あのあとも、スズカは楽しそうにおれの話を聞いてくれる。いい子だな……あ、鬼さまのお面が…
「なにこれ、お面?なんかオシャレだねー」
「あ、これは…おれが憧れてる鬼さまっていうポケモンのお面なんだ…」
「鬼さま?初めて聞いた。どんなポケモン?」
「!!」
スズカ、鬼さまに興味あるんだ!!鬼さまのかっこよさ、ちゃんと語らねえと……!!
「鬼さまっていうのは、キタカミに伝わる伝承でな?名前はオーガポンって言うんだけど……とにかく、すっごい強いんだ!昔、ともっこっていう3ひきのポケモンと戦って…負けちゃったんだけど、でもともっこと相打ちになったんだべ。3ひきのポケモンに1ひきで勝つのもかっこいいんだけど、鬼さまはそのあと鬼が山にひとりで暮らしてるんだ。みんなから嫌われてもひとりで生きてるっていうのがおれからしたらすっごくかっこよくて、憧れで……」
「……ふーん、ね、スグぴっぴさぁ……」
あ……しまった。つい熱くなっちゃった。スイリョクタウンでも、みんなにこの話して仲間外れにされたのに…
「はっ……ご、ごめん、喋りすぎた…」
「すごいね!!」
「……え?」
「だってそうじゃん、それだけ熱く語れるほど好きなものがあるってかっこいいよ!アテシもいわタイプ好きだからジャンル違いだけど分かる、自分の好きを貫けるってなかなか出来ないよ!」
「………」
……わやじゃ。そんなふうに言ってくれる人、初めてだ。スズカはキタカミの人じゃないし、鬼さまへの偏見もないからそんなふうに言ってくれるのかな……
「よかった、そう言ってくれて……地元だとともっこが正義で鬼さまは悪者だから、みんな分かってくれなくて…」
「あはは、悪者だってかっこいいとこあるじゃんねー?いいじゃん、スグぴっぴが好きなら胸張って好きって言えば」
「そ、そうだよな!にへへ、なんか嬉しい……」
「それに、鬼さまについて語ってる時のスグぴっぴすごい楽しそうだったよ?目もキラキラしてて喋るのも早くなってたし…」
「あはは……ごめんな、興奮しちゃって」
「いやいや、アテシも化石ポケモンについて語りはじめたらそうなるし。アテシにいわポケモンについて語らせたらマジ時間溶けるから」
「そうなんだ……なんか意外」
それから。おれとスズカは代わりばんこに話を続けた。スズカのメイクの話とか、おしゃれの話とか、難しかったけど分かりやすく話してくれて、すごく楽しかった!
「あ、もうこんな時間…」
「ん、なんか予定あった?」
「うん、ねーちゃんからリーグ部に顔出せって言われてて……入るつもりないんだけど」
「マジで?アテシリーグ部入るよ!」
「え、ほんとに?」
「もちもち!アテシそれ目当てでブルベリ来たんだから!」
「じゃ、じゃあ……一緒に行く?」
「うん!!一緒行こっ!!」
……スズカはいい子だなぁ。笑顔もすごくかわいいし……って、なに考えてるんだ。スズカとはまだ会ったばかりで……
リーグ部にて
「あ、スグ!やっと来た、遅いのよ!」
「ごめん、ねーちゃん…」
「ねね、この人がスグぴっぴのお姉さん?」
「え?」
スズカがねーちゃんに近づくと、ねーちゃんが硬直した。ま、まずいべ。ねーちゃんはギャルという生き物を敵視してて……
「えっ……あ、あんた誰、何よ!!スグと知り合い?」
「はじめまして!アテシ、スズカって言います!スグぴっぴ……スグリくんの友達でっす!」
「「えっ!?」」
ねーちゃんとおれが、ほぼ同じタイミングで驚いた。ねーちゃんはもちろん、おれもびっくりしてる。え、おれとスズカが、友達?まだ今日会ったばかりなのに……
「え、何その反応。スグぴっぴアテシのこと友達って思ってなかったの?」
「いや、嬉しいけど!その……今日会ったばかりなのに友達って言っていいのかなって…」
「なーに言ってんの!時間とかは関係ないって!アテシとスグぴっぴは熱く語り合った仲っしょ?もう友達だって!」
「そうなんだ……にへへ、そっか、友達かぁ…」
「う、ウソでしょ……スグに友達が…それに、こんなギャルが!?」
「そうでーす。アテシたち推しがいる同士仲良くなっちゃいました!ねー?」
「う、うん!スズカはわやいい子なんだ。だからねーちゃん、そんな厳しい顔しないで…」
「ぐうう……そ、そうなのね…スグと仲良くしてくれてるのね、ありがとう…」
「ねーちゃんが素直にお礼言った!?」
「あたしをなんだと思ってるのよ!?」
「わぎゃーー!!」
そのあと、おれはキレたねーちゃんに追いかけ回された。日常茶飯事だけど、人前だから若干抑えてた……気がする。
「じゃあ、あんたたち2人ともリーグ部に入るのね?」
「もちです!アテシ、リーグ部目的で入学したんで!」
「うん、おれも入る!あんまり強くねえけど、戦うのは好きだから…」
「了解、じゃあ入部届持ってきてあげるから待ってなさい」
ねーちゃんがいなくなって、リーグ部にはおれとスズカのふたりだけ。な、なんか恥ずかしいな……
「ねー、スグぴっぴ。アテシが友達じゃいや?」
「えっ……そ、そんなことない!!さっきはごめん、その……おれ、地元で友達さいなかったから、友達ってあんな簡単になれるものなんだ、って思って……す、スズカが友達って言ってくれて、すごく嬉しい!」
「そっか、なら良かった。アテシもスグぴっぴが友達になってくれて嬉しい。」
「に、にへへ……」
こうして、おれのブルーベリー学園初日は終わった。スズカっていう友達ができて、リーグ部にも入って……うん、不安だけど、少し楽しみが増えた…気がする。
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