修学旅行4日目、自由行動である。だが朝から午後にかけて、観光を楽しむエヴァと
行動を共にした。事態が収拾したのは昼から午後にかけてなので、それまで自由に動く
わけにはいかなかったのだ。俺達は話し合い、旅館に留まり続けるよりは、エヴァの傍に居た方が安全だろうと言うことになった。エヴァに任せて自由に行動した方が、敵も居場所を絞りにくいだろうという目算もあったのだが。
結局3日目の夜から4日目の昼にかけて敵の襲撃は無かった。転移の後をつけて来られるかと
危ぶんだが、エヴァが修学旅行に来ているという情報はあちらも掴んでいるので、それで手が出せなかったのだろう。
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午後になり、ようやく本山に戻った術者達が動いて千草が捕らえられたと連絡があった。フェイトと月詠は逃がしてしまったようだが。これで一応の警戒は必要だが、自由に出歩いて良いことになったので、俺達は石化が解かれた本山に再び出向くことになった。このかが石になったという父親を心配してのことだ。俺達三人の護衛はそれに付き合う形となった。エヴァも久しぶりに長こと近衛詠春に会いたいということで付き合ってくれた。
「ムギ君、まずは礼を言わせて下さい。このかを守って下さりありがとうございました」
「俺は大したことしていないですよ。ただ転移魔法を使っただけです」
「いえ、それが結果的にこのかを救う最善手となってくれたのです。本当に、ありがとうございました」
「……ま、まあ。そこまで言われるのならこちらも礼を受け取っておきますよ。それより長、
捕らえられたという二人の処遇はどうなるのですか?」
俺は原作知識で本山が壊滅することを知っていたんだ。礼を言われることを心苦しく思いつつも、気になっていたことを聞く。
「犬上小太郎君は……それほど重くはならないでしょうが、それなりの処罰があると思います。天ヶ崎千草についても……まあその辺りは私達にお任せ下さい」
そうか、小太郎の処罰はそれほど重くならないのか。人一人を拐かす手伝いをしたの
だからそれなりの処罰はして欲しいところだが……。
「それより問題は白髪の少年ですが……現在調査中です。今の所 彼が自ら名乗った名が
「フェイト・アーウェルンクス」であることと、一ヶ月前にイスタンブールの魔法協会
から日本へ研修として派遣されたということしか……恐らく偽称でしょうが……」
その後、俺達は夕食を本山で振る舞われ、昨日同様こちらに泊まることになった。一つネギにとって残念なことだが、クソ野郎ことナギの別荘に行けなくなったことだ。これまでのスケジュールでも行けなかったし、4日目も日中はほぼ警戒していたのでダメだった。まさか夜に長達の都合を押して案内を頼むわけにもいかず……5日目は午前中で麻帆良に帰る新幹線に乗るのだ。別荘に行く暇は無い。ネギはだいぶそれを嘆いていたが、俺が日本に居続ければ機会はいくらでもあるよ。旅費も教師としての仕事で貯まるだろうから、と説得して何とか納得してくれた。
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そうして俺達は無事修学旅行から帰って来た。俺としても必要以上の魔法バレも
なかったし、このかがネギと
修学旅行から戻った俺達は今まで通りの生活を送っていた。英語の教師として仕事
しつつ、家事などもやり、魔法の練習も隠れて行い……といった生活だ。ネギがナギの
別荘に行ってないので学園の地図ももらっていない。
3日目夜の激しい戦闘も無かったので、ネギがエヴァに弟子入りを志願することも
無かった。それはつまりネギが
3-Aの担任になって委員長こと雪広あやかともさほど親しくなっていないので、南の島に招待されることも無かった。……こうして列挙するとホントないないづくしの生活だなぁ。まあその方が平和でいいけど。
とりあえず、今後の方針としては悪魔ヘルマンの麻帆良侵入に備えることだな。
フェイトに警戒されるような真似をしなかったので大丈夫だと思うが、「大丈夫だろう」と考えて備えを怠ると痛い目を見る。まあいざとなったら転移魔法で学園長なりエヴァのところに
逃げ込めばいいだけだから気楽ではあるのだが。一応準備だけはしておかないとな。
ヘルマンが襲撃してくる日は雨の激しい雷雨の日だったと思ったが、その日が来ても
特に何も起こらなかった。……これは、やっぱり襲撃が無くなったということでいいんだよな? まあ襲撃が無いというならそれにこしたことはない。
そう言えば今更だが、原作知識と違うことって起こらないな。まあ俺はネギの双子の
兄弟として転生した後、原作知識をできる限り書き出して考えをまとめたとき、
・自分以外の転生(憑依)者がいる場合
・自分以外の転生者などが全くいない場合
・転生者などはいないが、原作と違う出来事が起こる場合
と、様々なパターンを煮詰めてずーっと考えだし、できうる限りの全てのパターンを
考えておいたのだが。どんなパターンがきても対応出来るように一応は考えていたのだが、それも無かったな。まあ変動がないなら知識が役立って平穏な生活が出来るのだ。良しとしとこう。
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「お……おいしい!! コレホントにおいしいですよ!!」
今麻帆良学園は学園祭の準備におおわらわだ。その中でも注目すべきなのが、超包子という
店だ。3-Aの
「ホントにうまいな。出来るなら毎日でも食べたいくらいだ」
「あはは、さすがに毎日は無理だけどね」
そう言えば、原作だと3-Aはお化け屋敷をやって、確かその時地縛霊の相坂さよも
出るんだっけ? 俺も前世でネギまの漫画読んでた頃は二次小説とかも結構読んでたけど
大抵救済されるんだよなぁ。でも俺は彼女を救わない。その為の手段も講じない。だって不公平だと思うからだ。彼女を救うならこの世界全てに存在する幽霊を救わないと嘘、
というか不公平だろう。逆に全ての幽霊を救えない、救わないなら相坂さよも救うべき
ではない、と俺は思う。一を救うなら全を救え。全を救えないなら一も救うな、って
ところかな。とにかく俺は不公平な救いが嫌いなのだ。
同じ理由で超の過去改変も嫌いだ。この世界に山ほどいる「不幸に見舞われた人」が
いるのに、なんで奴だけ世界で唯一人特別に過去改変で幸せになれるのだ。卑怯だろ。
学園祭が近付くにつれて、生徒達から誘われることが多くなってきた。イベントや
催しものに来てくれと誘われるのだ。そしてどちらかと言えば誘われることが多いのは
いつもニコニコ朗らかなネギだ。時に厳しく接することがある俺じゃ扱いに差が出るのは
当然といったところか。まあネギには仕事に支障がない範囲で適度に誘いを受けたら良いんじゃ
ないか? とは言ってある。原作だとネギは学園祭、スケジュールギチギチだったからな。
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「おはようございます。麻帆良祭当日まであと16時間です。各イベントサークルの
責任者は本日10時に学祭実行委員会本部へ……」
「前夜祭チケットあとわずか!」
「いよいよ学園祭だねームギ」
「俺達田舎者だから凄い楽しみだよな」
口ではそう言いつつも心では学園祭が嫌だった。学園祭が嫌というか学園祭で起きる
事件が嫌なのだ。彼女の事件は凄く疲れそうだから嫌なのだ。
「あらネギ先生、ムギ先生。丁度良かった、学園長先生がお呼びよ。それも校長室で
なくて世界樹前広場に来て欲しいって」
お、呼び出しか。てことはあの話だな。俺達は世界樹前広場に急いだ。
「お……ネギ君、ムギ君。待っとったぞ」
「あ あのーーこの方達は……」
その場には山ほどの先生方がいらっしゃった。生徒も何名かいる。
「うむ 二人にはまだ紹介していなかったの。ここに集まっとるのは学園都市の各地に
散らばる 小・中・高・大学に常時勤務する。魔法先生……及び 魔法生徒達じゃよ。
全員ではないがの」
「え……ええーーーっ!?」
「ネギ、うるさい」
俺達はその場に居る魔法先生達と紹介し合った。
その後、学園長先生は学園に起きている問題を提示してきた。世界樹伝説の話だ。
学園祭最終日に世界樹で告白すると恋人になるという噂がある。それが事実だと言う話だ。生徒達に世界樹と呼ばれるその樹は正式名称「神木・蟠桃」といって、強力な魔力を内部に秘めている。22年に一度の周期でその魔力は極大に達して樹の外へと溢れ出し、世界樹を中心とした六カ所の地点に強力な魔力溜まりを形成する。その膨大な魔力が人の心に作用する。こと告白に関する限り、その成就率は120%まさに呪い級の威力だ。人の心を永久に操ってしまうなど魔法使いの本義に反する。そこで、生徒達には悪いが、その六カ所で告白が起きないように見張って欲しいとのこと。
「……というわけじゃ。ムギ君も……それで良いかの?」
「普通の魔法生徒の責務の範疇であれば、俺達は卒業研修でここに来ている見習い魔法
使いですからね。ご命令には従いますよ」
俺がそう言うと、学園長はほっと胸をなで下ろした。……別に俺達二人くらい参加
しなくても大丈夫じゃねーの、とは言わない方が良いんだろうな。
と、そこで魔法先生が中空を飛んでいる機械に気づいた。偵察機を忍び込ませていた
者がいたのだ。魔法先生が追っ手を差し向けた。
学園長先生に協力も約束したので、その場は解散となった。
「ネギ君、ムギ君。二人も生徒に告白されたりせんようにな。まあ二人のことだから
大丈夫だとは思うがの」
「それはもう、大丈夫ですよ! 俺に関してはどちらかと言えば生徒達に嫌われている
くらいですから!」
「……そ、そうか」
胸を叩いて大丈夫ですと示すと、学園長は微妙な反応をした。教師なんて生徒に
嫌われてなんぼだと思うんだ、俺。
ドカッ
道を歩いていたら、屋台の向こうから人が飛んできて屋台が崩れた。何だ何だ?
「だ 大丈夫ですか? あれ!? あなたは……」
ネギがその人物を助け起こす途中で何かに気づいたような声を上げる。
「ネ ネギ坊主。丁度良かった。助けてくれないか。私 怪しい奴等に追われてるネ」
倒れたその人物は3-Aの超鈴音だった。だが俺はけんもほろろに対応する。
「怪しい奴等……ねえ。それは君の方じゃないのか?」
「エ」
「な、何を言うんだよ、ムギ」
生憎だったな超、俺は未来の知識を持つあんたと同じ、原作知識というものを持つ人間なんだよ。
「さっきのことを思い返して見ろよネギ。広場で偵察機が撃墜されただろ。あれを飛ばしていたのはこの超さんじゃないか? そんで今彼女はあの広場にいた先生達に追われているんだよ」
「そ、そんな!?」
ネギは信じられないようだが残念なことに俺の原作知識が間違っていないことは
これまでの出来事が示している。容赦はしないぜ。
「まあどっちにしろ、ここでその追っ手とやらを待っていればいいんだよ。そうすれば
真実が分かる」
追いかけて来ているのは99%魔法先生かその使い魔だろうが、それに俺達が出会えば超が広場を盗み聞きしていた人物だというのはすぐに判明する。
「あ、あーハハハ。…………失礼ッ!」
俺はその場を離脱しようとした超の腕を素早く掴んだ。
「今……逃げようとしたな。語るに落ちたな超さん」
「そんな、本当に? 超さん?」
「…………」
超は沈黙している。そりゃ答えられるわけないよな。俺の言ったことは事実なんだから。俺はその後、その場に登場した魔法先生に超を引き渡した。どうやら超は既に再三の警告を言い渡されていたようで、それを何度も無視してきたらしい。警告を三度も無視して、また今回も侵入不可能な会合の場を、科学技術を使って盗み見ていたと言うことで、魔法使いに関する記憶を消去されることになったのだった(ネギはこれにだいぶ反発していたが、俺からも説得することで一応の納得をした)。
……まあこんなことをしても、どうせ超のことだから記憶のバックアップくらい取っていてすぐに対処されるのかも知れないが。
俺はそんなことを思いつつ、魔法先生に引き立てられていく超を見送った。
別荘に行けず、手がかりの地図も入手せず、悪魔ヘルマンの侵入も無し。筆に優しい
作品です。……あ、犬上小太郎の出番とヒロインとの出会いもなくなった。
相坂さよ救済せず。これは多くの人に批判されることだと思います。ですが、多くのネギま
二次を読んでていつも不思議だったんですよね。なんで相坂さよは救うのに世界中に存在する全ての幽霊を救うって話にならないのって。こう言うと、お前のは極論すぎだ! と言われるかも知れませんが、私がネギま世界の幽霊になったらすごい不公平だと思うんですよね。なんであいつ(相坂)は救うのに俺は救ってくれないのって。ドラゴンボールで限られた人間しか生き返らせないというか、とにかくそういう不公平な救いが嫌い……というか不自然だと思うので、ツッコミました。
そして超の引き渡し、原作ではネギが見逃してくれと言うのですが、アレはどう考えても身内
贔屓だと思うのです。なのでここでは捕まえさせました。