俺達は関西呪術協会の車で総本山に向かっていた。原作では一般人の生徒達も
ついてくるが、GPS携帯を放り込まれるなんて失態を許す俺では無いので、生徒達が
ついてくることもなかった。
今は車から降りて屋敷までの道を歩いている途中だ。原作ではここで無間方処の咒法に閉じ込められる場所だな。だがこの世界ではそれは起こりえない。
「お帰りなさいませ。このかお嬢様――ッ」
「へ?」
このかの事情を知らないネギはポカンとしている。
「せ 刹那さんこれってどーゆー」
「えーとつまりその……ここは関西呪術協会の総本山であると同時に、このかお嬢様の
御実家でもあるのです」
「えっ。そ、それ初耳ですよ。何で先に言ってくれなかったんですかーー」
「す すいませんっ……。今 御実家に近付くとお嬢様が危険だと思っていたのですが……シネマ村ではそれが裏目に出てしまったようですね。御実家……総本山に入ってしまえば安全です」
刹那ってさぁ……色々とアレだよな。そんなことを思いつつ俺達は屋敷の本堂に通された。
「懐かしいなーーウチちっちゃいころここに住んでたんや。まほら行ってからあんま帰らへんかった」
「へーー。……あれ? ちょっと待って下さい。ここがこのかさんの御実家ってことは……関西呪術協会の長って……」
その時奥の方から長が姿を現した。
「お待たせしました。ようこそネギ先生、そしてムギ先生」
「お父様♡ 久しぶりやー」
このかが長に抱きつく。
「このかさんんおお父さんが西の長だったんだーー」
その後、俺達は簡単に自己紹介と挨拶を行った。
「今から山を降りると 日が暮れてしまいます。君達も今日は泊まっていくといいでしょう。歓迎の宴を御用意致しますよ」
「あっ……でも僕達修学旅行中だから帰らないと……」
「それは大丈夫です。私が身代わりをたてておきましょう」
また身代わり、かぁ。俺はそういう日常生活で魔法を使うのはあんまり好きじゃないんだよなぁ。
そして大騒ぎの宴が始まった。俺はこういう席苦手だな。前世はただのオタクだったし。……早く終わらないかな。
「刹那君」
「こ これは長。私のような者にお声を……」
刹那の前に長が姿を見せた。
「ハハ……そうかしこまらないで下さい。昔からそうですねー君は。……この2年間
このかの護衛をありがとうございます。私の個人的な頼みに応え よくがんばって
くれました。苦労をかけましたね」
刹那が護衛を頑張っていた……ねぇ。それはどうかな。学生寮の部屋も別々という時点でお察しって感じだよ。そんなに護衛しているとは思えないよな。刹那が満足するためだけの護衛って
感じか?
「ハッ……いえ。お嬢様の護衛は元より私の望みなれば……もったいないお言葉です。
し しかし申し訳ありません。私は結局 今日お嬢様に……」
守れなかった、か。それを言うなら俺やネギもだ。
「このかには普通の女の子として生活してもらいたいと思い 秘密にしてきましたが……いずれにせよ、こうなる日は来たのかもしれません。刹那君 君の口からそれとなくこのかに伝えて
あげてもらえますか」
「長……」
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「ハハハハ。しかし10歳で先生とは やはりスゴイ」
「いえ そんな」
「大したことはしていませんよ。教科だけの教員。しかも2人で1人分の仕事をこなしているだけですからね。なおさら誉められることではありません」
俺達は屋敷にある大浴場に長と一緒に入っていた。裸の付き合いって奴だな。
「そうですか。まあとにかくこのかのことよろしくお願いしますよ ネギ先生、ムギ先生」
「はい。分かりました」
「この度はウチの者達が迷惑をかけてしまい申し訳ありません。昔から東を快く思わない人はいたのですが……。今回は実際に動いた者が少人数で良かった。後の事は私達に任せて下さい。
生憎どこも人手不足で腕の立つ者は仕事で西日本全域に出払っているんですが……明日の昼には
各地から腕利きの部下達が戻りますので奴らをひっ捕まえますよ」
「は……はい! それで……彼らの目的は何だったんですか?」
「彼ら……天ヶ崎千草のコトですか。彼女には色々と西洋魔術師に対する恨みのようなものが
あって……。いや 困ったものです……」
西洋魔術師に対する恨みか。原作を読むだけでは不明だったんだよな。この世界では
分かるのかな?
「何故 このかさんを狙うんですか」
「切り札が欲しいのでしょう」
「切り札?」
「ええ ネギ君も薄々お気づきとは思いますが……。やんごとなき血脈を代々受け継ぐ
あのこには凄まじい呪力……魔力を操る力が眠っています。その力は君のお父さん。
サウザンドマスターをも凌ぐ程です。つまり このかはとてつもない力を持った魔法使いなんですよ」
知ってた。
「その力を上手く利用すれば西を乗っ取るどころか東を討つことも容易いと考えたのでしょう。
ですからこのかを守る為に安全な麻帆良学園に住まわせ、このか自身にもそれを秘密にして
来たのですが……」
「あ あれ……ところでサウザンドマスターのコトを御存知なんですか……?」
「君のお父さんのことですか? フフ よく存じてますよ。何しろ私は
ナギ・スプリングフィールドとは腐れ縁の友人でしたからね」
知ってる。
「え……」
その時だった。浴室の外から女性の声が聞こえてきた。
「おや……おやおや御婦人方が……これはいけませんね! ご案内を間違えたかな。緊急事態
です! 裏口から脱出しますよ!」
「えっ あっ。長さん」
裏口から脱出しようとした時だ、ネギの奴は必要以上に慌てていたのだろう。前をろくに見ずに走って浴室に潜んでいた刹那とぶつかってしまった。
「あっ!?」
ネギは刹那を押し倒して胸をその右手で掴んでしまっていた。……ラッキースケベ乙。その後、浴室に入って来た女性達とで更なる騒ぎに発展した。
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俺は今、とあるタイミングを計っていた。原作知識が確かなら、この後本山はフェイトに襲われる。奴の石化魔法は驚異だ。だが俺には対策がある。
「きゃあああ……!?」
「ム ムギ今の!?」
「悲鳴だぜ。向こうの部屋だ!」
悲鳴が上がった部屋に向かうと、そこには俺の予想通りの光景が広がっていた。石に
された本山の女性達。
「え……こ……これは……!?」
「落ち着けネギ! 敵だ!! 泣いてる場合じゃねえ」
ネギは6年前の襲撃も思い出しているのだろう。泣いている。だが俺もネギももうあの頃のような無力なだけの子供じゃない。
「で でも皆が!」
「落ち着けって!! 石化ならきっと長や本山の術者が解いてくれる! それより敵に
備えろ。そして敵の狙いである近衛さんを守りに行くぞ!」
俺達はこのかを探して駆け出した。
「で でもっ総本山にいれば敵は手を出せないハズじゃないの!?」
「来ちまってるもんはしょうがねぇだろ! 今は現状分析より対処だ。しっかりしろ!」
そうして話している間もこのかを探して回る。くそっこのかはどこだ。
バッ ダンッ
人の気配を感じて構えてみたら刹那だった。
「刹那さん!? お風呂にいたんじゃ!? このかさんが話するって……」
「ただならぬ気配を感じて飛び出して来ました。何があったんです!?」
「そ それが。その……」
「本山の人達が石化させられて……」
「ネ……ネギ君、ムギ君、刹那君」
「長……!」
声がかかり振り向いた先にいたのは長だった。だが下半身と左腕が既に石化している。
「も……申し訳ない。3人とも……本山の守護結界をいささか過信していたようですね。平和な時代が長く続いたせいでしょうか……不意を喰らってこの様です。レジストはしたのですが……。か……かつてのサウザンドマスターの盟友が……情けない。三人とも……白い髪の少年に気をつけなさい……。格の違う相手だ。並の術者ならば本山の結界もこの私も易々と破られたりは……しない」
「長……!」
「あなた達三人では辛いかも知れません……。学園長に……連絡を……。すまないこのかを頼み……ま……す……」
その言葉を残して、長は完全に石化した。
「行きます先生!!」
そうして俺達と刹那はこのかを探して屋敷を駆け回った。……今更だが何を言われてもこのかの傍に居続けるべきだったな。このかと刹那が魔法に関する話をするというので席を外していたのが裏目に出た。失敗した。
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「せっちゃん!」
「お嬢様!」
俺達は何とか、屋敷の廊下でこのかと合流できた。良かった。これで問題は解決したな。
「桜咲さん、時間がない。俺が持つ切り札を切る」
「え……何を」
「ネギ、俺の近くに」
俺は抱きついているこのかと刹那に体を触れさせて、ネギを呼んだ。
「うん」
ネギは俺が取る行動を分かっているので、大人しく従ってくれた。
俺は、魔法を起動させた。俺の切り札、影を使った
「え? え? え?」
俺は混乱しているこのかを置いて、へたりこんだ。この魔法にはかなりの魔力を必要とするのだ。一回行うだけでもしんどい。
瞬間移動した先は俺達が泊まっている旅館、その予備用具室だ。1日目に旅館に来た時、転移先として魔法の鍵を打ち込んでおいたのだ。なのでまだ未熟な俺の転移魔法でも、長距離を移動
できるという寸法だ。
「こ……これは?」
「安心していいですよ刹那さん。ムギの転移魔法です。旅館に瞬間移動したんです」
ネギには最初に転移先なども話してあるので対応はスムーズだ。とにかくこれで敵は
俺達の姿を見失ったはずだ。そしてもし敵が旅館に目をつけたとしてもここにはエヴァが
いる。彼女がいればフェイトには対応できる。それに忍者である長瀬や傭兵の龍宮に救援を頼んで数で押せるのだ。
俺は当面の危機が去ったことを確認して、長いため息をつくのだった。
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その後の顛末を軽く語ろう。敵はやはり旅館に攻めいることが出来なかったようだ。そして時間が過ぎ、翌日の昼には総本山に救援の術者達が駆けつけてくれた。そうして天ヶ崎千草の一味は
捕らえられたらしい。フェイトと月詠は逃げおおせたようだが。
俺達は突然の転移に混乱するこのかに魔法のことを説明しつつ、旅館で警戒しながら
休んだのだった。
まさかの3日目夜の戦闘全カットというね。ですがこれが主人公が魔法学校にいる時から
想定していた修学旅行の対応なのです。転移魔法は文字通り転移なので、魔力で後を追うとかってことも出来ないですしね。
漫画として考えればイベントを発生させないのは読者を飽きさせてしまいますが、自由に書ける二次小説ではホントに自由に書けますね。
そして刹那が翼を使ってこのか救出もしていないので、二人が本当の意味で和解していません。魔法のことは伝えたので護衛という立場は理解してくれたでしょうがね。