ダンジョンにドミナントがいるのは間違っているだろうか   作:巡理愛

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第17話:岩窟の迷宮と烈火の斬閃

 

「――っ、リリ、ヴェルフ! 大丈夫!?」

 

「はい、リリは平気です! ですが……あの怪物進呈(パス・パレード)は悪質すぎます!」

 

ダンジョン中層13階層から始まる『岩窟の迷宮』。

極東風の出で立ちをした他派閥が通り過ぎたあと。それが怪物進呈と気付いた時には既に遅く、その怪物進呈によって、それまで順調だったパーティの流れは崩れ去り、運悪くダンジョンギミックの崩落が多発により、さらに下の層の奈落へと落下。

岩石によるルート封鎖もあり強制的に隔離されてしまったベル、リリ、ヴェルフの3人。物資のない決死の遭難サバイバルが幕を開けていた。

今作のベルは、神様からステイタスを更新してもらい、既に【敏捷:C】に達している。

レベル1時代の限界突破の器も相まって、襲いかかるアルミラージが投げてくるネイチャーウェポンのハンドアックスを、目にも留まらぬ速度で回避していく。

腰の『ヘスティア・ショートソード』と、新調された黒と赤の重厚な短刀『灼牛(シャクウシ)』。

その二振りを無駄のない神速の二刀流で構え、手数で速攻を仕掛けてアルミラージの群れを次々と二刀流を慣らすように切り伏せていくベル。

しかし、その代償としてリリの生命線であった大型バックパックが、激戦の崩落に巻き込まれて奈落の底へと紛失してしまっていた。大剣をリリに預けることが来なくなり、ベルは『ヘスティアショートソード』、短刀『灼牛』、そして背中に背負う猛牛の遺産たる長大な大剣『フレイム・オックス』という【3つの武装】の総重量と、戦闘中のスイッチングの負荷を、すべて自分の肉体だけで背負うことになった。

疲弊していくリリの肩を叩き、「大丈夫、生きて帰ろう!」と励ますベルだったが、その少年の肉体にも、3つの武器の重税が確実に疲労として蓄積されていた。

 

───

 

13階層の入り口が遥か上。現在三人は15階層から16階層付近にいると考えていた。

三人の話し合いによってさらに下の層であり、安全地帯(セーフティポイント)である『迷宮の楽園(アンダーリゾート)』を目指すべく見えぬ閉ざされた通路の奥、彼らを最悪の絶望が包囲した。

地獄の番犬『ヘルハウンド』の数十匹に及ぶ大群。ヘルハウンドは『放火魔』とも呼ばれ、冒険者の間でも厄介な敵と認識されていた。

 

「グルルャァァァッ!」

 

集団からの先手必勝の火炎放射をしかけてきた一匹はヴェルフの魔法で自爆に追い込んでいた。

 

「【燃え尽きろ外法の業──】」

 

「【ウィル・オ・ウィスプ】」

 

だが、ヴェルフも何度もこの魔法の行使により、息も荒くマインドが深刻に低下している状態であった。

 

「ヴェルフ、無理せずにだよ!!」

 

「……大丈夫だ。まだ、もうちぃとはいける…」

 

ベルは明らかに無理をしていて、マインドダウン寸前のヴェルフを心配した。後方のリリも先ほどから明らかに口数も少なく疲弊している。

そんな状態のパーティへダンジョンは。モンスターたちは手心を加えてくれるはずもなく、容赦なく襲いかかる。

ヴェルフやリリの状態を考えるならば時間をかける訳にはいかない。そう考えたベルは相手の得意を利用しようと思いつく。

敢えて、距離を取り火炎放射を誘い込んだ。数匹が誘いに乗り火炎放射を放ってくる。それを見計らってヘスティアショートソードを抜き放つ。

そして剣で火炎を遮るように立ち回る。そこから火属性との親和性とスキル『英雄昇火』の効果を利用して、最小ダメージで火属性の魔力を吸収しショートソードを灼熱化させた。

 

そこからベルはまず、手慣れたヘスティア・ショートソードを用いて神速のステップでヒット&アウェイを繰り返しながら火炎の斬撃にて各個撃破していく。

しかし、数匹を斬り伏せたところで、灼熱化も終わり、ヘルハウンドの群れもまた噛みつきの近接戦へと移行。

すかさずベルはショートソードを鞘へと戻し、背中から重量級の大剣『フレイム・オックス』を力任せに引き抜いた。

 

「――はあぁぁぁッ!」

 

ベルは大剣の扱いはまだ下手である。

しかし、敏捷Cの超スピードを乗せた、ただ力任せの「なぎ倒し」の一閃。

バキバキと凄まじい骨砕の音を立てて、襲いかかってきた複数体のヘルハウンドをまとめて一撃で壁際へと殴り飛ばし、圧殺する。

その直後、岩壁の影に隠れて機を窺っていた個体が、死角からベルの首元へ向けて不意打ちの奇襲を仕掛けてきた。

 

「ベルっ! 後ろだ!」

 

「ベル様!」

 

ヴェルフとリリの叫び。

ベルは体勢を崩して地面へと倒れ込みながらも、即座に左手で『灼牛』を逆手に引き抜き、迫る怪物の喉元へと、泥臭く真っ直ぐに突き刺してその息の根を止めた。

レベル1での死闘を越えた少年の、凄まじい臨戦態勢。

数十匹に及ぶ中層の地獄の番犬の群れを、ベルはただ一人で、完全に全滅させてみせたのだ。

 

───

 

だが、中層の悪意は終わらない。

戦闘の騒音に引き寄せられ、通路の奥から現れたのは、この階層最強の怪物――ミノタウロスの三体だった。

 

「――リリ、ヴェルフ、下がってて!」

 

本来なら中層の難敵。

だが、今のベルには、あの決戦を越えた武器と、新しいスキルがある。ベルはヘスティア・ショートソードを構え、魂の奥底の『英雄昇火(アルゴノゥト)』を起動させた。普段の戦闘であれば、ショートソードの持つ炎龍の加護(火属性極限親和)だけで中層の怪物など一撃の元に切り伏せられる。だからこそ、ベルは魔法ではなく、自身の『肉体(脚力)』に向けて、数秒のチャージを流し込んだ。

 

(クライヴさんの、あのフェニックスシフトのように……っ!)

 

リンリンリン…と小鈴(チャイム)のようなチャージ音が響く。

少年の脚力に限界突破の熱量が溜まった瞬間、ベルは地を爆ぜさせた。

魔法の火の粉は出なくとも、擬似『フェニックスシフト』の如き、目にも留まらぬ一瞬の超高速突進。

ズバァァァンッッ!!!ミノタウロスの巨体が反応する暇すら与えなかった。すれ違いざまに放たれた、ヘスティア・ショートソードの一閃がミノタウロス三体の魔石を正確に両断し、瞬殺。

さらに、囲まれ続けた疲弊の最中、ヴェルフが敵の魔力を暴発させる魔法【ウィル・オ・ウィスプ】を連続使用したことで深刻なマインドダウンを起こして倒れ込んでしまう。

 

「二人とも、僕の背中に捕まって!」

 

ベルはレベル1時代の【敏捷SSS】の驚異的な器、そして新調された『灼牛』と鎧の軽さを活かし、気絶したヴェルフと疲弊したリリの二人を同時にその背へと背負い込んだ。

そして、遂にたどり着いた17階層。『嘆きの大壁』

ここは広大な空間(ルーム)構造となっており、不気味なほどモンスターもおらず、この階層に言われる。巨人の姿をした階層主『ゴライアス』

その存在もまた姿が見当たらなかった。

こんな時は必ず何かがあるのでは?とベルは不安と緊張を感じながらも抱えるリリとヴェルフを気にかけながら、慎重に歩みを進めた。

空間の半分を超える辺りで何か物音が聞こえた気がしたベルは思わず振り返ってしまうが、先ほどまで戦ったヘルハウンドやミノタウロス、今回遭遇しなかったが、ソードスタックやライガーファングなどモンスターは見当たらなかった。

気のせいかもと前を向こうとした時にビキリと明確に何かがひび割れる音が聞こえた。

 

(嘘だ…この音はまさか…)

 

ベルの全身から警鐘が鳴る。一刻も早くこの階層を抜けなくてはと。疲労困憊のベルはリリとヴェルフの負担になると分かりつつも進行速度を上げていった。

だが、どんどんひび割れる音が大きく広くなっていく。

ベルから見て左側面の壁が明らかに大きなひび割れが今も広がっていった。

 

(不味い、不味い、不味い…)

 

ベルは確信した。

今、正にかの階層の主が産まれようとしてるのだと。さらに速度をあげようとするベルに遂に壁が崩れ始めた。

 

「走れ、走れ、走れえぇぇええええ!!」

 

ベルは自分に言い聞かせるように叫ぶ。

そして、遂に階層主の腕が産まれて早々にベルたちを捕らえようと手を伸ばしてきた。

ベルはこのままでは捕まると考えが過る。

 

(捕まったら終わる。僕もリリもヴェルフも助からない!!!)

 

ベルはマインドもかなりの消費を感じながらもリリとヴェルフを失いたくない一心で、思考をフル回転させる。

リリとヴェルフを失う──

 

「そんなことはさせない!!!」

 

遂に姿を現す階層主ゴライアスが産まれたことを誇示するように咆哮を上げた。

目の前にいる三人が手始めに仕留めるべき敵と定めた巨人は拳を握り始めた。捕まらないなら力で潰すのみである。

17階層の階層主の脅威が迫る中、ベルはクライヴのあの圧倒的な走りを脳裏に描く。

 

「僕は…あの人たちに追いつきたい!!」

 

そして、スキル『英雄昇火』を発動させ脚力へのチャージを絶え間なく行いながら、原作の走りのスピードを遥かに凌駕する圧倒的な超スピードで、ゴライアスの拳をかいくぐり、中層の地獄を縦横無尽に駆け抜けていった。

そして――。

 

「……あ、……れ……」

 

命からがら18階層『迷宮の楽園』の安全地帯へと滑り込んだ瞬間、ベルのスタミナもマインドも完全に底を突き、二人の仲間を抱えたまま、青々とした草地へと仰向けに倒れ込んだ。急速に閉じていく視界。その朦朧とする意識のフェードアウトの間際、ベルの耳に、聞き馴染みのある『風』の音と、あまりにも優しい鈴の音のような声が響いた。

 

「――ベル……? ベル、しっかりして……っ!」

 

アイズ・ヴァレンシュタイン。

ポイズンウェルミスの猛毒の足止めにより、ちょうど18階層のリヴェラ周辺に野営地を張っていたロキ・ファミリアの本隊が、倒れ込んできた彼らを発見したのだ。

 

「リヴェリア、治癒魔法を! 早く!」

 

動揺しながらベルの身体を優しく抱きかかえるアイズの温もり。

 

「……よかった、ベル。……安心してね、野営地のテントの奥には……クライヴさんも、看病されて寝ているから……ね……」

 

アイズはそう告げ、ベルたちは完全に意識を失った。

裏でのクライヴの激闘、そして表でのベルたちの遭難サバイバル。二つのタイムラインが、この18階層の楽園の地にて、ついに劇的な合流を果たすのだった。

 




【名前】:ベル・クラネル
 
【レベル】:2

【所属】:ヘスティア・ファミリア

【基礎アビリティ】

力:I(0) → E(210)

耐久:I(0) → F(180)

器用:I(0) → E(225)

敏捷:I(0) → C(680)

(※レベル1時代のSSSの器があるため、既に圧倒的超スピード)

魔力:D(0) → D(535)

【発展アビリティ】『幸運』:H


【魔法】『ファイアボルト』


【スキル】『炎純一途(リアリス・フレーゼ)』

     『英雄昇火(アルゴノゥト)』

 
【武具】 『ヘスティアショートソード』

     『フレイム・オックス』

     『灼牛』

 

     『兎鎧Mk2』

     『グリーンプロテクター』

     (原作のように破損せず。)

     『サラマンダーウール』
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