「フォフォフォ 皆にも一応紹介しておこう――新年度から正式に本校の英語科教員と
なるネギ・スプリングフィールド先生とムギ・スプリングフィールド先生じゃ。二人には4月から3年生の英語を担当してもらう予定じゃ」
全校集会で生徒達の前に立たされ挨拶する。長谷川千雨含め、幾人かが愕然とした表情をしているのが見える。そうだよなぁ。そりゃ信じられないよなぁ。俺達魔法使いの事情でご迷惑をおかけします。
その日、2-Aで授業をしたところ、「学年最下位脱出おめでとうパーティー」なるものをやろうと申し出てきた。俺は断ったのだが、彼女らの熱意に押されたのとネギが承諾したので参加せざるをえなくなった。その際、千雨が腹痛で早退した。まあ仮病だろうが、あまりの非常識さに限界がきたんだろう。俺は放っておくことにした。ネギは心配していたが、体調の悪い人間に無理に構うもんじゃないと言って聞かせておいた。
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春休みになった、教科だけの教員である俺達はそれなりに暇なので、仕事で出勤しつつも麻帆良という街を堪能していた。2-A改め3-Aの生徒が案内を名乗り出てきたが断った。
自分達の好きに街を見て回りたいと言って。本音は私生活でまで彼女らに付き合うと
こっちが疲れるからだ。ネギの魔法バレの危険性も跳ね上がるしな。
委員長こと雪広あやかの家の家庭訪問するなどというイベントもなければ、パートナーを探していると話題になることもなく、着物姿の近衛このかに出会うこともなかった。何も起きないとは
素晴らしいことだな。心が安まる。
「ネギーご飯出来たぞー。仕事やめて一緒に食べよう」
「うん。今日は何?」
「こないだ作って好評だった親子丼だ」
「わー親子丼!」
思ってしまう。
春休みから4月にかけては本当に安心して過ごせた。原作の吸血鬼エヴァの事件が
起きないからな。そう言えばネギはだいぶ足繁くエヴァの家に通っているようだった。
何でもナギの生きてる頃の話を聞きたいんだと。……エヴァの話聞いて幻滅しないと良いけどな。あのクソ野郎
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「――こちらは放送部です……これより学園内は停電となります。学園生徒の皆さんは
極力外出を控えるようにして下さい」
停電が始まった。原作ではエヴァと激突する日だがそんなことは最早起こりえない。
そう言えば原作ではエヴァに弟子入りするけどそれも無しだ。エヴァが俺達の実力を見る機会も
ないし、俺達が力を求めてエヴァに助けを請うこともない。
だから、俺達はエヴァに弟子入りなどしない。
あ、エヴァのことで思い出したことがあったのでついでに語っておこう。オコジョの
アルベール・カモミールのことだ。原作であればエヴァの事件が起きる頃に日本にやってきてネギのペットとなるこいつだが……残念ながらこの世界ではそれは起こらない。何故かと言うと、魔法学校に通っている頃に、ネギがあいつを助けるという出来事が起きなかったのだ。俺達双子は基本同じように行動するから相手が何をやっているかなんて把握していて当然なのだ。そして……俺の把握している限りネギが罠にかかったオコジョを助けるなんて出来事はなかった。卒業する頃にも再度確かめたから間違いない。
つまり……あいつは罠にかかったままだったということだ。原作では何かとネギを助け、女子生徒達との
俺はそっと、罠にかかったまま悲惨な末路を辿ったであろうオコジョに黙祷を捧げたのであった。
話のついでだ、仮契約について話をしよう。原作において女子生徒とのキスイベントでもあったこれだが、カモがいない上に俺が魔法バレを防ぐ方針なので女子生徒との仮契約はしない。しないったらしない。絶対にしないのだ。それはさておき俺達の話である。
俺達は生まれた時から一緒にいる双子だ。パートナーになるのにこれほど条件の良い相手は居ないだろう。だから俺達は魔法学校に在学中に、教師に言って仮契約を結んだのだ。本当なら本契約でも構わないと思ったのだが、将来意中の女性と出会うかも知れないから、と担当してくれた教師に言われて仮契約にとどめておいたのだ。勿論従者側が俺、主人がネギだ。戦闘が起きたらネギに
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さて、話は停電作業が終わった翌日になる。学園長から修学旅行への参加について話があったのだ。俺達は2月から研修に来ていたわけだが、4月からは正式な教科教員として採用されている。労働基準法だとかそこら辺のツッコミはこの際おいておくとして、3年の英語教員であるなら修学旅行にも参加できるというのだ。そこで……、
「修学旅行の行き先はのう、学校の人数が多いので目的地は選択式となっておるんじゃよ。
それで……ハワイや京都・奈良などの数カ所があるのじゃが、どこに行きたいかね?」
学園長が質問してくる。だがこれは……ネギも俺も答えは決まっている。
「ムギ。僕は京都・奈良に行きたいんだけど……」
俺に対して懇願するような瞳を向けてくる。知ってるよ。エヴァから、京都にナギが
一時期住んでいた家があると言われたようだからな。言われたその日に嬉しそうに夕食を食べながら俺に報告してくれたんだ。分かってるって。
「分かってるよ、ネギ。学園長、僕らは京都・奈良に行きたいです。それで調整して
もらえますか?」
「ふむ……京都・奈良か。しかしのう、京都・奈良は難しいんじゃ」
「え!? む、難しい!?」
ネギ、落ち着け。その後学園長が語ったことを簡単にまとめるとこうだ。関西呪術協会、というものがある。学園長――
今年は魔法先生がいるかもしれないと言ったら、修学旅行での京都入りに難色を示してきたとのこと。だが、学園長は理事として西との喧嘩はもうやめて仲良くしたいらしい。その為の特使として西へ行ってもらいたい、とのこと。
「この親書を向こうの長に渡してくれるだけでいい。ただ道中向こうからの妨害がある
やも知れん。彼らも魔法使いである以上生徒達や一般人に迷惑が及ぶようなことはせん
じゃろが……ネギ君とムギ君には大変な仕事になるじゃろ……どうじゃな?」
「わかりま「ふざけないで下さい学園長!」
俺は承諾の言葉を言いかけたネギを遮って怒気を込めた言葉を発した。
「ム、ムギ?」
「ひょっ?」
二人は不思議そうな顔をしてるけど、そもそもの前提からして違うんだよ。
「学園長、私達は魔法使いではありますが、この学園に所属している役職は「3年生担当
英語教員」というもののはずです。決して「関東魔法協会の一員」ではないはずです」
そう、そこが間違っているのだ。俺達が関東魔法協会の一員であれば、理事からの命令に従うのは半分義務のようなもんだ。けど俺達はウェールズ卒業試験中の魔法生徒、という身分でしかない。それが裏の身分で、表の身分は言った通り英語教員ってだけだ。だから――
「関東魔法協会の一員でない俺達には、関東魔法協会の理事の命令を聞く義務なんて無いですよね? そして表の身分である麻帆良学園学園長としての命令は、学業に関するものしか聞かなくて良いはずです。なので私達には貴方の、関東魔法協会の特使になる権利も義務も筋合いも無いんですよ。だからその話はお断りさせて頂きます。行こうぜネギ」
俺はネギの肩を掴むと強引に引っ張って部屋を出た。学園長は「ちょ、ま」などと
言っていたが知ったこっちゃない。俺達は部屋を出た。
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「だからな? ネギ。もう一回言うけどさ。例えば普通の会社があったとするだろ?
そんでそこの社長がスポーツに熱心な人だったとするわな。でもいくら熱心でもスポーツは趣味
なんだよ。だから例えば、社長が「私がやっているスポーツの試合があるから是非君も試合に参加しなさい」って言ったとするだろ? それは社長の意向ではあるけど、命令にはなりえないんだよ。仮に命令だとしても、社長の所属するスポーツチームとかに所属していなければその命令を
聞く必要は無いんだよ。んで表の身分である会社社長としての強権を発したとしても、会社の社長が下せる命令は会社の業務に関することだけなんだ……俺の言いたいこと分かったか」
「う、うん。ムギの言いたいことは大体わかったよ。僕達はウェールズの魔法学校から
卒業研修に来ているだけだから関東魔法協会の所属じゃないってことでしょう? それは
いいんだけど……良かったのかなぁ。学園長を無視して出て来ちゃって」
「いーんだよ。あんな無茶な指示を出そうとするダメ上司は放っておけば」
「ダメ上司って……酷いなぁ」
いいんだって、あんな奴無視しとけば。これでもし自分の言うことを聞かなければ京都・奈良には行かせんとか言い出したら一般人の先生を巻き込んで抗議行動してやる!
俺はそうして、原作のイベントである親書の受け渡しを拒否したのだった。
その後も学園長から親書の受け渡しを要請されたが全て断った。ネギにも決して受けるなと言い含めたのでネギも受け取っていない。これなら親書は俺達以外の魔法先生が運ぶことになるはずだ。
そんな感じで、俺達は京都・奈良への修学旅行の日を迎えたのである。
カモの出番、というか存在そのものをカットです。原作と違って双子の兄弟がいるんだしこういうことが起きても不思議ではないと思うのです。カモを助けるイベントがあった時に、ムギがいることで生じた行動の最中であった……というわけです。……黙祷。
さて、真面目な話をしましょうか。カモがいなくなったことで仮契約の全てが起こり
ません。いや、カモがいなければ絶対に仮契約が出来ないわけでもないので、仮契約自体は行いましたけどね。攻撃する前衛ではなく、敵の攻撃を回避・防御するタンクタイプの前衛になります。
親書を受け取らない。そもそも関東魔法協会に所属していないネギにあの命令(?)を聞くいわれは無いんですよね。アホらしいのでサクッと断りました。
それから本文中に書いていませんが、明日菜の誕生日イベントもカットです。原作のように
同室じゃありませんからね。接点がないので当然のように一生徒を祝ったりもしません。