スズカへの恋心。それを自覚してしまったスグリは毎日悩むようになった。スズカとの接し方、スズカに対しての気持ちの扱い。それが頭を支配して、どうにも授業やバトルに身が入らない。
「……どうしよう」
かといって、このままではダメなのも充分理解している。周囲も心配してくれているし、スズカも心配している。
「スグリさーん、お荷物でーす」
「えっ?」
ブルーベリー学園の生徒は基本的に寮で暮らしているため、実家から荷物が届くことがあるのだ。スグリも入学の際にキタカミから色々送ってもらったのだが……今回はなんだろうか。
「あっ、これ……」
ダンボールを開けて、真っ先にスグリの視界に入ってきたのは。スグリが小さい頃に鬼が山で拾った……テラピース。一見なんの変哲もないテラピースだが、キタカミにおいてテラピースを入手する手段は限られていること、何より幼いスグリがこれをいたく気に入ったものだから、宝物としてせんべいの空き箱に入れていたのだ。
「懐かしい……これ拾ったあとじーちゃんたちにすごい怒られたんだよな」
初めて鬼が山にひとりで入り、恐れ穴の付近で拾ったテラピース。鬼が山に入った時のドキドキや、テラピースを見つけた時のときめき。そして帰ったあとはちゃめちゃに怒られたこと。全てが懐かしい思い出だ。
「そうだ、これ……おれにとって、初めての宝物なんだよな」
基本的に田舎のキタカミは、スグリのような子供に刺さる品物は少ない。おまけにゼイユという姉がいては、スグリが自分で手に入れた宝物というのは、非常に限られていた。
……宝物。そう考えたとき、スズカの笑顔がよぎった。いつも晴れやかに、かわいく笑うスズカ。
「……よし!!」
頬をパンっとはたき、スグリはスズカを探し始めた。
「スズカ、いた!!」
「うぇ、スグぴっぴ?どうしたの、そんな息切らして…」
「ちょっと、伝えたいことさあって…おれの部屋まで来てくれる?」
「いいけど…あ、でもアテシリーグ部の手伝いが」
「いいですよ!!これくらいわたしたちがやりますから!!行ってきてくださいスズカさん、ねっ!!」
「タロちゃんパイセンがいいなら、いいけど…」
戸惑うスズカの背後で、タロはスグリに向けてサムズアップを贈った。力強い応援を感じながら、スグリは自分の部屋に向かった。
「スグぴっぴ元気になったみたいで良かった!最近ずっとボーッとしてたから心配してたんだよ?」
「あ、あはは……」
「それで、伝えたいことって?」
息をせいいっぱい吸い込んで、スグリはまっすぐにスズカを見つめる。
「……おれ、スズカのことが好きです!!」
「……へ?」
「かわいいし、優しいし、自分の好きを貫いててかっこいいし、笑顔がすごいキラキラしてるし……とにかく全部が好き!!だから、その……」
「おれと、恋人になってください!!」
スグリが頭を下げる。しかし、スズカからの返事は返ってこない。これはダメか……そう思った瞬間だった。
「うぇ、ひっく……」
「!?」
スズカが、涙を流していた。
「え、え!?ど、どうしたの!?」
「ご、ごめん……その、嬉しくって、さ」
「嬉しかったんだ、良かった……でも、泣くほど?」
「いや、だって……アテシ、今まで彼氏いたことなくってさ。しかも今まで好きになった人とかはいるんだけど……みんなアテシの『好き』をわかってくれなくて。だから……嬉しいの。スグぴっぴみたいな、アテシのこと分かってくれてる、アテシのこと大事にしてくれる人が、アテシのこと好きになってくれて……」
「スズカ……」
「だから……アテシからもお願い!スグぴっぴ…ううん、スグリ!アテシの彼氏になって!」
「にへへ……もちろん!!」
「やったー、アテシたち相思相愛だね!」
「うん!」
ふたりはお互いを抱きしめ、何度もジャンプして喜んだ。お互いを褒めちぎり、喜びを伝え。やがて疲弊しきったふたりは、床に仲良く寝っ転がったのだった。
くっついてからが本番だよっ!!
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