! その後、委員長の長ーい挨拶などがあったが。
「カンパーイッ!!」
「今日も朝までブワーーッと騒ぐよーー!」
「これが……奥の手……なの? ……ずいぶん、思い切ったね。超さんが実力行使したらどうするつもりだったの?」
「聡明な超さんに限ってそれはないと踏んでいた。彼女がどんな事情があろうと、学園を
去るってのが本当なら、
連れて来れば彼女も下手に動けねーだろうな、という打算もあったけどな」
つーかそれが9割だ。ほとんど打算だ。でもそれでいーじゃねーか。超は一応止められたんだ。その後、宴会は楽しく続いた。超の涙を見ようと、エロいくすぐりショーなどがあったりもしたが、
「イヤイヤヒドイ目にあたヨ」
「いい気味だ。たっぷり苦労すると良い」
俺がそんな酷い言葉を吐いているところに
「超……」
「古……」
「私からも
「何ト? そんな大切なモノは頂けないネ……古」
「超の故郷は遠くて 会うのはもう……難しいアルネ? だから超にもらてほしいアル」
遠い……ね。確かに遠いな。物理的にもそれ以外でも。
「そうか……わかたネ」
「皆に内緒と言ッてたのに悪かったアルネ。超はこーゆーお別れ会みたいのは苦手だた
アルよネー」
「いや……自分でも意外だが……嬉しかたヨ。ありがとネ……古」
んで、お別れ会も終わりに近づいた。
「さて それでは旅立つ超さんから言葉を頂きましょうか」
超がお別れの言葉を言おうとした時、それは起こった。世界樹がさらに発光したのだ。
「んーー♡ 22年に一度の大自然の神秘が見られるなんてラッキーだね♡」
「コホン……んーー……何とゆーか。正直 入学した当初このクラスは脳天気のバカチンばかりで どーかと思てたが……この2年間は思いの他楽しかたネ。それにこんな会まで開いてくれて……今日はちょと感動してしまたヨ。……ありがとうみんな。私はここで学校を去るが……みんなは元気で卒業してほしいネ」
そうして、超の挨拶は終わった。
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「ねぇねぇねぇ。さっきの 故郷が遠くて会えないってどーゆーこと?」
「……私の故郷が知りたいカ? いやーーしかしこれは私にとても最重要な……何と
ゆーかネタバレでネ」
「ええーー何だよソレ教えろよーーッ」
「超の故郷って中国じゃないの!?」
「いや もっともっとずーーーーっと遠い場所ネ。……どうしても知りたいカネ」
「うん!!」
「そうか……わかた。特別に教えるネ。みんなにはかなわないネー。実は私は……何と
火星から来た火星人ネ!!」
「うおおおーーいっ!!」
「ふざけるなーッ!!」
クラスメイト達から壮絶なツッコミが入る。そりゃ普通に言ったら信じてもらえないよなぁ。
刹那までツッコミしてるよ。
「いやいや火星人ウソつかないネ。今後百年で火星は人の住める星になる……私は未来からやって来た、ネギ坊主の子孫ネ」
ネギは驚いている。そして超は意味ありげにこちらを向いた。その目は確かに言っていた。
貴方の存在はイレギュラーだと。
クラスメイト達はその後も騒ぎ続け、だが準備からの連日の徹夜が効いたのだろう、
しばらくして眠りについた。そして超と俺達の時間がやってきた。
「……。さっきの話、アレは……本当の……?」
「ハハハ。あまりに突飛だと信じてくれないものネ。私は……「君達にとっての未来」
「私にとっての過去」つまり「歴史」を変えるためにここへ来た。それが目的ネ」
「え……れ 歴史って超さん……イ、イキナリお話が大きく……」
「世界樹の力を使えば それだけのロングスパンの時間跳躍が可能ネ。そんな力を持てたとしたらネギ坊主達ならどうする?」
この世界だと俺の機転でネギがカシオペア――タイムマシンを受け取ってないから、
かなり眉唾物になっているな。
「父が死んだという10年前……村が壊滅した6年前……不幸な過去を変えてみたいとは思わないカナ」
「全く思わないな!」
俺は即答した。ちなみにこれは俺の本音だ。
「…………。フフ、ムギ坊主はそう考えるのか。強いネ。……今日の午前中はまだ動かない。また会おう2人共」
「あっ……。まっ 待って下さい!!」
問いかけようとしたネギを置いて、超は姿を消した。
タイムマシンを受け取らない。原作のタイムマシン使いまくりの状況が個人的に気持ち悪かったので。
超の未来にはムギはいない。幾つかのネギま二次を見ましたが、全て想定通りの、何もかも知っている状態の超しか見たことなかったので、こうしました。たまには超にも知らないことがあってもいいよね。
まほら武道会に参加しない。このネギじゃねえ……。そりゃあ参加はしませんよ。
そして原作に存在するほとんどのデートイベントもカットです。ムギが頑張って阻止しました。表の世界では、問題はあるかも知れませんが、4月からは正規の教員として採用されているのです。特定の生徒とばかり親しくするのなんてそんな漫画や小説じゃないんですから。
そして完全に描写していませんが、明日菜のデート練習イベント、タカミチとしずなの
二人っきりの姿を見る。告白イベント、全て起こりませんでした。原作と違い本屋ちゃんに背中を押されたりネギが協力したりしてませんからね。