ダンジョンにドミナントがいるのは間違っているだろうか 作:巡理愛
アンケートは今話で終わります
イシュタル・ファミリアの居城、空中回廊。
満月の蒼白い光が降り注ぐ中、実質【レベル5相当】へと完全覚醒を果たしたベル・クラネルは、背中から長大な大剣『フレイム・オックス』を引き抜いた。
「アタイの美貌に傷をつけたなぁぁ! ぶっ殺してやる、クソウサギィィ!」
怪物フリュネ・ジャミールが、巨大な大斧を狂暴に振り下ろしてくる。
そのレベル5の最上位に位置する凶悪な怪力の一撃。だが、激しい衝撃が金属音を立てて響くたび、ベルの新しき発展アビリティ【意地】がその真価を発揮した。
打ち合う数を増すごとに、ベルの纏う防具の硬度は高まり、大剣に刻まれる傷も段々と浅くなっていく。ベルの肉体はダメージを力任せに捩じ伏せ、どれほど殴られようとも絶対に倒れない「不屈の戦士」と化してフリュネの前に仁王立ちし続けた。
「ハァアアア!!」
「なんで倒れねぇんだクソガキィ!!」
怯まぬ少年の前進にフリュネの顔が恐怖に歪む。
「春姫さんは僕が連れて行く!!」
「春姫はアタイたちの
「春姫さん道具だとか便利だとかファミリアを、家族を何だと思ってるんですか?僕はアナタを認められない!!」
「ほざくのはアタイに勝ってからにしろや!!ガキィ!!」
なおも斬り結び、耐えながらベルは【英雄昇火】のチャージを開始する。リンリンと小さな鈴の音が鳴り始めた。
「何かしようってのがバレバレなんだよ!!舐めんじゃないよぉ!!」
フリュネの攻撃がより苛烈になる。それでもベルは耐え続けた。耐える度に強くなっていく武具と肉体。泥臭くても、カッコよくなくてもこの戦いに勝つと深紅の眼は強い決意を宿していた。
中々倒れない、ベルにフリュネは大斧を大きく振り返り、ベルとの戦いでの一番の力技で迫った。そんな状況でもベルは落ち着き払い大剣を構えた。チャージが臨界を迎えようとしていた。
「いい加減!くたばれやぁ!!」
大振りに迫るフリュネの一撃にベルは命から伝授された大刀術の遠心力を乗せ、フリュネの大斧を強引にいなすと、極限まで【英雄昇火】をフルチャージした『フレイム・オックス』を構えて足元に僅かなファイアボルトを撃ち込み、爆ぜながら大きく踏み込みクライヴの『フェニックスシフト』を真似た動きで、飛び上がり大上段からの渾身の一撃を放った。それに合わせようとするフリュネの大斧ごと叩き込む。
ズバァァァンッッ!!!
「ハァアアアーーー!!」
「ゲァアアーーー!!」
凄まじい純金と蒼白の爆風と共に、汚い絶叫を上げたフリュネの巨体は空中回廊の防壁を突き破り、イシュタル・ホームの『場外』へと真っ逆さまに吹き飛ばされていった。
場外へと墜ちたフリュネは、そこで侵入してきたオラリオ最強のオッタルたちと遭遇し、フレイヤを侮辱したため一撃でボコボコにされて沈黙する。ベルの一撃が重すぎたためそんなに威勢はなかったが、フリュネ自身の『耐久』のパラメータが異常に高かったため、辛うじて意識だけは残っていた故の蹂躙を受けた。
───
離れた所で荒い息を整えているベルを見て、命も改めて奮起する
「ベル殿…拙者も今度こそ!!」
フリュネを排除したものの、儀式を止めるための『殺生石』の破壊へは至っておらず、リリと命の二人が最前線で命懸けの奮闘を続けていた。
命は再び対峙したレベル2の狂暴なアマゾネスのサミラと空中回廊の桟橋で激突。
「また来たのか侍様。リベンジマッチって奴だな。嫌いじゃないぜそういうの俺はよっ!!」
「参ります!!」
サミラの恐ろしい速度の拳打に臆することなく踏み込む命。先ほどの戦いの時のような迷いはない。ただ、春姫の願いに応えるためにここを突破するだけだ。
「さっきより動きがいいじゃん!いいぜ!!」
「ただ友の願いのため!突き進む!!」
サミラは戦い好き故に動きのキレが変わった命を褒め称える。
「熱いねぇ!そういうのも好きだぜ!!だが、勝てねぇとな!!」
「クッ、速い!!それに動きも独特!!」
アマゾネスの身体能力を活かした肉弾戦は、命にとっては苦戦を強いられた。命の刀剣術は型にはめた戦い。読めない動きは苦手であった。
サミラのしなる様な足撃が頬を掠めて、血が滴る。
傷が増えようが命もまた不屈の闘志で格上のサミラに挑む。
「まだまだーー!!」
「そりゃよ!!」
サミラのフェイントを踏まえた回し蹴りに命の刀は弾き飛ばされるがすぐさま下り、クナイの二刀流に切り替えた。様々な武術をタケミカヅチが教わっている命に取って、得物が変わろうが関係なく、スムーズに動きの切り替えが出来る。
「器用じゃんか。俺にはこれしかねぇから羨ましいぜ!!」
「得意不得意はありますが、ほぼ全ての武器を扱えますので!!」
より近接戦と移行した2人のた戦いは器用に扱うクナイによる刺突、防御がサミラを苦戦への徐々に傾けた。サミラも相手の独特なクナイ術に対応が遅れた。
そこで仕切り直しと後方に下がった途端。命が動いた。何かの玉を握り潰しながらサミラに投げたのだ。
「なっ、煙幕!!そんなのもできんのか!!」
視界不良の中で、命はサミラを正確に把握してクナイによる奇襲をかける。背後からの一撃に野生の勘で浅い傷でいなすが相手は二刀流。次は脇腹を刺される。それでも鍛えられた肉体による傷は深くはない。次は正面から無数の刺突が煙に紛れて飛んで来る。それも拳による乱打で振り切るがこちらも無傷とは行かなかった。
「チィ!こういうのは苦手だ!クソ!!」
煙を払うように思いっきり後退したサミラだったが、桟橋に命の姿は無かった。まさかと思い『殺生石』の方を見るがそちらの方は何も変わりない。上空にももちろん居ない。
逃げたのか?と思いかけたその瞬間。
遠心力を持って桟橋の下から飛び出してきた命の飛び蹴りが側頭部に直撃してフラつくサミラ。
「曲芸かよ。いい一撃…くれるじゃん!!」
フラつきながらも笑顔を浮かべるサミラ。勝利への命の貪欲さを気に入っていた。
命の手には鎖で連結されたクナイが握られていた。つまりは桟橋の隙間に引っ掛けてターザンのように桟橋下から旋回して飛び蹴りを成功させたのである。作戦の準備をしっかり出来たからこそいろんな装備を持ち合わせていた。
鎖を鞭のようにしならせて高速の打撃と化すクナイ。サミラは対応に苦慮するくらいならとダメージ覚悟で再び肉弾戦を仕掛けた。
「思いっきりましたね!」
「てめぇもだろ。あんなターザンみたいなことしやがって!」
クナイを逆手に正拳突きを見舞う命。それを鼻柱に見事にヒットされて鼻血を出しながらも殴り返すサミラ。命もまた口の中を切り血を吐き出す。その後も鎖で絡みつけて動きを止めようとしたのに強引に鎖付きラリアットをくらい意識が飛びかけるも、仕返しとばかりに桟橋という不安定な所でスライディングからのサミラの脚にクナイを突き立て、バランスと踏ん張りが崩れるサミラへすかさず、使った三本目のクナイを投げつけて鎖が巻き付いた腕で防御するのを見越して、思いっきり巻き付いた鎖を引っ張り、前のめりになったサミラへ蹴り上げる命。ただでは受けんと蹴り上げた足を捕まれ、引き寄せられて腹に鉄拳をくらい悶える命。
激闘の末、お互いにすべての力とマインドを出し切り、最後は互いに一撃を見舞いサミラを巻き込みながら共に遥か眼下の奈落へと落下、相打ちとなって戦線離脱を果たす。
落下後、オッタルにエリクサーを使われてお互いが助けられる。
残されたリリは、殺到するバーベラやレベル2のレナ・タリーに完全に追い詰められ、満身創痍となっていた。
「もう諦めちゃった方がいいよ
「ベル様も命様も諦めず、戦っているのにリリだけ諦めるなんて選択肢はありません!」
だが、リリはサポーターとしての執念だけで敵の刃を潜り抜け、満月に照らされる春姫の元へと這い寄り、ついに彼女を縛り付けていたすべての神具の拘束を外すことに成功する。
「ァアアアーー。やりましたよ。ベル…様…」
その瞬間、全てのスタミナを使い果たしたリリはその場にガクリと崩れ落ち、力尽き気絶した。
すかさず衣服の奥から飛び出した魔獣リズンが、意識を失ったリリと春姫の二人の元へと敵を近付けさせまいと、獰猛な咆哮と共に『ファイラ』の弾幕を張り巡らせて必死に戦線を死守する。
しかし、イシュタルの祭壇に設置された『殺生石』が満月のエーテルを吸い上げ、春姫の魂を強制的に抽出する最悪の儀式が発動寸前へと達してしまう。階段を駆け上がってきたベルの深紅の瞳が、その光景を捉えた。
ベルは腰の後ろの『ヘスティア・ショートソード』を逆手に握り直すと、全マインドを込めて殺生石へ向けて力任せに投擲した。
月の女神アルテミス様は、下界の如何なる神々よりも「弓の名手であり必中」とされ、その神威は寸分の狂いもない。そのアルテミスの加護を宿したショートソードは、満月の月光と同調し、蒼白い神聖な光を帯びて空間を吸い込まれるように、ブレもなく真っ直ぐに飛翔した。
パリィィィィィンッッッッ!!!
必中の加護を乗せた一撃が、満月に輝く『殺生石』の中心核を完璧に貫き、粉々に木端微塵へと粉砕。
イシュタルの企む生贄の儀式は、ここに完全なる瓦解を迎えるのだった。
ベルは気絶したリリを抱きかかえ、春姫の手をガシッとその大きな手で手繰り寄せ、彼女を掠うようにして己の腕の中へと抱きかかえた。
───
だが、儀式を破壊された空中回廊の最深部、その薄暗い煙の向こう側から、大刀を構えたアマゾネスからの人望も厚く、春姫の最強の守護者――【
「――よくやったよ、【
魂のケジメをつけるため、大刀をギラつかせるアイシャ。ベルは春姫を背十分に庇いながら、ベルは敢えて仕掛けなかった。【ウチデノコヅチ】の効力も切れて、満月も雲に覆われてしまい。レベル3のステイタスに戻るベル。
「わざわざ、効果が切れるのを待ったのかい。その数秒で決着が着いたのかも知れないのにねぇ。だが、まぁアタシ好みだね」
「僕の覚悟を貴女に示したかった。それだけです」
笑みを浮かべるアイシャにベルは変わらぬ決意の瞳で返した。
「そうかい。じゃあ、行くよ!!」
アイシャの放つ大刀の猛烈な一閃がベルを襲う。
ベルは残された武器『灼牛』でそれを受け流すと、拳に極限まで【英雄昇火】のチャージを、そして『ファイアボルト』の熱量を同時に練り込んだ。
(クライヴさんの、あの……『ライジングフレイム』のように……っ!!)
ベルの拳が、チャージの光と稲妻の雷炎を纏って爆発的に燃え上がる。
短刀と大朴刀で斬り合う。ベルは連戦の傷をもろともしていない【意地】の効果は健在であり、堅牢そのものであった。
「速さに優れてると思ってはいたが、耐久も化け物だな」
「僕は諦めない想いが無くならない限り倒れるわけにはいかない!!」
耐久の異常性に気付くアイシャ。それもそうかとも思う。あのフリュネにあれだけやられて倒れず、逆に打倒したのだから。
「ますます気にいるよ!」
そこからもアイシャの美しくも威力抜群の足刀のような一撃に吹き飛びながらも耐え抜くベル。彼の言葉通り何度も打たれようとも倒れなかった。そして、ここぞというときには速さを活かして切り込んで来る。同じレベル3でも間違いなく耐久と敏捷は上手を行かれてると判断できた。
「ハァッ、ハァッ…」
「そろそろ決着と行こうか。ベル・クラネル」
お互いが見合いこれが最後の攻防だと確信した。
「【来たれ、蛮勇の覇者】──」
「詠唱!?」
ベルは無理に詠唱を止めに行かず、受ける方を選んだ。
アイシャの詠唱が加速していく。
「【──我が身を殺し証明せよ。飢える我が
詠唱の完成。告げれる魔法名。
「【ヘル・カイオス】!!」
ベルに向けて紅色の斬撃波が迫った。その斬撃波に向けて真っ向から突っ込むベル。逆境にこそ輝く『不屈』。肩口から大きく斬られながらも『灼牛』で軌道を反らしつつ、走り込んで行く。
「なっ、!?ホント、愚直でバカな奴だ!!」
その行動に驚きつつも笑みを深めて何かをする気なのを感じ取ったアイシャもまた受けて立つことに決めた。
「ハァアアアーーーー!!!」
そして、ベルはアイシャの懐へと鋭く踏み込むと、彼女の身体を上空へと打ち上げるように、その鍛えられ美しい肢体の腹部に向けて、渾身のファイアボルトパンチをすくい上げるように垂直に突き上げた!
ドグォォォォォンッッッッ!!!
「ファイアボルトーー!!」
「――が、はっ……っ!?」
凄まじい衝撃波が空間を揺るがし、アイシャの身体はくの字にへし曲がりながら、上空へ向けて激しく打ち上げられ、地面へと崩れ落ちて完全沈黙した。
しんと静まり返る空中回廊。
イシュタル・ホームの各所から激しい爆炎と煙が立ち込める中、オラリオの夜空の地平線から、ゆっくりと、美しい夜明けの光が差し込み始めていた。
朝日を浴びる中、ベルは自らの腕の中で涙を流す狐人の少女を見つめ、優しく、真っ直ぐに微笑みかけた。
「――春姫さん。……貴方を、助けに来ました」
「はい……、はい……っ。嬉しゅうございます、わたくしの……英雄様……っ!」
二人は固く、お互いの手を温かく取り合うのだった。
───
一方、その頃。自分のファミリアが完全に崩壊し、絶望に顔を歪めていた神イシュタルの背後に、漆黒のドレスを纏った美の女神フレイヤが静かに姿を現した。
「わたしのものに、随分と汚い手を伸ばしてくれたものね、イシュタル」
「フレ、イヤ……っ! お前、なんでここに……っ!」
激しい問答の末、フレイヤの冷徹な右手が、イシュタルの頬へと容赦なき強烈なビンタを叩きつけた。バランスを崩し、ホームの最上階の高所から真っ逆さまに落下していくイシュタル。地上への激突の凄まじい衝撃は致命傷となり、美の女神は光の粒子となって、天界へと強制送還されていくのだった。
そして、フレイヤは遠くに見える春姫と共にいるベルを見つめた。ベルも視線に気付いたのか、フレイヤの方を見た。
彼女は何事かをささやき、嬉しそうな表情でその場を後にした。ベルの透明な魂は淀むことなくまた強く輝いていた。
フレイヤはそのことが堪らなく嬉しく、胸の高鳴りを感じながら立ち去るのだった。
その崩壊し、火に包まれる歓楽街の惨劇を、どこかの通りの屋上の闇の中から静かに見つめている一人の神がいた。ヘルメスである。
ヘルメスは、自らの癖になった帽子のツバを指先でそっと下げ、月明かりと夜明けの狭間で、重厚なモノローグを静かに呟いた。
「――誰もが英雄を求めている。あんな少女ですら……世界は、英雄を欲しているんだ」
「闇を打ち払う、白き光が。世界の悲願のために……オレは……──」
願いの言葉。
しかし、ヘルメスはその瞳の奥に、先日のウォーゲームで見せたクライヴの圧倒的な理外の力、そしてディオンの槍の残光を思い浮かべ、不気味な底知れぬ笑みをその唇に刻んだ。
「――そのためならば、オレは……どこの誰かも分からない、もしかしたら何者かの刺し金かも分からない。あの『
ヘルメスは帽子のツバを深く下げ、再び通りの闇の中へと消え去っていった。
春姫救出作戦は、ここにこれ以上ない大団円を以て完結した。
今後について
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①今のまま毎日投稿
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②投稿頻度減らして完成度上げて
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③自由、活動報告で設定やステイタス書く?