ダンジョンにドミナントがいるのは間違っているだろうか 作:巡理愛
第13話:剣姫の鍛錬と強者たちの邂逅
先日のファイアボルトの撃ち過ぎてのマインドダウンからの膝枕でのうぶな帰還を経て、ベルは勇気を振り絞り、早朝の都市の広場でアイズ・ヴァレンシュタインに「剣を教えてください」と直談判する。
アイズは内心で(ミノタウロスの時のことを謝りたい、力になりたい)と思いつつも、極度の口下手ゆえにコクコクと無言で頷き、最後は一言だけ付け加えて二人の秘密の早朝特訓がスタートした。場所はオラリオのとある方角の市壁の上である。
「来たんだね…」
「はい!今日からよろしくお願いします!」
「うん、昨日から君にどう教えたらいいか、考えてたんだけど。私には上手く教えられそうになくてやっぱり戦うしかないかなと思った…」
ベルのためにアレコレ考え続けて、実はあまり寝れてなかったりするアイズ。頭の中のチビアイズはうさぎへの人参探し、かくれんぼ、鬼ごっこ?といろいろ脳内で提案をなされていた。結局、脳内での案は全て却下となった。
「分かりました。ヴァレンシュタインさん!」
「…アイズでいいよ」
「そ、それじゃあ、はい、アイズさん!」
「…うん」
ベルのアイズ呼びに少し仲良くなれたと人付き合いに疎いアイズは思った。ベルの方もまた心の中で歓喜していた。
「普段はどんな武器使ってるの?」
アイズは愛剣『デスペレート』を抜き、それを壁に立て掛けた。そこから腰の鞘を取り構えようとしていた。
「最初はナイフ使ってたんですけど、最近は片手剣で良いのかな。こちらとこちらを」
ベルはアイズが鞘を持ちながらなのを、模擬剣の代わりなのかなと思いつつ、根本からの刀身が漆黒にして途中から切っ先にかけて深紅の色をした片手剣『ヘスティアショートソード』と同じく片手剣の『バゼラート』を抜いて見せた。
「片手剣なんだね。二刀流?私のよりは長さは少し短いぐらいだね」
「実はまだ二刀流には慣れてなくて」
ベルはそう言いつつ、ヘスティアショートソードの方を選んで構える。
「君の方は実剣で大丈夫だから。そろそろ始めよっか」
「はい!」
二人はそれぞれの獲物を構えて見合った。そして、どちらも同じタイミングで動く。ベルは通常のしかも駆け出しのレベル1ではあり得ない神速で肉薄するが、アイズに即対応されたが、しかし、アイズは驚愕のあまりレベル6の感覚のまま動くアイズの容赦のない
「あっ」
「えっ」
アイズもベルも一言走ったのみで、最初の戦いには決着が着いた。鞘が脳天直撃によりベル気絶……。
オロオロとしたアイズはとりあえず、回復を早める?という考えの元で膝枕をした。そして、『膝枕リベンジ』でもあった。頭の中のチビアイズもリベンジの横断幕を掲げている。
───
ベルは暫くすると目覚めた。既視感。
「う、うぁあああーー!」
顔を真っ赤にして慌てて飛び起きるベルにアイズは少ししょんぼりしながら呟いた。
「ごめんね。私の膝枕嫌だったかな」
「ち、違います。既視感でお、驚いて寧ろ嬉しく…」
ベルはしょんぼりするアイズに対して、言い訳をするように身振り足取りブンブンさせながら慌てて答える。
「そうなんだ…。嬉しいんだね。よかった」
嬉しそうに微笑むアイズにベルは顔から湯気が出るほど赤くなった。
(か、可愛すぎる。アイズさんはもしかして天然!?)と熱くなる体と思考の思春期の少年ベルは思った。
「続けられそう?それとももう少し休む?」
アイズは膝をポンポンとしながらベルに二択を迫る。ベルは脳内での激しい葛藤の末、『▷戦う』の脳内コマンド選択をした。
ベルはこのあとも原作通り限界を超えて気絶し、アイズによる『膝枕ハプニング・エンドレスリピート』が発生することになった初日であった。
訓練2日目。
ベルは何度も地面に転がされ、泥にまみれる。
だが、【敏捷:S】に達している少年の驚異的な食い下がりと、クライヴ直伝の無駄のない重心移動に、アイズは剣を交えるたびに内心で(……やっぱり、この子は凄い……!)と強い驚愕を覚えていた。
それでも気絶すれば膝枕が待っている。特訓であった。
「グワバァ」
「あっ」
膝枕。そして、目覚める。
「ジャンッ」
「また…」
膝枕。そして、目覚める。
「ケンッ」
(剣…?)
膝枕。そして、目覚め。
「しょぅ…」
「膝枕できるね」
2日目もなんやかんやで膝枕であった。そして、アイズはサラサラなベルの髪を空いたり、勇気を出してほっぺたをつついてみたりと膝枕を楽しむ。癖になっていた。
脳内のチビアイズもモフモフ白いうさぎを捕まえて、嬉しそうに撫でて愛でていた。
───
3日目の朝はベルはいつもよりは少し遅れてくることになった。
「森の妖精に追いかけられて…」
息も絶え絶えながらベルは一言そう答えるだけに留めた。
その妖精は
3日目にしてベルは初めて、特訓中の負傷と言える怪我を追ってしまった。日に日に慣れてきたのか、アイズに食い付いてくるベルに力加減を間違えた一撃を加えてしまったのだ。当たった所が悪く、ベルは肩を担いで貰いながら、本日の特訓はいつもより早目に終わったので、2人で朝活なるモーニングじゃが丸くんを食べにいこうということになった。
そんな二人を影からこっそりと覗く者がいた。
その者はアイズと同じ『ロキファミリア』所属のレベル3の魔導士であり、名をレフィーヤ・ウィリディスといった。
いつもはとても明るく可愛らしく
しかし、今の彼女はいつもの彼女ではなく顔色は青ざめ、絶望の表情を浮かべていた。
今朝の早朝、アイズが最近朝早くに鍛錬ではなく何処かに出かけているのを偶然見つけた彼女はとても気になり後を着けていたのだが、途中で見失い途方に暮れていた。そんな時に純朴そうな少年と曲がり角で衝突。
まるで運命の出会いのような遭遇であった。その少年の容姿は白髪に深紅の眼をしたうさぎのような少年であった。
この近くで金髪金眼の絶世の美少女を見なかったと訪ねると彼は一瞬表情を強張らせたと思うと見てないですと答えた。
彼は嘘をつくのが苦手なので、嘘はついていなかった。
しかし、女の勘というものは恐ろしいもので彼女は彼を黒と判断した。
そこからの結局怪しい輩も見失い、更に途方に暮れていた時にアイズとベルが一緒に歩く姿を目撃したのだ。
二人は肩を寄せ合い、なんだか楽しげな表情で歩いていった。二人は甘々でうぶなそんな雰囲気を纏っていた。
(エエエエエエエエエエエエエ!!!!????)
彼女は疲れ果てていたのだ。
その後、じゃが丸くんの女神がいるお店が一番美味しいというアイズのオススメもあり、その店に着くとまたもや騒動が発生するのだが、とりあえず、アイズ注文のモーニング限定『じゃが丸くんあんバター味』と甘いものが苦手なベルは『じゃが丸くんたまごチーズベーコンサンド』を頼みその美味しさにとても良い舌鼓を打ったのだった。
───
早朝の特訓を終えた日中、ヘスティア・ファミリアは、新しく加わったサポーターのリリルカ・アーデ、そしてマスコット兼護衛である魔獣『リズン』を交えた、初めての共同ダンジョン探索を行っていた。
クライヴの冷徹で的確な戦術指揮。敏捷Sの神速を爆発させて上層の怪物を蹂躙するベル。そして、その動きを完璧に予測して魔石やドロップアイテムを素早く回収する、リリのプロとしてのサポーターワーク。
これまでの孤独な冒険とは違い、完璧に機能し始めたファミリアの『組織』としての強さと、家族の温かさがそこにはあった。衣服のポケットからチョロチョロと現れるリズンは、ベルが戦いの中で『ファイアボルト』の魔力を練るたびに、その小さな角をパチパチと嬉しそうに共鳴させて喜んでいた。
「リリ、このキモかわいいリズンちゃんのこと、すっかりお気に入りになりました」と、リリも笑顔を見せ、ファミリアの絆は日を追うごとに深まっていく。
───
オラリオの神々たちにすら気取られぬダンジョンの中層において、もう一つの『試練』が最悪の精度で練り上げられていた。
美の女神フレイヤの「ベルをさらに輝かせる」という神意を受け、最高戦力である【猛者】オッタルが動いていたのだ。オッタルは中層から捕獲してきた“良さそうな個体”の片角のミノタウロスに対し、圧倒的な力で立ち塞がりながら、戦いの「
主神の望みを叶えるため、一匹の怪物を『ベルを壊さず、しかし限界まで追い詰めるための至高の壁』へと調教するオッタルの無骨な忠誠。
今作のベルの敏捷Sという規格外の速度に合わせ、オッタルはこのミノタウロスの肩へ無造作に「2本目の大剣」を取り付け、さらなる絶望の戦闘技術――大剣二刀流をその肉体に叩き込んでいく。後に恐るべき因果となる怪物が、暗闇の中で産声を上げようとしていた。
───
数日後の夜。18階層の『クロノスの石塔』の状態をおぼろげに確認するため、単身でダンジョン中層を下っていたクライヴは、その暗い通路の先で、大剣を背嚢に連れたオラリオ最強の男――オッタルと正面から遭遇した。
「貴公のような強者が何故こんな階層にいる?次はダンジョンで闇討ちか?」
「…いや、異邦の戦士よ。毛頭そのようなことはない」
通路に漂う、圧倒的な二つの覇気。
大気がピリピリと張り詰める中、クライヴはオッタルの連れているミノタウロスの異様な気配、そしてその肉体に刻まれた調教の痕跡を見て、これがフレイヤからベルへ贈られる『理不尽な試練』であることを見抜く。
しかし、世界を救った男はインヴィクタスを抜かなかった。
「――邪魔はしないさ。俺はあいつを信じている。貴公も、その試練の『調整』は怠らないのだろう?」
少年の意志を全肯定し、その成長を信じ切るクライヴの静かな言葉。
オッタルはその器の大きさと、ファルナの枠に囚われない異世界の戦士の風格に無骨な感銘を受け、静かに黒き大剣の柄から手を離した。
「……ああ。機会があれば、また刃を交えよう、異邦の戦士よ」
二人の最強が、お互いへの確かなリスペクトを胸に、闇の中ですれ違う。少年にとっての酷薄で、しかし最高に輝かしい運命の舞台――その絶対的な導線が整い、幕が下りる。
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※これより下はオマケとなります。本編の雰囲気に合わないのと長くなるのでカットしました。
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カットその①
ロキファミリアのホーム『黄昏の館』にて。
「ねぇ、
「なんとかと言われても、難しいよ」
ティオネとティオナが食堂の扉の隙間の前で、中に入るある人物を覗き込みながらヒソヒソと話していた。そのある人物とは──。
「レフィーヤ…」
アイズが心配そうに名前を呟いた。
件のレフィーヤはそれはもう普段の明るい元気なエルフというのは影も形もなく。下を向いて、その周りは闇の
こんな時はどうすればと必死に考えて、やはり声をかけて事情を聞いてみるしかないと思い立った。
意を決して、扉を開けてレフィーヤの元に向かうアイズ。
「レフィーヤ…。おはよう。元気ないね?大丈夫?」
それまで石化の状態異常があるか分からないがそんな状態の如く、全く動かないレフィーヤがそれまで面倒見が良い団員たちが一応声をかけてもやはり動かなかった彼女がピクッと反応を示し動いた。
「…ア、…アイズさん」
全てが手遅れそんな絶望の表情を浮かべながら、レフィーヤはアイズを見て名前を呟いた。
「とりあえず、話し聞くから一緒に行こう」
アイズは勇気を振り絞ってこんな感じだきっとと思いながらレフィーヤを食堂から連れ出す。
その行動を観察していたヒュリテ姉妹や他の者たちはなんか人付き合いが下手なアイズが上手くやってると思いながら、二人きりにしてあげようとそっとしておく事にした。
「それでレフィーヤ何かあったの?」
人気の無さそうな場所まで彼女を連れて来たアイズは未だ下を向いて深刻な雰囲気を漂わせるレフィーヤに声をかけた。
「………私、今日は早朝からホームを出て金髪の女性の後を付けていたんです。その方はアイズさんにそっくりでアイズさんには瓜二つのお姉さんや妹さんは居ますか?」
「…えっ?い、居ないよ?」
明らかにまさかと動揺を走らすアイズ。未だ下を向いており表情を伺いしれないレフィーヤ。
「じゃあ、今日見た人は誰だったんでしょう。市壁の辺りで見失って…」
「………」
不味いと思いながら何も答えられないアイズ。
「そうしたらですね。白髪のヒューマンの少年と私よそ見していてぶつかってしまって。優しい純朴そうな方で…その方に金髪金眼の方を見なかったかと聞いたら態度が一瞬変だったので怪しいなって思って。でも、その方も見失ってしまって…」
「そ、そうなんだ…」
少し安心?しかけるアイズにレフィーヤはぶつけるように問いかけた。
「しばらく途方に暮れてるとですね。アイズさんそっくりな方とそのヒューマンとが肩を寄せ合って歩いてるのを…」
「レ、レフィーヤそれは、あのね?」
「どういう事なんですかアイズさん!!まさか秘密の何かがあるんですか。それともあのヒューマンに脅されて!」
顔を上げ始めたレフィーヤは言葉に熱がこもり始める。そんなレフィーヤの言葉にアイズもまたしっかりとある自分の中の大事な部分のために言葉に出した。
「違うよ。そんなことはなくて…ベルはそんな子じゃ…」
「ベルって言うんですね。あのヒューマン!じゃあどういった関係なんですか!!」
「その、それは…」
アイズ的には他派閥の所属のベルに特訓をしているのは派閥幹部として不味いと感じて言い淀む。
「言えないんですね。分かりました。この事をロキや団長たちに」
「それはダメ!…お願いレフィーヤ。あと数日で良いから秘密にしてほしい」
アイズは切実な表情でお願いした。その表情からレフィーヤはより表情が険しくなる。そして、
「じゃあ、どういう関係か教えてくださいアイズさん…」
「…ベルとは膝枕で、いろいろ特訓してて、心地よくて。痛い思いもあったりだけど、頑張ってて…」
焦るアイズは言葉の文節が既に伴っていなかった。
「ア、アイズさん。まさか…そんな…」
アイズはたどたどしく剣の特訓を説明しているつもりだったが、レフィーヤには別のことを連想させ、目尻に涙が溜まり始めたかと思うと
「う、うぅ。ぁあああーーん!!」
自室に帰ったレフィーヤはベッドに包まりその日の予定を全てキャンセルしてアイズとベルという少年の二人での共同作業の内容を妄想し続けた。彼女は今、思春期の俗に言う『エロフ』だった。
後日誤解は解けて、レフィーヤもまた特訓をしてほしいと頼み込んだがまるでアイズの特訓について行けずヘコむ事になる。全ての予定をキャンセルした弊害からかこれまた後日、師匠のリヴェリアにバレて、『破廉恥』だと思いっきり拳骨をくらい、全てはベルとか言うヒューマンのせいだと逆恨みをするのだった。
───
カットその②
ベルはアイズに連れられて、じゃが丸くんの女神がいるという露店に足を運んでいた。
先ほどまでは肩を借りていたが、流石にひと目の多いところでは不味いといまは二人連れ立って歩いている。
「ここだよ。ベル」
「いらっしゃいませ〜」
アイズの案内で到着すると聞き覚えのある声が出迎えてくれた。
「あっ…」
「うん?…!!?ベル君どうして朝から、ヴァレン某君!!何故二人でボクの所に!!?」
ベルは内心不味いと思いながら、笑顔が引きつる。
「あの…注文いいですか?」
「君はマイペースか!天然か!!」
特に気にすることなく噂のモーニング限定メニュー早く頼みたいとワクワクしていた。早朝からじゃが丸くんを食べに来るはなく、初めて食べる味が楽しみでしょうがなかった。
「やいやい、ヴァレン某君。ウチの大事なベル君を早朝から連れ回してどういう了見だい。場合よってはロキに」
「あの…神様黙っててごめんなさい。実は…」
怒髪天を突くの如く、怒り始めたヘスティアにベルが正直に理由を話そうとした時にアイズがフォローするようにある事を言った。
「ベルは神様の所の眷族だったんですね。ベルとは最近(特訓で)付き合うようになって…。今日は…」
「どういう事だいベル君付き合うだとぉ!!天界の
ヘスティアはヒートアップしていく。そんなヘスティアにベルは何とか分かってもらおうと言い繕う。
「ち、違いますよ。神様。アイズさんには剣の特訓をしてもらってるんです!」
「嘘は言ってないみたいだね。でも、ダメだ。ヴァレン某君とは今後一切の交流を禁ずる。主神命令だ!!」
「そ、そんな〜!!」
ベルは横暴な主神命令に悲しみが出てくる。
「…ヘスティア様、ベルとは上手くやっていけると思ってるのでどうか認めて下さい」
「ア、アイズさんそれは火に油を注ぐような発言!」
普段言葉が少ないアイズもベルとの特訓が日に日に楽しみであり、譲れない想いからの発言であった。
「分かった。そこまで言うんなら、明日はバイト休んでどんな特訓してるか見させて貰うよ!!」
ヘスティアは条件付きで、認める旨で進める。本当は嫌で仕方ないが、ベルが強くなりたいと言った
「分かりました」
「僕も神様に認めれるように頑張ります!」
アイズもベルもヘスティアに認めてもらうために気合充分だった。
「ヘスティアちゃん、いつまでお客さん待たせてるんだい。明日の休み希望なしにするよ」
「それは困る!お客様2名さまですね!ご注文は何にしましょう?」
奥から聞こえた店主の声に直ぐにヘスティアは切り替えて営業スマイルで注文を取る。
そして、アイズとベルは初めてのモーニング限定メニューのじゃが丸くんにありつけてとても満足であった。
次の日の特訓はヘスティアが騒ぐがそれでも認めてくれる。やはり、彼女は慈愛の神様でもあるのだ。
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これにてオマケは終わりです!