人斬り娘の転生泡泡   作:さろんぱす。

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第4話 先を思考する少女

「イヤーッ!!」

 

 ヒソカと予期せぬエンカウントを果たした翌日。

 私は安宿の庭で麗斬刀ちゃんを振っていた。

 中段に構え心を整え、呼吸と共に腕を上げ、上段から一気に振り下ろす。

 自身と刀を一つにするように、頭のてっぺんから足の指先まで全体を意識。

 

「イヤーッ! イヤーッ! イヤーッ!!」

 

 振る振る振る。

 出来る限り丁寧に。何でもザンバラリンと斬れるように。

 具現化した【たまのをの絶佳麗斬刀】を振るう。

 これが私の刀。私の力。私の魂。何でも斬れる(予定の)すごい刀だ。

 

「でも通じなかったんだよなぁ」

 

 しかし無心で振っていたはずなのに、気づけば口から愚痴が出ていた。

 見れば剣先も微妙にブレている。

 疲れが原因ではない。心が乱れているのだ。

 

 原因は分かっている。

 初の念戦闘におけるボロ負け、勢いでやってしまったヒソカへの告白だ。

 どうしてあんな事を口走ったのかは自分でも分からない。

 でも言ってしまったことは取り消せない。

 

「うーん、ヒソカ。ヒソカかぁ……」

 

 私は気を失った後を思い出した。

 結局、あれからヒソカは私を殺さなかった。途中までは完全にやる気だったのに。

 どうやら最後の殺人予告(こくはく)を気に入ってくれたらしい。

 戦っていた路地裏で目覚めた私は、ダルすぎる体を引きずりながら宿へ戻り、泥のように寝た。

 

 それからは落ち込んで反省しての繰り返しだ。

 まさに心ココにあらず。せめて一太刀でも斬れていれば、こうはならなかっただろう。

 

「はぁ~、どうしてあの時に凝を怠っちゃったかなぁ。ヒソカのバンジーガムがやっかいだって知ってたはずなのになー」

 

 脳裏にヒソカとの戦闘を思い出す。

 掴まれた不意打ち。空振る斬撃。一撃でアバラにヒビを入れる蹴り。

 いつの間にか付けられていたバンジーガム。余りにも圧倒的なボロ負け。

 

「てか原作でもみんな言ってたじゃん『凝を怠るな』って。なんで怠るどころかド忘れしてるの? 馬鹿すぎるでしょ」

 

 一番大きなミスはやはり「凝」を怠ったことだろう。

 自身の目にオーラを集め敵のオーラを見抜く常套手段。念戦闘の基本である。

 これがしっかり出来ていれば、少なくともバンジーガムを付けたままジャンプするなんて愚行は犯さなかった。

 

「でも私はこんな基本さえ出来てなかった。悔しい悔しい悔しい~~~!!!」

 

 私は悔しさと恥ずかしさで地団駄を踏んだ。

 まるでモ◯ハンで一人で三乙しちゃった時のような恥ずかしさだ。

 ごめんなさい、からの切断不可避。恐らくフレは消えてしまうだろう。

 

「やっぱ知識と実践は違うなぁ。ハハハ、次は気をつけなきゃ」

 

 当たり前だが漫画として読むのと、現実として体験するのは全く違う。

 私はようやくその事を心から理解できた。

 

「まぁそれはそれとして初戦がヒソカはないでしょ」

 

 頭の中で最後に見たヒソカを思い浮かべる。

 意外とイケメンな顔。限界まで吊り上がった頬。

 この世の狂気を煮詰めたような禍々しさに、何もかも飲み込む深海のような暗いオーラ。

 

 私から見てそれは余りにも――美しかった。

 

「殺人鬼のオーラはこうあるべし、って感じ? 私のあんなオーラがほしーーい!!!」

 

 転生して念を覚えて、それで強くなったと思っていた。

 でも違った。私はまだ全然弱いままだった。

 前世で父親に斬り殺されてから何も成長していない。なんて思い上がっていたのだろう。

 

「それでもヒソカは私を殺さなかった。それってつまり私の愛(人斬り願望)を認めたということだよね? なら後はこの愛を届かせるだけ。問題はどうやるかだけど……修行するっきゃない」

 

 最初は、ただ斬りたかった……。

 人を斬れば満足できると思っていた。

 でも違う。それだけではダメなのだ。

 

 なぜなら世界は何時だって弱肉強食。

 自我を通すには、それに応じた力がいる。

 心を満たすには勝ち取らなければならない。

 趣向を満たすには屈服させなければならない。

 自分を守れない人間に真の自由(性癖)は訪れない。

 

 肉体、オーラ、技術。全てを鍛えるべし。

 そうでなければ人斬りとして生きるしかない私はすぐに捕まるか、あるいはあっさり死んでしまうだろう。人斬り道とはそれほどまでに苦難の道なのだ。

 

「よし、これで反省終わり!! 待っててねヒソカ。私は必ずやり遂げてみせるから」

 

 おおヒソカ。私に現実を告げた君よ。

 

 どうか安心してほしい。

 

 私は必ず貴方を斬りに行くから。

 

 あの告白に嘘なんて一つもないのだから。

 

 ああ私の先を歩む狂気の殺人鬼よ。

 

 どうか楽しみにしてほしい。

 

 いつか必ず貴方に()を届けるから。

 

 それが私の望み。この世界で得た目的。

 

 私は貴方という存在に心を奪われた。

 

「この気持ち――私は貴方を斬り裂きたい(まさしく愛だ)!!!」

 

 最後に渾身の力で麗斬刀を振り下ろす。

 その切っ先は――もうブレていなかった。

 

 

 

 ★★★

 

 

 

「さて、これからは将来の事を考えよう」

 

 ひとまず感情に区切りがついた私は部屋に戻った。

 ベッドの上で正座し、ペットボトルの水を一飲み。

 先の戦闘を踏まえ、これからやるべき事・やりたい事をリストアップする。

 

 ・剣術の修行

 ・筋力アップ

 ・オーラ量を増やす

 ・オーラの攻防力移動を早く

 ・系統別の修行

 ・対バンジーガム戦術の構築

 ・凝の習慣化

 ・起きながら寝る

 ・辻斬り

 ・人以外も斬ってみたい

 ・戦闘経験アップ

 ・ナンパ

 ・お金稼ぎ

 ・おしゃれ

 ・Hライセンスの取得

 ・解剖学の勉強

 ・生物学の勉強

 ・H文字の勉強

 ・神字の勉強

 ・原作の聖地巡り

 ・切り札の開発

 

「ぱっと思いついたのはこんな所かな? ToDoリストがギチギチになりそう」

 

 やることが、やることが多い!!

 

「一応簡単にまとめると……」

 

 ・剣術と念の修行は最優先

 ・肉体の強化も同時にやる

 ・お金稼ぎはナンパと辻斬りと寄付募で

 ・残りは空いた時間に

 ・H試験は原作の年に参加

 ・聖地巡りは原作開始後に

 

「こんな感じ? でも原作開始まで約2年しかないんだよなぁ。休んでる暇はなさそう」

 

 現在は1996年の12月。

 原作が1999年の1月だったから、実質あと2年しかない。

 逆に原作開始前に2年間修行できる、とも言えるが。

 

「できれば最終試験あたりでヒソカと斬り合いたい。そうすれば邪魔は入らない。だって立ち会い人がネテロ会長だし。素敵じゃん」

 

 最強の能力者の元で想い人へ愛を届けるのだ。

 もし死んだとしても気持ちよく死ねそう。いや死ぬつもりは毛頭ないが。

 

「あとは切り札が必要かな。自己バフ&自己回復のみだと格上相手がどうしようもない。いっそ除念能力でも作るとか?」

 

 自己バフ&自己回復はどんな状況でも腐らない能力だ。

 でもそれだけでは足りない。使うならもうひと工夫必要。

 

 なんせ具現化系は強化系を6割の精度でしか使えない。

 仮に赤泡でオーラを3割増やしたとしても(100+30)*0.6で78%分だ。

 100%強化出来る強化系、80%強化できる変化・放出に負ける。

 たたでさえ女の身で筋肉量は不利なのだ。強化まで負けていたらお話にならない。

 

 なので最低でも赤泡の出力は7割まで増やす必要がある。

 これなら(100+70)*0.6で102%分になる。

 ちょっとキツそうだけどやるしかないか。

 

 もしくは除念能力を作る。

 原作では念を食べる具現化系の念獣が複数登場していた。

 アベンガネとか第一王子の私兵とか。なので頑張れば出来るはず。

 全身をバンジーガムでグルグルされた時に必要だ。オーラを斬りやすくなるとかそういうのでも可。

 

「後はオーラを溜め込んだり仕切り直せる能力とか欲しい。私って友達とかいないし。ぶっちゃけ気絶=死だからなぁ」

 

 原作に出てきた能力を思い出す。

 オーラを貸し借りしてたナックルは具現化系。

 オーラを吸い取ってたクラピカも具現化系だ。

 ならばオーラを溜め込む機能だって作れるはず。若干特質系っぽい気もするが……。

 

「候補だけなら沢山あるんだけどなぁ。原作ってサンプルがあるから」

 

 しかし実際に形にするとなると難しい。

 まぁ能力についてはゆっくり考えていけばいいだろう。

 時間はあと2年もあるのだから。制約と誓約で何とかなーれ。

 

「こんな所かな? じゃあそろそろお金も無くなるしATMから寄付を貰いに行こう」

 

 ATMさんはお金持ちだ。さらに街中の至るところにいる。

 鉄パイプを持って寄付を頼めば、気持ちよくお金を恵んでくれるだろう。

 多節棍の槍を使う赤い魔法少女もやっている由緒正しい金策である。

 

 仮に一拍2万円のホテルに移るとして2年730日で1460万J。

 H試験会場のサブン市までの密航代が予想2~300万ぐらい。

 あとは食費雑費が2年800万だとして、合計で2500万前後。

 15台もATMさんを尋ねれば十分に足りるだろう。

 

「待っててねヒソカ。強くなって必ず会いに行くから」

 

 天所の染みを見あげながら心に誓う。

 次に会うのは恐らく2年後。必ず強くなって見せると。

 

 私は宿を出て覆面と鉄パイプを入手すると、そのまま夜の雑踏に紛れた……。




勢いで書いてたので一旦ココで区切りに。
以降は未定になります。
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